【魔物ハンター】目隠しの戦い
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:7〜13lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 55 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月13日〜07月18日
リプレイ公開日:2006年07月21日
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●オープニング
●石化の魔物
江戸から徒歩で1日〜1日半といった距離にある、とある町での出来事。
切り拓かれた森の一画に、5〜6人ほどの武士たちの一団が展開していた。
「えぇい、恐れるな! 相手は、たかだか1匹! 取り囲め!!」
男の声に、時の声が上がり、鍔切る音や弓の音が鳴る!
ぶわぁぁぁぁ‥‥
その魔物の息が、足軽たちを包み、足元から徐々に石と化していく。
「退くな! 退くでない!! 退かば斬る!!」
逃げ出そうとしている配下たちは、戸惑うように怪物に向かう。
連峰のようにギザギザに逆だったトサカの、8本脚の、2m近くもある巨大なトカゲは、そのまま押し進み、石化した足軽の足をへし折り、恐怖に慄(おのの)く足軽の身体を踏み潰して、武士たちに接近していく。
「気をつけよ! 吐き出す煙を吸い込むでないぞ!!」
指揮官の侍が配下を叱咤するが、逃げ出したい気持ちが強いのか攻撃は散発的である。
それに、足軽たちは必死に息を止めるが、目の前の怪物に足がすくんで動けない‥‥
逃げよう‥‥
なのに、なぜか足が動かない‥‥
なぜ?
その理由を知ろうとして視線を下に移すと、自らの足は、既に石になっている。
自らの不幸な末路を知らずに、足軽は、そこで気を失った‥‥
「矢で援護せよぉお!!」
侍の指揮で矢が飛ぶが、足軽が放つような小弓では、全てが弾かれてしまった。
「うわぁあああ!!」
侍は刀を振り上げ、怪物に突っ込むが、石化し始めた足がもつれ、倒れた。
「くそぉお! くそぉおおおお‥‥」
侍の断末魔が響いた‥‥
●イェブ
「今度のターゲットは、『八足岩大蛇』。八つ足のトカゲよ」
ここは江戸冒険者ギルドの一室。
円卓に7つの椅子。
机の上には木板と、ワインの注がれた7つのカップ。
椅子の一つに腰掛けている鳥仮面の女・イェブは、木板を指差した。
「このトカゲ、欧州でバジリスクと呼ばれている魔物と似ているわね。
だとすれば、息や視線は石化能力を持つから、そこらの武士たちが手も足も出ないのはわかるわ」
イェブが指差す木板には、連峰のようにギザギザに逆だったトサカの8本脚のトカゲが描かれている。
「命からがら逃げてきた‥‥というか、戦闘意欲をなくして、早々に逃げ出した腰抜けさんの話では、侍たちが5人も犠牲になってるから早めに倒してほしいって話よ。
土地の陣屋では対処の手段を思いつかないし、危険すぎるということで魔物ハンターの出番って訳」
イェブは魔物ハンターたちを見渡した。
「視線を合わせただけで石化するから気をつけて。さぁ、勝って帰って、残り半分を皆で飲み干しましょう」
イェブがワインのカップを掲げると、魔物ハンターたちもそれに倣った。
●リプレイ本文
●難儀の予感
「正直な話、もっと勉強しておけば良かったかな」
「皆、魔物には詳しくないのだから仕方がない」
アルバート・オズボーン(eb2284)は苦笑いで、仲間たちを見つめる。
クーリア・デルファ(eb2244)が手掛かりが掴めるようにと神に祈ってくれたのに、その甲斐もなく八足岩大蛇のこともバジリスクのことも大してわからなかった。
そんななかで手掛かりとなりそうなのが、ランティス・ニュートン(eb3272)の思い出した伝承の断片だった。
かつて、大王が石化の魔獣と戦い、部下たちを多く失ったとき、鏡の盾を持った兵士たちで包囲し、石化の視線を逆手にとって石にして倒した‥‥というものだ。
鏡で視線を跳ね返したのだろうという予想は立つ。
しかし、市販の手鏡大の物なら金を積めばまだしも、急に盾のような大きな鏡を‥‥と言っても、簡単に手に入るわけがない。
ならば自分で作るという発想に辿り着くが‥‥
