【毛州三国志・秀康・ジャパン大戦】岩槻戦

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:10人

サポート参加人数:7人

冒険期間:10月27日〜11月01日

リプレイ公開日:2009年11月10日

●オープニング

●北武攻略戦
 上州牽制と上州金山城への支援のため、強行偵察隊200と後詰め100を上州国境に張り付かせた秀康軍。
 本隊の江戸への南下に伴い、これに新たに参陣した北武蔵の兵50を差し向けた。
「仕方ない仕儀とはいえ‥‥ 同郷の者が争うのはできれば避けたい‥‥
 それに、あの350と金山城が捨て駒にならぬよう、何か手はないものか‥‥」
 北武蔵の兵は恐喝して従わせた兵。態度にこそ表さぬが、そのような呟きを聞いた者がいるとか、いないとか‥‥
 これらを江戸城攻略の尖兵として投入する手もあろうが、大儀に関東平和を謳っているのだ。
 同郷の北武連合とで磨り潰させるのは気が引けるとも取れる噂に、秀康の人の良さを笑う武将もいよう。
 だが、旧知の仲で敵味方になるのは武門の倣いと、その人柄を好み、先陣を願い出る者がいるのも事実。
 河越城に入った源徳別働隊と、松山城の北武連合が睨み合いを続ける中、その辺の機微は重要といえた。
 秀康本隊1700の南下の圧力で松山城で屈させれば、下した軍勢を組み込んで兵力の増強もできる。
 そうなれば、千葉の伊達本隊や新田本隊と決戦するだけの目が、秀康軍にも出てくるというもの。
 そのためには、松山城の武将や豪族を1人でも多く、こちら側に引き入れる必要がある。
 態度を保留している北武蔵の武士たちへの処置も必要だ。
 力で押し潰すにしろ、説得するにしろ‥‥だ。

 さて‥‥
 秀康軍は江戸城を目指して南下の一途を辿っている。
 だが、状況は刻一刻と変化し、過去に下した結論が今となって正しいとも限らず、進むべき道も1つとは限らない。
 果たして、岩槻城は落とせるのか‥‥
 秀康軍と河越城とで挟み撃ちが可能なだけに、兵力では源徳側に圧倒的に有利だ。
 だが、岩槻城には、あの太田道灌の血を引くという守将・太田三楽斎資正がいる。
 源徳家康が河越城へ別働隊を送って押さえとしたのは、そのせいもある。
「スサノオは起動して月道を渡ったか。先ずは重畳」
 金髪の美男子が印を組むと、読み終えた書状は燃え上がり、戦乱の空へと散りゆく。
 彼の率いる陰陽師部隊を倒せるか、それが岩槻城攻略の肝と言っても過言ではない‥‥


※ 関連情報 ※

■宇都宮■

 秀康軍は2030(宇都宮武士290、足軽1160、日光僧兵100、武辺者&忍者&冒険者400、北武蔵隊80)
 大将は源徳秀康。
 本隊1680は南下して岩槻城へ進軍中。
 なお、秀康軍300と北武隊50は上州国境へ派遣。小山祇園城の守備隊として50を派遣。

【宇都宮藩】
 下野国(関東北部・栃木県の辺り)の南半分において各国への分岐点ともいえる交通の要衝にある藩。
 下野国一の大都市、宇都宮を中心とする。

【宇都宮朝綱】
 宇都宮藩の前藩主であり、勇将として名を馳せた人物。
 東国一の弓取りとも謳われた人物で、軍事・政治・宗教など、様々な面で各国の介入を許さなかった大人物。
 赤頭鬼軍の牛頭鬼隊との決戦において戦死。

【結城秀康】
 宇都宮藩主。
 白河結城氏当主、ギルド那須支局目付、那須藩矢板川崎城城主など、様々な経歴を重ねてきた武将。
 宇都宮前藩主・宇都宮朝綱を養父に、実父の源徳家康を烏帽子親に持つ。
 冒険者の活躍で内乱を避けることとなり、宇都宮藩は成綱と共同統治するという形式を認める代わりに軍事の実権を握る。
 此度の出陣に当たり、『源徳秀康』を名乗って源徳後継者レースへの参戦を宣言した。
 いまだ那須藩士であり、矢板川崎城の城主という立場はあるのだが‥‥

