【那須動乱】強襲対強襲

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:10 G 95 C

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:08月20日〜08月30日

リプレイ公開日:2007年09月03日

●オープニング

●吹き荒れる嵐
「そうか。面白くなってきたね」
 小柄な犬鬼は頭を下げると、狼に乗ったまま飛ぶように去ってゆく。
「で、どうするんで? イライラして何匹か手下をやっちまったぜ?」
「仕方ない奴らだ。だが、面白くなってきたとこだ。もう少し待ちな」
「へーへー」
 乾いた笑い、下卑た笑い、高笑い‥‥ 様々な笑いが那須の風に乗って響く‥‥

「何とか神田城と川崎城は押さえることができましたな」
「しかし、これでは意味がない。白河は落とされたまま、八溝には鬼の軍団が入ったまま‥‥」
「問題は白河城に糧米が運び込まれたという事実」
「また蘆名の軍勢が動くのだろうか‥‥」
「どうでございましょう。密偵の調べでは200や300の兵を養う量ではないと」
 ジリジリと照りつける日差しに、2人の武将は目を細め、静かに深く息を吐いた。

「あれは跡継ぎとしては、もう駄目だ。次を何とかせねばならんな。とはいえ、一人では心許ない」
「そうは申しましても1人は兎も角、もう一方は幼くございます」
「馬鹿者。もう1人おろうが」
「殿、まさか‥‥」
「まぁ、今すぐにどうという訳ではない。功を立て、世間や家臣に認められれば目はあろうて」
「残酷な道になりましょうな」
「生まれて直ぐ命を落とさなかったところから凶運には恵まれておる。あるいは‥‥な」
 厳しい表情をする家臣を横に、威厳を放つ男は思案顔で静かに笑いを浮かべた。

 ざんばら髪を後ろに纏めた男たちの額には陣鉢を貫くように一本の角。
「流石に誘いには乗ってこなくなってきたか」
「あざと過ぎるのでございますよ。御頭」
 剣の血を払い、眼下の兵を見つめると怒気を含んだ息を吐く。
「御頭か。板についてきてしまったな」
「しかし、宜しいので? 無事を知らせずに」
「よいよい。こうしておれば耳に入ろう。役目を疎かにして助けに来るようでは武将としては失格じゃ」
 男たちは兵の死体を探り、隠す。
「それにな。今更帰参したところで我らの役目など知れておる。それとな‥‥ 意外に性に合っておる」
「確かにそこらの野盗も顔負けですからな」
 ガハハと笑う男たちは、その場を後にした。

●戦乱の千嵐
 現在、下野国北半国を占める那須藩では、先の上州戦で起きた戦が続いていた。
 正確に言えば、緒戦で白河を失い、後の戦闘でも砦を幾つか落とされている。
 東部の八溝では砦数個を確保できているだけで、那須藩の東部は蘆名の手に落ちたと言っても過言ではなかった。
 但し、乱取りを避けるために領民は西部へと逃れており、統べる領民のない土地を手に入れただけであったが‥‥
 必死に守勢を通した那須藩は、何とか主城である福原神田城と西の要である矢板川崎城を拠点に西部の確保に成功。
 兵力の立て直しに全力を傾けている。
 だが、それは奥州連合とて条件は同じ。いや、本拠地が後方にある分、補給の潤沢さは奥州連合に分がある。
 その証拠に、白河城へは大量の物資が運び込まれているようである。
 それが意味するところは、白河城の兵力増強。そして、再度の出兵であろう。
 相手が完全に立ち直る前に兵を挙げて叩く。それは戦の常道であろう。
 連合であることと、そして本拠が遠いことが那須藩に幸いして奥州の兵に本格的な動きがあったのが、この時期ということになる訳なのだろうが‥‥
「先手を打ちましょう。幸いにも、敵の手に落ちたとは言え、地の利は我々にあります」
「しかし、守備兵は大きく割けない。賭けをする訳にはいきません」
 諸将の前で与一公は静かに反論する。
「幸い、徴兵せずとも足軽には事欠きません。自分たちの土地へ帰るためなら死力を尽くしてくれましょう」
「いや、小競り合いはしません。しかし、出鼻は挫いておかなければ、敵を図に乗らせるだけです。
 軽騎兵は出陣の準備を。密偵は任務を続行。そして、今こそ冒険者の力を借りるとき。合わせて藩士の増強を行います」
「では、冒険者を藩士に?」
「敵を撥ね退けるだけの戦力の増強が急務なのは分かりますよね?」
「「「「承知!!」」」」
 死線を潜り抜けてきた絆が心を一つにしたのか、与一公の言葉への返事に過去の経緯をこだわる枝葉は見られなかった。

