【毛州三国志・秀康・J大戦】松山勢の逆襲
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 86 C
参加人数:10人
サポート参加人数:17人
冒険期間:11月21日〜11月28日
リプレイ公開日:2009年12月09日
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●オープニング
北武蔵の武士100を筆頭に総兵力400ほどが、宇都宮軍と同陣すると表明しており、源徳勢の江戸攻略に影響を与えている。
また、伊達側の陰陽師・太田三楽斎資正が率いる陰陽師部隊が、源徳秀康に味方したとの風聞は、驚きをもって迎えられた。
「親父殿の動きに合わせて江戸城へ派兵するためにも、南下の道を切り開いておかねばならん。皆の奮戦に期待する!」
岩槻城に入った源徳秀康は、消耗した上州国境の展開部隊を補充するなど兵力の再編に余念がない。
それというのも、陣を並べる北武蔵の武士たちの理解を得たといっても、信を得るには暫刻が必要なのだ。
秀康率いる宇都宮軍およそ2000に比して、北武蔵の兵は400を超える。
いざというときに当てにならない、最悪、裏切られた場合、宇都宮軍が壊滅することもありえる。
その人心掌握の時間を稼ぐために、補給物資の集積も進めながら、南下の道を模索しているという訳だ。
「軍資金、武具、兵糧など、焼かれたものが少なかったのが幸いでございしたな」
「だが、これだけの軍勢だ。落城前と比べて駐留する兵数が4倍を超えれば、足りぬ」
負けることは念頭になかったのか、落城に当たって焼き討ち忘れたのは守勢のミスであった。
まともに対処される前に、城主を含めて軍上層部を討たれ、命令系統が混乱していたのもあるが‥‥
ともあれ、ある程度の物資は確保できていても、江戸攻略の足がかりとして秀康軍の物資が足りているとは言いがたかった。
防御施設の被害が致命的でなく、江戸攻略の主城として用いるべく、城砦の補修が急がれている‥‥
一方‥‥
「ええぃ、危なかったわ」
「だな。岩槻城が落ち、河越城攻略を諦め、松山城を失っておれば、根無し草になるところであった」
「しかし、河越城の畠山の慌てようを見たか! 次は生かしてはおかん!!」
松山城では、岩槻城から落ち延びた兵らが集結し、北武蔵連合の武将たちが意気を上げていた。
秀康軍に路傍の小石と挑発された話をすると、一矢報いるべしの声が高まる。
彼らを前に腕組みをする巨人の偉丈夫が1人。
静かに発する気は、只者ではないことを示していた。
「秀康の補給線を奇襲する。撤退させられれば御の字だがねぇ」
北武蔵に圧迫を掛けてきている宇都宮軍を脅かすため、城主クルディア・アジ・ダカーハ(eb2001)が号令をかけた。
兵の7割8割は北武蔵に暮らす者たちである。
彼ら安全を信じてクルディアは剣を抜くのだった。
今、河越や八王子の方面へ展開する部隊を除いても、松山城の兵力は600を下らない。
これをいかに活かすか‥‥
北武蔵の戦局を左右する戦いになるのは間違いなかろう‥‥
※ 関連情報 ※
兵数比率は「武士1:足軽2:その他1」が基本で、「その他」には「武辺者&忍者&冒険者など」が含まれます。
■北武蔵連合■
北武連合軍600(北武蔵武士150、足軽300、その他150 ※八王子方面などへ展開中の兵を除く)
主要武将は、中村千代丸、長尾景春、吉見範頼、河越重頼、勝呂恒高、浅羽行長、熊谷直実。
岩槻城からの敗残兵の流入により一時的に兵力が増強されている。
【松山城】
反源徳に集う北武蔵連合の主城として、河越、岩槻、八王子と交戦中。
■岩槻城・宇都宮軍本陣■
秀康軍1580(宇都宮侍290、日光僧兵90、足軽800、武辺者&忍者&冒険者400)
大将は源徳秀康。
