【毛州三国志・那須・義経】焦心傷神の義経
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:11月25日〜12月02日
リプレイ公開日:2009年12月09日
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●オープニング
●喪中の城
八溝決戦で亡くなった者への弔いのために馬頭寺へ赴いたものの、まさかの襲撃を受けて、佐藤継信を失った義経軍。
四天王の死に喪中を発した八溝霽月城の兵の士気は、高いとは言い難い‥‥
「継信殿が残された今際の言葉を無駄にせぬようにしなければ‥‥」
「はい‥‥ 少し‥‥風に当たってきます」
悲しいのは、同じく義経四天王の陸堂明士郎(eb0712)や来迎寺咲耶(ec4808)だけではない。
「自分たち立ち直れるのは知っていますけど、少し時間がほしい」
「せやね‥‥」
それは、義経軍侍大将・九紋竜桃化(ea8553)、義経御用聞き商人・将門雅(eb1645)らも同じだ。
「代償が大きすぎるのです‥‥ 狼神や異痕は、まとめてお仕置きするです‥‥」
「そうだね。黒幕もまとめて打倒しないと」
那須藩から弔問に訪れた那須藩士・七瀬水穂(ea3744)、元蒼天十矢隊カイ・ローン(ea3054)らも悲痛な面持ちである。
ただ、懸念も多いだけに、源義経の今後の動向について話し合う必要があるだろう。
まずは‥‥
白河以北の奥州国境に存在する熊鬼王の鬼軍への備え。
那須藩からもたらされた情報によると、蘆名藩は熊鬼の支配下にあるという。
熊鬼王の南下に伴い白河小峰城に救出された蘆名藩士らは潜入を試み、九死に一生を拾い、那須藩へ落ち延びたらしい。
蘆名家は事実上滅亡。蘆名武士団は壊滅状態。領民は奴隷として扱われ、藩は蹂躙されているらしい‥‥
それというのも、奥州二万騎が白河へ押し寄せた折、奥州の悪路王が鬼や妖怪を率いて一斉蜂起したのが発端だという。
結果、伊達政宗が江戸を、蘆名が白河を占拠するのが精一杯で、これらの平定に傾注せねばならなくなったようだ。
これらを告白した蘆名藩士らは、領民を人質に取られ、心ならずも八溝山へ補給を行なったことを今は詫びている‥‥
それに‥‥
激化した江戸攻略の結末が関東の騒乱に与える影響‥‥
神霊の後ろ盾を得た神皇軍の発進‥‥
源氏直系の証もない源義経にとって、できること、できないことがあるだろうが、志を捨てては、できることもできない。
何を重視して勢力を向けるのかで、行く末も変わってこよう‥‥
それに、八溝山の鬼軍は追い払い、下野領内に討伐軍を送り出しているとはいえ、赤頭残党を無視はできない。
「これ以上、好きにはさせない!」
これらの問題を解決するには、より多くの者より様々な意見を聞き、そこから方策を見出す必要がある。
義経公への献策の為、声を上げる有志たち‥‥
多くの民の安寧のため、より良き未来を築くために、彼らが取るべき道は‥‥
●傷心の義経
「ふふ‥‥ 御覧なさいな、狼神。思ったとおり隙だらけよ」
「好きにするがいい。この剣を振るう場を作ってくれればな」
「まぁ、見ておいで。面白いものを見せてあげるから」
山伏風の赤黒い僧衣と鴉羽根の陣羽織を着け、九枚の黒羽の太刀を背負った狼顔の剣士が、うざったそうに鼻を鳴らす。
風のように空を舞う異痕と狼神の視線の先には、源義経の姿‥‥
