決して怪しい者ではありません

■ショートシナリオ&プロモート


担当:周利芽乃香

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月19日〜11月29日

リプレイ公開日:2008年11月23日

●オープニング

●故郷への手紙
 とうちゃん、かあちゃん、げんきですか。
 おいらはげんきにやってます。

 みやこは、すごいところです。
 たくさんのひとが、いるんだべ。
 それに、いろいろなひとがいるもんだとおもいました。
 とくに、ぼうけんしゃというひとたちが、すごいです。
 かっぱもいれば、きょじんもいるし、こびともいるんだべ。
 おいら、びっくりしてしまったよ。

 まだ、むらへはかえれないけど、しっかりかせいでかえるべな。
 はるまで、まっとってくれや。

●飛脚の悲哀
「‥‥で、手紙持ってったら代読させられた挙句、見世物になっちゃって‥‥」
 疲れ切った様子のシフールがぼやく。
 何でも、出稼ぎに都へ出てきた青年の手紙を運んだ所、代読させられたらしい。
 でも、それだけなら此処へ寄る事はないんじゃないの?と、馴染みのギルド係員が茶化せば、彼女は「依頼も兼ねてるんだよぅ」と、ぷーと頬を膨らませた。

「代筆までさせられちゃった‥‥」
 ぼやきながら彼女は、金子の添えられた手紙を係員に手渡す。ちょっと待って、これは息子さんへの手紙じゃないのと受け取りを躊躇う係員に「違うよー手紙はこっち」シフールは分厚い紙束を振る。これはぼやきたくもなる訳だ。
 薄い手紙の内容は、以下のようなものだった。

●故郷からの依頼
 息子がお世話になっとります。
 都っちゅう所は、この娘っ子みたいな生きものが色々おるらしいべな。
 息子がどんな所で働いているのか気になるんで、色々尋ねてみたいのと、
 その『冒険者』ちゅうのがドンなもんか、見てみとうて
 『依頼』ちゅうのんを頼むことにしたんで、来てくだされ。
 楽しみに待っとります。

●見世物‥‥?
「‥‥‥‥」
 係員は暫し言葉を失った。
 怪物が出たでもなく冒険者を呼ぶとは、今時何と平和な村だろう。
 ともあれ、金子を送りつけて来られた以上は請けない訳にもゆかず、係員は筆の頭で自らの頭をつつきながら、何とか1枚の募集を捻り出した。
『旅と説明が好きな、多種多様な冒険者を募集します』

●今回の参加者

 ea9455 カンタータ・ドレッドノート(19歳・♀・バード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0334 太 丹(30歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 eb3367 酒井 貴次(22歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb5231 中 丹(30歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)

●リプレイ本文

●見世物になりに
「本気を出すと村が壊滅しかねないっすから、大食いはやめておくっす」
 道中、ギルドで貰ったシフール直筆の地図を片手に、太丹(eb0334)が物騒な事を言った。彼はジャイアント、巨人族である。確かに、大食いを生業とする彼が本気を出せば、出稼ぎを出す老人だけの村など一溜まりもないかもしれない。
「弟弟、気ィつけや〜ご老人たちのお相手やねんし」
 義兄弟の中丹(eb5231)が突っ込む。彼は河童、通常はパリで活動しているらしい。丹丹では紛らわしいので、以降この義兄弟は中・太兄弟とする。
 外国出身者は他にもいて、今回唯一の女性参加者カンタータ・ドレッドノート(ea9455)は、赤いフードを目深に被っている。フードからちらりと見える金の髪が美しい。
 ジャパン人ではあるが外国の魔法学校で勉強していた、酒井貴次(eb3367)は占いが得意だとか。三者三様ならぬ四者四様、個性的な面々が辺境の村を目指していた。

●老人たち
 3日の道中を経て予定通りに村へ着いた一行は、まずはシフールの地図通りに依頼人の家へ向かう。依頼人のヤス・ウメ夫妻は大喜びで迎え入れてくれた。早速、太が低い入口の梁に頭をぶつけた。
「あっはっは、手紙の通り、巨人さんは大きいのう」
 ヤス夫妻の家で一服し、一行は長老の家へ。村人が待ち構え‥‥否、歓待の準備をして来訪を楽しみにしているらしい。一体どんな爺婆が出迎えてくれるのやら。
「おや‥‥トヨさんが来とりゃせんかの?」
 長老宅にいたのは7名の老人達だった。ウメが一人いない事に気付く。
「ああ、あの人は一人では来んからの」
 家の主らしい男が言った。この男、長老のイシという。仕方ないなと別の男が立ち上がりトヨを迎えに行く。「テツさん済まんべな」戸口のイシの声が聞こえた。

 2人の不在中も歓待の席は待ったなしだ。貴次が依頼主のひとりウメと、テツの妻タマに挟まれている。
「お前さまは、どんなお人だべ?」
「僕はジャパン生まれの陰陽師です。でも元々は外国の魔法学校で勉強していました」
「魔法‥‥?」
「そうですね‥‥僕の得意な事でしたら、占いがありますが」
「息子の無事を占ってくれんかの‥‥?」
 一人息子を京へ遣っているウメが、遠慮がちに尋ねる。やはり手紙1通では心配なのだろう。いいですよと応えた貴次は、凶事の心配をしながら占った‥‥が、程なく安心の表情へと変わる。