北武隊415(陰陽師15、北武蔵武士100、足軽200、その他100)
主要武将は、太田資正、北武蔵の武士たち。
源徳秀康に加勢する北武蔵の武士たちの主城。城内に伊達侍20が捕虜となっている。
【宇都宮藩】
下野国(関東北部・栃木県の辺り)の南半分において各国への分岐点ともいえる交通の要衝にある藩。
下野国一の大都市、宇都宮を中心とする。
【結城秀康】
宇都宮藩主。
白河結城氏当主、ギルド那須支局目付、那須藩矢板川崎城城主など、様々な経歴を重ねてきた武将。
宇都宮前藩主・宇都宮朝綱を養父に、実父の源徳家康を烏帽子親に持つ。
冒険者の活躍で内乱を避けることとなり、宇都宮藩は成綱と共同統治するという形式を認める代わりに軍事の実権を握る。
此度の出陣に当たり、『源徳秀康』を名乗って源徳後継者レースへの参戦を宣言した。
いまだ那須藩士であり、矢板川崎城の城主という立場はあるのだが‥‥
【宇都宮成綱】
宇都宮大明神座主にして、日光山別当職。
結城秀康と宇都宮藩を共同統治するため、前藩主である父親の宗教権勢を継承した。武芸よりは芸術に才能を発揮する。
【太田三楽斎資正】
伝説の風水師・太田道灌の血を引くと噂される術師。
陰陽師隊15を率いる。
欧州渡来の傭兵で、太田道灌とは血縁関係にないようだが、それを知る者は源徳秀康の他は極一部。
■上州国境方面■
強行偵察隊350(宇都宮軍300、北武隊50)
上州新田軍と交戦中の金山城とは連携中。
■小山祇園城■
小山祇園城兵300(秀康軍50、小山武士70、足軽120、その他60)
【小山祇園城】
下野国南部にある街道沿いの要衝であり、那須宿老・小山朝政の領地。
結城秀康にとっては白河結城家へ婿入りするまで、幼少時代を養子としてすごした故郷である。
秀康軍の後方基地として使用されている。
【小山宗政】
那須宿老・小山朝政の弟であり、宇都宮藩主・結城秀康の兄。
小山領の代官であり、小山祇園城の城代。
■河越城■
源徳別働隊350(侍90、足軽170、その他90)
大将は畠山重忠。
松山勢の攻撃により受けた損害を回復中。
【畠山重忠】
周囲の北武蔵の武士たちが伊達に懐中される中、源徳への忠義を見せる北武蔵の武辺者。
●リプレイ本文
●奇襲
「やるな。意外に連携がいい‥‥」
馬を優先的に狙い、伝令の不備を狙ったが、警戒網が思っていたよりも密だったようだ。
だが、警戒部隊程度の武力では、クルディア・アジ・ダカーハ(eb2001)の武勇を止めることは困難だ。
ともあれ、ゲリラ戦法で秀康軍を混乱させ、伊達や新田との共同戦線で逆撃を加えるのが目的であり、孤立は無用。
「勝負よりも、兵の生存が優先だ。撤退の合図を出せ!」
撤退の合図と共に遠方から来る矢走りの音に、秀康軍の警戒部隊の足並みが乱れた。
支援隊には、援護が終了したら軍馬に強化鉄弓を搭載して全力で退くように指示してある。
ゲリラ戦の用兵に徹底されては、秀康軍主力もクルディア隊を捕捉撃退するのは難しかった。
一方‥‥
岩槻で宇都宮軍が補給中という情報を上州新田軍にもたらし、グレン・アドミラル(eb9112)は秀康軍の背後を奇襲した。
「勝てると思わないことですね」
エル・カルデア(eb8542)は、超越の地系精霊魔法で秀康軍強行偵察部隊を薙ぎ払う。
「退け! 退けぇ!!」
意外なほど簡単に秀康軍は撤退してゆく。
「歯ごたえのない。このまま、宇都宮と小山を落とすぞ」
ソードボンバーで秀康軍の侍を撃破したグレンが、気を吐く。
秀康軍強行偵察部隊を撃破し、宇都宮へ入ろうとした新田軍は、那須藩矢板川崎城からの救援部隊と戦闘。
那須軍は、藩主・宇都宮成綱の保護に成功した。
また、宇都宮藩家老・那須頼資は、撤退中の秀康軍と藩内の防衛部隊を糾合して反撃。
兵を分けていた新田軍は、大損害を受ける羽目に陥ってしまった。
「ええい、敵の方が早かったか‥‥ しかも、強力な術者がいるのでは、迂闊に仕掛けられぬ‥‥」
