シフール特急便 〜 こんなところに? 〜

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月19日〜06月26日

リプレイ公開日:2004年06月28日

●オープニング

「困ったなぁ‥‥ やっぱり護衛を雇うしかないか‥‥ また上司にドヤされちゃうよ」
 溜息をつくシフールは、足取りも重く‥‥ いえいえ、羽ばたきも重く、諦めたように飛脚便の建物に入っていった。
「‥‥でですねぇ‥‥ ‥‥な訳で‥‥」
 江戸から出発し、街道を外れ、野を越え山越え3日ほどいったところに、過去の戦により主を失って以来、うち捨てられた古城がある。そこへ手紙を届けなくてはならないのだ。飛脚便の情報網によると、時折、修行僧たちが山城を目指して山に入って1ヶ月ほど山篭りをして降りてくると言う。普段は人も寄り付かない、そういう場所である。近辺では毒蛙が大発生していると言うし、人気のない場所へ踏み込むのは危険極まりない。おまけに山城近辺の上空は風が強く、無理に飛べば怪我をしかねない。勢いで安請け合いはするんじゃなかった‥‥ シフールは後悔していたが、飛脚便の信用を考えると届けないわけにはいかない。
「ええぞぉ。た・だ・し、経費はこれだけしか出せないがな。あとはやり繰りするんだな」
 幸い上司は護衛の必要性を認可してくれた。だが‥‥護衛を雇うには多分足りないだろう。羽ばたきも重く‥‥、シフールは上司の部屋を後にした。

「その予算じゃ、きつっいなぁ」
 冒険者ギルドのオジサンに相談したんだけど、用意できる報酬が少ないから駆け出しの冒険者をたくさん雇うしかないってさ。お奨めは冒険者8人の護衛。最低でも6人、余裕を見るなら10人はほしいって言ってたけど‥‥
「シクシク‥‥ 今回はボクの手出しでやるしかないのかな」
「とりあえずボランティア覚悟でってことで依頼出しとくか? 人の良さそうな奴に声かけといてやるから泣くな」
 オジサン優しい。顔は怖いけど‥‥

「ゲコォォォ!!」
 傷だらけの大蛙と拳を構える男の間の周囲は、まるで炎が燃えているように熱い空気が張り詰めていた。
「やるな‥‥ 」
 山篭りを始めてもうすぐ1ヶ月‥‥ そろそろ下山を考えなければならなかったが、このヌシとの戦いに決着をつけなければならない。そうでなければ修行の意味はない。そうまで思える。
「いくぞぉ!! 」
「ゲゴォゥゥゥゥ!!」
 ゴンッ! ビシッ!! 双方の瞳に熱いものが宿り、拳と舌がぶつかる!! 戦った者だけが到達する友情にも終止符が打たれる日は近い。

●今回の参加者

 ea0707 林 瑛(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0799 僧侶 成行(37歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea0853 陣内 風音(27歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea2391 孫 陸(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2482 甲斐 さくや(30歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea2989 天乃 雷慎(27歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3402 エドゥワルト・ヴェルネ(19歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea3663 ミヅキ・ユウナギ(34歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

●みんな優しい
 シフール飛脚便の月華といいます。こんな依頼を受けてくれてありがとう。今回は旅の記録をしてくれる人を雇う余裕がなかったんで、私が書きました‥‥ さて、この依頼、どんな感じだったかというと‥‥

「あたし、何でこんなところに居るのかなぁ‥‥ 船の用心棒をして‥‥、帰りの船に人足の手伝いで船に乗って‥‥ アレ? うーん、乗る船間違えたのかなぁ? ここどこだろう? 言葉が通じないから、大変だしさぁ」
 華国語でぼやく女の人。ジャパン語が話せないのにジャパンを旅するのは少々無茶が過ぎたみたい。彼女の名前は林瑛(ea0707)。あ、溜息ついてるよ。
「キミ、どうしたの? ため息なんてついて」
 ‥‥で、それを見た、この中で1人だけ華国語がわかる孫陸(ea2391)さんが話しかけたの。ここだけの話、女好きなんだって。話しかけたの、それでかなぁ?
「ギルドに通訳がいて、何か荷を運ぶ為に障害になるモノを排除する荒事の助っ人が欲しいって言われたんだよね。お金が減ってきたし、参加しようと思ったんだけど」
「聞いてないのか? この依頼は奉仕覚悟だから、たぶん報酬のお金は出ないぞ」
「‥‥」
 どうやらボランティア覚悟の依頼だってことは伝わらなかったようだね。ハハ‥‥

