【毛州三国志・那須】川崎城!怪獣大決戦!

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:10 G 86 C

参加人数:9人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月16日〜11月23日

リプレイ公開日:2008年11月25日

●オープニング

●鬼概
 那須藩南東部・八溝山の麓では、一進一退の激戦が繰り広げられている。
 一気に詰め寄るかと思われた三公軍の一角、宇都宮軍の足並みが鈍ったことで鬼軍が勢いを盛り返したからだ。
 それに伴い、那須軍と義経軍にも被害が出ていた。
 双方の兵数に大きな変化はないものの、宇都宮軍の支援を期待できない以上、兵力は半数減と同等と判じる者もいる。
 実際、搦め手による兵站の分断や各個撃破、下野と武蔵の国境付近での野盗出現など、つけ込まれている感が否めない。
「迅雷のやつ、上手くやったみたいですわね」
「うん。手傷でも負わせて宇都宮藩内の撹乱を続けられれば御の字と思っていたんだけどね。いやぁ、予想外♪ 想定外♪」
「だが、同じ手は2度通じぬ。奇策は明かせば秘儀とは呼べぬぞ、赤頭」
 冷たい視線の女剣士と無骨な狼頭の武士が、赤髪の子供に控えている。
「色々と手は打っているけどね。しっかし、義経の参戦は見誤ったねぇ」
「俺が討ち倒してこようか」
 狼の顔に笑みが浮かぶ‥‥
「狼神(おおかみ)、お前さんは自分の役目を果たしてくれればいい。そっちの方が重要だよ」
「承知」
 あらあら、仲の良いこと‥‥と女剣士が微笑みながら狼頭武士にしな垂れかかった。
「赤頭、そろそろ私たちも楽しむ場がほしいわね。迅雷のような捨て駒同然では困るけど」
「わかってるよ。異痕(いこん)の出番は、もう少し後だけどね」
 彼らは戦煙を背中にする。
 義経軍の旗を踏みにじりながら‥‥

●迫り来る地波
 矢板川崎城は下野国那須藩において西の軍略の要であり、那須軍基幹基地の1つ、また交易流通基地としての役目を持つ。
 八溝山の赤頭鬼軍退治のために連合した那須・宇都宮・義経の連合軍の基幹基地としても機能しており、重要度は増している。
 ただし、城主である那須藩家老・結城秀康は宇都宮藩の跡目相続もあり、宇都宮藩の後方支援に出陣したきり残留していた。
 そのため、城代である那須藩軍師・杉田玄白が諸事を取り仕切っているが、思うほど負担は少ない。
 というのも、事態の把握を的確にするために那須藩主・那須与一公が、那須藩主城・福原神田城から移っていたからである。
 東の要である白河小峰城には那須藩宿老・小山朝政が城主として入っているだけに、主城の防備が心配されるところだが‥‥

 さて‥‥
 下野は日光や釈迦ヶ岳など、修験場が多いことでも知られている。
 峻険な山岳地帯が多いとも言い換えてもよいだろう。
 どっ、どどどどっ、ばきぼき、どどっっ‥‥
 繁みを掻き分け、時には木々を薙ぎ倒し、迫り来る一団がある。
 那須では語り草の1つとなっている巨大熊・白兜と、それに従うように群れる大熊である。
 冒険者たちの説得により、彼らは山深くに帰ったはずであったが‥‥
「与一様、大変だぁ! 白兜のやつら、真っ直ぐに川崎城へ迫ってる!!」
 一目散に山から下りてきた狩人の話によると、川崎城方面へ押し通っているらしい。
 すぐさま杉田玄白の命により足軽が送り込まれたが、情報に間違いないとわかり、城兵は色めきたった。
 不幸中の幸いは、与一公が当城にいたことだ。
 即時、臨戦態勢がとられたのだが、兵士たちは思考が硬直し、士気も上がらない。
 人程度の身の丈の者と戦うのならば、比較的簡単に戦闘態勢に移行できるだろうが、相手は全長10mを超える巨大熊である。
 同行している大熊でも全長4mはあろう。
 ましてや、それが群れで迫ってくるのだから、土砂崩れに立ち向かうような気分になっても仕方ないのかもしれない‥‥

