≪月道探索≫江戸城地下遺跡〜探索者〜
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■ショートシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 71 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:05月05日〜05月10日
リプレイ公開日:2005年05月14日
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●オープニング
方々の遺跡探索の結果、月精龍から『その月道ならば、現在お前たちが江戸城と呼ぶ建物の地下にある』 との情報を得た冒険者ギルドは、源徳家康公に事の次第を伝えた。折しも改築工事中だった江戸城富士見櫓の土台の下に古い構造物を発見した事もあり、よもやこれが件(くだん)の月道への入り口かと騒ぎになっている。
さもありなん。この遺跡が本当に月道施設だとすれば軍事的にも政治的にも経済的にも‥‥あらゆる面において重要拠点である。ましてや、江戸城に2つも月道があるとするならば、これが日本にどれほどの衝撃を与えるか計り知れない。兎角、各地の権力者たちが気色立っても何ら不思議ではなかった。
それは家康公にとっても同じことだった。家康公の家臣団以外のものが月道を通って勝手に江戸城に侵入したとしたら‥‥
月道があるなら放置することの方が問題であると探索隊が投入されることとなり、源徳家康公は冒険者ギルドへ探索の依頼を出した。
さて‥‥
江戸城富士見櫓の土台下に発見された古の建築物には隠された入り口が存在した。それは事実。
その先にある規模は不明‥‥
どれだけの地下遺跡が埋まっているのか見当もついていない。
だが、冒険者たちは地下遺跡に入り、探索結果を持ちかえらなければならない‥‥
あなたたちに課せられたのは入り口付近で発見された碑文に刻まれた謎を解くこと。
なお、この碑文の最後には、道筋と思しき物と一緒に注意書きのようなものが記されていた。
『封印した道を汝らの手で開くならば、次のことに気をつけるべし。
一、炎に猛る守護者は尖兵なり。倒す以外に道はなし。
二、ほの暗い水底には希望の光。苦しければ水面(みなも)を目指すべきだと言うのに‥‥
三、天に瞬く星たちが降るとき、天の川は紅に染まる。瞬きの小さな星にこそ願いを掛けよ。
四、兵を配せよ。ここは最後の砦。』
尚、噂の蘆屋道満‥‥
この遺跡こそ京都への月道に間違いないと豪語しているが‥‥
彼の大胆な‥‥ いや、かなり無理のあるこじつけに過ぎないと見る者も少なくない。
しかも、尊大な態度と裏腹に自信がないということなのか、今回は『見ててやる』ということらしい‥‥
はてさて‥‥
●リプレイ本文
●江戸城内
さて、憶測が飛び交う怪しげな状況のなか始まった江戸城富士見櫓・地下遺跡探索‥‥
「家康公には無理を言って」
「いえいえ、こちらこそ」
冒険者たちのお目付け役として挨拶に来た親仁と軍監の侍が会釈連鎖に陥っている。
「挨拶だけで日が暮れちまうぜ。さっさと行こうぜ」
何やってんだと会釈連鎖を断ち切った巴渓(ea0167)は拳を握り締めて気合十分。
「月道などと‥‥ 京都など地続きなのだから、健康の為にも徒歩で旅をすれば良いと思うのだがな!」
ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が、かんらと笑う。
「でも、あれば便利なのは間違いないよな」
「その通りです。本当に京までの月道なら、その利が如何ばかりか‥‥」
鷹見仁(ea0204)の言葉に軍監が注釈する。
