【河童流れ】悪評は元から断たなきゃ駄目♪
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:7〜11lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 79 C
参加人数:8人
サポート参加人数:7人
冒険期間:05月11日〜05月17日
リプレイ公開日:2006年05月18日
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●オープニング
「え〜、こちらが今回の依頼人」
ギルドの親仁が連れてきた身長1.2mくらいの依頼人は外套に身を包み、笠を被っている。
「ども、イグと言います‥‥」
笠と外套をとった姿は‥‥ 緑色の皮膚‥‥ 嘴‥‥ 手足の指の間のヒレ‥‥ そして、頭の天辺には皿‥‥ そう、河童だ。
イグと名乗った河童は恥ずかしそうにして少し節目がちに頭を下げた。
「実は‥‥ 悪い河童がやってきて皆を手下にしてしまったんです。嫌なことばかりやらされて‥‥」
聞けば、河童の娘を人質に取られて、反抗することができないらしい。
「しかも、やたら強くて手も足も出なくて‥‥」
よく見れば、イグには痣の痕がある。
千切っては投げ、千切っては投げ‥‥ イグは自分たちがやられていく様を身振り手振りで熱く語っている。
相撲好きで腕力には定評のある河童を一方的に倒して行く様子に、冒険者たちは思わず溜め息‥‥
「ギルドにも色々事情があってな。この時期に河童の悪い噂ってのはマズいんだ。それで元凶を退治してほしいんだよ」
そういう依頼になるよねと冒険者たちは頷いた。
「お願いします。仲間たちを助けてください」
イグは深々と頭を下げた。
さて‥‥
江戸から徒歩で2日といった田舎に、のどかな風景が広がっている。
若草色も段々と濃くなり、夏草の葉が茂り始め、むせるような緑の匂いが風に乗って吹き抜けた。
田が広がる場所よりも上流、高さ5mほどの滝を登るとゴツゴツした岩が沢山転がる川原が広がっている。
一段高く、平べったくなっている岩の上には崖が張り出して日陰を作っている。その岩の上に影が幾つか見える。
「水路伝いに江戸に潜り込んで子供を攫って来い。江戸はごたごたしてるからな。1人や2人、いなくなったってわかるめぇ」
全身黒光りする鱗に包まれた、大柄な猿のような姿の男が、岩場の窪みに腰掛けて何人もの河童を見下ろしている。
「しかし、黒水様。あんまり悪さすると人間たちが攻めてきます。献上している食べ物で何とかならないですか?」
「こいつを食っちまうのもいいかも知れねぇな。頭の皿にこいつの肉を刺身で盛り付けるか、酒でも注いで飲んだら美味そうだ。
ま、俺は人間の子供が食べれりゃ、お前たちの我儘は見逃してやってもいいと思ってるんだが」
鎖の先の鉄の輪は、がっしりと河童の少女の首につけられている。
じゃらっと鎖を引っ張ると、小さく悲鳴を上げて黒水と呼ばれた黒い河童の腕の中に倒れこんだ。
「ははぁ、黒水様〜〜。仰せのままに〜」
いささか大げさに河童たちは頭を下げ、その場を下がった。
「あいつ、また子供を食べるんだぜ‥‥ もうヤだよ。こんなの。皆でかかれば倒せるかもしれないぜ。やってみようよ」
河童の1人が小声で話し、他の河童と一緒に聞かれてやしないかとキョロキョロ首を巡らしている。
「馬鹿。イグが1人でかかっていってボッコボコボコにされたの忘れたのか?」
「そういや、強かったよなぁ。あんなに殴ったり蹴ったりしたのに怪我1つもしないんだもんな‥‥」
惨状でも思い出したのか、河童たちは震えている。
「それに、河童膏はイグにみ〜んな使っちまったろ?」
「そっか、そうだったよな。でもクンも可哀想だよ。助けてあげないと」
「どうしよう〜」
鎖につながれた少女を思い出して、河童たちは思わず躍ってしまうのだった。
●リプレイ本文
●協力者
「皆、快諾してくれたよ。クンを救うためなら協力は惜しまないって」
「これで黒水を倒すことだけに専念できるね」
「流石は悪名高き黒水、といったところだな。虐げれば抗われる。事の道理だ」
「全く、悪の栄えたためしはないと言うのに」
河童のイグとチップ・エイオータ(ea0061)、それに護衛をして同行した楊飛瓏(ea9913)は、フィーネ・オレアリス(eb3529)たちに合流し、上流の滝を目指した。
怪しまれないように側で用を命じられた河童と他に少しを残して、ほぼ全員が冒険者たちを手伝うことになったようだ。
「ところで猫や弧が妖力を持つように、河童も年を経ると山のように大きくなると聞いたが‥‥
