【東風西乱・虎僧行脚】忍び寄る黒い影
 |
■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:7人
サポート参加人数:3人
冒険期間:10月12日〜10月17日
リプレイ公開日:2006年10月20日
|
●オープニング
「おいっ、大丈夫か?」
「大丈夫‥‥ へへ、オジちゃん、久しぶりだね」
江戸冒険者ギルドへ飛び込んできた修験者姿の小柄な人影が顔を上げた。
「虎太郎、久しぶりだな。那須にいるって聞いてたけど」
「うん、江戸のお師匠さんのところへ、久しぶりに近況の挨拶に行こうと思ってたんだけどさ‥‥」
「何かあったんだな?」
虎太郎の表情が曇るのを見て、ギルドの親仁は小声で聞き返した。
「うん‥‥ オイラ、何かと間違われたのかな‥‥
それとも那須天狗と間違われた‥‥なんてことないよね‥‥ こんな小坊主だもん。
兎も角、しつこく襲われて、命からがら逃げてきたんだ‥‥」
小さな声で答え、周囲を見渡しているところを見ると、本当に何かに追われているようだ。
というか、ギルドの親仁の経験からいくと、虎太郎が嘘をつくとは思えず、真実だと確信に近いものを抱いていた。
那須藩を出てからつけられている気がして、撒こうとしたものの失敗し、もう少しで江戸という処で襲撃を受けたらしい。
何とか撃退したのだが、それからも追いかけられている気がして、止むを得なくギルドに逃げ込んだようだ。
撃退した敵は2名。
浪人風だったが、逃げたので正体は良くわからないようだ。
武器は日本刀と短弓だったと思う‥‥とのこと。
「オイラ、那須へ帰るよ。江戸にいたら、お師匠に迷惑かけるかもしれないし」
「そうか‥‥」
「でね。オイラが那須へ帰るまで、護衛をしてほしいんだ」
虎太郎は路銀を分けて、早速、金を数え始めたのを見て、親仁は少し苦笑いしている。
「任せておけ。腕利きを集めてやる」
「うん、御願い」
虎太郎は、ここに来て初めて笑顔を見せた。
●リプレイ本文
●護衛
江戸に来て那須へ蜻蛉返りすることにした虎太郎。
何故か、その周りには人が多い。
しかも早朝から移動を開始しているというのに、誰かしら彼の側にいるのである‥‥
「くそっ、手の出しようがねぇ‥‥」
男たちは物陰から舌打ちを繰り返している。
そんな彼らを知ってか知らずか‥‥ いや、知っているようである。
シェリル・オレアリス(eb4803)のフォーノリッヂのスクロールにより、『虎太郎』は2人に『襲撃』される‥‥と予知されているのである。
できれば、その未来は回避したい。そのための作戦でもあった。
「やはり、ついてきますわ」
「バレバレだね♪」
男たちの後ろを行く2つの影。シェリルの側を飛び回る鈴苺華(ea8896)は、どこか楽しそうである。
まぁ、どこで襲撃されるかまで特定できなかったのは痛いが、相手が2人ならば、そうそう引けはとるまいという気楽さなのだろう。
「ボクは暫く空から見張ってるね♪」
「御願いします」
鈴はフワリと飛び上がった。
さて‥‥
「ひとりっきりで襲われたり、おっかなかったでしょ? 誰か一緒なら、ちょっとは安心だよね?」
「うん、ありがと」
カラット・カーバンクル(eb2390)とは背丈が同じくらいということもあって、虎太郎も気兼ねないようである。
他の仲間たちも前後に散らばって虎太郎を護る布陣である。
「ただの物取りにしちゃあ、しつこすぎるけど‥‥ 沼田城攻めの時の関係かな?」
「ん?」
「独り言よ」
少し前を歩いていた限間時雨(ea1968)は、首を傾げながら隣を歩く虎太郎に笑みを投げた。
問題は虎太郎に襲撃される心当たりがないこと。
物獲りならば、ここまでしつこく襲われることはあるまい。
「虎太郎様、襲われる心当たりは思い出せません?」
「う〜ん、ちょっと‥‥」