『白河方面へ進出し、奥州連合の兵を見つけ次第、これを叩く。冒険者ら蒼天隊は、その一翼を担ってもらいたい。
 秘中の作戦につき、多言無用にて願い申す。なお、功ある者は那須藩士として仕官の道あり』

 冒険者ギルドの親仁は、数人の冒険者に声をかけるのだった。

※ 関連情報 ※

【蒼天隊】
 那須藩が雇う冒険者集団の一般的な呼称。
 那須軍の編成では遊撃隊扱いになる。

【那須藩】
 下野国(関東北部・栃木県の辺り)の北半分を占める藩。弓と馬に加えて近年では薬草が特産品。
 奥州忍者の策略により、過去に冒険者に対して藩士には敵視の姿勢が見られた。

【喜連川那須守与一宗高(きつれがわ・なすのかみ・よいち・むねたか)】
 那須藩主。弓の名手。
 須藤宗高、藤原宗高など呼び方は多々あるが、世間的には那須与一、または与一公と呼ぶ方が通りが良い。

【那須軽騎兵】
 那須藩士と、その家来だけで構成された騎兵のみの軍勢。
 騎乗弓射の技術に優れ、機動力が高いが、軽装であるが故の弱点を持つ。

【八溝山】
 那須藩東部の山岳地帯。一部は山城の様を呈している。
 鬼の巣窟となっており、麓の那須軍の砦は孤立状態に近い。

【白河の関】
 関東から東北への玄関であり、下野と陸前や奥州を結ぶ軍事上の要衝。
 結城氏を城代とする白河小峰城を拠点とし、那須藩の北の守りを司っていたが、上州戦で奥州連合の手に落ちた。

【結城朝光】
 白河結城氏の家督を継ぐ、若き武将。
 矢板川崎城城主、兼、ギルド那須支局目付。
 那須藩重臣・小山朝政の弟で、源徳家康を烏帽子親に持つ。

【結城義永】
 白河結城氏の隠居。家督こそ結城朝光に譲っているが、厳然として政治的な影響力を持つ。
 城を空けている娘婿の結城朝光の代わりに地侍を束ね、白河の防衛を受け持っていた。
 与一公ら主力の武士団を逃がすために最後まで白河城に残り、蘆名氏の兵を城内に誘い込み、数十から百の兵を焼き殺したという。
 10名ほどの家臣団と落ち延びた後、討ち取られたという話は聞かれていない。

【蒼天十矢隊】
 冒険者から徴募された那須藩士たち。11名(欠員1名)が所属した。
 八溝山決戦に至る那須動乱を勝利に導いた立役者として那須の民に絶大な人気を誇る。
 茶臼山決戦の後、藩財政再建にも多くの献策を行ったが謀反の疑いをかけられ部隊は解散した。
 現在、与一公の意向により、那須藩預かりの冒険者部隊には『蒼天隊』の名が与えられている。

●今回の参加者

 ea1488 限間 灯一(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2473 刀根 要(43歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4734 西園寺 更紗(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea7394 風斬 乱(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0712 陸堂 明士郎(37歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb2244 クーリア・デルファ(34歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb4667 アンリ・フィルス(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 eb4890 イリアス・ラミュウズ(25歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

