冒険者の宝物
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■ショートシナリオ
担当:白樺の翁
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月13日〜02月18日
リプレイ公開日:2005年02月20日
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●オープニング
底冷えする夜だ、寒さが足元から這い上がってくる。空は満天の星。
ギルドの扉が勢いよく開き、小柄な女性が飛び込んできた。
女性は、後ろを何度か確認して、恐る恐る扉を閉めた。
「こんばんわ、どうかしましたか?」
受付が応対すると、その女性は始めてこちらへ顔をむけた。
黒いつややかな髪、東洋風の容貌、真っ黒い瞳は、どこか神秘的である。
「あ、こんばんわ、後をつけられているような気がして‥‥ うーん、気のせいかな?」
女性は受付の前までやってくると、少し困った顔をして照れ笑いした。
「こういう所、初めてなのよね、えーと‥‥」
受付も釣られて笑う。
「心配要りませんよ、何か困った事でもあるのですか?」
「えーとですね、これなんですが‥‥」
彼女が取り出したのは古びた羊皮紙で、なにやら小さな文字や図形が書き込まれている。
「なんですか? これは」
女性はしばらく、どう言おうかと迷っているようだったが、また照れ笑いすると小声でいった。
「宝の地図‥‥ じゃ、ないかなーと‥‥」
女性はマヤ・マルタンといい、18才で郊外のとある屋敷で家政婦をしている。
昨年の春、病気で父が死に、今は一人である。
この羊皮紙は、父親の遺品を整理していて、出てきた古い日記の中に、はさんであった物だそうだ。
「ははは、宝の地図なんて大げさですよね、あの父と宝物なんてまったくつながりません! のんびりと言うか、いい加減というか‥‥」
「お父様は何をなさっていたのですか?」
「毛織物の仲買をしていました、商売はヘタクソで、すぐ騙されるし、駄目な父親だと思っていたのですけどねぇ‥‥ 実は20年前まで、冒険者をやってたことが日記を読んでわかったんです!」
「そうなんですか!」
マヤは駄目な親父‥‥ と言いつつ、優しい表情になる、人の良い正直なところが自慢だったのだろう。
「お父様のお名前は? ギルドメンバーなら名簿に残っていると思いますよ。復興戦争の時に一部散逸してしまいましたけど」
「ローランス・マルタンです」
受付は、奥の部屋から古いギルド員名簿を出してきた。
「20年前ですね‥‥」
「ローランス・マルタンじゃと?」
名簿を覗き込んでいる2人に、声をかける者がいた。
「あら、ボーモンさん」
年取った冒険者は、ボーモンといい、ここの常連である、受付は老冒険者に事の次第を説明し、マヤを紹介した。
「ほーほー あのローランスの娘さん! おや? あいつは金髪じゃったがの、見事な黒髪じゃなぁ」
「これは、えーと、私、養女なんです、血はつながってません。 父は結婚してませんしね」
「そりゃ悪いことを聞いたかな」
ボーモンは、ローランスと一緒にやった冒険の数々を、懐かしそうに話したが、マヤにとってはまったく意外なことであったようだ。
「私にはただ優しい父でした、平凡な父親だと思ってたのに、冒険者だったなんて‥‥、宝物なんて大げさな事言いましたけど、金目の物ではないと思うんです、父は困った人で、お金に未練がない人でしたから‥‥」
マヤは、またあの照れ笑いをする。
「父の事をもっと知りたいんです! この地図をたどって行けば、父の大切な物が、私の知らない父の事がもっとわかると思うんです」
「なるほどね、依頼は宝探しの手伝いですね?」
「はい、それと‥‥」
マヤは今度は、細かくたたまれた2つの布切れを出してきた、開くと文字が書かれている。
「こっちは3日前、こっちは今朝窓から投げ込まれました、読みますね‥‥一通目は、宝の権利は君にはない、地図を渡せ、さもなくば命はない。 もう一通は‥‥ 財宝は俺にも権利がある、独り占めはさせないぞ」
「脅迫状じゃないですか! 地図の事、知っている人は?」
「うーん お屋敷の使用人仲間は皆知ってますねぇ、噂好きだから、あっという間に広がったと思います、だから沢山いますねぇ」
2通は、まったく筆跡が違う。
その時、13〜14才ほどの少年がギルドの戸を開けて入ってきた。
受付が応対しようとすると、無視して大声をだした。
「そこにいたか! 護衛を雇うんだな! 何したって無駄だ! 財宝は俺にだって権利があるんだからな! 独り占めされてたまるか!」