新田軍斥候を打ち砕きながら、グレイン・バストライド(eb4407)は唇をかむ。
精強な弓兵部隊で敵を片付けると、魔法に警戒して部隊を散会させ、機会を狙って退くしか手段がない‥‥
小山祇園城の落城で敗走する中、城代・小山宗政を落ち延びさせるのが優先。
ところが、福原資広率いる赤士虎隊の救援によってクレインらは九死に一生を得た。
那須で戦場を探すより、秀康のように武蔵に戦場を求めた方が早いと兵を動かしていたのである。
一騎当千の武士や志士や陰陽師が集結した精鋭部隊の猛攻に、戦闘直後で疲労困憊する新田軍は上州へ撤退することになった。
なお、朝廷と源徳と反源徳で三すくみしているような面白くもない戦場は御免だと、福原から聞えてきたとか、いないとか‥‥
ともあれ、小山祇園城の物資が焼けたのは、秀康軍にとって痛手だった。
●松山城近郊
「今以上の侵略と混乱を防ぐためにも、秀康軍には宇都宮に帰ってもらう!」
エスト・エストリア(ea6855)は、松山城守備隊に命じて迎撃に出た。
接近する秀康軍の先鋒を無差別に超越ストーンで石化すると、秀康軍遊撃隊は距離を取って布陣する。
向こうにも術者がいて、こちらと同様に対術師戦の対策は講じられているらしい。
「エスト殿、攻めないんで?」
「近づくなら石化して差し上げますよ。伊達や新田に援軍を求めてますから、時間を稼ぐのも戦法です」
最悪の場合、向こうにはジークリンデ・ケリン(eb3225)らが参陣しているだろう。
緒戦の奇襲に失敗してゲリラ戦に徹してきた以上、ここで不用意に仕掛けて壮絶な魔法合戦になるのは得策ではない。
現に追い討ちをかけようとした松山勢も石化させられてしまっている。
松山勢は、雷撃対策の石化壁などを設置して布陣を固めた。
ここにきて、魔法には魔法、強弓には強風、兵力こそ秀康軍が勝っているが、戦力は拮抗していると言って良かった。
「終わりにしましょう。総攻めすれば、倒せない敵ではないでしょう」
ジークリンデが提案したとき、本陣に急使が舞い込む。
「御大将から撤退命令です。補給路を維持しつつ、戦線を維持せよとの下知にござります」
「松山城主は、江戸で放火の嫌疑のある人物ですよ? 愚かさの代償を払うのは、これからというのに‥‥」
フィーネ・オレアリス(eb3529)によりレジストマジックを得た斬込隊を送り込めさえすれば、勝機は十分すぎる。
それに、ここで撤退すれば、敵のゲリラ戦術が再開されるのは目に見えている‥‥
「和睦の交渉に入った家康公を邪魔せぬよう、松山城攻めは控えるようにと」
「くそぉおお! 我ら鬼神となりて、乱行を行い権力と結ぶ鼠賊を屠るまで‥‥というに」
「我々とて退くのは悔しい。北武蔵を完全掌握するには、松山城は落とすべき城なのだから‥‥」
秀康軍武将に従いながらも、アンリ・フィルス(eb4667)が作戦台を叩き壊したとしても、文句を言うものはいなかった‥‥
●時代の流れ
八王子の長千代への関東戦乱の仲裁の勅命‥‥
関白名代たる左近衛将監アランの発した停戦を命じる書状‥‥
増上寺まで軍を退いた家康公からの秀康軍の行軍停止の要請‥‥
ならば、下手に兵を動かして父親の邪魔をしてはいけないと、自重する秀康を奈落へ叩き落す凶報が舞い込んだ!
『 伊達軍と戦闘中、北条早雲の逆矛により、源徳家康公、増上寺にて討ち死に 』
このとき、源徳秀康は声もなく立ち上がり、軍配を落としたという‥‥
「俺は親父殿の、源徳の跡を継ぐ。徹底抗戦あるのみ!
新田の謀反を朝敵行為とせず、朝廷の統制のために鎮圧軍を挙げた親父殿を朝敵と断じたこと、どう考えても道理に合わぬ!
あまつさえ、神皇が忠輝に仲裁を命じたのを無視し、攻撃を受けた河越城を許しがたし、松山城にお咎めもないだと?
関白の政は地に落ちた! もはや信用ならない相手と断ぜざるを得ない!!
