【毛州三国志】赤頭を追う手はず
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:5人
冒険期間:09月30日〜10月07日
リプレイ公開日:2009年10月12日
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●オープニング
●岩嶽城
岩嶽城と呼ばれる、その城には未知の部分が多く残されていた。
そもそも、鬼たちが好むかのように根城にすることが不思議でならないと識者たちは口を並べる。
関東の鬼門だからというのは、今更ながら理由としては弱いというのだ。
なにしろ、数年前に岩嶽丸が復活して使った以前は、那須建国の歴史にまで遡らなければならないのだから‥‥
「どうだろう? 明士郎さん、冒険者ギルド那須支局を通して、俺たちで討伐隊を編成してみないか?
八溝山城の城主が参加すれば、お上が赤頭の残党狩りを忘れていないと、民が安心すると思うんだ。
宇都宮軍が関東の乱に参戦したから、与一公や源義経殿らは、そっちに対応しなければならないだろうし」
カイ・ローンに促され、八溝山城城主・陸堂明士郎は渡りに船と協力に同意した。
「こればかりは、正体見たり枯れ尾花とはいかないものな‥‥」
八溝山を占拠していた鬼たちは討ち滅ぼされたが、肝心の赤頭や鬼軍の大幹部たちは姿を消していた‥‥
「鬼軍の首脳陣に再起されると面倒だしね」
目撃談のなさに、既に那須から逃げ出したという楽観者もいるが、どこかに潜んでいるのではという悲観者も多い‥‥
「那須藩も義経公も有力な情報は掴んでいないらしい‥‥」
「赤頭や狼神は目立つと思ってたけど、探索することから始めなければならないのかな」
そんななか、義経軍の兵士が殺される事件が起きた。
今際の際の「あっ‥‥しゅらのけん‥‥」の言葉以外、僧兵隊の仏法によって死者の声を聞くことさえも叶わず‥‥
魂魄を抜かれたのだろうと言うが‥‥
●那須天狗
那須に点在する修験場は那須天狗たちが守護し、彼らは中立の立場で那須藩と接してきた。
今回も先年も「人同士の戦いに関わるつもりはない」と主張を貫いただけに、彼らの八溝山決戦への不参戦には疑念を持つ者も多い。
同じ鬼だけに裏で通じているのではないか?
あの狼神は、実は冥府魔道に落ちた白狼神君なのではないか?
などと言う者まで出る始末。
尤も、那須天狗の修験僧や山鬼の有志が、赤頭鬼軍と陰で戦い続けていたことは、あまり知られていない。
「白狼神君が、お怪我して動けないのです。でも、オイラの力では‥‥」
虎太郎と名乗る那須天狗の修験武僧が、白河小峰城の杉田玄白を訪ねてきたのは、八溝山決戦を終えて少ししてから‥‥
「刀根要様に同行して釈迦ヶ岳に赴いた折、恩師が対妖剣法の手ほどきを受けたほどの方‥‥
あれほどの手練が動けなくなるほどの傷を負われるとは‥‥」
那須藩士として、医局員として、養父を助ける杉田蒼馬は、驚きを隠せないでいる。
白狼神君といえば、天地無用の妙剣を使うという手練のはず‥‥
それを倒すとなれば、相当の実力者であるのは間違いない。
いかなる相手なのだろうか‥‥
●エルフの隠れ里
那須には山神様と崇められるエルフたちがいる。
長命で気高く容姿端麗、峻険な山岳に住む彼らを住民たちが神と呼ぶのもしたり。
八溝山決戦のおける赤頭討伐の秘策として神弓を借り受けようと、那須医局員・七瀬水穂は天馬を飛ばした。