アルディナル・カーレス(eb2658)/ マイユ・リジス・セディン(eb5500)/ 鳴滝 風流斎(eb7152

●リプレイ本文

●出陣
「果たして上手くゆくかな」
 灰色がかった藍の軽装鎧で統一された一団の中にあって、本来なら大鎧を着けているであろう人物‥‥
 報告を聞き終えた那須藩重臣・小山朝政の表情には、僅かに溜め息をついたかのような雰囲気が。 
「御大将がそれでは困るな。戦力では圧倒的に那須側の不利だ。勝つ気でいないでどうする」
 連絡のために合流した風斬乱(ea7394)は、愛馬の首をハシハシと叩きながら労いをかける。
 ずらりと並んだ戦馬たち。那須駒の中にあっても黒号は存在感を放っている。
「誰も負けるとは言っておらんよ。
 欧州帰りの玄白殿の献策を入れて作った足軽抜きの騎馬軍団だが、日本では快速を活かせる平地は少ない。
 それに武士をこれだけ集中させれば、軍勢全体の戦力は落ちる。
 手柄と武勇を求めて集まった浪人や落ち武者で補強してはいるが、那須藩士でない分、即応力は落ちる」
「つまり、練度や連携に難があると?」
 蒼天隊を率いる限間灯一(ea1488)は馬を寄せ、気になる話に加わる。
 既に作戦は動き出している。懸念を抱いたまま事が良い方へ動くとは思えなかったからだ。
「戦の前に決した決め事を実行するのが武士の戦い様だ」
「その足の速さ故に作戦が上手くゆかぬこともあると?」
「然り。前線で臨機応変に軍を手足の如く指図できよう戦達者など、そうはおらん」
 小山は一度言うのを止めて口を開いた。
「能力があっても周りが付いてこなければな」
「小山殿の武勇であればできましょうぞ」
 刀根要(ea2473)の言葉に、小山は、一瞬、間を置いた。
「謙信公ほどの戦巧者ではないさ」
「異国の戦い方であればこそ、武勇が活きましょう。小山殿なら大丈夫」
「であるか」
「左様」
 静かに静かに息を吐く小山の言葉に陸堂明士郎(eb0712)が口を挟むと、彼の眼に闘気が宿り、笑みは不敵に変わった。
「さて、話が逸れてしまったが、風斬殿。西園寺殿には宜しく伝えよ。十矢隊の武勇を頼りにしているとな。そして、御主の武運もな」
「了解したが、俺はついでか?」
 ここからは別行動と隊長に伝言を命じられた風斬は、軽く手を振ると含み笑いを残して離れてゆく。