鍛冶の卓越した腕を持つクーリアと言えども、大型の銅板を磨き上げるのには時間が掛かる。
それは手間の問題であり、腕とはあまり関係なく、ましてや鏡面として使う精度を求められれば尚更である。
八足岩大蛇のいる現地まで、馬で急いでも往復2〜3日はかかる。‥‥とすれば残りは2〜3日。
現地の者から情報を収集して、思案中の落とし穴作戦を実行するとなれば鏡の準備にかけられる時間は少ない。
「へんてこりんな怪物ですね。ところで石化の解除ってあるのですか?」
七瀬水穂(ea3744)は首を捻った。確かに、これがあるのとないのとでは、全然違う。
「バシリスクか‥‥ 伝承だと、倒した後の血を飲んで石化を解除したらしいんだが‥‥」
「以前に戦ったことがあるけれど、そのときに石化した仲間は血を浴びせると石化が解けたな」
ならば、倒しさえすれば何とかなると、クーリアの言葉に安堵するランティスたち。
「そういう効果は、得てして時間を置くと効果がないからね。気をつけるんだよ」
イェブから手鏡数枚と銅塊を借り受けた一行は、急いで現地へと向かった。
さて、現場近くの村へやって来た冒険者たち。
「この目撃情報だと、縄張り意識があるのかな? だとすれば、落とし穴をその範囲より内側に作らないと行けないだろうね。
それさえできるのなら、縄張りに入れば勝手に向こうから出てきてくれるとは思う‥‥ 問題は掘っている間か」
その間にランティスらは偵察をし、ターゲットの現れる森の外縁の少し内側で戦いやすい場所を戦場と設定した。
「時間さえあれば、ザ・クリエイターの腕の見せ所だったのだがな」
結局、小さな鍛冶場を借りて作業をし、作戦に間に合ったのは、数枚の手鏡と、打ち伸ばし、磨いて形になった銅板1枚。
銅そのものの色などの関係で思ったような効果は得られないかもしれないとのクーリアによる注釈付きである。
●落とし穴
そもそも、落とし穴作戦を実行するには問題がある。
ターゲットが縄張りを持つのなら、その中に落とし穴を掘れば遭遇戦の確率が高いということだ。
ランティスは周囲を見渡すが、今のところ大丈夫なようだ。
三菱扶桑(ea3874)ら体力自慢たちがスコップで豪快に地面を掘り返しているが、相手は2m近くもある大トカゲだ。
動きを封じるにしても、かなりの広さと深さが必要になる。
やはり、ここでも時間との勝負。
ターゲットが現れない場合、探し出して誘導しなければならないからだ。
とはいえ、戦うときに体力が残っていないのでは話にならず、その辺の兼ね合いが難しい‥‥
「暑くなりましたねぇ。まず、竹槍の準備はできましたよ」
神田雄司(ea6476)が、竹槍の束を抱えて到着。
戦闘では足手まといになるであろうペットたちを村に預けてきたクーリアたちも程なく合流した。
現在、目標の深さまで6割と言ったところか‥‥
八足岩大蛇を恐れてか、はたまた石化されてしまったのか、周囲に生き物の気配はない‥‥
穴掘りの音だけが静寂に響く‥‥
「あ〜! 木が石化してるですよ」
七瀬が声を上げたのに驚いて皆が注目する。
「だから、息もしない、見ることもない木が、石化しているですよ」
「ってことは、息は浴びただけで石化する?」
「たぶん、そうなのです」
問い返すアルバートに、七瀬が真剣な眼差しで頷く。
「ちっ‥‥ 間に合いませんでしたか。来ましたよ! ヤツです!!」
高所の枝に陣取って見張りをしていた神田が叫ぶ。
スコップを置き、得物を手に迎撃態勢を取ろうとするが、見てはいけないんだったと気を引き締めた。
アルバートは仕方ないと適当に竹槍を掘りかけの穴に突き刺し、油を穴の底に蒔いた。
巨体に似合わず、八足岩大蛇の動きは速い。
どどっ、どどどっ‥‥
地響き立てて迫ってくる。
本来ならグットラックでもかけておきたかったが、刀と盾を置いても装備が重すぎて使えない。
クーリアは諦めて盾をしっかりと構えた。
「てい!」
七瀬が最大火力のファイヤーボムを叩き込むが、その勢いは止まりそうにない。
本当に速い。既に白兵距離である。
慌てて七瀬は物陰に隠れ、手鏡で状況を確認する。
落とし穴を挟んで八足岩大蛇と冒険者たちが対峙している。
さすがに見え見えの穴に飛び込むほど敵も馬鹿ではない。
膠着状態になるか‥‥
盾で顔を隠したクーリアも、目隠ししたランティスも、目を逸らしている三菱もアルバートも今のところは大丈夫。