「はじめて請け負った仕事だし、きっちりとキミが配達物を届けてやれるようにしないとな。そうそう、報酬に関しては雇い主側の懐事情もわかっているので気持ち程度でもいいし、どんな額でも文句はいいません」
 道すがら食事を取ることになったんだけど、なかなか切り出せなかった話題を孫さんが振ってくれたの。みんな気にしてたみたい。
「俺の報酬は必要経費だけでいいよ。経費が足りる分だけでいいからね。困った時はお互い様だし、経費が足らないならタダ働きでいいよう」
 面倒見が良くて、しゃべり方が特徴的な僧兵さん。それが僧侶成行(ea0799)さん。
「あたしは、お酒を一杯奢ってもらえばいいわ」
 西洋人とのハーフで碧眼がとっても綺麗な照れ屋さん。依頼主にありがとうって目で訴えられてドギマギしてる可愛い人、それが陣内風音(ea0853)さん。
「報酬は食事を奢ってくれるだけでボクはOKだよ♪ まぁ、いらないって人もいるし‥‥ 後は君の気持ち次第かな?」
 そう明るく言ってくれたのが天乃雷慎(ea2989)さん。あったかい人で、『なるべく峰討ちで無駄な殺生は避けたいな』って言ってたのが印象的だったね。
「ボランティアでもいい。金より名声が欲しい時期」
 エドゥワルト・ヴェルネ(ea3402)さんはそう言ってたけど、仲間のことすごく気にかけてたなぁ。プライドが高い感じで最初はとっつきにくかったけど、『学問なき経験は、経験なき学問に勝るっ!』って、いろんな植物のこと教えてくれたのは楽しかったな。
「城に残されている物から知識になるものなどを探します」
 そう言ってさりげなく報酬を断ってくれたのがミヅキ・ユウナギ(ea3663)さん。きっと普段から面倒見がいいんだろうな。優しい人。
「困っている者を助けるのも役目なのでな。貰う訳にはいかない」
 困っている人を放っておけない、そんな志士のお兄さんが山王牙(ea1774)さん。
 報酬のこと‥‥ みんな優し〜。世の中捨てたもんじゃないよ。うんうん。
「あんなところで、修業している方に届ける手紙って、どの様な内容なのでしょうか」
 常識知らずの女の子。それがお嬢様育ちの大宗院鳴(ea1569)ちゃん。配達する手紙を開けちゃダメだって。
「見ちゃダメだからわからないのよ。ところで、鳴は報酬ほしい?」
 お、風音ちゃん、ナイスフォロー。
「いえ。でも、わたくしもプロですので、お食事代ぐらいは頂きたいのですが」
 そう言いながら一番高い料理を頼んじゃった。ふぇぇ。
「成功報酬不明なんて依頼を出す者が見たくて参加したのでござる。報酬は些細なもので構わない」
 始めてあったとき『惚れた、一目惚れでござる。種族の違いは些細な事、是非とも恋人になりたいでござるよ』って言ってくれた甲斐さくや(ea2482)さん。ごめんなさい‥‥ いや、そういう意味じゃなくって、報酬出せそうにありません。鳴ちゃん、食べすぎ。