江戸〜京の間を一瞬で移動できれば源徳家康公にとって政治的効果は‥‥などと話をしていると‥‥
「ま、難しい話はなしにしようぜ。碑文の道筋通りに進んで少しでも多くの情報を持ち帰る。それで十分だ。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。迷宮探索と洒落込もうじゃねぇか」
何もわかっていないのだから細かいことは悩んでも仕方ないと、阿武隈森(ea2657)は持ち込む装備の最終確認を始めた。
「まぁ、我が輩は面白そうな依頼なので受けてみただけのだがな」
「確かに燃えるよな」
ゴルドワと巴は豪快に笑う。
「ところで、私の支度はこのような感じで良かったのかな? 何とも心許ないが‥‥」
軽装の武具に提灯など雑多な装備を腰に吊るしたり背負ったりしている。
本人は太刀に大鎧、兜に具足といった戦用の完全装備で来たのだが、それは冒険者に却下されていた。
「こういう遺跡では何があるかわかりません。不意の事態に対処できる身軽さが必要なんですよ」
「わかりました。必要であれば援護をしますので」
闇目幻十郎(ea0548)は、話のわかる侍が軍監についてくれたことにほっと安心した。
ともあれ出発である。
●第1の関門
道筋を辿っていくと、ただっ広い空間に出た。
「もしかして、炎の尖兵がいるところか?」
巴は部屋を眺めるが、それらしき影は見当たらない。衝立のような物、一段高くなった場所。
「道筋は間違ってないのか?」
道は間違っていない。
「元々ドーマンだかゴーマンだか、ヘンなオヤジが言い出した眉唾な話だからな。間違ってたって仕方ねぇ」
「それでは困ります」
ゴルドワと巴にの言葉に一抹の不安を感じた軍監が思わず漏らす。
「外れだったとしても月道探索が1歩進むことに変わりないさ。
しかし、別の考え方をすれば、既に誰か入った者がいて尖兵が倒されているということもありえるな」
「あまり脅かさない方がいいですよ」
鷹見の言葉に青くなる軍監だったが、イレイズ・アーレイノース(ea5934)に説得され、一行は部屋に入った。
部屋の中にはどこか古めかしい出で立ちの像が6体。
何か違和感を感じるのは異国風の雰囲気が混じっているからであろうか‥‥
「これは陣構え‥‥でしょうか?」
「確かに‥‥ でも、俺たちを迎え撃つようには配置されてない‥‥」
軍監の言葉に天津は息を呑んだ。
「大丈夫のようです」
慎重に接近した闇目が像に触れた。
結局、ただの像だったのだろうと、一行は先へ進むことにした。
その時である。
兵士像が動き出し、部屋を出ようとしていた一行に襲い掛かってきた。
しかし、一行はそれを迎えうつことに成功した。
「うわっ、駄目だ」
臨戦態勢をとっていた鷹見たちは何とか迎撃することに成功したが、日本刀の刃などは兵士像の表面で火花を散らした。
槌を持ってきてはいるが背嚢の中だ。この戦いでは取り出す間はないだろう。
しまったと舌打ちしながら仲間の援護に回ることにした。
「こいつを持ってきて正解だったな」
天津蒼穹(ea6749)は大槌を構えて前に出た。
魔物ハンターの直感でもしやこういう敵が出るのでは‥‥と思ったが、こうも嵌るとそれはそれで嫌なものだった。
「悪ぃが、通らせてもらうぜ!」
阿武隈はニヤリと笑うと気合一閃、石突を突き出すように兵士像を突いた。
バーストアタックの一撃は兵士像の一部を砕いた。
「私もやれます。有巧打を持たない方々は援護をお願いします」
イレイズもバーストアタックで兵士像を砕く。
「その通り。我が輩もいけるぞ」
薙刀を床に置いたゴルドワは詠唱に入っている。
「それじゃ俺もいかせてもらうぜ!」
巴も集中を始めた。