【宇都宮成綱】
 宇都宮大明神座主にして、日光山別当職。
 結城秀康と宇都宮藩を共同統治するため、前藩主である父親の宗教権勢を継承した。武芸よりは芸術に才能を発揮する。

【那須頼資】
 宇都宮成綱の後見人。
 下野国主・那須与一公の兄であり、幼くして宇都宮朝綱の養子に出され、宇都宮藩士として重職にある。
 結城秀康の従兄弟。

■小山祇園城

 小山祇園城兵300(秀康軍50、小山武士70、足軽120、その他60)

【小山祇園城】
 下野国南部にある街道沿いの要衝であり、那須宿老・小山朝政の領地。
 結城秀康にとっては白河結城家へ婿入りするまで、幼少時代を養子としてすごした故郷である。
 秀康軍の後方基地として使用されている。

【小山宗政】
 那須宿老・小山朝政の弟であり、宇都宮藩主・結城秀康の兄。
 小山領の代官であり、小山祇園城の城代。

■河越城

 源徳別働隊500(侍120、足軽250、その他130)

■岩槻城

 北武連合軍600(陰陽師20、伊達侍50、北武蔵武士100、足軽300、その他130)
 大将は太田資正。

【太田三楽斎資正】
 伝説の風水師・太田道灌の血を引くと噂される術師。

●今回の参加者

 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3054 カイ・ローン(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb2585 静守 宗風(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb3526 アルフレッド・ラグナーソン(33歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb3529 フィーネ・オレアリス(25歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3751 アルスダルト・リーゼンベルツ(62歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb4890 イリアス・ラミュウズ(25歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

マグナ・アドミラル(ea4868)/ 陸堂 明士郎(eb0712)/ アルディナル・カーレス(eb2658)/ アレーナ・オレアリス(eb3532)/ 鳴滝 風流斎(eb7152)/ リオ・オレアリス(eb7741)/ ロッド・エルメロイ(eb9943

●リプレイ本文

●星落ちる嵐
 江戸奪還にかける源徳秀康の熱い想いを訓令したアルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)指揮下の前衛部隊が進む。
 矢楯を並べ、間隔を維持しながら遠距離攻撃や範囲攻撃に備え、魔法使いを集中運用するべく遊軍に配置している。
 その中心に位置するのは、風女神と風竜を従えた魔女・ジークリンデ・ケリン(eb3225)だ。
「異名を轟かせる魔女といえど」
 対するルメリア・アドミナル(ea8594)も負けてはいない。
 ガガンッ! ババババババッッッ!!
 1km先の射程を誇る雷撃も、地上を狙う限り、必ず撃ち漏らしはあるというもの。
 全くの平坦な地形の戦場など望むべくもなく、射程を十分に活かせずにいる。
 ただ、一撃で瀕死、絶命が当たり前の威力を目の当たりにすると、進軍速度は落ちざるを得ない。
「簡単に抜かせはしません」
 フィーネ・オレアリス(eb3529)らによる防護結界に守られながら、異次元の魔法戦が繰り広げられる。
 熱砂の嵐、暴風雨、竜巻、稲妻、地震、猛煙‥‥
 その猛威は、1日2日で岩槻城の周囲の地形を変えるほどと伝えられた。

●河越城の危機
「我らを路傍の石のごとく扱いしおって! 秀康めぇ!!」
「岩槻城の次が松山城というなら、先手必勝! 一気に河越を奪い取り、秀康軍の側背を突く!!」
 グリフォンを駆る黄金の騎兵イリアス・ラミュウズ(eb4890)を先頭に押し進む。
「えぇい! 退け! 退け!!」
 松山城の主力部隊の大半が、烈火のごとく一気呵成に突撃してきたため、河越城の源徳別働隊は一たまりもない。
 いや、敵方の岩槻城に河越城を建築した太田道灌の子孫がいるとの情報に惑わされたか‥‥
「カイ殿、槍働き償ってもらおう!!」
「勿論です。くっ、なんという重圧‥‥」
 江戸城を落とした地下迷宮からの伊達の奇襲が頭を過ぎれば、守護龍神のおわす地下迷宮からの奇襲を懸念しても仕方ないが‥‥
 彼我の戦力差と、お家安泰を説き、兵を動かす愚に釘を刺した‥‥、そのチクリが松山の眠れる龍の逆鱗に触れたのだ。
 おまけに地下迷宮の探索に人出を取られ、初動に後れを取ったため、河越勢は存分な増援が行えなかった。
「囲んで潰せ! どやぁああ!!」
 レイムス・ドレイク(eb2277)は、敵の武具を砕き、剣風が河越兵を吹き飛ばす。
「おらおらおら!!」
 加えて、防御柵など意にせずぶち壊す戦法が、河越勢の恐慌に拍車をかけていた。
「城を枕に立て篭もる! なぁに秀康様からの救援が届くまでだ!!」
 そう。源徳が河越城を失えば、伊達勢と北武蔵連合に大きな戦利をもたらすだけに、城主・畠山重忠も死守するしかない。
 だが、万矢万槍を受けても止まることなきイリアスとレイムスの鬼神ぶりに、河越勢は大いに怯む。
 そして、激戦の末、奮戦空しくカイ・ローン(ea3054)は生け捕りにされ、河越城が落ちるのも時間の問題となっていった‥‥