少年は言い終わると、周りを睨んで凄んで見せ、戸を蹴飛ばして出て行った。
たが、からっきし迫力がない。
「ふふ‥‥ あ、笑っちゃ可哀想かな? 本人は本気みたいだし、マヤさん、お知り合いですか?」
「初めて見る人です」
「あれは‥‥ ローランスの昔の仲間のマクス・レイマーの息子、ボップじゃよ」
ボーモンは呆れ顔だ、どうやら知っているようだが、その事には触れず、マヤに向き直ると改まって質問した。
「ローランスがなぜ結婚しなかったか聞いたかね?」
「いいえ」
「じゃろうな、実はなローランスは4人で組んで仕事をしていたんじゃよ、美貌のベランジェールとやさ男のレイマー、騎士見習いのサイクスとな、である仕事で船で大西洋に乗り出したんじゃが、嵐にあってな、3人は無事じゃったのだが、ローランスは波にさらわれて行方不明になった」
老人は言葉を切ると、心痛な面持ちで続けた。
「ベランジェールとローランスは仲がよくて、近いうち結婚をするものだと思っとったんじゃが‥‥ ローランスが行方不明になって2年後、ベランジェールはあきらめたんじゃな、レイマーに求婚され、二人は引退して結婚した。 じゃが、その結婚式の翌日、無人島に流れ着いておったローランスが救助されてもどってきたんじゃ」
「じゃあ、父が結婚しなかったのはベランジェールさんを忘れられなかったから?」
「おそらくはな‥‥」
「あ、まってください! それじゃ、さっきの子は、そのベランジェールさんの子供なんですか?」
「そうじゃ、まあ、両親はローランスの冒険者仲間だから、財宝が出てきたら自分にも権利があると思っておるじゃろう。 あいつもかわいそうな子なんじゃよ、ベランジェールは5年前にはやり病で死んでしまっていてな、それ以来グレてしまったんじゃよ、淋しいんじゃろうなぁ」
老冒険者は、話終わるとマヤに済まなそうに言った。
「わしが、護衛できれば良いんじゃがなぁ‥‥ 明日から2月間、長丁場の仕事が入っておって、しばらく帰らん」
マヤは手続きを済ませた後、受付と日程の話をする、募集期間の事もあるので宝探しは5日後にスタートとし、冒険期間も5日間とした。
「あれ? そういえば父の冒険者仲間は4人組みだって言ってましたよね? サイクスさんって今はどうしてますか?」
「ああ‥‥ サイクスもベランジェールが好きだったらしくてな、一番年下だったんだが、断られたらしいな、飛び出して、それきりじゃよ。 噂では盗賊の用心棒になったとか聞くがな」
依頼は宝探しの手伝いとその間の護衛だ、マヤは完全な素人だから、いろいろ助言をしてやると良いだろう。
気になるのは、脅迫状のことで、一通はボップの物だとしても、もう一通が謎で不気味である、油断は禁物だ。
●リプレイ本文
依頼人、マヤ・マルタンの勤めている屋敷の前で一同は合流した、マヤは少し遅れてやってくる。
「ごめんなさい、ご主人様が餞別だって言って、聞かなくて‥‥」
マヤは大きな荷物を持ってきている、中身は全員分の食料だ。
「ありがたい! 食い物のこと心配してたんだ 俺、ヴィゼルよろしくな!」
ヴィゼル・カノス(eb1026)が挨拶をしつつ中身を調べる。冒険期間中の全員分の保存食、そして差し入れのお菓子まで入っている。
「あ、皆さん マヤ・マルタンです、よろしくお願いします!」
「さあ、いこうぜ!」
いくつかの村を抜け、午後になると道は深い森の中を進んでいる。
「美しい女性を悪漢の魔の手から護り、秘宝を探す。伝説のシフールナイトへの第一歩として相応しい依頼だ、うん」
ユノーナ・ジョケル(eb1107)は胸いっぱいに深呼吸する。
「素敵なお父さんだったのね、もっと知りたいと思う程に」
シアン・ブランシュ(ea8388)がマヤにそれとなく近寄る。もちろん雑談のためではない。彼女を護衛しているのだ。
「うにゃ‥‥ なんでお父さんは冒険者だったって事黙ってたんだろうね? ボクの父さんは色々話してくれたんだけどなぁ‥‥ む? うにゃ??」
やはりマヤと並んで歩いていたティア・スペリオル(ea2733)が、話を中断して後ろを向いた‥‥ 後ろに人影が見えたような‥‥。
「ボップですわよ あれでも隠れてついてきてるつもりみたいね」
最後尾を警戒していた、リジェナス・フォーディガール(eb0703)が言う。
「説得してくるよ、一緒の方が奴も安全だろう」
ヴィゼル・カノス(eb1026)は隠れているつもりのボップへと近づいていく。
「僕も行こー」
その後を追うティア。
ヴィゼルが近づくとボップは慌てて逃げ出そうとする! そこをすかさず!