 ともあれ、白兜は着々と矢板川崎城方面へ向かっている。
「進路からすれば川崎城を目指しているともとれまするが、相手は獣。そこまでの知性がありましょうや?」
「しかし、武士の藩士は兎も角として、農兵の足軽たちが浮き足立つのは必定。城下の民を逃がす算段もしなければなりません」
 軍師・杉田玄白の言に、与一公は深く溜息をついた。
「殿、川崎城で迎え撃つつもりなのですか?」
「できれば刺激したくはない‥‥というのが本音です。ですが、人里に被害を及ぼすならば討つしかないでしょうね」
「ぎりぎりまで待てば、待つだけ川崎に被害が出ることをお忘れなく」
 軍師の尤もな意見に、与一公は考え込む。
「前回は冒険者たちの活躍で森へ返すことができましたが‥‥」
「手を打たないでいるより、打っておく方が良いでしょう。蒼天隊の編成を冒険者ギルドに打診してください」
 承知しましたと部屋を下がろうとする杉田玄白を、与一公は呼び止めた。
「蒼天隊の目付けに杉田蒼馬を起用します。足軽20を配下として蒼天隊の支援や折衝を行うよう、申しつけてください」
 御意と下がる杉田玄白の顔は、苦笑いとも微笑みとも取れる笑みがこぼれていた。

 臨戦態勢から暫時‥‥
 喜連川など周辺地域から徴兵が行われ、矢板川崎城は兵数を増していた。
「相手は熊だって? 城を枕に戦えば大丈夫。弓矢を射掛ければ驚いて逃げてゆくさ」
「にしたって、熊退治に、この数か? 何だか心配になってきたぞ」
「収穫もあるってのになぁ‥‥ 田んぼの方が心配だぁね」
 やはり、徴兵された農兵では安易に士気は上がらず。
 とりあえず頭数だけは200を揃えることができたが、どう対処するのか‥‥
 与一公らの手腕が試されようとしている‥‥


※ 関連情報 ※

【那須与一】
 下野国守、兼、那須藩主。
 弓の名手。須藤宗高、藤原宗高、喜連川宗高などよりは、那須与一や与一公と呼ぶ方が通りが良い。

【那須藩】
 下野国(関東北部・栃木県の辺り)の北半分を占める藩。弓・馬・薬草が特産品。
 政宗公の仲介で和睦が成立し、白河地方を回復。

【八溝山】
 那須藩東部の山岳地帯。赤頭の率いる鬼軍の関八州を侵す拠点。

【冒険者ギルド那須支局】
 喜連川に設置された冒険者ギルドの中継補給基地の役目を持つ出先施設。依頼斡旋は行っていない。

【矢板川崎城】
 天然の川を幾重もの堀とする要害。那須藩の西の玄関口として要衝を固めている。
 城主は那須藩家老・結城秀康、城代は那須藩軍師・杉田玄白。

【蒼天十矢隊】
 冒険者から徴募された那須藩士たち。11名(欠員1名)が所属した。
 退魔決戦や藩財政再建に功績を残すも謀反の疑いをかけられ部隊は解散。
 汚名挽回して、那須藩預かりの冒険者部隊には『蒼天隊』の名が与一公により贈られた。

【杉田玄白】
 広い知識を持ち、軍師的な活躍もしている那須藩士。欧州勉学の旅を終えて帰国したところを与一公に招聘された。

【杉田蒼馬】
 末蔵という名で蒼天十矢隊の馬周りだったが、杉田玄白の養子となり、武士として藩士に抜擢されて改名した。

【白兜】
 黒毛で頭と首に白毛のある巨大な熊。熊の群れを率いているようだ。

【小山朝政】
 那須藩の宿老。白河小峰城城主。結城秀康の兄。
 与一公の右腕として活躍する勇将。下野の南部を地盤とする豪族。源氏との繋がりが深い。

【結城秀康】
 白河結城氏の当主。矢板川崎城城主、兼、ギルド那須支局目付。結城朝光から改名。
 宇都宮藩主・宇都宮朝綱を養父に、実父の源徳家康を烏帽子親に持つ。
 養父の葬儀のため、那須を離れられない与一公の弔問の名代として宇都宮に残留。