君たちと黒水は同じ河童なのかい? いや、その黒水って奴は魔物のようにしぶといと思ってね」
ランティス・ニュートン(eb3272)は、河童がそう悪い奴らには見えなかった。
「僕らとは姿形が違います。それに、あんな河童にはなるくらいなら死んだ方がマシさ。
あ、殴っても殴っても傷1つ付けられなかったよ。きっと心だって傷ついたりしないんだ」
恐らくは、銀か魔法の武器でなければ傷を付けられない。そういうことだろうとランティスはイグの言葉に考えを巡らせた。
近くの村で聞いた河童の伝承も好意的なものが多かったし、近々ギルドの冒険者として河童たちを迎えると聞いてもいるし‥‥
ともあれ、か弱き者を虐げる悪漢は許せない。ランティスにとっての行動原理は、それだけで十分だった。
「実際、人質にするだけでは飽き足らず、鎖で繋ぐなんて極悪非道な奴、容赦はいらないよね」
「当然、当然♪」
久遠院雪夜(ea0563)やチップたちは、河童に手伝ってもらいながら滝つぼに罠を仕掛け始めた。
こちらの襲撃が成功すれば黒水は逃げるだろう。河童ならば水の中へ。そして、逃げやすい川下へ。
久遠院にとって当然の帰結であり、志乃守乱雪(ea5557)や楊たちも同意した。
「せめて足止めだけでもできればな」
「吊るし上げられれば何とか追いつけるだろう」
志乃守と楊が網や縄で罠を作り、河童たちが潜って仕掛ける。
河童たちの助けがなければ、こうまで上手くいかなかったのは確かだろう。
「罠に掛かりさえすれば私が逃がさない」
フィーネは断言した。
●獣耳の巫女登場、ミユキの策
「黒水様、子供を連れてきました」
子供に人遁した久遠院、ユキ・ヤツシロ(ea9342)の2人が縛られたまま座らされた。
全身黒光りする鱗に包まれた、大柄な猿のような姿の男は、岩場の窪みから腰を上げると久遠院とユキをねめつけるように見比べた。
「やだぁ‥‥ 食べても僕美味しくないよ‥‥ お肉なんて無いよぉ‥‥」
「‥‥」
怯える芝居をする久遠院と対照的に、ユキは殆んど本気で怯えている。
「軟らかけりゃ、肉が少なくても気にしないから安心しな」
ケケッと笑う黒水に、可愛く人遁しすぎたかなと久遠院は苦笑いした。
極悪妖怪‥‥ 見た目で地を行く、黒水は全くわかりやすい。だからこそ、河童たちも怯えるのだった。
「よ〜し、酒を持ってこい」
河童が酒を持ってくると、ユキを掴んで持ち上げ、悲鳴を楽しみながら杯に口をつけた。
そこへ‥‥
「黒水様〜、怪しいやつがいたんで連れてきました」
女を連れ、河童が現れた。刀を取り上げられた女は、背中をつつかれて黒水の前に出される。
「水神様の宣託を承り、お導きの下、参りましたが、この仕打ちは何ゆえのものなのか。ご説明願いましょう」
獣耳の飾りを被り、白布に花鳥草木を青摺りの千早に巫女の装束を着けた結城夕貴(ea9916)は、女性の声色で静かに黒水を見つめた。
「ほほぅ、水神様の宣託とな? 我が民が無礼を働いたことは陳謝しよう。にしても、獣耳の神とは、いかなる神か」
陳謝などしていないのは、黒水の視線を見ればわかる。見下ろすような、嫌悪感を湧き上がらせる目つきを隠す様子もない。
「知らぬとあれば不見識。水と美を司る獣の神と聞けば、思い出されましょうや?」
「成る程、あの水神か」
余程の見栄っ張りだということはわかった。にしても、女装に水を得た結城の芝居はどうだ。
縄を解かれ、結城が剣を求めると、黒水の許可を得て、河童たちは霊刀ホムラと大脇差を『彼女』に渡した。
ブツブツと祈りを唱えるふりをして、結城は刃を見つめた。
「そなたの悪行が剣に映っています。慎まれることです」
「我らの領分に踏み入って、先に荒らすのは人間ども。つまらぬ宣託だな」
結城は僅かに目を細め、黒水の言葉を受け流した。
「河童大名の治世であっても、そのように言えましたか? 不満の向けどころが違っておりましょう」
「カカ、気の強いことよ。お前1人で、俺に叶うとでも? 巫女を味わってみるのも良いか」
「そう願うなら、神剣でそなたの血を払うまで! せめてもの情け、屠りし後は水神様に抗ったもののふとして弔って上げます!」
時間稼ぎとばかりに結城は派手に立ち回っている。
「いつの世も、悪の栄えた試しはない。この正義の証したる腕輪にかけて、黒水、お前の悪行もここまでだ!」
ユキが祈り始めたのを見てランティスは岩陰から飛び出した。彼女のコアギュレイトが決まれば、それで終わる。
彼女の祈りが終わるまで少しでも気を引く必要があった。
闘気を帯びた太刀と大脇差『一文字』が同時に黒水を襲い、討つ!