●領内焼き討ち
 支城の位置、交通の便、兵が到着するまでの猶予‥‥
 白河が敵の手に落ちたとは言え、地の利は那須勢にある。
 密偵からの情報を得て、奥州勢の目を掻い潜ってきた小山勢は、馬の口を縛り、音を立てぬよう難所を越えた。
 とはいえ、数人の足軽を屠ってきた。
 敵勢に後詰以外の兵がいると気付かれるのは時間の問題であるし、時間をかければ戦闘力の低い後詰が危険に晒される‥‥
「はよう‥‥」
 西園寺更紗(ea4734)は祈るように周囲を警戒する。
 ただでさえ騎馬隊の行動なのだ。兵の背は高く、ちょっとしたことで馬は騒ぐ‥‥
 作戦を仕損じる訳にはいかないが、敵に発見されないためにも急いでほしい‥‥
「よし! 終わった!! 退くぞ!」
「あきまへん。遅うおした‥‥」
 ぶくぶくと泡を立てながら水没し始めた渡し舟を脇目にしながら、野太刀を構える。
「射撃用意! 目標、敵正面! 中央、鍬形の兜首!」
 僅かな乱れこそあるものの、槍立てた浪人風が操る騎馬が脇に展開する間に那須藩士たちの矢が番えられる。
「撃てっ!」
 合図と共に矢切りの音が長く響く。
 盛大に鎧に弾かれる音と共に敵の馬列が崩れ、狙われた先頭が矢襖と化して前のめりに倒れた。
 兆弾や流れ矢に倒れる馬もある!
 それらに阻まれた足軽は、立ち往生して、あるいは味方に踏み潰される。 
「弓射兵は距離を取ってパルティアンショット! 続け!!」
 イリアス・ラミュウズ(eb4890)は事前に打ち合わせた動きを兵に求めた。
 異国風に編成した騎馬隊なら本家本元の騎士の指揮下で戦法を学べ、というのが小山の指令であり、イリアスも一隊の指揮を任されていたのだ。
 素早く敵から離れるように馬を捌くと、一部の軽騎兵は後方を向いたまま斉射を続け、浪人隊が激突する間に敵勢に手傷を負わせた。
「巌流、西園寺更紗、参ります」
 見得を切るような背中越しの静かな名乗りと共に野太刀が水平に空を斬る! 
 体勢を崩した敵目掛けて、〆の字を描くような流れるような連撃に、充分な踏み込みと野太刀の重さが加わって、
「秘剣! 燕返し!!」
 がぉん‥‥ 鈍い音で肉と骨が砕ける!!
 一撃で味方を倒したヤツをのさばらせるなとばかりに兵が殺到する。
「やり過ぎるなよ。敵を壊すのが目的の一つなのだからな」
「そうおすが‥‥」
 怪我人を量産して敵の負担を増やし、増援をも鈍らせるという風斬の残酷な作戦を理解してはいるが‥‥
「飛び出したらあきまへんえ」
「そうだ! 適当なところで退くぞ!!」
 風斬の言い様に敵も勢いづくが、それも目論みの内。
「ええぃ、どこへ行く!!」
「風斬乱だ‥‥ だが、忘れていいぞ?」
 殿で馬首を巡らせた風斬が飛び出そうとした騎馬武者の槍を寸ででかわし、胴薙ぎを食らわせ‥‥
 殆んど同時に一の太刀で絶命した武者に追い討ちの斬り返し!!
「申し訳あらへん。燕返しおす」
「全く‥‥」
 歴戦の剣士と武士の放つ気に気圧されて動きを止めた敵兵を残し、那須軍は兵を退いた。

 それ以降、これ見よがしに船を焼いて回る那須軍を討伐しに襲撃するが怪我人が増える一方。
 白河兵は一撃離脱を繰り返す那須勢の機動力に翻弄されていた。
「突撃!」
 実力で勝る蒼天隊を先頭に据えた鋒矢の陣による突撃。
 後方主力の小山隊からは援護の騎乗射撃が飛ぶ。
 更に敵勢にとって悪夢でしかないのが、前衛全てがオーラ魔法で戦闘力を上げていることだ。
 オーラシールドを構えた者を正面に据えた戦法は、さながらファランクス。
 少し前の生え抜きの那須軽騎兵であれば取れなかった正面突破の戦法。経戦能力は低くとも、槍衾を物ともしない破壊力は凄まじい。
 しかも、何と言っても敵には雑兵が混じっている。戦闘の専門家ばかり那須軍に比べて士気が違いすぎる!
「龍旗に続け!! 敵を薙ぎ倒すべし!!」
 限間の掲げる旗の下、業物で柔肌に触るが如く先陣が敵を切り裂く。
「私は那須藩士が蒼天隊の一人、刀根要。いざ参る」
 カターナを振る、その腕には蒼天十矢隊の腕章!
 名乗りに敵の一部が怯んだ!
「はぁぁああ!!」
 刀根の駆け抜け様の一撃は敵騎馬の首を捉え、雄叫びと共に首級を宙に舞わせた!
「「「一番槍ぃ!!」」」
 あちこちで名乗りが挙がる!
「乗ってきてくれて有り難いことだ!」
「えぇ、不肖なれども全力を尽くす所存! 一気に突破します!!」
 数の差に一瞬先陣の足が止まった、そこへ振ってきたのは白髪の戦鬼!
「よくやった、ジズー。お前は避難していろ!!」
 言われるまま、風の精霊妖精は上空へと舞い上がった。
「那須衆に拙者の武の器を示すところから初めていきたい存じ上げ奉り候! 相手は空き巣強盗なれば遠慮はせぬ!!」
 アンリ・フィルス(eb4667)の豪腕を受け止められるものなどいようか‥‥
 真っ赤な篭手で槍を受け止め、箒の代わりに長槍が煌めく!
 突然何が起こったのかわからない白河兵が動きを止めたところへ、矢の嵐!
「感謝いたす! どけ、どけ、どけ!!」
 馬上の兜首目指して一直線。
 遮る者は、槍が振るわれる度、ことごとく薙ぎ倒される。
 恐れを知らずに斬りかかった者は、手応えのなさに愕然とする中、あるいはアンリの槍の猛烈な反撃に、あるいは那須兵の手によって倒されてゆく。
 伝令の法螺貝で、敵との距離を測りつつ弓射を続けるイリアス隊の援護のために、車掛かりの陣へと変化して次々と矢が射掛けられてゆく。
 那須軽騎兵ならではの機動力を活かした戦法に敵は足を止めてしまった。