●今回の参加者

 ea2127 九竜 鋼斗(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2741 西中島 導仁(31歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea2831 超 美人(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2832 マクファーソン・パトリシア(24歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea3054 カイ・ローン(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3225 七神 斗織(26歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea7244 七神 蒼汰(26歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea8714 トマス・ウェスト(43歳・♂・僧侶・人間・イギリス王国)
 eb5451 メグレズ・ファウンテン(36歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

七神 沙輝(ea7108

●リプレイ本文

●軍儀
「玄白君、久しぶりだね〜。調子はどうかね〜?」
「留学生だった自分が、何の因果か一国の軍師‥‥ 忙しくやってますよ、ドクター」
「それでは蘇生薬の研究は進んでないのかね〜?」
「那須医局では広く浅く役に立つ薬草の研究に没頭していてね‥‥」
 国の大事にも関わらず、いかにも冒険者らしいトマス・ウェスト(ea8714)の挨拶に、那須藩軍師・杉田玄白は苦笑いする。
 このような場合、宿老・小山朝政であれば、ストイックに対処するのであろうが、性格の違いだろう‥‥
「今は医局の話よりも白兜の話をしませんと‥‥」
 那須医局への仕官を願い出ているだけに、ほんわかした七神斗織(ea3225)の笑顔には真剣さが宿っている。
「以前は『強い物に従う』という自然界の掟を逆手に取り、戦って強さを認めさせ退いてもらった‥‥のですよね?」
 今回も同じ様にできれば‥‥という彼女に、兄である七神蒼汰(ea7244)が意見を沿える。
「どうしても退いてくれないなら、全て倒す必要がでてくるだろう。手負いの獣を放置するわけにはいかないからな」
 イギリスで円卓の騎士の補佐役にある七神兄は、部外者であるが妹の助太刀に来たと告げると、膝を摺り、半身ほど身を引く。
「ただの熊なら討伐すれば済むけど、白兜の発生には色々思うことがあるからなぁ」
 藩には鬼軍討伐に集中してほしい旨を申し出たカイ・ローン(ea3054)だが、思惑は複雑だ。
 与一公も自然への畏怖の象徴ともいえる白兜を簡単に討ってしまうのには抵抗があるらしい‥‥
「多少叩きのめせば退いてくれるかもしれないが、度々あるんじゃ困るよ。できれば二度と起きないようにしたい」
「そうなればいいですが、今回は盲進しているようで、それは私も気になっています」
 カイらは蒼天隊全員が到着するまでに少し探索を行っていた。
 白兜たちに対して使われた与一公の『盲進』という表現には、冒険者たちも思うところがあった。
「やはり、鬼軍が手を打っていると考えるのが自然だろうな」
 九竜鋼斗(ea2127)らの推理の重要性は、与一公も重々承知している。
「人は理由を求めれば原因を作りたがるもの‥‥ それが真実なのか、そう思いたいのかは別ですぞ」
 白兜が説得できる‥‥ 今回の事件が鬼軍の差し金である‥‥ それらが規定の路線にならぬよう、杉田玄白は注意を促す。
「ないとは言い切れませんが、あったからといって、それを知って白兜を止める手立てになるかどうか‥‥」
 しかしながら、藩主としては目前の脅威への対処の方に重点が行くのは仕方ないのかもしれない。
「殿の懸念は別にあるのでしょう。鬼軍の手によって動いているのであれば、交渉で退いてもらえないのではないか‥‥と」
「そうなると七神殿の言うように、全て倒すべきでしょう。振り回されて消耗すれば、今後の戦局に影響が出ます」
 彼らの尊厳を尊重したいですが‥‥と、与一公の表情が曇る‥‥
「それらに柔軟に対応できるように、与一公が蒼天隊を召したものと理解しております。わたくしたちに出陣を命じてください」
 七神妹の言葉を受けて、与一公は蒼天隊と蒼馬隊に出陣の命を下した。