迷いの森の結界術が施されている彼らの棲家には、空から近づくのが一番だからだ。
「あれれ〜? この辺だったですよ? たしか‥‥」
問答無用で射落とされないだけマシなのかもしれないが、全く反応がないってのも気になるところ。
恐る恐る天馬を着地させた七瀬の不安は現実のものとなっていった‥‥
「みんな、どこに行ったですか?」
遺体こそないが、壊れた樹上住宅、切り落とされた枝‥‥
そんなに最近の出来事ではなさそうだ‥‥
しばらく接触を持っていない間に、こんな事態になっていようとは‥‥
エルフの長老の洞も探すが、誰の姿もなく、もちろんエルフの神弓もない‥‥
「これは‥‥ 何となく禍々しい気配なのですよ」
鼻息荒い天馬・翡翠に誘われ、ぷんと鼻を膨らませて七瀬が睨みつける先にあったのは魔法陣。
危険を承知で魔法陣を書き写すことにしたが、天馬が首を振る。
はっと思いつき、七瀬は、書かれている単語も図形も分割して魔法陣を書きとめた。
「一つにしなければ大丈夫だよね?」
心配そうな天馬を宥めながら、七瀬はエルフの隠れ里を後にした。
※ 関連情報 ※
■義経■
兵数250(八溝山麓砦に義経隊150、八溝山城兵50、喜連川療養所に傷病兵50)
義経親衛隊、天義隊(元源徳騎馬隊)、伊達騎馬隊、歩兵隊、猟兵隊、僧兵隊などに分業されています。
【源義経】
源徳台頭以前の都での貴族たちの内乱で絶えたと思われていた源氏直系の遺児を名乗る少年武将。
当時赤子であった義経は政争に利用される事を恐れた近臣の手により都を逃れ、奥州藤原氏に匿われたとのこと。
八溝山の鬼軍退治に一区切りついたことで、次の活躍の場を求められることに。果たして‥‥
【佐藤兄弟】
継信・忠信の兄弟。
奥州藤原氏の武士から、源義経の家臣となる。
能力も忠義心もあって義経の右腕・左腕といえる彼らだが、様々に苦労は絶えない模様。
【重蔵】
義経軍で折衝役を務める客将。隠居出戻りの坂東武士で冒険者。
剣の腕や身のこなしに優れ、おまけにオーラ魔法まで使えるが、時折、瀕死級の腰痛に見舞われるのが珠に瑕。
■那須■
八溝山決戦の総動員を終え、物資も兵力も不足気味。
赤士虎隊は八溝山の麓で索敵中。
【那須与一】
下野国守、兼、那須藩主。
弓の名手。須藤宗高、藤原宗高、喜連川宗高などよりは、那須与一や与一公と呼ぶ方が通りが良い。
【那須藩】
下野国(関東北部・栃木県の辺り)の北半分を占める藩。弓・馬・薬草が特産品。
伊達政宗公の仲介で和睦が成立し、白河地方を回復。
【八溝山岩嶽城】
那須藩東部の山岳地帯にあり、峻険な地形に出城と砦といった防御施設も備える堅牢な山城。
【福原神田城】
那須藩の政治・軍事・信仰を束ねる中枢。
【白河小峰城】
奥州へ向かう兵の集結地点として知られる軍事と交通の要衝。
城主は那須藩宿老・小山朝政。
【矢板川崎城】
天然の川を幾重もの堀とする要害。那須藩の西の玄関口として要衝を固めている。
城主は那須藩家老・結城秀康、城代は那須藩軍師・杉田玄白。
【蒼天十矢隊】
冒険者から徴募された那須藩士たち。11名(欠員1名)が所属した。
退魔決戦や藩財政再建に功績を残すも謀反の疑いをかけられ部隊は解散したが、後に汚名返上。
那須藩預かりの冒険者部隊には『蒼天隊』の名が与一公により贈られた。
【小山朝政】
那須藩の宿老。白河小峰城城主。結城秀康の兄。
与一公の右腕として活躍する勇将。下野の南部を地盤とする豪族。源氏との繋がりが深い。
【杉田玄白】