佐藤継信の遺体が横たわる彼の寝所には、阿修羅の剣とデスハートンの大珠が安置されている‥‥
「殿‥‥」
「継信?」
声をかけられた源義経は、傍らに佐藤継信の亡骸があることに気がついていない。
「私の心は常に殿と共にあります。ご安心を‥‥」
「そうだね。いつも一緒だ‥‥」
佐藤継信が抱きつくように源義経の体に吸い込まれ、阿修羅の剣が右腕に、デスハートンが左腕に一体化してゆく‥‥
「「西国でイザナミが世に死者があふれさせるのなら、我は千の産屋を作らん‥‥」」
右手に炎の紋章を、左手に梵字を浮かばせた源義経は、決意の表情で寝所を後にする‥‥
「あの継信の魂を使うとは、相変わらずだな。
死者への冒涜は看過できぬと断じた閻魔も、今頃は異痕の地獄からの追放を悔いておろうて」
狼神は、くくくっと肩を震わせた。
※ 関連情報 ※
■義経■
【源義経】
源徳台頭以前の都での貴族たちの内乱で絶えたと思われていた源氏直系の遺児を名乗る少年武将。
当時赤子であった義経は政争に利用される事を恐れた近臣の手により都を逃れ、奥州藤原氏に匿われたとのこと。
八溝山の鬼軍退治に一区切りついたことで、次の活躍の場を求められることに。
馬頭寺の地下探索で腹心の佐藤継信を失い、傷心にあるようだが、果たして‥‥
【佐藤兄弟】
継信・忠信の兄弟。
奥州藤原氏の武士から、源義経の家臣となる。
能力も忠義心もあって義経の右腕・左腕といえる彼らだが、様々に苦労は絶えない模様。
【重蔵】
義経軍で折衝役を務める客将。隠居出戻りの坂東武士で冒険者。
剣の腕や身のこなしに優れ、おまけにオーラ魔法まで使えるが、時折、瀕死級の腰痛に見舞われるのが珠に瑕。
【義経四天王】
佐藤兄弟、陸堂明士郎、来迎寺咲耶の4名だが、一角を失う。
いずれも義経軍の侍大将以上の地位にあり、義経の信頼に篤い。
■那須■
【那須与一】
下野国守、兼、那須藩主。
弓の名手。須藤宗高、藤原宗高、喜連川宗高などよりは、那須与一や与一公と呼ぶ方が通りが良い。
【那須藩】
下野国(関東北部・栃木県の辺り)の北半分を占める藩。弓・馬・薬草が特産品。
伊達政宗公の仲介で和睦が成立し、白河地方を回復。
八溝山の赤頭鬼軍を討伐し、八溝地方を回復。
【馬頭】
馬頭観音を祀った馬頭寺を中心に発展した下野国東部(那須藩南東部)の都市で温泉郷として有名。
八溝山の麓にあり、馬頭観音を祀った馬頭寺あります。
【白河小峰城】
奥州へ向かう兵の集結地点として知られる軍事と交通の要衝。
城主は那須藩宿老・小山朝政。
【八溝霽月城】
那須藩東部の山岳地帯にある山城。
峻険な地形が攻め手を阻む天然の要害。防護施設が整備されており、堅城と評価が高い。
城主は源義経家臣・陸堂明士郎。
【蒼天十矢隊】
冒険者から徴募された那須藩士たち。11名(欠員1名)が所属した。
退魔決戦や藩財政再建に功績を残すも謀反の疑いをかけられ部隊は解散したが、後に汚名返上。
那須藩預かりの冒険者部隊には『蒼天隊』の名が与一公により贈られた。
【杉田玄白】
欧州遊学の経験もあり、広い知識で活躍する那須軍師。那須医局長、矢板川崎城代。
白河小峰城にあって八溝地方復興に着手。
■赤頭■
【赤頭(せきとう)】
奥州で名の売れた、赤毛の子供の姿をした鬼。
空を飛んだり、水晶剣を使ったり、地震を起こしたのが確認されている。
