●リプレイ本文
●よく確認
冒険者ギルドの一室にて‥‥
「むーらーの井戸にハニワが出る♪
長者の蔵に霊も出る♪
遠くの空にはロック鳥♪
おい、そりゃ違うよ、フクブクロ‥‥って、あれ? 歌わないの?」
三味線を掻き鳴らし、飛び込んできたティアラ・クライス(ea6147)。説明を受けて、納得。
「なんだ、この歌じゃなくて詩を読むことだったのね」
「それも違う気がする。でも、ま、いっか〜」
深く悩まないのがシフールのいいところ。(失礼です)
「月華さぁんっ 呪いをかけられて108日後に全身の穴という穴から血が噴出して絶命されるって、本当ですの!?」
次に飛び込んできたアトゥイ(eb5055)と月華が一緒になってわたわたしている。
「やはり楽しくなってきたな。‥‥と、これは月華嬢に失礼か」
それを見た真幌葉京士郎(ea3190)‥‥ ぷっと鼻から小さく噴き出している。
真面目な顔になると、しふ歌会をするに至った経緯を聞いて、深刻そうな顔で話し始めた。
「そうか‥‥ 月道を越えて、遂にこの地にも現れたのか」
え‥‥と一瞬引き、身を乗り出すように顔を近づけて真幌葉の話に興味津々な月華とアトゥイ。
「いや、俺も旅先で聞いただけなんだが‥‥
108のシフ歌を実行出来なかったケンブリッジの学生が、棒に襲われたらしいという話を聞いてな‥‥」
棒に? 月華とアトゥイとベル・ベル(ea0946)は、状況が想像できなくて、怖〜いと揃って声を上げた。
「驚かせてしまったならすまない。でも大丈夫、月華嬢を不幸な出来事から守る為に、俺たちがここにいるんだから‥‥って1人増えてるし」
「しふしふですよ〜☆」
ふよふよ〜ん☆と飛んで軽くウィンクした。
「ベルさん、しふしふ〜♪」
当然の如く挨拶する月華以外にも無言の要求があり、アトゥイや真幌葉たちはシフールたちの笑顔に耐え切れず、しふしふと挨拶を交わした。
「はやや? しふ用句じゃなかったですか〜? 怖いお話になっているですよ〜☆」
「うん、それがね‥‥」
赫々然々‥‥
「これが不幸の手紙ですのね? ‥‥ 禍々しい血文字ですわ。呪いが成就される前に、なんとしても108首揃えないといけませんわね」
「それにしてもなんで『108』首なのかなぁ? はっ!? もしや、シフールの英雄が、しふの星の下に集まり国を救う、あの『しふ虎伝』の物語と関係が!?」
アトゥイの他にも通りすがりの冒険者も首を突っ込んで真剣に考え込んでいる。
「ともかくですよ。頑張って108個、頑張った作るですよ〜☆」
ふ‥‥ もうシリアスに耐え切れなくなったか。
お〜☆(もしくは♪、ところによって‥‥)と、お気楽に掛け声を上げるシフールたちを見て、次いで来たフィル・クラウゼン(ea5456)とフォウ・リュース(eb3986)は、訳もわからず『おぅ』と掛け声をかけるのだった。
所変わって、少し過去のシフール飛脚便江戸支局‥‥
「月華は休みか。あぁ、しふ歌会だっけ? あれだけ本気にしてくれると、引っ掛ける方も引っ掛け甲斐があるってもんだよな」
茶を一服すると月華の上司は自分の机に向か‥‥えなかった。
背後に子供とジャイアントらしき影‥‥
「ふ‥‥ そういうことでござったか」
操作は、まずは被害者身辺から‥‥
どこの誰が言ったか知らないが、甲斐さくや(ea2482)は知り合いの忍者と独自の調査をしていたのだ。
筆の運びの所々に似たところがあったし、目を付け始めた矢先で、こんなに簡単に犯人がわかると拍子抜けだが。
「あの手紙を書いたのは、あなたでござる。上司殿、月華が嫌いでござるか?」