●交渉
「話が通じればいいんだけどね‥‥ 一騎当千の冒険者が集まっているし、力比べなら負けはしないさ」
「問題は、そうさせようとしている何者かがいるかもしれないということですね、カイさん」
「そう、鬼軍の出現は考えておかないと‥‥」
「ふむ、父上の懸念は、それだけではありません。草太と雪子からの便りでは、世界各地でデビルが台頭を始めているとか‥‥」
「都では様々な噂や報告があるね。そうか‥‥デビルか‥‥ 考えてもみなかった」
「他国の忍びによる策の可能性も多少は‥‥」
 作戦隊長である杉田蒼馬は、交渉及び迎撃の場に選んだ地点の周辺から民を立ち退かせた。
「本能で動く熊じゃ、交渉決裂は必須だわ。失敗した時のために準備しておかなくちゃ」
「万全の布陣でなくても周りを気にしないで戦えるだけで良しとしよう」
 マクファーソン・パトリシア(ea2832)やメグレズ・ファウンテン(eb5451)によって、地形や森で布陣が工夫されていく。
 『消耗は避けるべき、また、蒼馬隊・蒼天隊の裁量で作戦を行うべし』との命令により、追加派兵がなかったのは痛い‥‥
 さて、弓射での波状攻撃が提案されていたが、待ち受けに適した土地は少ない。
 何より猛獣の群れを前に整然と撤退戦を行うのは難しい。火矢などを使って興奮させれば尚更のこと‥‥
 戦うなら、こちらが移動攻撃で疲弊する前に陣や地の利を活かす方が勝算が高い‥‥ 杉田蒼馬は、そう判断を下した。
「正面から、まともに当たる事はない。確実に段階を踏めば必ず勝てる!
 傷や疲労を与えることで葉を落とし、雑魚熊を仕留めることで枝を落とし、残った大樹に総攻撃を仕掛ければ良い」
「いえ、追撃を妨げる一撃を与え、それで『力を示した』と退けばよし。そうならなければ、打撃を以て撤退の助けとしたい」
 蒼馬隊長は超美人(ea2831)の言を容れつつ、最初の作戦を重視した。
 迎撃の打ち合わせをしていると足軽が帰還。それによると、白兜は目前まで迫っているとのこと。
「鬼が、真っ直ぐ川崎城を向かうよう仕向けたのではないか?
 鬼としては敵が減ってくれるし、白兜らは食料が手に入り、少なくとも白兜と鬼軍が戦う理由がなくなる。
 さらには人間の居場所を提供するということで白兜らを自分達の駒として使おうとしているのでは?」
「那須軍の実力を認めて退いた白兜が、鬼軍との戦いを避けるために那須軍と戦うというのでは、いささか矛盾しています」
 養子とはいえ、那須軍師の子というべきであろうか‥‥ 杉田蒼馬の言には一理あった。
「久々にジャパンに戻ってみれば、エライことになってるな‥‥ 修練中の身だが全力を以て当たらせてもらおう」
 西中島導仁(ea2741)らも体を動かし、戦闘準備が整ってゆく‥‥