【狼神(おおかみ)】
山伏風の赤黒い僧衣と鴉羽根の陣羽織を着けた、狼顔の剣士。
背負った九枚の黒羽の太刀は天狗級の霊力の証であり、瘴気渦巻く黒旋風を起こしたのが確認されている。
白狼神君と鞍馬山で修行していたが、冥府魔道に落ちて修羅道を突き進んでいる。
【異痕(いこん)】
正体不明の悪鬼。
部下も含め、美しい女性の姿をしていると噂されるが、何にしろ情報は少ない。
牛頭鬼・迅雷や宇都宮朝綱公など、死者を再生しているようだが、こちらも情報に乏しい。
■金売吉次■
【金売吉次】
那須藩転覆を画策したり、江戸で破壊活動を繰り返してきた奥州忍者・黒脛巾組の頭領。
褐色の肌のジャイアントであると言われている。
【金売吉次】
奥州藤原公が金売吉次を名乗ることを特別に認可した商人たちの総称。
冒険者の流言で商売がしにくいと苦笑いしきり。
●リプレイ本文
●悔恨
家族同然の佐藤継信の死が、どれほど義経の心を押し潰しているか‥‥
「私では継信の代わりにはなれないけれど、彼以上に身命を賭して公を守っていきます」
「継信殿の件。己の不明に恥じ入るばかりです」
「大丈夫。継信は、いつでも僕と一緒にいるから」
来迎寺咲耶(ec4808)や陸堂明士郎(eb0712)に対する、義経の意外な明るさに驚くが、空元気でも動くことこそ肝心。
「気にしているおられるのですか?」
「いや、なんでもない」
飲み込んだカイ・ローン(ea3054)の言葉に、七神斗織(ea3225)は心当たりがあった。
だが、自分にかける言葉が見つからないのに、カイにかける言葉が見つかるわけがない。
「これ以上、好きにはさせない! でも、継信殿を殺したのは俺のようなものだからね‥‥」
なぜか素直になれた自分に、カイは思わず驚いた。
「家康公が討って関東の状勢が落ち着くと考える不見識者もいるようです。
これでは、権威は地に落ち、力のみの非道が罷り通り、信義が軽視され、虎の威を借る俗物がのさばりましょう。
それら世に仇名す者を淘汰する為にも、公には源氏の棟梁として関東の纏めていただく必要があると考えます。
先ずは、与一公と協力し、忠輝殿や秀康殿らに御味方し、源徳家を窮地からお救いいただけないでしょうか?」
そのために、神皇より義経と源徳の関係清算を全権委任された日向を介し、源徳家より正室を迎えることを進言した。
「賛成はできないね。信玄公にも筋を通さなければ、いつ源徳を割られるか知れない。
僕は妻を娶らず、秀康殿を養子に向かえ嫡子とし、武田の姫を秀康殿に迎える‥‥
これくらい、やってのけなければ、日本全国を相手にはできない。違うかい、明士郎?」
いくらなんでも‥‥ 陸堂だけでなく、カイや七神も度肝を抜かれる。
「一先ずは、全国の源氏に退魔戦争へ参戦すべしと号令をかけようと思う。そのために耳目を集めないと」
やはり、神皇御親征への援軍でしょうと、陸堂は言う。
「ようやく得た地盤を固めることも重要。那須藩と協力して、熊鬼王を倒すべきと思います」
九紋竜桃化(ea8553)の進言も尤も。赤頭鬼軍残党も残る状況での遠征は、八溝領の領地復興を妨げかねない。
それに、蘆名藩に巣くう熊鬼王の鬼軍退治をすることは、世話になった那須と奥州との国交正常化への手土産にもなる。
ただ、戦に疲れた兵を癒し、領民を回復して力を蓄えるだけの時間が、イザナミ戦線に対してあるかどうか‥‥