欧州遊学の経験もあり、広い知識で活躍する那須軍師。那須医局長、矢板川崎城代。
【杉田蒼馬】
蒼天十矢隊の馬周りだったが、杉田玄白の養子となり、藩士に抜擢されて末蔵から改名した。
【福原資広】
志士。与一公の甥。与一公の兄である父・福原久隆の命により京より帰国した。
那須藩の客将扱いで、私兵の赤士虎隊50を率いる。
【結城秀康】
白河結城氏の当主。矢板川崎城城主、兼、ギルド那須支局目付。結城朝光、結城朝康、結城秀康、源徳秀康と改名。
前宇都宮藩主・宇都宮朝綱を養父に、実父の源徳家康を烏帽子親に持つ。
宇都宮の軍事を掌握し、武蔵へと2000の軍を進める。
●リプレイ本文
●あ‥‥しゅらのけん‥‥
八溝山岩嶽城代を任された来迎寺咲耶(ec4808)らが調査した兵の死は、謎の死のままだ。
「赤頭鬼軍のしわざかもしれませんが、証拠はありません」
「いざこざでないだけ一安心だよ。そうなると、兵士の残した言葉だけが手がかりか‥‥」
申し訳なさそうに捜査報告する彼女に、義経公は労いの言葉をかける。
「あしゅらのけん‥‥ これが一体、何を指す言葉なのだろうか?」
「音の通りとすれば阿修羅の剣だけど‥‥」
義経公の言う仏教の護神・阿修羅に関するものが那須にあるとすれば‥‥ 九竜鋼斗(ea2127)たちは色めきたつ。
「セブンフォースエレメンタラースタッフ、ロゼの剣、シープの剣、セラークロスソード、覇王剣‥‥
そういった伝説の武具は、奥州を勉学で旅した折、吟遊詩で何度も聞き、神話や大戦の物語で見ました。
阿修羅の剣とは、インドゥーラの神話にある神々の戦いに阿修羅神が用いた剣のこと‥‥」
欧州での勉学の旅で杉田玄白が聞いたことのあるという伝説級の剣が、那須にあるとでもいうのか‥‥
「ただ、那須の地に何の因果があるのか‥‥ それが気にかかりますな」
「鬼が根城にしていたことと関係があって‥‥ まさか岩嶽城に『あしゅらのけん』とやらがあったりしてな‥‥」
なんてな‥‥と九竜は破顔するが、どことなく居心地の悪さを感じていた。
天使や悪魔を巻き込んだ世界的な大事件の始まりの一端が、九尾の封印の綻びにあったのだとすれば‥‥
まだ、何が眠っていてもおかしくはないのかも‥‥
「とでも思っておらぬか? その若さが羨ましいぞ。義経殿」
「うわっ、見透かされてる」
苦笑いする周囲を見るに、同じように考えたのは義経公だけではないようだ。
●白狼神君
陸堂明士郎(eb0712)が騎乗するグリフォンの背には、凛々しい虎太郎の姿がある。
「釈迦ヶ岳が見えてきた‥‥って、オイラだよ! 烏天狗様!! 待ってって!!」
極力刺激せぬよう近所で降りるつもりだったのにも関わらず、その前に烏天狗たちが迎撃に上がってきた。
本来中立であるはずの彼らが、これだけ殺気立つとは、異常事態に間違いない‥‥
「どうか、収めください!」
「我は那須藩士・杉田蒼馬。古の同盟を思い出し下さい!」
ペガサスに相乗りする九紋竜桃化(ea8553)と杉田蒼馬は、思わず叫ぶ。。
「我ら那須医局は白狼神君の傷を癒しに参ったのです! 争っている場合ではありますまい!!」
空飛ぶ箒を制御しながらクーリア・デルファ(eb2244)も叫ぶ。
「虎太郎が戻ったのか。ぇえい! おかしな真似をすれば容赦はせんぞ!!」
果たして、修験場へ舞い降りた一行は白狼神君との面会を果たした。
「これで大丈夫かと思います」
「すまぬな‥‥ 」