鈍い打撃音が響く中、戦いは冒険者に圧倒的に優勢だった。
炎の翼を得て宙を駆けるゴルドワの体当たりが兵士像に打撃を与えていく。
「手応えあり!」
微妙に傷をつけただけだが、一応の効果はあったようである。
「どりゃあ!!」
僅かに亀裂の入った兵士像に阿武隈が一撃を加える。
六角棒の重さを載せた突きは兵士像の胸板をぶち抜くと、そのまま動かなくなった。
「いけるな」
闇目や鷹見などに加えて大蝦蟇なども参戦し、攻撃に専念する者たちを援護している。
「俺からしてみれば手応えなし、だな!! 行雲流水‥‥ 勇・往・邁・進!!」
石の兵士像の動きは鈍い。普段、魔物ハンターとして対する敵に比べれば止まっているも同然。
大きく振りかぶった大槌を思い切り叩きつけると頭と片腕が吹き飛んだ。
「すまねぇな、ハンターの旦那。もらったぜ!!」
巴の闘気弾が兵士像を撃ち、床に倒れて砕け散った。
「次ぃ!!」
天津は倒れて砕けた兵士像を踏み越えて、次の兵士像に挑みかかっていった。
6体の兵士像が倒れるのに時間はかからなかった。
「そろそろ退くとしますかな。随分時間も経ったことであるし」
「しかし、あまり進んでいません。もう少し‥‥」
食い下がる軍監をゴルドワは諭すように論破した。
松明や油をどれくらい使ったか考えると、かなりの時間が経っていること。
初日であるから体力的に余裕があるが、まだ先は長いのだから余力のあるうちに退いたほうが良いこと。
まぁ、妥当で正当な理由である。これには軍監も文句のつけようがなかった。
「私もゴルドワ殿を見習わなくては」
「我輩はこれでも故郷では考える筋肉と呼ばれていたからな。これくらいは晩飯前だ」
感心する軍監の前でゴルドワは豪快に笑いながら踵を返した。
鬱憤の溜まった拳を討ちつけるには石の壁では相手が悪かったというのが本当の理由だと知るのは、一行が遺跡を出た後のことなのだが‥‥ それは置いといて。
未知の遺跡の探索に想像以上に神経をすり減らしながら、一行は第2の関門を見ずにその日の探索を終えた。
●第2の関門
「碑文の通りなら、そろそろ水の罠があるはずだな」
巴たちが床を重点的に探索しつつ進んでいると‥‥
すぅっと床全体が沈み始めた。
「戻れ!!」
闇目が叫ぶが遅い。岩戸が滑り落ちて、勢い良く出入り口が閉まってしまう。
床の沈下が収まると、今度は頭上でゴンゴンと音がし始めた。
ギャリン‥‥
音と共に何かが天井に生えた。
「これが天の川ですか‥‥」
イレイズが溜め息をついた。
盾を持つ者たちは頭上に向けて構えたが、降り注いではこない。
天井ごと迫ってきて突き刺すという嫌な感じの罠のようだ。
「おそらく昔は星のように輝いていたということなのでしょうね‥‥」
錆びている仕掛けを見て、闇目が呟いた。
「一番小さいやつに仕掛けがあるとか、そういう感じか?」
鷹見たちは天井の刃の中で一番小さい物を探した。
それを闇目が押すが何も起こらない。それならと引いてみたところ天井が上がり始めた。
連動するように岩戸が開くのを見て一行は大きく息を吐いた。
「碑文と違うじゃないか‥‥」
一抹の不安を抱えながら、一行はその日の探索を終えた。
●第3の関門
「あ‥‥」
日頃ならあり得ない失敗であった。立ちくらみがして1歩前に踏み出した床がガコッと音を立てて対極図の形に沈み込んでいく‥‥
バツの悪そうな闇目が振り向くより早く、入り口が2つの入り口に岩戸が落ち、閉じ込められてしまった。
おまけに轟々と音を立てて水まで流れ込んでくる‥‥
「やっぱり水攻めか」
「と‥‥くれば」
「足元に解除の鍵があるってことだよな」
巴、鷹見、阿武隈はやれやれという感じで床を探索し始めた。
「我が輩は水は苦手なのだ。何しろ鉄の塊だからな」
