【東風西乱】八溝に舞う、猛禽の翼

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 72 C

参加人数:8人

サポート参加人数:6人

冒険期間:08月07日〜08月14日

リプレイ公開日:2006年08月24日

●オープニング

●獰猛な翼
 叫び声が響き、木々が薙ぎ倒される。
 月が照らす夜の闇の中で、動物たちの逃げ惑う騒然とした雰囲気が波紋のように広がっていく。
 バサッ! バササッ!!
 羽ばたきと共に舞い上がった全長5mにもなる翼は、もがく小鬼を一掴みに飛び去っていく。

●八溝入植
 江戸の大火の後、下野で囚われた江戸からの国抜け衆は、沼田会戦から帰還して、江戸復興祭を前に、約定通りにその罪を許された。
 江戸に帰る者たちを他所に、行き場のなかった自分たちを気遣い、助命の道を示してくれた那須に残りたいという者たちもいた。
 彼らには那須に土地が与えられることになったのだが、普通、大量の余所者を好んで受け入れてくれる土地は無い。
 だが、幸か不幸か、那須には、人が住め、かつ、人の住んでいない土地があった。
 それはどこか‥‥
 那須東部にある八溝山の麓である。
 過去に鬼の国騒動として那須を揺るがせた騒動の折、麓の住民は少なからず被害を受けていた。
 全滅した村もあれば、幾つかの村人たちが集って、1つの村に住んでいるところもあるという。

 ある日の那須神田城での評定でのこと‥‥
 発言を許された若き那須藩士は言った。
「殿、八溝の小村や廃村にて鬼や魔物を見たと報告が参っております。
 それと、那須へ移民する者たちですが、優先的に八溝周辺に入植させては頂けないでしょうか。
 近隣の村々は、鬼騒動の折、被害を受けて十分に働き手が無いところもあります。
 ましてや全滅に近い村があったのは周知のこと」
「良いでしょう。その線で各所、検討を始めてください」
 従来の生産技術を用いる場合、生産の限度がある以上、人口増加により生産効率は単純に上がらない。
 ましてや人手が足りていない所があるならば、生産力の底上げをする方が先決なのは自明の理である。
「それについてなのですが‥‥」
 若き藩士は続けて語った。
 八溝山の麓では、砦の兵の巡回の目を盗んで、あるいは目に付き難い場所に魔物が棲みついているようだ‥‥と。
 放っておけば、那須領の一部が再び、魔物の脅威に晒されるかもしれない‥‥と。
 入植するのであれば、当然、露払いはしなければならない。
 そこで白羽の矢が立ったのが、那須藩預かりの冒険者部隊・蒼天隊である。
 冒険者ギルド那須支局を通じて持ち込まれた依頼の1つが、これだ。

 『八溝方面の、とある村の近くに大梟が出現。
  人だけでなく、鬼までも捕食する凶暴な動物であるため、これの退治に蒼天隊の存分なる働きを期待する。
  村の付近では鬼も目撃されており、恐らく、これを追って山岳地帯から降りてきたものと思われる』

 なお、江戸から2日の距離にある那須喜連川の冒険者ギルド那須支局を拠点にして現地へ赴くように、とのこと。
 那須支局にて情報提供など簡単な支援は受けられるようだ‥‥

●今回の参加者

 ea8432 香月 八雲(31歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8794 水鳥 八雲(26歳・♀・僧侶・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ea9096 スィニエーク・ラウニアー(28歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9191 ステラ・シアフィールド(27歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb1133 ウェンディ・ナイツ(21歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb2357 サラン・ヘリオドール(33歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 eb3305 レオン・ウォレス(37歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 eb3862 クリステル・シャルダン(21歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

飛鳥 祐之心(ea4492)/ ユリア・ミフィーラル(ea6337)/ 風斬 乱(ea7394)/ ティアナ・クレイン(ea8333)/ ナイトハルト・ウィンダム(ea8990)/ 林 高麗(eb0923

●リプレイ本文

●対策会議
「はーい、いらしゃい、いらしゃい。江戸や外国の珍しいものを持ち込んでいるよ。市価より安いよ」
 村へ到着した水鳥八雲(ea8794)は、村長の許可を得て、早速、村人たちを相手に露店を開いた。
 水鳥の陽気な口調に釣られて村人たちは物珍しげに品物を見ているが、次第に顔を見合わせて去っていく。
「結構、色々揃えたのに何で買ってくれないの?」
「冒険者を雇うにも皆で話し合って、金を出し合ってやっとこさ決めるのにさぁ‥‥」
 村人の1人を捕まえて聞いてみると、こうだ。
 しかも、安いものは那須でも同じようなものが手に入るから買う必要がない‥‥と。
 仕方なく荷物を畳んで村長宅の縁側へ。話し合いは始まったばかりのようだ。