「ここまでやるとは。やるな人間」
「何!?」
討ったと確信した一撃はグジグジと消え去り、ランティスの顔色が一瞬青ざめた。
「河童の弱点といえば、ここだ」
隠身の勾玉で気配を消していた楊の短刀『月露』が背後から頭頂部を狙った。
「くははっ、そこらの河童と一緒にするな!」
僅かに毛が傷ついただけ‥‥ 皿はないようだ。普通の河童とは見た目から違うが、皿までないとは‥‥
「予想外だな‥‥」
黒水の笑いに楊は歯噛みするが、表情を崩すようなことはない。
ユキの術は失敗したようだ。今は人質を逃がすのが先決だった。
事態を見極めるように物陰にチップと志乃守の姿が‥‥
「仏の加護がありますように‥‥」
志乃守の祈りが届いたのを確認したチップは、ちょっぴり舌を舐め、ユキの身体が淡い光に包まれたのを合図に矢を放った。
幸いにも鎖が止めてある根元の台座は木製ということを聞いてある。
「ちゃんと壊れてよ」
ビャキッ‥‥
飛着した矢に驚いたクンが飛び退き、その衝撃で矢が突き刺さったところから割れた。
「クンさん!」
隠し持っていた短刀『月露』を構えた久遠院が、黒水とクンの間に割って入る。
一気に間合いを詰めると、僅かに切り裂き、黒水の鱗を伝って血が流れた。
「ぬ、謀反か!」
「謀反じゃない。解放だよ!」
「お前か! 人の力を借りるなど!!」
イグの姿を見つけ、黒水は飛び掛るが、久遠院の短刀に阻まれた。
ユキはクンの鎖を手繰り、持ち上げるが、重さで上手く歩けない。
「無敵でなければ、お前なんか怖くないぞ!」
久遠院の付けた傷を指差してイグは叫び、気を惹かれた隙にユキとクンは互いに協力して黒水から離れる。
密着する久遠院に苦戦しながら黒水はクンを追いかけようとした。
「逃がすか!」
「おっと、させないよ」
チップは咄嗟に銀の矢を2本掴むと黒水に放った。その矢は身体に突き立たず、血を滲ませて地に落ちた。
●逃亡
「いささか分が悪そうだ。じゃな」
黒水は逃げの一手に入った。逃亡先は川。岩棚から飛ぶと川を下り始めた。
「さて、追いかけようか」
ランティスたちは、クンたちの無事を確認して下流へと歩を進めた。
さて‥‥
川を下り、滝壷へ飛び込んだ黒水は、何かに絡まって水面に顔を出した。
はっと気づくと茂みの中には河童たちの顔が並んでいる。
「何をする! こんなことをして、ただで済むと思うか!!」
「くぅぇっぷ! こうするのさ!!」
飛び降りるように幹を利用して河童たちが縄を引き、黒水は網に捕らえられた。
すぐさま河童たちは空を見上げて合図を送った。
びゅぅぅううわ‥‥
風を切って舞い降りてきたのは、前半身が鷲、後ろ半身が獅子という美しいクリーチャー・グリフォン。
その背には戦姫・フィーネが颯爽と跨っている。
「天空より舞い降りし、聖母の赤薔薇フィーネ・オレアリス! 極悪妖怪・黒水っ! 聖母様に代わってお仕置きですっ!」
「うぉっ、何をする!」
爪で網ごと掴まれると、一気に高度を上げた。眼下では河童たちが喜んで飛び跳ねている姿が見える。
「はっ!」
掛け声と共にグリフォンは滝つぼの上流を目指した。
ほんの一駆け、フィーネは仲間たちの姿を認めると、黒水を放した。
ぐじゃ‥‥
盛大に石を撒き散らし、黒水は冒険者やイグたちの前に落ちた。
「極悪非道を聖母様は許しません!!」
着陸したグリフォンから降りたフィーネがホーリーを撃つ!
「因果応報、罰は必ず当たるものです。肝に銘じ、改心なさい」
「くそっ、覚えてやが‥‥れ」
網でもがく黒水が、フィーネと志乃守に噛み付くように喚いた。
「ふぅ、大人しくなりました」
ユキのコアギュレイトが効いて黒水は身体の自由を失い、ユキは安心して仲間たちの傷を癒しにリカバーをかけ始めた。
かくしてイグたち河童は仮の暴君から解放され、一先ずの安寧を得た。
そうそう‥‥
鎖で簀巻きにされた黒水は奉行所へ突き出されることになったそうだ。