●和睦決裂
 緒戦の数回を痛み分けた秀康軍は、岩槻城に対して勇戦の敬意を評しながら和睦を申し込んだ。
 和睦して城を明け渡し、従わずとも中立の態度をとってくれれば、領地や身分を安堵する条件だ。
 だが、伊達勢は馬鹿にするなと鼻で笑い、太田資正も剣を抜いて使者の首筋を冷やした。
「ワシを討ちなさるか。それもよかろうが、一切の容赦はなくなりますぞ」
 首筋を赤い筋が流れるが、アルスダルトは意に介した様子もなく、太田資正を直視する。
「できるならば血を流さずに、というのが秀康殿の御考えじゃ。よく考えられよ」
「和睦の意は得た。だが、一戦交え、兵の士気も高い。勝敗はつけねばなるまい」
「了解いたした。秀康殿には、そのように伝えましょう」
「交渉決裂ですな。互いに武運のあらんことを」
 勝ち目がある。そう敵将が判断していると感じたアルスダルトは、一礼して座を外した。
 どうやら、首一つで交戦継続の使者、いや、死者として送られる事態は避けられたようだが‥‥

 秀康本陣へ急使がもたらしたのは、河越城からの救援要請。
 だが、秀康隊から河越城へ救援に兵を割けば岩槻城を落とすのは至難。兵力を考えれば無理といって良かった。
「軍師殿、上州国境の隊に松山城を突かせるしかあるまい」
「左様ですな。ただ、本隊が岩槻城を落とさねば、兵を送らぬ大儀に欠けますぞ」
 遠巻きに包囲を始めた秀康軍が三方から波状攻撃を掛けてくるため、岩槻勢は休む間もない。
 だが、そのような消耗激しい攻撃が長く続くはずもない。
 双方で、超越魔法による攻撃と反撃は熾烈だし、霊薬や超越魔法で回復された兵が戦列に補充されるのだから。
 雨あられと射掛けられる矢も厄介この上ない。
 ジークリンデの風神や風竜で防御するにも、彼女は魔法火力の要であり、消耗は避けねば勝ちは拾えない。
「ならば‥‥」
 秀康軍の本陣で軍議が開かれることとなった‥‥

「無駄なことを。これしきで落ちる岩槻城ではない」
 大量に焚かれた篝火で威圧しながら包囲する秀康軍に、天城烈閃(ea0629)は不敵に笑う。
「八王子は関白に雷王剣を献上しての関係回復を図っているが、今の家康に関白に従う気は明らかにない。
 彼らが関白との縁を切らないのは、本当に源徳のためだけだろうか?」
 伊豆と駿河の人質が源徳から奪還されていることなどを付け加え、物見に付き合う北武蔵の武士たちを話す。
「そして、秀康。江戸に家康が迫ったところで急に出てきて、ひょいと手柄を浚ったとして他の後継候補が良い顔をすると思うか?」
「まぁ、それはそうだが‥‥」
 彼らにとって源徳と関白が仲直りするのは悪いことではない。
 秀康がしゃしゃり出て来たとして起きた後継争いに巻き込まれれば迷惑だが、今までのように日和見や強者に従えば‥‥
 藤豊軍が丹後の黄泉人2万を撃破した噂も、彼らにはあまり心動かされる世間話ではないようだ。
「ん?」
 城内に侵入者ありとの、テレパシーの急報に天城は顔色を変える。
 相次ぐ波状攻撃では、ルメリアの超越ブレスセンサーも2000を超える兵の細かい動きまでは把握し切れなかったようだ。
 ましてや夜陰に紛れてでは、一般兵たちの物見には荷が勝ちすぎたようだ。
「合図です。どうやら侵入に成功したようですね」
 集中運用された秀康軍の魔法火力が防備の外周を焼き始め、混乱を助長させた。
 散発的に反撃してくれば、フィーネ率いる強弓隊が、矢襖で黙らせた。

