小さき勇者
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 48 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月05日〜05月11日
リプレイ公開日:2006年05月13日
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●オープニング
●決意
部屋の奥、一段高いところに置かれた大小の日本刀。兜から具足まで全て揃った大鎧を背に厳格そうな男が座っている。
雰囲気からすると武人か‥‥ 白いものが混じっているが、無骨でいかにも強そうである。
「そなたは元服前だからな。今は腕を磨いておれ」
「しかし、父上‥‥」
「これからはあちこちで戦になる。そういう時代になろう。必ず役に立つ時が来る。焦っても良いことはない」
諭すように語って一息つくと、目の前の少年を残して男は部屋を出て行った。
「ボクだって」
少年は迷わずに大小を腰に差すと部屋を後にした。
●小鬼退治
京都冒険者ギルドに1件の依頼が舞い込んできた。
『昔から山奥に棲んでいた小鬼6匹が麓に下りてくる気配あり。後顧の憂いを絶つために全滅させてほしい。なお、経費冒険者持ち』
動物に荒らされたのとは違う感じで畑が荒らされていたことがあり、本格的な被害が出る前に思い切って退治してもらうことにしたらしい。
●無謀は勇者の資質
時折、汗ばむほどの陽気に少年は腕で顔の汗を拭った。
日陰に腰掛け、笠を外して水筒に口をつけて、くっと飲んだ。
髪形を見れば元服前だとわかる。腰には立派な大小の刀を差しているところを見ると武家の子供だろう。
それに、見る者が見れば分不相応な刀だということはわかる。
いや、体型は殆んど成人と変わらないから、子供というのは失礼かもしれない。
「もう少し先か‥‥ 小鬼たちが暴れているというのは‥‥」
大きく息を吐くと、笠を被りなおして少年は歩き始めた。
●リプレイ本文
●気になる報せ
「鬼はいくらでも出てくるのですね」
愛馬・炎尾に跨る六条素華(eb4756)は、眉を顰めて笑った。
馬を預けると、村人たちを集めて詳細な情報の聞き出しに入った。
「まぁ、ちゃちゃっと倒しちゃえば、それで終わり。相手は小鬼だし、油断しなけりゃ大丈夫だよね」
「1人で2匹を圧倒できるほど腕が立つわけでもないしね。2対1以上に持ち込めれば問題ない」
マキリ(eb5009)とライクル(eb5087)は、小鬼などに遅れは取らないとばかりに闘志を燃やして地図の確認をしている。
「こちらは6人、小鬼は6匹。一丸となってあたれば五分以上になりますよ」
イノンノ(eb5092)は、優しく静かにそう言った。
「そうですね」
仲間の大よその実力は聞いた六条は、心の中で戦いの様子を組み立ててみたが、特に不利になるとは思えなかった。
むしろ先手を取れるだけに、こちらの手の内に引きずり込むことは十分に可能。そう手を読んだ。
「そういや、旅の御武家さんはどうされたかね」
「跳梁跋扈は許しておけぬとか言われとったもんなぁ」
「何の話でしょう?」
村人たちの話に、六条は気がかりを感じて聞き返した。
「元服前の武家の方だと思うんだがね。熱心に小鬼たちのことを聞いておられたんで」
「まさか1人で行ったりはしないとは思うけどなぁ‥‥」
「もしも‥‥ということもありえますね」
リュドミーラ・アデュレリア(ea8771)は心配そうに顔を伏せた。
心配そうに顔を覗き込むチェルシー・ブロッサム(eb4918)にオーラテレパスで事情を説明する。
『心配だよ‥‥』
「とりあえず急いだ方が良さそうですね」
やる気一杯だったチェルシーは心配そうに仲間を見渡し、リュドミーラの袖を引っ張った。
「早まった行動をしなければいいのですが‥‥」
六条は教えられた地形を頭に浮かべ、小鬼の指し手を読もうとしていたが、武家の子供の存在が気になって詰めろまでいかない‥‥
冒険者たちは、まずは小鬼の棲みついたという洞窟を目指すことにするのだった。
●少年
「くそっ‥‥ 負けるかっ‥‥」
洞窟近くまで来て、沢に小鬼がいるか身を隠そうと思った矢先、勇ましい声がした。
武家の少年に間違いないだろう‥‥ 少年の大刀はカタカタと音を立てている。
対する小鬼は2頭‥‥ 錆びの浮いた小刀や斧が少年を襲い、切っ先や斧頭の恐怖が少年を竦ませた。
一撃かわしてはザクッと少年の服は切り裂かれ、大きくさけて斧頭の一撃をかわす。
少年の大振りの一撃は空を斬り、着物の布地は朱に染まっていった。
「うそだっ‥‥ 父上は剣の筋が良いって言ってくれたのに」
それでも後ろに下がらないのは侍としての本能か‥‥
ごぶっと笑ったような声で追い詰めるように、小鬼たちは少年を半包囲して斬撃を繰り出す。
ギャリィ‥‥
「しっかりなさい! それでも武士か!」
割り込んだリュドミーラは小鬼の斧を受けた。
「一気に倒すのが先決。いきますよ」
一瞬出遅れた六条は、弓を引き絞って放つ!