「人違いなのかな? でも、あたし良く知らないんですけど、那須天狗様って人の所に戻れば安心なんだよね?」
「うん」
『まぁ、オレと一緒にいる間は、まず安全だぜー。がうがう!!』
どらごんのぬいぐるみの前足をカラットがバタバタさせると、虎太郎に笑顔が浮かんだ。
「まっ、向こうさんの目的が何にせよ、虎太郎を無事に送り届けるのが仕事だね。おねーさんに安心してまっかせなさい♪」
「時雨様、ガンバ!」
「どらごん君だけじゃなくて、あなたもよ」
無い胸を叩いた限間が、カラットに苦笑いで突っ込む。
「へ?」
どらごん君と一緒に首を傾げるカラットに、虎太郎も限間も思わず吹き出すのだった。
「それじゃ、私は斥候に出るね」
虎太郎が草鞋を直す『ふり』をしている隙に、限間は小さく別れを告げる『ふり』をして先へと進んだ。
「虎太郎様ですか‥‥ 噂にはきいていますが‥‥」
思わず独り言‥‥
魔槍『レッドブランチ』にライトシールドという出で立ちのヨシュア・ウリュウ(eb0272)は、旅人たちの中でも良く目立つ。
気取られない『ふり』をしつつも虎太郎に駆けつけられる位置を歩いて、虎太郎が止まれば止まる。
そんなことをしていれば秘密で護衛をしているのだろうと、容易に想像がつく。
おまけに犬2匹に馬2頭。気づくなという方が無理な話。
だが、襲撃を諦めさせるのが目的なのだから、これで良いのだ。
「本当に師匠に会いに江戸に出てきたのですかね?」
「どうでしょう。与一公は突然江戸に現れたりしますからね」
那須や虎太郎との関わり深い知り合いに話を聞いている北天満(eb2004)は、僅かに口の端を曲げ、笑む。
「時折重要な行動をされるとかですが、他者の活躍のほうが目立っているのですよね?
狙われるなら相手はかなり深い情報を握っていると予想されるのですけどね」
「だとしても、言えないこともあると思いますよ」
「そうですね」
北天に諭され、ヨシュアは小さく溜め息をついた。
「まぁ、よくわからんが真面目に護衛をこなすことです。
話を聞く限りでは、相手は黄泉人などでなく、人間みたいですからね。予知の術でも人間らしいですから、その点は安心ですぞ」
歩きながらも舐めるように酒を飲むデルスウ・コユコン(eb1758)に、これまた諭され、ヨシュアは頷くのだった。
●襲撃
「襲われるとしたら、そろそろですな」
デルスウが一人呟くと、ヨシュアたちも頷いた。
何とか那須藩の関所近くまでは、無事に虎太郎を届けることが出来たわけだが、デルスウの言う通り、ここが正念場だろう。
那須藩に入られては、襲撃がやり難くなる。
那須藩の西の要、矢板には八溝の魔物たちを撃退するための兵が多く集められているからだ。
先行している限間が道端に残した合図が、この先で追撃に適した地形になっていることを示していた。
(「ん? あれは?」)
虎太郎たちが背後から急襲されたら援護に向かおうと、隠身の勾玉で気配を消し、身を隠していた限間。
大小を差した2人連れに違和感を感じていた。
妙に殺気のようなものを感じる‥‥
その前方には虎太郎たち。
「まさか‥‥」
限間が立ち上がったのと男たちが走り出したのが同時。
「那須は良いとこ、何度でもおいで♪」
「ほら、躍ってないで見てください」
前方を歩く男たちが道端に身を潜め、弓矢の用意を始めている。
シェリルは鈴に注意を促すと、テレスコープとインフラビジョンのスクロールを発動させた。
焦点を合わせるのに暫時。
どうやら、道の左右、周囲の棚場など、伏せ勢が隠れている様子はない。
「伏せ勢はないようです。鈴さん、知らせて!」
「行ってくる♪」
くるんと一回転。多少の高度を取ると一直線に男たちの下へ飛んだ。
「へっ、一撃でしとめてやる」
「なんでやねんっ♪」
上空から飛び込み様、鈴のハリセンが弓を構えた男を叩く!