ともあれ、これに関して、四天王には、義経名代と属下50騎が許されることとなった。
さて‥‥
八溝は今、荒れているということもあるが、本来、農林業で生計を立てていた地域である。
だが、御用商人・将門雅(eb1645)とクーリア・デルファ(eb2244)は、今度の視察で、八溝領の地の利の損を看破していた。
総州への街道を開き、白河を奥州街道との交差点とすれば、八溝も賑わうはず。
「家康はんが討たれたゆうても安定した世やない。
あまりお金は掛けれん状況なりに、市や座を推奨したり税の免除で商人の行き来が生まれるはずや。
奥州街道の人の動きが活発にするために、蘆名藩の熊鬼王を討つのは悪うないと思うで」
加えて、蘆名遠征に那須医局員の派遣や医薬品の援助を行う利を説く。
情けは人のためならず‥‥や。
●健やか
馬頭で不思議な体験をした一行は、杉田玄白の健康診断を受けることとなった。
「この左手のマントラと右手の炎の紋章は、何でございましょう?」
「あぁ、継信の導きで阿修羅の剣とデスハートンが宿ったんだ。ときどきイザナギの夢を見る」
異変に気が付いた七神に、義経は夢心地で答えるが一大事だ‥‥
メンタルリカバーだけでなく、憑き物がないかクリエイトハンドやピュアリファイも試してみるが、変化はない。
義経の左手に浮かぶマントラは『イ』。伊舎那天を現す梵字だ。
伊舎那とは、サンスクリット語で、支配する者、自在なる者を意味する。
シヴァ、ルドラを表すと言われ、アスラ、即ち阿修羅のことを指す。
また、護世八方天の一、十二天の一にも数えられ、大自在天とも呼ばれる。
何にしろ、日本では国造りの神イザナギと同一視される大御神である。
それらを踏まえると、八溝山の阿修羅の剣がカグノツチ、馬頭寺の大デスハートンがイザナギに結び付くのでは、ないか?
シーナ・オレアリス(eb7143)や玄白の知識を総動員すると、全てがイザナギとイザナミの神話を指し示しているように思えた。
ただ、馬頭地下の黄泉比良坂と思しき場所で邪印に現れた古代文字『あぶほぅす』だけは、イザナギと関連付けが難しい。
狂気と打ち捨てられる『くずりゅう』神話に登場する神の名、それが知る人ぞ知る『あぶほぅす』である。
連想するとすれば、あぶほぅすの『おぞましい怪物を、絶え間なく生み続ける』という部分‥‥
「イザナギの千五百の産屋の正体が、コレだと怖すぎます‥‥ 世界は、まだまだ謎だらけですね‥‥」
「馬頭の地下で体験したことは、神話の黄泉比良坂に酷似しており、異痕の死者蘇生と関係あると思うですよ。
白子珠を取られた継信さんを利用されるかもですし、秘密を暴くためには、危険な賭けでもしなきゃです。
エルフの皆さんへの手掛かりになるかも、ですしね‥‥」
荒唐無稽だが、シーナの話を骨子に七瀬水穂(ea3744)が筋道を立てると、あながち空想夢想とは思えなくなってくる‥‥
●邪印
白狼神君や杉田玄白の立会いの下、何か反応があるかもと、阿修羅の剣を見つけれた場所に邪印が施されてゆく。
「やっぱり、血やデスハートンが発動の条件ですか?」
七瀬が首を傾げていると、義経が邪印に触れ、聖人の血が封じられていると噂される悪魔除けのブラッドリングは砕け散った。
「量販物に、本物の聖人の血が封じられているとはねぇ‥‥
古に『あぶほぅす』と呼ばれた大いなる神の力を以て、世に混沌たる平和をもたらすことこそ、我が宿願!!