 それから少し経ち、地鳴りと共に熊たちが現れた。
「いやまあ、なんという勇壮さといいますか、巨大さといいますか。世界は広いですね」
「想像を絶する‥‥ね。那須の実情を聞くに回避が望ましいが、強く巨大な者と斬り結ぶ高揚感はどうにもならぬな‥‥」
 未知の巨大生物を前に湧き上がる闘志に、メグレズや超は自分を抑えて不敵に微笑んだ。
「何故、今また山を下りてきたのか。どこへ向かうつもりなのか。
 争わずにこのまま山へ戻る気はないのか。山に戻って貰うにはどうすれば良いのか」
 七神兄ら数騎が畦道に進み出て、名乗りを上げ、オーラテレパスで会話を試みる。
『人‥‥ 殺す‥‥ 殺す‥‥』
「詳しいいきさつは知らないが、人里に下りることはやめてもらえないかね〜」
『よいち殺せ‥‥ すみか壊せ‥‥』
 テレパシーの経巻を用いたドクターの言葉も暖簾に腕押し。白兜を含め、邪悪な盲信に憑かれているかのよう‥‥
「聞く耳持たず‥‥か。穏便に行かないとは、やはり背後に鬼でもいそうだ‥‥」
「兄様‥‥」
 悲痛な兄の表情に七神妹は剣を抜いた。
「力無き者たちに害をなす者が現われ、危害を加えようする時!
 銀光の刃を牙とし立ち向かい、それを打ち倒し人々に安寧を与える者現われる‥‥ 人、それを銀牙という!!」
 オーラ魔法を高速詠唱し、西中島も剣を構えて見得を切る!

●怪獣大決戦
 蒼馬隊の働きで田畑の収穫は済ませてある。そういう意味では存分に戦えた。
 達人級の武芸者たる冒険者それぞれが熊を受け持ち、蒼馬隊の足軽たちが彼らを支援する‥‥
 加えて冒険者から貸し出された多数のアニマルスレイヤーの武器により、攻撃力は格段に上がっていた。
 それでも、浅い傷を与えるのがやっと‥‥
「熊って体力有り過ぎ! 魔力が尽きるまで、水と炎の媒介者の名に懸けて嫌がることをしてやるわ!」
 マクファーソンのアイスブリザードも、それは同じ。
 圧倒的な質量を押し留めるには、冒険者たちは小さい。いや、彼らが大きなる者だから‥‥か。
 特に白兜は別格‥‥
 ずん‥‥ ずずずん‥‥ どどっ‥‥
 ぎゃぁあおぅ!! ぎしゃ〜〜!!
「羽有渡丸は干渉したくないと思うが、この戦い、何者かの手引きがあるようだね〜、見過ごすわけにもいくまい〜」
 ホルスが舞い、シェルドラゴンがブレスを吐く‥‥
 ばぁさ、ばぁあさ‥‥ だだぁん‥‥ ぴしゃあ‥‥
 魔法の武器でしか傷つけられないエレメンタルたちを前面に出していればこそ戦線が維持できていた。
「あの大きさは規格外だね〜。丹念に調べれば、生命の神秘、解き明かせるかもしれないね〜‥‥」
 まさに怪獣大決戦‥‥ 天馬や忍犬や精霊妖精なども加わる人外の戦いは、吟遊詩人でもいれば狂喜する場面に違いない。
「妙刃、水月!」
「抜刀術・双閃刃‥‥」
 メグレズや九竜の一撃も何撃も加えなければ有効なダメージとはならず‥‥
 いずれ競り勝つことができようが、相手の巨体に押し潰されぬように注意を払いながら武芸が存分に発揮できるわけがない。
 そもそも、白兜の地響きだけでも足軽たちは足を取られて満足に戦えていないのだから‥‥
「冷静に確実に。視野は広く攻撃は鋭く。相手の間に留まらず常に有利な状況を作る!」
 超らの奮戦空しく、脱落する兵やペットは多いが、神聖魔法の手練が2人いるため死者までは出ていない。
「ホーリーフィールドもドクターのコアギュレイトも、いつまでも保たない! 退ける時に退こう!!」
「蒼馬殿、命は粗末にせぬよう! 兵力の温存は与一公の御意思です!!」
「了解した! 我らは川崎城へ退き、御判断を仰ぐ!! 殿を任せて良いな」
 カイや七神妹が叫ぶと、杉田蒼馬は撤退を命じた。
「吹雪で凍えちゃえ!」
「けひゃひゃひゃ、コ・ア・ギュレイトォ〜!」
「妙刃、破軍!」
 マクファーソンの、ドクターの、メグレズの‥‥
 冒険者たちの奮戦の声が響く‥‥