●ゲコォォ
「うぇ‥‥ 毒蛙だ? キモイ」
 毒蛙が出るって聞いた瑛さんは、山城の麓の村で村の人からボロボロで使わなくなった案山子(かかし)を貰ってたよ。それから竹林から手頃な竹も。
「作戦はデゴイ君一号作戦。竹の先端に縄を結んで‥‥案山子を縄に結ぶ。これを蛙のいる方にヒラヒラさせて蛙の興味を引くの‥‥」
 何してるんだろうって思ってたけど面白いこと考えるよね。
 そう言えば、牙さんとミヅキさんが目的地の地形や地図などを入手して、馬で通れる道で最短ルートを割り出してくれたんで楽しちゃった。
「馬持ってる人がいるし、余計な荷物はそれに積んでしまわないか? 移動時間が少しは短縮できると思うからねぇ」
 ふーん、成行さん、いいこと言うよね。雷慎ちゃん、鳴ちゃん、牙さんの3人が馬を連れて来てたから、荷物はそれに載せちゃった。重い物持ってる人なんか遠出するのに大変だもんね。だいぶ楽だったんじゃないかな。足の遅い人とか体力のない人は、ときどき馬に乗せてもらってたから、目的の山までは2日でついちゃった。
「長旅の体調管理はしっかりとしておかないとね」
 そういえば天乃さん、夜はしっかり寝るようにとか道中ずっとみんなの体調を気にしてくれてたなぁ。疲れててても何とか強行軍に耐えられたのは、そのおかげもあるのかな。寝る前に一緒に見た月とか星とか綺麗だったね。
 それでも、山城のある山の下まで来たときには、みんな疲れてたんだ。結構急いできたからね。だって、あちこちから毒蛙の声がするんだもん。甲斐さんは自分のテントを私に貸してくれたの。私への好意からだったかもしれないけど女性みんなで使ってほしいって嬉しかったな。
「わたくしには、自然での生活は無理があるようですわね」
 全然堪えてない表情でいる鳴ちゃん。だけど12歳の女の子、しかもお嬢様育ちの鳴ちゃんが何日も馬を引いて歩きっぱなしで疲れない訳ないのよね。荷物は邪魔になるからって牙さんが使わない装備を、山の麓の廃寺に隠すことにしたんだけど、鳴ちゃん、馬と一緒に休憩してた。頑張ってる姿、なんか可愛い。
 それで‥‥ 休憩した後に山に登ったの。

 ヴェルネさんは目がいいから毒蛙を何回も発見してくれたけど、案の定、毒蛙との遭遇は避けられなかったの。天乃さんが笛を吹いて毒蛙たちの驚かそうとしてくれたけど効果はなかったみたい。ヴェルネさんが植物で毒蛙を絡め取ったり、毒蛙の動きを鈍らせたりして、なんとか何度かは逃げられたんだけど、避けるとずいぶん遠回りしなくちゃいけないところで出会っちゃって戦うしかなくなっちゃった。瑛ちゃんと風音ちゃんと成行さんが、その毒蛙の相手をしてくれたの。
 目の前でヒラヒラする案山子に毒蛙の注意が向いてる〜♪ 面白〜い。あ、食いついた。アハハ、瑛ちゃん、追っかけられてるよ。
 風音ちゃんは愛用の釣竿で瑛ちゃんが作ってたやつの小っさいやつ作ってたの。それを他の毒蛙の前に竿を垂らしてね。パクッ。ピョコタン。パクッ。ピョコタン。って、食べられる直前に竿を引いて、みんなから毒蛙を引き離してるよ。うまいなぁ。
 成行さんは六尺棒を構えて、ピョコって飛びつこうとする毒蛙をツンツンしてる。
「まともに相手をしていたら大変なことになるからね。先に行って」
「無理に戦う必要もないし、怪我しない程度にがんばってくるよぅ」
 風音ちゃんと成行さんがそう言うから、みんなは先を急ぐことにしたの。

 山城は見えてきたけど、目の前には沢山の毒蛙‥‥ ちょっとマズいかなって思ったそのとき‥‥
「わたくしに任せて、先へ」
 言うが早いか、鳴ちゃんは馬に乗るとライトニングサンダーボルトを毒蛙に撃ったの。やったぁ、毒蛙たちひっくり返ってピクピクしてる。でも‥‥ まだまだ毒蛙はいっぱいいるよ。鳴ちゃんの方、見てる。危ないよ‥‥ あっ、馬に足踏みさせて攻撃をかわしながら毒蛙に日本刀で切りつけたぁ。うまいうまい。
「先へ」
 そう言うと追っかけてくる毒蛙たちから逃げながら皆から離れて行っちゃった。