注意を逸らされた男の矢は、あらぬ場所に突き刺さった。
「な、何だ! こいつ!!」
矢を射かけようとしていた男たちは、完全に虚を突かれ、追い払うのに必死だ。
「中るもんかぁ♪」
男たちは刀を振り回すが、蝶のように舞う鈴には掠りもしない。
「何だって‥‥言うん‥‥だぁ‥‥」
突然、男は眠りに落ちた。
慌てて起こしに行こうとした、もう1人の男は、目に鈴のハリセンの直撃を受けて喚く。
刀を振り回すが、これまた中らない。
次の瞬間、その男も意識を失うように眠りについた。
「やったね♪」
「えぇ‥‥」
ふぅと息をつくシェリルの側に、鈴が飛んできて手を叩いた。
「気をつけて! 敵意を感じます!!」
前方から来る2人組みに念のためにリヴィールエネミーのスクロールを使ったカラットが叫ぶ。
その瞬間、男たちは抜刀して飛び込むように駆け込んできた。
「うぉおお!!」
男の殺気を受け流すように、虎太郎は六尺棒で捌く。
しかし、相手は2人。
1人目の斬撃までは防いだが、体勢が不十分だ。
「虎太郎様!」
「させません。影縛り」
カラットの叫びに北天の高速詠唱シャドウバインディングが割り込む!
「これで決めます」
「せやぁあ!」
強制的に動きを止められ、体勢を崩した男に、充分に重さを乗せたヨシュアの魔槍とデルスウのハンマーが叩き込まれる!!
ごふっ‥‥と血を吐き、崩れ落ちたまま動けない男を見て、傍らの男は怒りの剣を振るう!
「髭のおじさん‥‥ ありがと」
「気にするな。これが仕事だ」
息を整える虎太郎にデルスウは背中で答えた。
「くそっ!! 挟み撃ちはどうなったんだ!! くそっ! くそっ!!」
そうだった。つけられていたんだ。‥‥と北天が後ろを振り向くと、鈴が嬉しそうに飛び回り、両手で『マル』を作っている。
「味方に押さえられたみたいですね」
「えぇい‥‥」
歯噛みする男だったが、次の瞬間、顔から血の気が引いた。
「投降しなさい。命までは取らないわ」
背後から間合いを詰めた限間の短刀『骨食』が、背後から男の喉元に当てられている。
「無駄な抵抗だと思うがね」
デルスウが酒をちびりと舐める。
気が付けば、何か体が重いような気がする‥‥
カラットがアグラベイションのスクロールを使ったのだが、男はそれを知る由もなかった。
「何故だ‥‥」
男は歯噛みする。
「強いて言えば、運命というやつかね」
デルスウの言葉の意味が分からない男は、更に歯噛みするのだった。
●黒幕
武器を取り上げた男たちを縛り上げ、荷物からポーション類を見つけた限間たちは、瀕死の男にそれを飲ませた。
「印籠‥‥ 」
頭目らしき男が持っていたものだ。
知り合いから教えてもらっていた上州の有力武士の家紋ではない。
どうやら上州の戦で一旗上げようとやって来た浪人たちらしい。
「目ぼしい物はなかったみたいだね♪」
動けないのをいいことに、鈴が男たちの耳元をぶんぶん飛び回る。
「甘いです」
そう言って彼らの前に現れたのは北天。
「肩でも、お揉みします。何で襲ったのか、思い出してくださると良いのですけれど」
肩に触れた瞬間、ビビッと電気がその身に走る。
「あなた方の薬。あと1本しか、ありませんわね」
笑顔で肩を揉み続ける。いや‥‥ つくり笑顔だ‥‥
「わ、わかった‥‥ は、話すよ。事が成った暁には、上州で‥‥仕官の口を世話してやる‥‥って」
「誰に?」
「知らねぇ‥‥ 虎の坊主をやってきた‥‥っていえば、取り立ててくれるって」
「それだけ?」
「支度金を貰った‥‥」
北天の作り笑いに、ぞっとした男はぶちまけた。
「それって『殺しの前金』の間違いでしょ?」
ヨシュアの冷静な突っ込みに、男は痺れながら大きく項垂れた。