かかっ‥‥
六条とマキリの矢が小鬼に突き立つ。
「逃がしませんよ」
一気に突き出したイノンノは両手の小柄の刃は小鬼に滑り込む。引き抜き様に軌道を変えて一閃。
「無益な殺生なら好まないけど!」
バサッと翻る外套の下からライクルの斬撃が伸びる。ついでにもう一撃!
斧を持った小鬼は血まみれで膝をついた。
「これで倒れて!」
サンレーザーが焼き、小鬼が崩れ落ちる。
僅かの間の強襲で1頭を戦闘不能にしたチェルシーたちは、勢いを駆って残りの1頭も倒した。
ふぅと一息ついて少年を見ると、まだ震えていた。
「立ちなさい、武士の子よ」
リュドミーラの声に少年は腰を上げた。
「誇りは失っていないようね。これなら大丈夫」
「でも、震えが止まらない‥‥」
少年は首を振る。
「それは武者震い。誰にでもあることです」
慰めるように六条に肩を叩かれると、少年の瞳から恐怖が和らいだ。
「本当に無茶ですのね。たとえ鬼の中では小さき者であっても、たった一人で向かうのは危険です。
1人でできることなんて、そう多くはないのですよ」
イノンノは沢の水で少年の身体を拭き、傷口を縛った。幸い傷は、それほど深くない。それだけが本当に幸いだった。
●川原の戦い
リュドミーラたちは小鬼たちの棲みついた洞窟を見つけ出した。
勿論、少年も同行している。ここで帰るようなら、そもそもこんな無謀はしていない。
ライクルが偵察に出て1頭が何かしているのを見つけたが、騒動を起こさずに倒すのは難しそうだ。
「それでは作戦通りいきましょう」
煙で燻り出して出てきたところを倒す。大きな音で気をひいて誘き出して倒す。
色々と意見は出たが、イノンノを囮に小鬼たちを沢まで引きずり出して倒す作戦を採ることにしたのだ。
実力未知数の少年に関しては、後方で弓兵や魔法使いたちの護衛を頼むことで一応納得させることができたようだ。
貴重な後詰めとして‥‥
「いや‥‥」
イノンノは、わざとらしくにじりながら下がる。それを追うのは4頭の小鬼。
ごぶぶ‥‥ ごぶごぶ‥‥
水辺にはマキシたち‥‥
コロボックルであるマキリたちを子供の集団と思ったのか、小鬼たちは楽しそうに邪悪な笑みを浮かべている。
「イノンノ!」
ライクルの叫び声と共に追い詰めたという雰囲気は一掃された。
イノンノが背を向けてマキリとライクルの方へ走るのに合わせて小鬼たちも川原に走りこんでくる。そのとき‥‥
ズバンッ!!