 まったく‥‥ 山城の近くで、また毒蛙に襲われたの。物音を立てないように気をつけて静かに歩いてたのに‥‥、いつの間にか周りは毒蛙だらけ。逃げてもまたこんな風になるって突っ切ることにしたの。山城は目の前だったからね。
 緑の光に包まれた牙さんが手のひらから真空の刃を放って毒蛙を吹き飛ばしてる間に、みんな走ったの。目の前を塞ぐ毒蛙を、孫さんが助走をつけてパンチで吹き飛ばしたわ。これが噂に聞く猪突拳(チュー・ツー・クァン)ってやつね。
 でもね‥‥ 揺・れ・る〜〜!!
「届け物落とさないようにな、私が必ず貴女を護るでござるよ」
 甲斐さん、気遣ってくれるのはありがたいけど懐に抱えて運ぶのはもういいです。酔っちゃって、目がグルグル回っちゃったもん。気持ち悪くなっちゃった。
「春香の術で蛙が寝たのを見たでござるか?」
 って言ってたけど、憶えてません‥‥

 修行者が先に下りてちゃ困るって、ミヅキさんが途中で何度か回りの水溜りとお話して確認してた。そういう痕跡は発見できなかったって報告してくれたとおり、配達先の修行者の人は山城にいたの。
 大蛙と戦って、ついに勝利を収めたんだって熱く語ってくる修行者の人に手紙を渡して一件コンプリート。
「ご苦労さん」
 やっぱり、この言葉を聞くと安心する。手伝ってくれた皆に『ありがとう』って言ったわ。そして、今から降りるところだったっていう修行者の人と一緒に山を降りることにしたの。
 降りてる途中でみんなと合流して無事に下山。鎧とか服に飛び散ってた毒の混じってる消化液を、そのままじゃ危ないからってミヅキさんが魔法で湧き水を出して洗い流してくれたの。いろんなこと知ってるし、やっぱり面倒見がいいよね。わたしもこれくらいしっかりしなくっちゃね。
 そうそう、ヴェルネさんが解毒剤を用意しておいてくれたことも忘れちゃダメよね。みんなの良いパートナーでありたいって言ってた。依頼を成功させようって、それだけのためだけに真剣になれる冒険者ってすごいと思った。私が飛脚便に誇りを持ってるのと同じ気持ちなのかもね。

●真っ赤な太陽
「赤い夕日なんか大嫌いよ〜〜!」
 瑛さんが夕日に向かって叫んでる。孫さんから華国がどっちにあるとか聞いてたから、たぶん遠く離れた故郷の方に沈む夕日を見てウルウルしてるんだと思うけど‥‥ みんなとか修行者なんかに内容がわかるわけもないんだよなぁ。華国語がわかる孫さんだけは苦笑いを浮かべちゃってたりするけど。
「強くなってやる〜!!」
 あ、修行者の人、拳を握り締めちゃって太陽に向かって走り始めちゃった。
「なんの手紙でしたか〜?」
 よっぽどあの手紙の中身が気になるみたいね。鳴ちゃん、追っかっけて行っちゃった。
「熱い人だよなぁ。でも、一角の武芸者なら、ぜひ技を享受して欲しいものだな‥‥」
 修行者の人が走ってくのを見て、牙さんも追かっけてっちゃった。

 とりあえず、みんな無事で良かったね。
 でも、予算は旅費で空っけつ。いろいろあって手出しして報酬は出せなかったの。まったくひどい上司だよね。もう少しくらい出してくれればいいのに。ねぇ?
 天乃さんには『今度からちゃんと仕事の内容は確かめてから請けるんだよ〜』って言われちゃった。予定の拘束日数まで日にちもあったし、帰りはワイワイのんびり楽しい旅だったよ。

 みんな、お疲れさま。そしてありがとう。次に一緒に仕事ができる機会があったら割りのいい仕事を用意しと‥‥けたらいいなぁ。