七瀬は魔法の詠唱を始めた。
間に合えば良いが‥‥
「珍しいモノが相手だと楽しみで腕が鳴る」
三菱は、視線を逸らしたまま刀を構え、小さく笑った。
じりっ、じりっっと両者は間合いを計るが、その均衡が崩れた。
八足岩大蛇は大きく口を開き、息を吐こうとしている。
「息が来るぞ! 逃げろ!!」
叫ぶ神田に気づいた八足岩大蛇が顔を上げた。
やばい‥‥
そう思ったときには、身体に違和感を感じてバランスを崩し、木の枝から落ちていた。
地面に叩きつけられるが、石化が始まったばかりだったのが幸いしたようだ。身体に欠けた部分はない。
「うぉおー!!」
神田は叫ぶが、僅かの間に、その体は石と化した。
改めて八足岩大蛇が息を吐いた。
その瞬間‥‥
三菱たちの後方で爆風が起こり、息は熱風に吹き飛ばされた。
「間に合ったですよ」
七瀬はというと、物陰でしゃがんで目を閉じ、耳を塞いでいる。
見当だけで放てば当たる魔法なだけに、視界に捉えずとも当てるのは容易いが、見方が近くにいるとなると状況は違う。
巻き込んだときの危険を考えると、ターゲットに対して使うことはできない。
ならばというアイデアが当たったのだが、高速詠唱がない以上、次の息が来てもタイミングを合わせるのは無理だろう。
今回は単に非常に運が良かっただけだ。
「回り込んで、思いっきりいっちゃってください♪」
「よっしゃっぁあ! 自分は刀を振るうしか能がないからな、こんな事でしか役に立てん!!」
危険は承知で三菱が、ニヤリと笑って八足岩大蛇の前に立ち塞がる。
視界が狭まるように般若面を着け、視線が合わないように工夫しながらである。
ランティス、アルバートは側面から、クーリアは背面に回り込もうとしている。
●激戦
視界を制限されての戦いは困難を極める。
達人級の腕前であれば対抗できようが、ターゲットの突進、牙、尻尾など強靭な体躯を活かした攻撃は中々に鋭い‥‥
これだけの手練が集まっているのだ。まともに戦えさえすれば、こんなに苦戦しないものを‥‥
ずずっ‥‥
自分の方へ突っ込んでくるのを感じ、三菱は受け止めようと身構えた。
ズズンッ‥‥と衝撃を受け、ずり下がる。
「俺になら当たっても少々の傷では死なん! やれ!!」
「わかった! クロスソード!!」
ランティスは三菱の言葉を信じて目隠しを指で上げると、両手に構えた日本刀を大きく振り下ろす!
危険を察知したのか、もがいた八足岩大蛇は首を動かし、ランティスと目が合った。
「完全に体が石化する前にお前を討つ‥‥」
八足岩大蛇は背中に大きな傷を受け、身を捩らせた。
そのとき!
八足岩大蛇は大きく体勢を崩した。
そのまま、身体を斜めにして穴に落ちていく!!
次の瞬間、八足岩大蛇は、のたうつように暴れ始めた。
目に刺さった竹槍を抜こうと首を大きく振りながら穴から這い出してくる。
アルバートは火を投げ込めれば火傷を負わせることができたかもと思ったが、一瞬でできることではない。
「倒れろ!」
鞭が唸るが掠り傷にしかならない。しかも、仲間の傷も馬鹿にはならない。
そう長く戦い続けるのは無理だ。
「いけえ!」
狙い済ましたようなクーリアの長巻『相州行光』が大きく、力いっぱい振り下ろされた。
「止めだ!」
刀を振り下ろした三菱は、思わず視界に八足岩大蛇の瞳を捉えてしまった。
「こんなところで!」
身体が石になるのを感じながら刃を振り上げ、三菱は動きを止めた。
ランティスも既に石化を終えて、魔物ハンターは2人まで減ってしまったが、八足岩大蛇の動きは鈍い。
「敵の左側から攻めるんだ!
アルバートが牽制し、クーリアが大打撃を与え、ついに八足岩大蛇は、その命を終えた。
一段落する間もなく、ランティス、神田、三菱の石化を解いた一行。
そういえば七瀬がいないな‥‥と探してみると、物陰で明るい笑顔でポーズをとった像が1体‥‥
鏡に映った視線でバジリスクを石化させて倒したという伝承を忘れていたわけではないのだが、運が悪いとしか言いようがない。
兎も角、石像と化していた七瀬に血をかけ、石化を解く。
「あ、もどった。貴重な体験をしたですよ」
七瀬は、いつもの笑顔を見せ、八足岩大蛇の死体を漁り始めた。
どうやら、薬の材料になりそうなものを探しているらしい‥‥
「大した御嬢さんだ」
呆れるランティスたちは、依頼の成功に一先ず溜め息をついた。