ゴルドワは腕組みをして仁王立ち。こうなっては悩んでも仕方ないと覚悟を決めたようだ。
必死に考えるが‥‥
「床に何か秘密がある‥‥ それ以上は、いくら我が輩でもわからないぞ」
ゴルドワの禿頭に汗がタラリ‥‥
「水中なら任せて下さい‥‥と言いたいところですが、時間はあまりないようですね」
イレイズは色々探してみるが、どこにも不信なところは見つからない。
「皆、本当にすいません」
闇目が謝ろうとした瞬間、グキッと対極図の窪みの端を踏んで体勢を崩してしまった。
思わず対極図に足をつくと、更に対極図は沈み始めて流れ込む水が止まった‥‥
「‥‥」
まさに不幸中の幸い‥‥
絶句する闇目の頬を汗がつたう中、水位は次第に引き始めた。
●第4の関門
「ということは‥‥」
ここまでくれば、何となく予想はつく。
道筋通りに遺跡を進むと、そこには燃え盛る炎の塊があった。
「炎龍だ。多分‥‥」
天津は魔物ハンターの仲間から聞いていた全身を炎に包まれた8本足のトカゲの話を思い出していた。
「こいつがね‥‥。か〜、燃えるじゃねぇか」
これが噂の炎龍‥‥ 相手にとって不足はないと巴は集中を始めた。
睨み合いの不気味な沈黙の中、冒険者たちと炎龍の間に燃え広がるように炎が巻き起こった。
鷹見と闇目が突っ込むが、炎に巻かれ、踏鞴を踏む。
「突っ込むしかないのか?」
「サラマンダーとか言うモンスターに違いないのだろうが‥‥ 斬ってみればわかること!」
要するに、あまりよく知らないということらしい。
軍監からオーラパワーを付与してもらったゴルドワは、薙刀を構えて炎に突っ込んでいった。
「魔物ハンターは無理やり突っ込んで倒したと言っていた。夢切り開く仁義の刃! 天津蒼穹、いざ参る!!」
巴にオーラパワーを付与してもらった天津は説得を諦めて炎の中に突っ込み、次々と仲間たちが後を追った。
「例え炎の守護者でも負けられません」
イレイズはホーリーフィールドを張って防御を固めた。
あちこちに火傷や傷を負いながら一行は炎龍を追い詰めつつあった。
あったのだが‥‥
「厄介すぎる!!」
炎に焼かれ続けるのは辛すぎた。何だか息苦しくさえある。
冒険者たちの攻撃で炎龍の動きが鈍くなるのと同じく、彼らも炎の中で動きを鈍らせていたのである。
「何だというのだ!」
炎の翼で炎龍が宙に舞い、驚くような速さで壁を蹴るように軌道を変えて、巴、闇目、イレイズを体当たりで吹き飛ばす。
「好きにさせるか!!」
炎龍と鷹見が交差した。
弾き飛んだ鷹見と一緒に床を滑る炎龍の炎に猛る身が薄らいでいる。
「もらったぁ」
阿武隈の一撃が炎龍に突き刺さると一気に姿は薄れ、炎は消えていった。
一行は改めて見渡すと、炎龍がいた部屋は現在使用中の江戸城の月道の部屋とそっくりであった。
「ここ‥‥ ずれてませんか?」
月道を利用したことのあるイレイズでなくてもわかる。
他の部分の調和を乱して確実に違和感を感じさせる部分があった。
ごっ‥‥
「お、俺のせいじゃないからな」
好奇心で触った巴によって簡単に石は動き、窪みへと沈みこんで淡い光を放つと部屋は元の暗さを取り戻した。
「後は月道を開く術を行って確認するしかありませんね」
次の15日は‥‥
そう、目前である。
「それで開けば、新たな月道の発掘の完了というわけですか。キャメロットに帰る前の良い土産話になります」
満足そうに一息つくイレイズだったが、他の者とて見つからないだろうと高(たか)をくくっていた分、結果には驚きを隠しきれない。
「それにしても、あの碑文は何だったのでしょう?」
様々な謎を丸っと抱えたまま、目的の結果だけは達成しつつあるという奇妙な状況に軍監の侍は苦笑いを浮かべるのであった。