クーリアの目には、秘薬を口にした目の前の白狼神君と、太刀筋に瘴気を用いる狼神とが、同じ存在には見えなかった。
「虎太郎の助けに応えるためだけに来たのではあるまい? 何の用かね」
ごほっ‥‥
あらかたの傷を癒す霊薬を用いたというに、白狼神君が本調子に戻らないのは気にかかるが‥‥
「あなたが狼神ではないかという噂もあります」
クーリアに「無礼な!」と激怒する烏天狗を、白狼神君は床から身を起こして遮る‥‥
「お会いできて良かった。あたいには白狼神君と狼神が同じとは思えませんから」
「狼神、かの者を逃したままでは、那須に再び災厄を齎すのは明らか。決して逃すわけにはいきません」
「そうか。狼神と名乗りおったか‥‥ あやつめは」
九紋竜に視線を向けて溜息をつくあたり、どうやら何か知っているよう‥‥
「姿を見せないことで嘘の噂が広がるなら、表に出て真実を明らかにしませんか?」
真相を明かすことで、姿を現すことで、那須天狗の信頼を回復すべきとクーリアは説得を強める。
那須天狗は、中立な存在であり続けることに意味があると固辞する白狼神君に、九紋竜は話題を変えることとした。
「古文書の『空駆ける狼、馬頭の地で悪行の限りを尽くす』について教えていただきたい」
「狼神と名乗る、あれとは鞍馬山の大天狗様の下で共に修行した身。冥府魔道に落ちさえしなければ‥‥」
「あの技も? 護りたい人を護るために、敵を知りたいのです」
その身に受けた黒旋風をクーリアは説明した。すると‥‥
「師を裏切り、修羅の道へ踏み込んだ、あれの力は、今や大天狗に匹敵する。
そして、殺しに殺した証が、九葉の羽団扇ならぬ九葉の羽太刀‥‥」
天狗の持つストームを封印した羽団扇(はうちわ)と同じ能力を持つ太刀とは、相手が剣士だけに厄介‥‥
「何か打開策はないのですか? 神出鬼没で空を飛ぶでは、まともに捉えるのは無理です」
「もしや馬頭の要石を狙ったりはしませんか? 先の古文書の『空駆ける狼』が狼神なら」
陸堂も九紋竜も考えを巡らせるが、手詰まりといったように吐息に溜息が混じる。
「その古文書にある『空駆ける狼』は、あれと我。要石を巡って暴れたせいで、馬頭の遺跡は今の形になったのだ」
改めて真実を語る白狼神君の告白に、一同は思わず、成る程と頷いた。
「あのときこそ辛うじて勝ったが、此度は‥‥」
白狼神君の状況を見れば推して知るべし‥‥
●油断なき瞳
「義経公に危険が及ばないのは喜ばしいことだけど」
那須10兵ほどを預かったメグレズ・ファウンテン(eb5451)は、義経本陣の近くで連絡任務にある。
那須藩士として義経公護衛の陰の使命を与えられたことは、盾となる戦いは得意と自負するだけに力が入る。
ただ、散発的に小鬼や山鬼などとの遭遇戦の情報が入るだけで暇‥‥
「そうだね。赤頭には、ちょっと勝ちを譲られた感があるかな。
案外、身の軽さを奪う鬼の軍団を切り離す手伝いをさせられたかな‥‥」
「お主もそう思うか」
大激戦を繰り広げた末に赤頭鬼軍の大幹部で討たれたのは、宇都宮で戦死した牛頭鬼・迅雷だけだ。
詰めの段階での手応えがなさに、 来迎寺と同じ懸念を佐藤兄弟も抱いていた。
「まだ気は抜けないのに。勝利で気が抜けている兵もいるようだから、揉んでやりましょう」
今は戦闘態勢にある兵が常に必要と、来迎寺は歩兵と僧兵を率いて教練を始めた。
「皆、ここまで戦い抜いた勇士たちだ! 義経公に弛んだ姿を見せたりしませんよね!!」
兵たちは鬨の声で返し、槍を並べ、弓を鳴らしている。
