●リプレイ本文
●出会い
「短期間とはいえ、共に命がけのやり取りをする仲間だ。冒険は1人で成せるものではないしな。宜しく」
シグマリル(eb5073)は、世間から見れば既に初心者の域から脱しているのだなと感慨に耽る。
「いやー、凄いの。この種族の集まり方、まさに冒険者そのものじゃ」
ホッホッホッと笑うマハ・セプト(ea9249)。
確かに良く見れば人間、ジャイアント、ドワーフ、シフール、ハーフエルフ、パラ‥‥
冒険者として活動しているエルフ以外の種族が全て揃っていた。
「や、面白くて、人助けになる事をやりたくてよ。任せて、任せて♪」
鼻を擦りながら河童の黒淵緑丸(eb5304)は、ニパッと笑った。
それを見て、同じく河童のイグは笑っている。
「しかし、まぁ‥‥ どうしてか河童というものには慣れんな。故郷には居ないしな‥‥」
「河童か。華国にもいると聞いたが、ジャパンにも珍しい種族がいるものじゃの」
アルファルド・ルージュルペ(ea0959)やラーフ・レムレス(eb0371)が興味深げに河童たちを見ている。
「私は世間一般から外れた種族だが、お前さんたちからも特殊な存在に見えるんだろうか?」
? ?
首を傾げる河童たちに少し救われた気がする桂武杖(ea9327)だったが、苦笑いは消えない。
「武杖殿、なにハーフということを気にするでないよ。以前、ハーフの子にも言ったことがあるのじゃ。わしは気にせぬからの。祝福されたから居るのじゃよ」
肩に座って慰めてくれるマハを見ても、やはり失笑気味に桂は笑うしかなかった。
色々な気持ちがごちゃ混ぜになり、整理がつかないのである。
(「ケンブリッジでは学生気分というのも味わって、少しは役立てる気になった。冒険者の中では、こうして優しい言葉をかけてくれる人たちも多い。それに‥‥何よりジャパンもいい所だ。同じ空なのに違った味わいがある」)
桂に、ほんの少し、優しい笑顔が浮かんだ。
さて‥‥
少し冒険者の心構えなどについて話してみた。
「ところで初めての冒険だとか。奇遇じゃの、わしも初めての依頼になるのじゃよ。まぁ、数で勝るなら何とかなるじゃろ」
ラーフの言葉にアルファルドたちは頷く。
「俺も依頼の経験は浅いからし、腕だってお前たちと変わらないだろうからな。存分に頑張りたいと思う」
「そのためには、どうやって倒すか。それが肝心だね」
「冒険者歴は長いでの。門前の小僧、何とやらで助けにはなるじゃろうて」
意気込みを見せる柚衛秋人(eb5106)に、音無鬼灯(eb3757)やラーフが現地で地形の情報や敵の現状などの追加情報を得る重要さなどを話して聞かせる。
河童たちは泳ぎが達者だと聞き、池を利用できないか検討したりした。
そして、その作戦に適した武具を用意することが重要だと諭す。
「ボクは笠と外套しか持ってないんです」
「そりゃいかんな。どれ、エチゴヤに付き合おう」
そこで、ラーフたちはイグを連れ出し、越後屋に買出しに来た。
「旅装束に日本刀か小太刀といった所かの? お金がなければ短槍か手斧になるかの」
「お客さん、河童だね。それなら水に潜ることもあるでしょ? 手入れが簡単で水中でも使いやすい、この短槍など、どうです?」
「う、うん。そうする」
「こちらのお客様、お買い上げ。良い買い物でしたね〜」
困惑気味に乾いた笑いを浮かべるイグは、ラーフや店員に圧倒されて思わず短槍をご購入〜。
そして‥‥
最低で日数分の保存食‥‥
野営をするなら寝袋や火付け石、提灯や油などが必須に近いこと‥‥
特に冬の野営はテントが必要になることが多いこと‥‥
ロープなどは用途が広く役に立つこと‥‥
ラーフらの説明を受け、一行は装備を確かめた。準備は万端。
‥‥と、こんな感じで一行は江戸を出発した。
したのだが、河童連れなのだから現場の村でも多少の混乱は‥‥ある。
「ギルドから来た冒険者です。宜しくお願いします」
イグが外套をまくって笠を取り、挨拶すると‥‥
「か、河童っぱ〜」
「当然、驚くわな」
村人の反応にアルファルドが笑う。
「シフールだって、ドワーフだって、始めて見るでしょ?」
「ちなみに俺は北の種族でコロボックルと呼ばれている。シグマリルという。宜しくな」
音無がマハやラーフを紹介し、シグマリルが挨拶してギルドからの依頼請け負いの説明をすると、村人たちは繁々と見つめ、やがて安心したようだ。
●襲撃
小鬼たちは5頭。
2〜3頭は、よく水辺で遊んでおり、残りは小屋の中か近辺にいるとのこと。
小屋に食料となりうる種などを備蓄してあったことが、事件の原因らしい。