西国援軍が話し合われた和睦の調停のために軍を動かさなかった親父殿に攻撃を仕掛け、あまつさえ討ち取る暴挙!
裏切りが正義、忠義は人の道にあらずとでも言うことが、朝廷のやりようなら、もはや忠義に値せず!!」
立ち直った秀康は、強い決意で配下に宣言した。
「西国援兵の件は?」
「そんなものはお断りだ。西国の民には同情するが、向こうが断ってきたのだからな」
京など落ちてしまえばいい。そんな怒りが秀康に渦巻く‥‥
「朝廷側にも心ないものばかりではありますまい。それと、統制の乱れる今、和睦の道だけは残しておかれませ」
「日向なる者のことを言っているのか?」
「はっ。主上の代理として関東の乱の鎮定を託された人物です。それに、与一公なども力になってくれましょうて」
「九郎判官義経との関係を清算して、源徳の生き残りをかけよと言うか‥‥ だが、源徳の再起が見える絵図でなければ許さんぞ」
「御意」
宇都宮軍師アルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)の諫言に、秀康は鼻息を鳴らした。
そして、この余波は、松山城にも波及した。
「途中で兵を退くとは好機だ。一気に秀康軍を撃滅する!」
城主クルディアは再出撃を下知したが、予想に反して連合の武将たちからは一斉に反発が起こる。
「残念だが、我らは従わぬ。冒険者の都合で、その野心につき合わされるのは御免だ!
北武蔵連合は中立となる。我らは、お主の家臣でもなんでもないからな」
「家康なき今、伊達や新田と協力すれば、秀康を討ち取るのも容易い。なぜ拒む?」
「そう、それだ。関白の和平調停があったそうではないか!
イザナミ戦へ傾注するために停戦交渉が行われていることを知りながら、お前は平気で和睦の相手を攻める。
朝敵になりたくなければ、西国に兵を割けと八王子を脅す。どこに正義がある?
伊達に刃向かったところで、どれだけ抵抗できるかわからぬが、我らは坂東武士の誇りをもって兵を収める!!」
「意地を見せたい奴は、俺と来い!」
「ならば、1人でやれ。お前は源徳が憎いだけだろう?
所領安堵のために優勢な伊達に従っていたが、もともと、我々は古の源義家公への恩や義理で源徳に味方していたのだ。
今更、我らを路傍の石と呼んだ源徳秀康に与力する気にはならないが、忠義や仁義を知る奴の方がまだマシだ!
まったく! 家康公の統治下のころが懐かしいわい!」
クルディアらの説得空しく、北武蔵連合の諸将は、兵と物資を引き上げ、松山城には炎が放たれた。
「絵図とは違うが、上手くいったと言えるのだろうか‥‥」
忍び働きのため潜入していた各務蒼馬(ec3787)は、働き場を失った冒険者や武辺者らに紛れて城を後にする。
かくして、松山城の火は消えた‥‥
伊達軍、新田軍らにとっても、この関白名代・左近衛将監アランの書状は、様々なジレンマをもたらしていた。
東海道、八王子、河越、岩槻、宇都宮と、江戸を東西に分断する源徳勢の帯がある‥‥
調停の勅命を受けた八王子の源徳忠輝ある限り、この源徳勢力圏に押し入ることは、神皇を無視したことになる。
元より勅命を受けたのは忠輝一人であり、秀康軍を含めた源徳軍に受け入れる気があるかは疑わしいが、朝敵源徳家の一員に勅が下りた事実は状況を混乱させる。
別の事実として、伊達政宗は鎌倉小田原まで後退した源徳側に和睦の使者を送っている。
伊達も朝廷も戦争の終結を望んでいるなら、北武蔵だけ戦う事は無い。アランの行動は連合の諸将の戦意を挫いた。彼の思惑は知らず、北武蔵の戦いは収束に向かう。それは源徳派も居れば伊達派も居る元の混沌に戻るかのようでもある。
家康の死が一応の決着とするならば、早くも厭戦気分は漂っていた。
このまま講和となるのか。
伊達や新田だけでなく、源徳でさえ、自縄自縛で‥‥
西国でのイザナミの跳梁を阻止するために動いてきたはずなのに、何かの拍子に状況が一気に動いてしまった‥‥
悪い方に‥‥