「普段は、お淑やかなのに。美人が勿体ない」
「兄者、惚れたか?」
「ば、馬鹿を言え!」
笑いあう佐藤兄弟の向こうで、何事もなく来迎寺隊と赤士虎隊が別れた。
「目ぼしい情報は無しか。どこへ隠れたんだ‥‥ 鬼どもめ」
「本当なら、鬼の知らせなど訪れない方が良いのに‥‥ 因果なことです」
メグレズと佐藤兄弟は苦笑するしかなかった。
●エルフの行方
「けひゃひゃ。炎で焼かれたのかね〜」
肉でも乗せて焼いた独特な感じの残る石をトマス・ウェスト(ea8714)が退けると、どかした石の形が地面に残っている。
「違うですよ。エルフさんたちが精霊魔法を使って料理した跡ですよ」
七瀬水穂(ea3744)は、石焼ヒートハンド料理法を思い出した。
「争った跡でござろうか?」
結城友矩(ea2046)が矢傷を見つけたが、これだけでは何とも。
と、金鱗の月竜がロバを手にかけようとしているのが見え、西海ことトマスは慌てて術を掛けた。
「鈍器丸をやらせはせん、やらせはせんぞ〜! コ・ア・ギュレイトォ〜!!」
奇跡に耐えた月竜ミスリライトJrは、手を引っ込める。
「大人しいから食べたりしないでござるよ」
なおもミスリライトJrが指差している鈍器丸は、何かを食んでいた。
もぐもぐ‥‥
「あ〜〜〜〜! じゅ! じゅ!!」
よほど慌てたのか、かみまくる七瀬。
「ロバの食べ物を取り上げるのはレディとして、どうかと思うがね〜〜」
「ち、違っ!! 失礼なのですよ〜って、そうじゃないです。十矢隊のですますよ!!」
七瀬が鈍器丸の口から奪い取ったのは、蒼天十矢隊の打掛‥‥ まさか、あの仲間たちの誰かが?
「違うですよ!」
ぷんと鼻を膨らませて七瀬が、西海と結城に叫ぶ。
「その顔もレディとしてどうかと思うがね。我が輩は。けひゃひゃひゃひゃひゃ」
「ほんと失礼ですよ‥‥」
くすん‥‥
「蒼天十矢隊に縁の者がエルフの隠れ里を襲うなど、誰も想像してないでござるよ。七瀬殿」
結城が頭を撫でると、七瀬の頬に思わず安心の涙が流れる。
●馬頭
「あ、明士郎さん! 助かった‥‥」
民衆に囲まれたカイ・ローン(ea3054)は、ほっとしたように陸堂たちを迎えた。
「生死の大海を跋渉して四魔を催伏する大威勢力・大精進力の観音様?‥‥ってことらしいから、御参りしとかないと」
八溝山の戦勝で増えた馬頭観音像への参拝者に揉みくちゃにされていたカイは、「鬼と戦う方が楽」と苦笑い。
矢板川崎城からの警備隊は、僅かだったが馬頭視察から継続して配備されていたよう。
「異常はなくて、とりあえず一安心してたところだったんだ」
「こちらは白狼神君に会ってきた。とりあえず一命は取りとめたが、快癒したわけじゃないのがきになるな」
「神君が? それは由々しきことですな‥‥」
夜になって一息つくカイたちは、要石を守る一族の住職を交えて御堂で情報交換した。
白馬頭を戴き、三面三目六臂で馬頭印を組んだ赤顔の憤怒像‥‥
一般的な馬頭観音像だったが、謎の死を遂げた兵の言葉が想像を一つの方向へ向かわせるのを止められない。
「阿修羅は、3つの顔に6本の腕でしたよね、ご住職?」
「確かに三面六臂で描かれることが多いですね。それが何か?」
陸堂は自然と眉間を押さえている。
「もしかして、馬頭観音じゃなくて、この地下に別のものが眠ってるとか?」
「関連があるとすれば、可能性はゼロじゃないってことなのかな‥‥」
九紋竜が恐る恐る尋ねると、何が眠っているのかまで、そのときは恐ろしくてカイは口にできなかった。