「うにゃ! 油断大敵ストライ‥‥」
「まてまてまてー!!」
ティアは愛用のスリングでボップの股間を狙い撃とうとする! 慌てて止めるヴィゼル。
「大丈夫! はずさないよ!」
ティアは改めて狙おうとするが‥‥。
「ティア殿、股間は‥‥手加減してやって欲しいのぅ、へたすると一生の問題じゃて」
マッカー・モーカリー(ea9481)も助け舟をだす。
ヴィゼルは、ボップのもとへ駆け寄ると、もう一通の脅迫状の話をして、説得にかかる。
「あんたの命も危ないんだ! 単独行動していたら殺されるだろう」
ボップは最初、信じなかったが、サイクスの名前が出たところで顔色が変わった。名前は両親から聞いているようだ。
「わかったよ、ついて行くよ」
ボップは仲間に加わった。
夕方、何事もなく柳亭らしき廃墟に到着する。すぐに日没なので調査は明日、野営の準備を始める。
「冒険って‥‥ 意外と地味だな」
テント設営や焚き火の準備は皆に任せて、ユノーナは上空で警戒しながらボソリと言う。
「夜の見張りの順番とか決めましょうか」
食後、シアンが全員を集めて、見張りのローテーションを決める。
「襲撃されるなら、宝が見つかった後だと思うんだけどね」
「俺も同じ考えだ、だが油断はできないな」
シアンの考えに竜崎 清十郎(ea8223)が同意する。キャンプは夜を迎えた。
翌朝、昨晩は何事もなく過ぎた。朝日の位置を確認し、捜索を開始する一同。
「さて、今日は俺の出番だぜ」
スコップを片手に張り切っているメフィスト・ダテ(eb1079)。
「最初は人魚の門だったね、うーん‥‥ うにゃ? あれかな?」
ティアが指差している方向には2本の門柱らしいものが見えている、近づくと半分土に埋もれた人魚像も発見する。
「ここから北に150歩、西に60歩だったわね」
リジェナスが方向を指示する、一番ローランスに体型が近いメフィストが先頭を歩く。
「ライオンだよー!」
ティアが、尻尾が欠け落ちているライオンの像を発見する、像の北側は池になっている。
「ライオンを背に100歩か‥‥ ライオンの背中の方向かしら? 南ね」
ライオンは北を向いている。
「この池かなり深いよ、うにゃ! メフィスト水泳得意?」
「冬だぞ おい」
リジェナスの意見をもとに、南へ進むことにする、メフィストは一歩づつ数えながら進む。
100歩‥‥ 一本の高い柱が見えてくる。
「あったわ」
リジェナスは駆け寄る。
ロープを使って距離をはかり、さっそく掘り始める、一時間‥‥ 二時間‥‥ 三時間‥‥。
「おかしいな、場所が違うんじゃねーのか?」
メフィストは額の汗をふく。
「ま、こう言うのは地道に調査するしかないよな、交代するぜ」
ヴィゼルが交代して更に数時間‥‥ 何も出てこない。
日が傾いてきた、そろそろ作業は中止だ。
「皆、ちょっと!」
周囲を警戒していたシアンが、深刻な顔つきで戻ってきた。あたりを気にしつつ、小声で話し出す。
「焚き火の跡を見つけたわ、昨晩近くにもう一グループいたみたい」
「第二の脅迫者、サイクスと盗賊の連中か?」
「どこかで監視してるじゃろうな」
マッカーと清十郎が、その方向を注視する。
不気味な静寂。
その夜の警戒は、より厳重に行われた。
3日目の朝。
「空のパトロールに行ってきます!」
朝食の準備のできるまで、ユノーナは周囲を一回りして来ようと飛び立った。早朝なら敵も油断しているかもしれない‥‥そう思ったとき、朝日が差し込んできた。
「冬は日が昇るのが遅いなぁ」
その小さな一言が、どういうわけか下まで聞こえたらしい。
「それじゃ!」
昨日から悩んでいた、マッカーが叫んだ!