たかが江戸の風水に、大空の不浄なる父にして母が那須の地に縛られるなど、あってはならぬこと!!」
白目をむき、首筋から頬へ蠢くように継信の顔が浮かび、やがて異痕のそれへとなる‥‥
「異痕‥‥ 近くで公の様子をうかがってるはずだとは思っていたけど、継信の白子珠で、なんてことをっ!!」
来迎寺は剣を抜くが、源義経の体を傷つけるのは躊躇われる‥‥
「兄のように慕う佐藤さんの魂を弄んで、義経様の心の隙間に入り込んだのね。異痕‥‥」
クーリアが唇をかむ間にも、邪印は光の脈動を増してゆく。
「これは‥‥要石の呪印?」
邪印が侵食してゆくのは、馬頭寺で見たのと同じ法印だ‥‥
「ほんと馬鹿な者ども。馬頭の古文書は、我が誘導だというに‥‥
時空の狭間に散逸していた剣と白子珠も発見してくれたし、邪魔な殺生石も八溝の鬼脈も解放できた。本当にありがとね」
異痕は笑う。
「あの古文書が偽物だったですか? 嘘ですよ」
「おやおや、張本人が告白しているのに、信じてもらえないとはね‥‥」
割れた邪印の中に、紅蓮の炎を纏った腕を突っ込む。
「あった‥‥」
ずりゅ、にゅぽっと引きずり出されるのは、デスハートンの数珠だ‥‥ その珠の数は、百や二百ではない‥‥
「やはり欠けていたわね。用意しておいて正解」
口からデスハートンを吐き出すと、引き出した数珠に加えてゆく。
「あとは魔力転身の供物。一角馬やエルフは連れているわね?」
「準備はできております、異痕様」
異痕の邪悪な笑みの後ろに現れたのは、義経軍の兵たち。
「正体を現しなさい! それとも、ミラーオブトルースで見破りましょうか?」
今更隠す必要もないと変身を解いて現れたのは、美女たちだ。
「悪鬼・夜叉‥‥ 嫉妬心や復讐心につけこむデビルに違いないわ」
シーナが指差す女たちの腰には、子兎が束ねられていた。
「隠れ里のエルフたちをトランスフォームしたわね?」
「正解♪ ようやく飲み込めてきたじゃないの」
ますます、迂闊には手が出せなくなってきた‥‥
「許さない! お前の好きにはさせない!!」
得物を構えるクーリアを遮るように横切る黒い旋風‥‥
「狼神!?」
「面白くなってきやがった」
楽しそうに太刀を肩に担いで、狼神は、異痕の傍らに立った。
「赤頭はどうした! どうせ、あいつもいるんだろうが!!」
「さあな? 吉次と一緒にいるか‥‥ それとも奥羽へ帰ったんじゃないのか? どちらにしろ、俺には関係ない話さ」
抜刀術の構えをとる九竜鋼斗(ea2127)に、狼神はメンチを切る。
「ところで、白狼神君、要石の封印を解きなさい。そうすれば、私、優しいから、義経は返してあげてよ。
後生大事に遺体を保存しているんですもの。継信の魂も欲しいのでしょ? だから早めに決断することね♪」
異痕は白狼神君を笑うと、義経の中に戻った‥‥
●伊舎那天の降臨
「阿修羅の剣の言葉を残した兵士の事件も、異痕の思惑通りだったんだろうな‥‥ 悔しいが‥‥」
「そうね。でも、魂を弄ぶような邪法って、祭器とかなしに簡単に使えるものなの?」
「なるほど、あの剣や白子珠が祭器がわりなのでしょうな」
九竜やクーリアたちの困惑ぶりはない。
「どうすればいいの‥‥ 伊舎那天様、どうか加護を垂れ給え‥‥」
九紋竜が絶望の切なる祈りを捧げると、雲間から光が差した。
「我を呼ぶのは、誰か?」
ふわりと舞い降りた姿に、誰となく、義経軍の兵士たちの口から歓喜の声があがる‥‥
伊舎那天だ‥‥
西国を死者で埋めるイザナミに対抗し得たイザナギが、これまで何度か那須に姿を示しおいた神が、目の前にあるのだ。
「悪しき邪印を払い、迷える魂、浮世を生きる者、若き英雄を救うための道しるべをお示しください‥‥」
手の平を九紋竜の頭に乗せ、じっと目を閉じて思索にふけった伊舎那天は、幾つかの助言をくれたのだった‥‥