「盗るのは、あれだが、盗られるのはなぁ」
「不謹慎だよ」
とぷん‥‥
黒淵とイグは気づかれないように気をつけて溜め池に潜った。
波を立てないように慎重に移動して水辺で遊ぶ2頭の小鬼たちに接近する。
シュッ‥‥
風切り音と共に、小鬼が突然、悲鳴を上げた。
水中から顔を出しただけでは態勢が悪く、思わず手裏剣が外れそうになってしまったが、まぁ良い。
イグは短槍を持ったまま一気に近付いて、ギリギリで立ち上がると小鬼たちを足払いした。
踏鞴を踏んだ小鬼たちは水と泥に足を取られて倒れてしまう。
「ここは通さない」
慌てて起き上がり、逃げようとする小鬼に立ち塞がるように、アルファルドは短刀を両手に構え、大きく広げた。
「こちらも駄目じゃ」
「ここもね」
逃げ場を失った小鬼たちが振り向くと、そこには霞刀を構えたラーフと鼠撃拳の構えをする桂の姿が‥‥
「そこの小鬼ども、今なら苦しまないようにしてやる。黙って討たれろ」
柚衛の構えた短槍が小鬼に突きつけられ、半包囲されたことに気づいて、小鬼は思わず池に背を向けた。
すかさず背後の池からイグの短槍と黒淵の手裏剣が小鬼を狙う。
前後を挟まれ、1頭は重傷を負い、戦意を喪失したかのように震えている。
『小鬼が逃げ出そうとしておるぞ、急げ』
マハからのテレパシー通信。
「どうやら時間がないようだな。止めを差せ!」
アルファルドは小鬼に手傷を負わせ、叫んだ。
黒淵の手裏剣が、イグの短槍が小鬼を討った。
「殺しちゃったの?」
イグは震えていた。
「誰しも戦わねばならんことはある。命の重さを知っていることは大事だが、それだけでは守れないものもあるんだ!」
柚衛は小屋の方へ駆け出し、黒淵は忍者刀を抜いて走り出した。
●決着
悲鳴を聞いた小鬼たちは、バタバタしたように小屋から出てきた。
マハは道の真ん中にホーリーフィールドを張って結界を張り、仁王立ち。
「通れるもんなら通ってみるのじゃな」
小鬼たちは、その空間に入ることができずに驚いている。
「いいね、マハ老。シグマリル、皆の方に追い込むよ!」
流石に戦闘員が音無とシグマリルしかいないのでは、3頭もの小鬼を抑えてはおけない。
音無が桃の木刀で1頭を討ちつけると踵を返し、他の2頭もそれに続く。
「おぅ! ユッケルヤンペの矢を受けてみよっ!!」
激しい雨のようにシグマリルの放った3矢が小鬼たちの足元に突き刺さり、驚いた小鬼が逃走方向を変えた。
「少し手を出させてもらうぞ! ハァッ!!」
ダン、ダンッ!
駆けつけた桂の拳が小鬼を捉え、十二形意拳・子の奥義・鼠撃拳が小鬼の喉を抉った。
「そっちは駄目だ」
「そうなのね」
アルファルドの短刀が、黒淵が忍者刀が切り裂く。
「これで、もう逃げられないよ!」
イグが行く手を塞ぎ、その後ろにはラーフや柚衛の姿が見える。
「どうやら間に合ったようじゃな」
包囲網が完成したことを確認して、マハは、ほっと溜め息をついた。
冒険者は回復役のマハを除いても8人、相手は手負いの小鬼3頭。
勝負はついたも同然だ。
「いいか。俺たちは依頼人のために何をしなければならないのか。それも大事なんだ」
「誰かの役に立てる。だから、私は冒険者になったのかもしれないな」
音無の木刀が容赦なく討ちつけ、桂の鼠撃拳が小鬼を討ち倒した。
「覚悟が必要ってことだ」
柚衛の短槍が小鬼を貫き、ラーフやイグが止めを差していく。
結局、殆んど反撃らしい反抗も受けず、冒険者たちは小鬼たちを全滅させた。
●望外の感謝
「迷惑料くらいは置いていってほしいもんだね」
小屋の中がだいぶ荒らされているのを見て、柚衛が首を振る。
それでも村人たちは、とりあえず危機を回避してくれたことに感謝しきりである。
魚を獲って来てくれんかの、というラーフの要望に、イグは村の川で器用に魚を突いて持ってきた。
「流石に泳ぎが得意なんだな。故郷にいれば、随分と漁で活躍してくれそうだ」
作戦の中でも強襲揚陸が決まったこともあり、シグマリルに褒められて黒淵もイグも得意げだ。
「参考になりました。皆で依頼を解決する。それが冒険者なのですね」
一同は笑顔で頷いた。
焼き魚を作っていると、村人たちが集まってきた。
「河童の方々の御蔭で小鬼たちを退治できたようで‥‥ ほんに、ありがとうごぜぇます」
「俺たちだけの力じゃないって」
手放しの感謝に黒淵が苦笑いしている。
「この溜め池に河童地蔵を建てようかと考えておる。今日のことを忘れんようにのぅ」
『黒淵さんとイグさんの活躍で、小鬼が退治できた』と柚衛が吹聴して回った効果だが‥‥
冒険者たちは、思わず肩を竦めたり、苦笑いした。