「季節じゃよ! 柱の影は季節によって長さや方位がちがうのじゃ!」
調べてみると、ローランスの地図は、8月ごろに書かれたことがわかった。つまり夏だ。
正確なところはわからないが、影がもっと短いのは間違いない。
測量道具も知識もないので、大雑把な位置を広範囲に掘ることになった。
その数12箇所! メフィストは今日も玉の汗をかいて大活躍だ!
辺りにはスコップの音だけが聞こえている。
夕方近くなってスコップに硬いものが当たった。
「おい! なんかあるぞ、こんどこそ当たりだぜ!」
出てきたのは黒い箱だ。鍵はかかっていない‥‥ 防湿のためか、蝋で封印されている。
「早く開けよう! ちゃんと分け前くれよ」
ボップがせかせる。
清十郎は武器に手をかけて周囲を警戒する‥‥。
箱の封を切って蓋に手がかかった。
その時、一条の矢が頭上をかすめ、立ち木に突き立った。
「そこまでだ!」
柳亭の崩れた壁の影から長身の男が現れる、甲冑に身を固め、長い槍を携えている、ナイト風のいでたちだ。
「でたな」
清十郎は鋭く言う。
「財宝を見つけくれて感謝するよ、俺は冒険者時代から戦闘専門でなぁ、謎解きは苦手なんだ」
「サイクスか?」
「ああ、そうだ、宝は渡してもらおう」
「ここから先は何人たりとも進ません!」
仁王立ちして立ちふさがる清十郎! ズギャーン! とポーズを決める。
「ふん! よい度胸だ」
「お前らみたいなのには、容赦しねぇぜ! 」
「やはり出たか、宝は渡さん!」
ヴィゼルとメフィストが、すぐさま両脇を固めた。
あたりは一気に緊張し、殺気が渦巻く!
「気をつけて、手下の姿がみえない!」
シアンは残りのメンバーに耳打ちし、マヤを中心に姿勢を低くする。
「くそー! 俺の分だってあるんだぞ」
たまりかねたボップが、箱に飛びつくと乱暴に開けてしまう! すると中から数枚の手紙が散らばった。
「なんだこりゃ?」
ティアがその一枚を手に取る。
「うにゃ‥‥俺は駆け出しの騎士、サイクスと言います、ローランスさんの冒険者チームの噂を聞き、是非とも仲間に‥‥ 世のため人のために尽くす冒険者になって‥‥ これってサイクスの若い頃の手紙?」
一番下に特に大事そうに保管されている手紙がある、それをボップが取り出した。
「母さんの字だ‥‥ 船の手配はうまくいってますか? 結婚の申し込み嬉しかったわ、夢のよう! ずっとあなたを見ていました、今最高に幸せです 愛しています‥‥」
サイクスは、槍を地面に突き立てると、走りより、箱の中を覗き込んだ。
「くそ! 金じゃねーのか! ローランスの野郎!」
サイクスは、宝箱を蹴飛ばそうとした。
「まってよ! サイクスさん! 宝物は金品じゃなかったけど、冒険者の絆ってそんなものじゃないはず‥‥ これは皆の宝物でしょう?」
ユノーナが体をはって止めに入る!
「てめぇなんかに何がわかる!」
「わかるよ サイクスさん 僕だって駆け出しの騎士、世のために働きたい冒険者なんだよ!」
サイクスの動きが止まる。虚ろな表情で冒険者達を見回した。
「フ‥‥ 俺も焼きがまわったな」
サイスクはくるりときびすを返す。
「おい! そこの羽のある駆け出しナイト! まっすぐ進めよ‥‥ 正面だけを向いてな」
森の中に姿が消える間際、そういって姿を消した。
冒険最終日、一同の姿はマヤの勤めているお屋敷の広間にあった。
「ありがとうございました、本当に感謝します!」
マヤは、父親やその仲間たちの思い出の詰まった箱を抱きしめるようにして礼を言った。側には泣きはらした赤い目をしたボップがいる。
彼も大切な何かをあの箱の中から手に入れたようだ。
「思い出の宝物か」
「冒険者にとって仲間や仲間との思い出は大切な宝物だからね」
シアンとティアがしみじみと言う。
「僕、まっすぐ歩くよ」
ユノーナは遠い目をしている、皆の心に暖かいものが残った。
そんな中、マッカーがポツリと断言する。
「うん じゃが‥‥ 金も大事じゃよ」