「敵‥‥」
 忍びに口をふさがれ、首を掻っ切られる陰陽師や僧兵たち。
 インフラビジョン、フレイムエリベイション、レジストマジックを得た忍者を率いるは静守宗風(eb2585)。
「陰陽師たちは討ち取らせていただく! お家大事なら、貴殿らは命は大切にされよ!」
 落ち延びる敵は見逃せと厳命されていた静守が叫ぶ!
「敵は少数。押し留めて反撃します」
 アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)が傍らの兵を治癒するが、明らかに回復より被害が早い。
「これだけ術者が揃っていながら‥‥」
 いかにも岩槻勢に分が悪かった。
「退き時だ。いたしかたない‥‥」
「今回は作戦負けです‥‥」
 城主を含め術者の大半を失い、夜陰に紛れて城兵が落ち始めたのを認め、天城やルメリアは唇を噛んだ。

●戦の趨勢
「何があったのだ‥‥」
「秀康殿が上州国境の強行偵察隊に松山城を突けと指図したみたいだね。危うかったよ‥‥」
 松山勢の撤退にあたり解放されたカイは、河越城に帰参した。
「成る程な‥‥ よほど敵も頭にきていたとみえるな。300から兵を失念するとは」
 だが、河越城が落ちなかったのは紙一重。髪を乱し、手傷を負った畠山重忠を見れば、戦の激しさが知れよう。
「警戒は怠れぬが、一眠りしても罰は当たるまい‥‥」
 追撃もままならぬ疲弊ぶりの中、河越城は戦力の再編成を急ぐ。

 一方‥‥
「フィーネ、敵味方の隔てなく、蘇生せよ」
 源徳秀康の軍命によって、秀康勢のみならず、岩槻勢も蘇生されてゆく。
 敵味方で槍を交えながら、今は抱き合って喜び合う者も多かい。
「岩槻城に組した責任は問わぬ。拾った命を喜んでくだされ」
 流石に蘇生された陰陽師隊と伊達隊は捕虜としたが、北武蔵の武士たちは、本当に何の咎もなく解き放たれた。
 そのうちに領地の安堵を告げに縁者や僧が説得に訪れたり、秀康の軍師アルスダルトから見舞金が届いたりした。
「生き残るために伊達殿や新田殿に従っておったが、あるいは‥‥」
「そうじゃのう。秀康殿は、我らの立場を尊重しておるし、死の淵から救われた恩義もある」
「うむ。和睦交渉の折の口約束であろうに‥‥ あの軍師は張良だな」
 お家大事との口約束を守った律儀さ、また、待遇の手厚さに、心ほだされる者が相次いでいった。

 さて‥‥
 太田資正を始め、陰陽師隊の生き残り、いや、生き返りらは尋問を受けることとなった。
 だが、情報らしい情報は得られない。江戸城の守りやら何やら聞きたいことは山ほどあるのだが‥‥
「素直に話してもらえれば、親父殿には太田殿の助命を願い出るが」
「勝敗は戦の倣い。何も喋らん」
 源徳秀康を前に、太田が虚勢を張っているのは見え見えだ。
「お主、何も知らぬのだろう?」
「馬鹿な。俺は太田道灌の血を引く者。だからこそ、一城を任されたのだ」
「欧州の故郷が、どうのと部下が口走っておったが‥‥ それとも太田殿、無理に口を割らそうか?」
 何が待ち受けているのか、太田の顔が青ざめる‥‥
「俺に味方するなら、お主の太田の血を引かなくとも、偽者の陰陽師であっても構わぬ」
「味方しなければ殺す‥‥か」
「そうではない。坂東武士の心を掴むにも、伊達らの結束を揺るがせるためにも、無駄な殺生は邪魔なだけなのだ」
「よかろう。だが、俺も傭兵の端くれ。江戸の月道を奪還したら俺と俺の部下を自由にするのが契約の条件だ」
 岩槻城主・太田資正と陰陽師隊が、源徳秀康の軍門に下るという驚天動地の結末は、一気に関東を駆け巡った。