「いや‥‥ 冗談だったんだが、面白そうな展開になったんでな」
冗談と聞いて、甲斐は安心の表情で深い溜息をついた。
「冗談で良かったでござる。月華も目的は変わったようでござるしな」
「さくや、これでもういいのですか?」
「助かったでござるよ」
ジャイアント忍者が消え、一安心と自分の机に向かおうとした上司だったのだが‥‥
「ふ、ふ、ふ、ただで済むと思ってはござらぬな?」
なぜか顔の下から光を受ける甲斐の顔に‥‥
いやゃ〜〜‥‥ 飛脚便の建物に悲鳴が響いた。
「月華さん、初めまして。今日はよろしくね」
「よろしふね〜♪」
フォウらと挨拶していると‥‥
「月華〜、元気でござったか」
そこへ到着したのは、月華の忍びこと甲斐。
抱きつこうと駆け寄ってスカり、月華が甲斐の肩に飛び乗った。
「さくや、しふしふ〜♪」
月華に、さらっと髪をかき上げられ、思わず赤面。
「し‥‥ふしふでござるよ。偶然そこで月華の上司殿に会って、これを渡されたでござる」
ベタな展開に真幌葉が受けたり、アトゥイが目をパチクリさせながら赤面しているのは置いといて‥‥
袋を開けると金子だぁ。
「そうだ。紅茶とお菓子を持ってきたので、歌会と茶会を兼ねてやりませんか?」
「私もお弁当とお菓子を持ってきました」
「いいな、雅にお茶でも立てて、歌会始といくか」
ルーラス・エルミナス(ea0282)、真幌葉、フィル、他の者も概ねその気だったようだ。
「あ、いいとこ知ってる」
月華が笑った。
●しふ歌会
景色の綺麗な庭に板を敷き、布を被せ、傘を立てて風流な雰囲気♪
と、まぁ、ここまでのことができたのは何故かというと‥‥
那須江戸藩邸だからである。
おにぎり、春野菜の料理、鹿肉の燻製など、ちょっとお腹にたまるものは御自由にお摘みください。和洋のお茶と洋風菓子が並べられ、量は兎も角かなり豪勢だ。持ち寄りもあるが、ルーラスの手出しと上司からの差し入れの金子があったればこその贅沢と言えようか。そうそう、ティアラの商人としての顔もあったことは記しておかねば。
「これはシフールさんたちの分ね」
小分けの小さな弁当が並ぶ。
フォウの気遣いに、月華、ベル、ティアラたちは大喜びで、ひょいと一口。
「それでは始めましょうか? 歌会」
このままじゃ済し崩しに食事会になると思ったルーラスは月華に促した。
「あはは、忘れてた」
やっぱりか。ともあれ、持ち寄った句の披露が始まるのだった。
「それにしても‥‥ 成る程、これが『しふの世間は、とっても広い』ということですか。シフールは、会った事のない人でも直ぐに友達になれる訳ですね」
ルーラスは那須藩邸の庭で歌会をしている自分たちを見渡して笑う。
さぁ、歌会の始まりである。
「『しふの一声』という言葉があるですよ〜☆」
「あの、しふしふってやつか」
「そうですよ☆ しふしふ〜の最初のかけ声で挨拶が済むことから、転じて簡単明瞭でわかりやすいことをさす意味になったですよ〜☆」
ベルの話に納得する真幌葉。
「今では、『しふりんちょ☆』『しふ〜〜〜!!!』『しふふ?』などの変化系の挨拶も生まれているですよ〜☆」
ベルは月華と挨拶を交わして見せた。流石に空中三回転ハイタッチはシフール以外には無理だろうとか思ったが、苦笑いで済ます。
「俺は『シフの噂も75日』と聞いたことがあるな。情報伝達が早く、移り気で忘れっぽいシフールの噂が75日も残っているなんて、奇跡に近いという意味らしいな‥‥」
ぶ〜と頬を膨らますシフールたちに気付き、お菓子とお茶を勧めて、誤魔化し誤魔化し。