衝撃波が小鬼を掠めた。
何が起こったか理解できずに固まった小鬼たちの周囲にリュドミーラたちが間合いを詰める。
「太陽よ。その光により敵を焼け!」
チェルシーのサンレーザーが小鬼を焼いたのを皮切りに、小鬼たちも我に返った。
子供たちの方を突破しようとするが、そこには小太刀を構えたライクルと小柄を抜いたイノンノの姿が‥‥
狩られるための存在だったはずなのに‥‥ 怪訝そうな表情を浮かべて、小鬼たちの足が思わず止まった。
「焦るな。狙いをつけて‥‥」
川原の岩陰に潜んだマキリが矢を放つ! こういうときは身体の小ささが有利に働く。
ビョン‥‥
六条の爪弾く弦の鳴りが小鬼たちを不快にした。
「詰めに入ります」
六条の指図に仲間たちが動く。
「やぁあ!」
リュドミーラの気合を入れた斬撃が、続けざまに小鬼を捉えた。
マキリの矢を気にしつつ、何が起こったのかわからないように、もんどりうって小鬼が倒れる。
「止めをさせ!」
シャッ、ズッ‥‥
外套を翻して小鬼たちを翻弄するようにブラインドアタックを繰り出すライクルと、コンパクトな動きで追い立てるイノンノの攻撃に1頭の小鬼が一気に血達磨になった。両手でしっかり構えた少年が、小鬼に刀を突き立てる。
「ごぶっ!!」
「甘い!」
襲ってくる小鬼の剣をことごとくかわして、ライクルは叫んだ。
状況判断を乱され、逃げる機会を逸していた小鬼たちは、にべもなく殆んど本能的に剣を繰り出すだけ。
背中で仲間の小鬼が倒れても、気づかないほど‥‥
あるいは逃げようとしても、弓で射られ、剣の衝撃波を叩きつけられ、日の光に焼かれた。
躊躇する間にコロボックルたちに回り込まれ、囲まれるという有様。
小鬼たちが全滅するのに、そう時間はかからなかった。
●勇者の旅立ち
「これで6頭、洞窟の中にもいなかったですし、これで依頼は達成ですね」
六条たちは、チェルシーのライトを助けに洞窟の探索も行い、小鬼たちを一掃したことを確認した。
良かったとばかりにチェルシーの笑顔は明るい。
さて‥‥
村へ帰還した冒険者と少年は、依頼が達成されたことを村人たちに伝えた。
「何事も分相応が肝心、判断力も必要だと思いますわ」
とくと説かれた少年の顔には、段々と決意のようなものが滲み出してきたかのよう。
出会ったときの少年とは別人のようである。
「あの‥‥ リュドミーラ殿」
熱い思いや不満、色んなことを聞いてもらった少年は、リュドミーラの前に座りなおした。
彼の熱い眼差しを感じ、リュドミーラも改めて姿勢を正す。
「これを受け取ってください」
彼の差し出したのは腰に佩いていた大刀。質実剛健といった作りで、雰囲気のある日本刀である。
「私には過ぎたる刀。あなたに使っていただきたい」
「しかし‥‥」
困惑するリュドミーラに少年は‥‥
「リュドミーラ殿の大刀と交換させてください。私の身の丈にあっているのはこちらの刀」
「しかし、それでは父上に叱られますよ」
「心から謝れば父も許してくれましょう。あなた方のことを忘れずに武者修行するためにも、その刀が良いのです」
2人の遣り取りを見ながら、六条は少年の言葉遣いが変化していることに気がついていた。
大人になった‥‥ということか‥‥ 思わず笑みを浮かべるのだった。
翌日、少年は家に帰ると言って冒険者たちと別れた。
『大丈夫だよね?』
「大丈夫」
リュドミーラの言葉に安堵したように、チェルシーは少年に手を振った。
「強くなりたい気持ち、あるなら走るだけ‥‥ でも、故郷の皆、心配してるかな‥‥」
「故郷ですか‥‥」
マキリやイノンノたちは、コロボックルの言葉に乗せて遠き故郷に想いを馳せた。