●落橋
「後は味方の撤退に合わせて橋を落とすだけだね」
「それにしても責任重大ね」
 後方で補給と治療を行っていた日向大輝(ea3597)やクーリア・デルファ(eb2244)たち10騎程度が橋の防衛に当たり、最終局面では、これを落とす手筈になっていた。
 戦略上の理由から白河には橋が数本しかない。
 多数の船も落とした今、この橋を落とせば敵の増援が白河を越えて那須藩内に多数寄せるには時間がかかるはずだ。
 那須藩としては身を切る決断だが、与一公らにとって時間にこそ千金の値がある。
 ここで失敗する訳にはいかない。
 一騎、また一騎と騎兵が駆け抜け、こちら側の岸に整列し、残り少ない矢が火矢として番えられようとしている。
「追いつかれるな」
「殿は蒼天隊にお任せを」
「頼む!」
 敵の猛攻に晒され、気力を使い果たした限間や刀根は苦戦気味だが、他の者の意気は軒昂。
 突破を許すことはなかったが、撤退のタイミングが掴めない。
「後詰めが襲われてたの! 遅くなってごめん!!」
 飛来する矢が白浜兵をたじろがせる。川向こうに居並ぶは騎兵の姿。
 遊撃隊として後詰との連携を命じられていたアイーダ・ノースフィールド(ea6264)率いる部隊が駆けつけたのだ。
 駆け抜け様に、束にした矢をタネ切れの那須騎兵に渡してゆく。
 それを解くと周囲の何騎かで分け、射撃体勢をとる。
「我らも退くぞ!」
 陸堂が敵からの矢を盾で防ぎながら敵に痛打を加え、踵を返す。
「手を!」
「助かる!」
 日向の手を利用して陸堂は飛龍乗雲に飛び乗った。
「全騎、撃てぇ!」
 アイーダ隊の射撃に合わせて百以上の矢が川向こうへと吸い込まれてゆく‥‥
 更には日向の指示で投げ込まれた橋の板に反応してファイヤートラップが発動、クーリアのルインハンマーが橋脚を砕く。
 橋は一気に燃え上がり、隊列を組みなおした那須軽騎兵は敵兵を置き去りにした。

 那須軽騎兵において未帰還6騎、内、那須藩士2騎。
 後詰めにおいて戦死10。全てが足軽。狼に騎乗した犬鬼に襲われた被害による。
 ただし、クーリアの治癒により、全軍の怪我人は0。
 大半の戦闘力を残したまま、那須軍は白河強襲作戦を終了した。