それに釣られるシフールたちもどうかと思うが。
「『シフールの噂は7刻半』というのも聞いたことがあるでござる。興味の移ろうシフールにとって新しい噂に流れて旧い噂は長くもたないという意味らしいでござるな」
「『溺れる者はシフをも掴む』、溺れている時にシフール掴んでも意味はない、そう言う事らしいぞ」
甲斐とフィルの誤爆に真幌葉が噴き出す。
「ひっど〜い♪」
ポカポカ叩く月華たちを見ないように、真幌葉は風と戯れている。
「私は『井の中のしふ 誰も知らず』と聞きました。シフールは、かくれんぼが得意で井戸の中に隠れたら見つからないと云う意味ですわ」
にっこり笑うアトゥイの言葉に安心したのか、真幌葉が現世に戻ってきた。
「実はコレには逸話がありまして‥‥
何者かに殺されたシフールが井戸に投げ捨てられたのですが誰も気付かず、発見されるまでその井戸水は使われ続けられたそうですわ。その井戸からは『ボクハココニイルヨ‥‥』と声が聞こえてくるそうですの」
月華たちは身を寄せ合ってゴクッと息を呑んだ。
「‥‥なんて、冗談ですわ☆」
「ひっど〜い♪」
アトゥイもまた、ポカポカ叩かれるのだった。
●祝福
「これを取った人が、これを一番に食べていいですよ」
お〜♪
笹で包んだ丸い物がルーラスの手から投げられると、シフールたちが一斉に飛び立つ。
真幌葉などは見ている方が面白いからと眺めている。
「待ってくださいよ〜」
アトゥイらも追いかけるが、シフールたちのスピードには敵わない。
「いっちば〜ん♪ あ〜わ〜」
「回るですよ〜☆」
飛びついた月華たちは一緒になって転がっている。
「大丈夫でござるか?」
下になる度に変な声をあげる月華たちを、甲斐が受け止めた。
「あの‥‥ 取っちゃいました」
バツの悪そうなアトゥイ。
「チーズ・ローリングの優勝者はアトゥイさん、これが賞品です」
笹の包みを開いてチーズを取り分けると、ルーラスは肉と一緒にパンに挟んで渡した。
「良かったら、みんなで食べませんか?」
羨望の眼差しに耐え切れず、アトゥイは苦笑いした。
「さて、向こうは上手くやってるのかな?」
「どうでしょう。当人たちの問題ですからね」
坂を下り、意味ありげに話す真幌葉の言葉にルーラスが呟く‥‥
とりあえず、パクッと‥‥
さて、取り残された2人、フィルとフォウ‥‥
「フォウ?」
「はい‥‥」
「2人切りになってしまったな」
「はい」
「俺と結婚して欲しい」
あまりにストレート! フォウは耳まで赤くして俯いた。
「フォウ、俺と結婚して欲しい」
その手にキスをして、フィルは誓いの指輪を填めやった。
「フィルさん、ずっと‥‥ 幸せにしてちょうだいね。私もフィルさんを幸せにするから‥‥」
「それは、ハイと答えてくれたって事だよな?」
「はい」
フォウの頬に涙が伝う。
「ありがとう!」
フィルは強く抱きしめた。フォウも彼の背中にそっと手を当て、目蓋を閉じた。
「あーしふしふーと、しふしふーといくしかない♪
しふしふーと、しふしふーとやるしかない♪
しふーる・ラブそてぃ♪」
ティアラたちの姿に気づいて、慌てて離れ、耳まで真っ赤にする2人。
「しふじゃないか♪ しふじゃないか♪ よいよいよいよい♪ さぁ、みんなも一緒に踊るですよ〜☆」
「おめでとう♪」
躍るベルと月華に釣られ、みんなでしふ踊りを踊るのだった。
「素敵な思い出を作ってくれた月華さんと皆に感謝したいわ。『笑う門にはシフ来たる』、ね」
「それ、いただき〜」
フォウに月華がすかさず突っ込むと、笑い声が響き渡った。