「巨大な梟が小鬼を襲っているところを見たんだ。驚いたの何の」
「巨大梟‥‥ 凄く強そうです。気をつけていかないとですね」
 村人は、目撃したときの様子を香月八雲(ea8432)たち冒険者に克明に話してくれた。
 ステラ・シアフィールド(ea9191)やスィニエーク・ラウニアー(ea9096)などが聞き出した村人たちの目撃情報を香月が逐一メモしていく。
「へー、小鬼捕食する大梟ね。ところで、ここで一番腕が立つ猟師さんって誰かしら」
 水鳥に聞かれ、俺だが‥‥と手を上げた猟師に顛末を聞いているうち、夜行性であろうことや目撃地点に傾向があることなどが聞けた。
「前に遭遇しましたけど‥‥ 本当に大きいんですよね‥‥、ジャイアントオウルって‥‥」
 スィニエークの体験談も交え、それぞれの祖国での罠の仕掛け方などを話の触りに、梟の話を膨らませていく。
「大梟なんて物騒な生き物が近くに居たんじゃ安心しては居られないよな、やっぱり。早いところ片付けて安心させてやろうぜ。
 それにしても、猟師としての俺の腕が役立つ、というのはやはり遣り甲斐があるというものだな」
 仲間にそう語りかけ、レオン・ウォレス(eb3305)が村人たちに静かに頷いてみせると、彼らは安心したように微笑んだ。
「それにしても、どうして鬼は人里近くに来たのかしら? この前大規模な討伐があったばかりなのに‥‥ 気になるわ」
 サラン・ヘリオドール(eb2357)は、那須での小鬼目撃情報を気にしているが、元々繁殖力が強い魔物として知られているだけに、採り立てて注意を喚起するほどではないとのこと。
「夏は食べ物が豊富にあるはずですのに、わざわざ人里近くに下りてくるなんておかしいですわ」
 村人に注意を促し、何かあれば那須藩に通報するようにクリステル・シャルダン(eb3862)は伝えた。
 那須藩としても過去に鬼騒動があっただけに、この辺は確実に押さえておきたいようである。

●進発
 30cmほどの妖精を連れ、鬼の顔を覗かせる兜の左右に天使の羽のような意匠が施された、全高150cmほどの人型の鋼鉄の塊。それ、即ちウェンディ・ナイツ(eb1133)が、レオンや村の猟師の後に従って森の中へ入って行く。
 流石に植生にまで変化が現れたりはしないだろうとは思いながらクリステルは植物を調べている。
 こういう些細なところから情報が得られることもあり、調査範囲において異常なしという情報は、後の判断基準にもなるため、無駄な努力にはならないだろう。
 サランのサンワードでの探索で大まかな方向を得た冒険者たちは、彼女の愛犬である熊犬のソールが糞や羽から匂いを辿り、森の更なる奥へと。レオンと猟師によって範囲の絞込みが行われ、何とか昼のうちに大木に洞を発見した。
「いい子ね、ソール」
 サランが頭を撫でると大木に注意を向けながら周囲の臭いを嗅いでいる。咄嗟に首を巡らすと、一方向に体ごと向けた。
「怖い、ウェンディ」
 陽のエレメンタルフェアリー・ティナが、ウェンディの鎧に潜り込む。
「呼吸が3つ‥‥ 少し小さいですね。子供ではないでしょうから恐らく小鬼です」
 スィニエークのブレスセンサーにも引っかかったようだ。
 冒険者たちは得物を構え、戦闘態勢に入るが、それは巣穴とは逆の方向。
「こういう展開は考えてなかったな」
 レオンは物陰から接近する小鬼たちに狙いをつけた。
「狙いは梟だったみたいですね」
 クリステルは祈りで神の加護をレオンに与える。
「倒さない手はないでしょう」
 水鳥は巣穴に間近まできた小鬼に突っ込み、姿を現したウェンディも小鬼たちへと進んでいく。
 不意を突かれた小鬼たちは対応もバラバラだ。
 レオンの放った梓弓の一撃が小鬼を捉え、混乱に拍車をかけている。
 乱暴に仕掛けてくる攻撃にタイミングを合わせて、兜割りの名を冠する水鳥の十手が小鬼の頭を砕く。
「ギョブゥウ‥‥」
 恐ろしい悲鳴を上げて小鬼は、のたうつ。
 そこへ、熊犬ソールの甲高い鳴き声が響く。森にバサバサと羽音が響き、ブワッと空気の流れが冒険者と小鬼を包んだ。
「ゴブ! ゴブゴブ!!」
 仲間の凄惨な状態を見て固まっていた小鬼が、強靭な爪に鷲掴みにされ、大空へと連れ去られていく‥‥
 冒険者と小鬼は一瞬、それぞれの立場を忘れ、その勇壮な姿に見とれ、視線でそれを追った。
 くっ、くるっと頭を回し、2度3度と瞬きをしてクリッとした愛くるしい瞳を向け、片足でバランスをとり、片足で小鬼を押さえつけ、喉を食い破った。
 大きさは2mはあろうか‥‥ 大きい‥‥
 我に返り始め、敵意を向け始めた相手たちの雰囲気に気づいたのか、大梟は新たな獲物を狙い始めた。