「‥‥し、尻子玉ぁ抜かんかの‥‥」
「何でおいらが、んな事せなあかんねん!人畜無害な河童かておんねんで」
 糠漬けの胡瓜を丸ごと1本差出しながら、おずおずと長老夫人キヌが尋ねると、中は「おいら河童の冒険者やねん」と続けた。中の嘴がキラーンと光る。彼なりに格好をつけているらしい。
「冒険者とは、それぞれに秀でた技能を持つ方々が、様々な頼み事を自分の意思で引き受け、力を合わせて解決に導く人達の事‥‥と言えば良いでしょうか」
 貴次が中の話を引き継いだ。
「‥‥まあ、何でも屋って感じですけど、全ての頼み事が解決できる訳でもないんですけどね」
 僕でお答えできる事であれば、お話しますよと誠実な笑顔を見せた。中の側では、耄碌の始まったカシ爺が「ええカラダだべな」などとぶつぶつ言いながら、肉付き良い体を触りまくっている。

●種族いろいろ
「こりゃ何だべな」
 ヤスがカンタータに問う。彼女の膝に乗っているのは不思議な雪玉のカンタローだ。ころころ転がっているカンタローを見て「そういや手紙を運んでくれた娘っ子さにも羽があったべな」ヤスが言った。
「ボクも、そのシフールさんも、見た目より年上なんですよ。子供のように見えますが、成人しているんです。種族によって成長速度が違うのですよ」
 カンタータの返答にヤスは、改めて彼女の実年齢を尋ね失礼しましたと謝罪する。
「いいえ、大概の人は大らかなので、人間さんほど気にはされませんよー」
 気を悪くした風もなく彼女が応えたその時。
 テツが戻って来た。血色の悪い陰気な表情の老女を連れている。この女性がトヨと言うのだろう。「ごきげんよう」とフードを被ったままカンタータが挨拶すると、トヨは彼女の側に座った。
「お前さも何か隠しておるべな?」
 トヨは暗い笑いを浮かべて言った。確かに種族特徴である耳を隠してはいる。
「ボクはハーフエルフという種族なのです」
 ハーフエルフ最大の特徴には敢えて触れず、カンタータは赤いフードを外し耳を見せた。ヤスは珍しさに感動しているだけだったが、トヨは何かを感じ取ったようだった。

 村人が全員揃った所で、話は世界情勢へと移る。
 太は寡歴の長いムク爺と意気投合、男の手料理を、太なりに加減して食べながら談笑している。
「そっすね〜みやこの上のほうは、なんかピリピリしてる感じっす。でも時たま貴族が冒険者相手に山一つ使った鬼ごっことかやってたりしたっすよ」
「お貴族さまの考える事は、ようわからんべなぁ」
 政治の事か遊びの事か、ムク爺は自作の濁酒片手に聞いている。
「あと‥‥妖怪が多いっすね」
 頬を赤らめる丹精な顔立ちの大柄な青年に、ムク爺は「惚れとるんか、若いのう。まあ頑張れや」と太の背中をばしばし叩いて励ました。
 太が行動不能(?)になったのを受けて、義兄弟の兄・中が外国の話をする。
「いつもはパリっちゅうとこを中心に活動しとんねん。昔からこっちと行き来があったいうて、結構こっちの文化が向こうにもあるんや」
 中が話すのは遠き土地で行われる、この国の風習である凧揚げ。自分たちの知っている事柄が外国にも伝わっている事に、村人達は面白がり、中の生き生きした口調に引きこまれてゆく。こうして長老宅での夜は更けて行った。

●同行者たち
 さて、冒険者達に同行したペット達がどうしていたかというと‥‥
 カンタロー以外のペット達は、ヤス家の土間に待機していた。ドンキーのタムナスさん、ライディングホースのシャオパイロンとパイロン、ノーマルホースうま丹、ライトニングバニーうさ丹が、そこに居た。勿論、主不在中の餌等は抜かりない。
 話は遡るが、長老宅へ向かう前、大型のペットとうさ丹はヤス家に置いて行く事にしたのだ。

 翌朝、彼らの主人達が村人を連れて戻って来た。
「おや、可愛い。ウサギも連れて来れば良かったのに」
 うさ丹に触ろうとしたキヌを、中が慌てて止める。キヌは心の臓が悪い、うさ丹は充分危険動物だ。
「おいらは飼い主やさかい触れるんや」
 キヌも、ぴかぴか光るうさ丹を見て触るのを諦める。
「おお、これは見事な馬じゃのう」
 太の駿馬二頭に歓声が上がる。農耕用とは別の目的で育成された優美な白馬達は、辺境の農村ではかなり珍しく映ったようだ。

「さて‥‥明るいうちに自分の技を見てもらうっすね」
 太に言われるがままヤス家の庭に移動した一同は、冒険者の力の片鱗を垣間見る事となる。
 中と貴次に板を持たせた太は、気合集中。
「じゃ、いくっすよ、牛角拳!」
 一歩踏み込むと、一瞬で板を粉砕した。

 一瞬の沈黙。拙い、驚かせてしまったかと心配した刹那‥‥老人達は、やんややんやの大喝采。一安心した冒険者達だった。

●孝行
 そんなこんなで過ごした4日間、遂に別れの日がやって来た。
 村人達は別れを惜しみ、帰りの食事だけでなく行きの分だと行って食料を補充してくれた。

「嫁に行った娘が残したものだけんど‥‥お前さに貰って欲しいべさ」
 トヨが、カンタータに市松人形を押し付ける。他の者も各家から「珍しいものではないが」とそれぞれ土産を受け取った。
「ありがとよ。孫に逢えたようで‥‥楽しかったべ」
 長老イシの言葉を背に、一行は京へ戻ったのだった。