●乱戦
 隙を見つけ、村の猟師を下がらせた冒険者たち。
 その間にも水鳥は重傷を負わせた小鬼に止めを差している。
「残る小鬼から倒す! 逃がして鬼の集落にでも逃げ込まれたら厄介だ!!」
「わかりましたわ」
 レオンの矢が命中するのを合図に、ステラのグラビティーキャノンが、サランのサンレーザーが、スィニエークのライトニングサンダーボルトが次々と集中し、転んだところに水鳥の一撃。一瞬で小鬼の命が消えた。
「やれるものなら、やってごらんなさい」
 巨大梟の爪はウェンディの鎧で阻まれ、傷を与えることができない。
 掴んで空中に運び上げようにも、鋼鉄の腕に阻まれて爪は届かないのだ。
 諦めたのか大梟は別の獲物を探して羽ばたく。
「させない!」
 走りこんだ水鳥は、サランを狙う大梟の攻撃を払った。
「相手は空を飛びます。この後は、いつも以上に、お役に立てそうもありませんね、私‥‥」
「大丈夫です。グラビティーキャノンで狙って」
 ステラは、スィニエークの言う通り、魔法の詠唱を始めた。
 隙を突いた大梟の突進が、クリステルの初級ホーリーフィールドを砕く。
 熊犬ソールが跳ねながら吼え、大梟の気を削いでいるうちに、詠唱が完成する。
「効いて」
 空中に向けて放たれたグラビティーキャノンは、大梟の羽を散らし、バランスを崩させた。
「そこだ!!」
 レオンの矢に括りつけられた鳥もち入りの袋が突き刺さり、その袋を狙って放ったダブルシューティングの矢が袋を破いた。
 その一部がベタッと大梟に付き、更にバランスを崩す。
 それでも強靭な巨大梟は力強く羽ばたき、宙へと逃れようとしている。
「今です」
 隠れていた香月は、レオンに作ってもらった輪を大梟の足に掛けると、縄を引いた。
 輪は自然と閉じ、足を縛る。その縄の先は太い木に結ばれている。
 何が起きたのか驚いた大梟は飛び上がろうとするが、縄は短い。
「御免なさい。せめて奥義で仕留めてあげます!」
 バランスを崩して地面に落ちた大梟に、まるで水鳥が首を伸ばすように華麗に、鳥爪撃の目にも留まらぬ蹴りの一撃が決まる!
 グラッと崩れた態勢に矢の追い撃ち!!
 クリステルのコアギュレイトが効いたのか、大梟は身動きを止めた。
「逃げられないように翼を狙ってください」
 すかさずスィニエークのライトニングサンダーブラストやサランのサンレーザー、続けてウェンディのパンチが翼を砕く。
 身動き取れない大梟が息絶えるのに時間は掛からなかった。

●決着
 油や火の付いた松明が発見されたことから、小鬼は巨大梟の巣に火を放とうとしていたのだろうと推測された。
 もし、火事になっていたら‥‥と思うと、ぞっとしない。
 兎も角も小鬼を倒し、巨大梟は倒れた。
 村人にとっては、それで十分。
 しかし、巨大な生物は、それだけで畏怖の存在である。信仰さえあれば神にも魔にも妖怪にもなる存在だ。
 討ち滅ぼしてしまったが、畏怖と慰霊の念はある‥‥
 サランに、そのような日本人特有の機微について理解があったかは別として、運んだ遺体を悔やむことにした。
 静謐に始まり、やがて巨大梟が恨みを残さぬように華やかに楽しく‥‥
「楽しい御祭りは心躍ります」
 ぎっしゃん、がっしゃんと鎧姿であることも忘れたようなウェンディの踊りに思わず笑いが起きる。
 とりあえずは巨大梟騒動も、これで大丈夫。

 その後の探索の結果、小鬼たちが村の近くに集落を作っている様子はないとのことで、はぐれ小鬼だろうと結論付けられた。
 那須八溝山近域での調査を総合すると、犬、猿、猪を始め、動物の行動範囲が人が生活する領域に侵食し始めているのは確かなようだ。
 もっと徹底した調査と対処、それから何より入植を進め、人の存在感を野生動物に感じさせなければ、村の再建や維持は覚束ない。
 ただ漠然と再建するより、荒廃の少ない、治水の良いなどの条件の良い場所で八溝砦や陣屋に近い村から優先的に移住するのが先決。
「山岳地帯に近いから木材を使った何かか、もしくは砦が近いから刀鍛冶も良いかも知れないわ」
 これら香月やサランら冒険者、現場の藩士の意見は、全て纏められ、優先度が付けて藩上層部に届けるよう指示されているようだ。
 どうやら冒険者ギルドのやり方や冒険者たちの行動を間近に見てきた那須支局目付けの那須藩士・結城朝光の発案らしい。
 那須藩が変わろうとしているのだろうか‥‥ それは後の歴史を紐解くしかない‥‥