●リプレイ本文
(時折、行動不成立の理由が付記してあります。リプレイ的にはお見苦しいことをお詫びします。今後の参考にしてくださいね)
●さて、出撃
「実は以前の依頼で小鬼退治に出掛けて‥‥ 依頼自体は成功だったんだけど、何匹か小鬼をとり逃したことがあったんだ。だからこの仕事には参加したほうがいいような気がして‥‥」
ニコニコ笑ってはいるが、親仁の言葉を馬鹿正直に真に受けて六道寺鋼丸(ea2794)が大きな体を申し訳なさそうに小さくして頭をかいている。
「鋼丸、気にすんなって。小鬼共を殲滅すればチャラさ。ギルドの親仁は無理そうなら偵察でも構わないなんて言ってるが、そんなものは俺の性分に合わん。やるからにはとことんまでってな。まぁ、重傷人が何人も出たりなんかしたら流石に退却せざるをえんが‥‥」
三宝重桐伏(ea1891)がチラと見ると、ギルドの親仁がウンウンと無言で頷いている。その視線を感じて、親仁は素知らぬふりで天井を眺めた。
「折角助かった命なのに又悪さをするのか。なら、退治しなければな」
悪を許さないと公言してはばからないカイ・ローン(ea3054)は、小鬼の悪性に溜め息をついた。
「あぁ‥‥ まったく、面倒な塵もいたものだ」
ガーディア・セファイリス(ea0653)も溜め息をつく。
「さて、どう攻める?」
気分を変えようとカイは砦と周辺の地図を台の上に広げた。事前情報があるだけに作戦会議にも熱が入る。ギルドの親仁も、ホゥと小さく声をあげている。
「小なりとはいえ、これは戦。侍の本分は戦で活躍することなり。腕が鳴るぜ」
「確かにそうだが、功を急いては己を滅ぼす。何を成すにも、一人の力では出来ぬ物だ。己の出来る限りを尽くし、仲間を信頼する。さすれば結果は自ずと付いてくるものだ」
「虎隊とは話をつけてきたよ。挟み撃ちになるように位置と時間を決めて攻撃する。後はどっちがうまくやるかだね」
やる気を見せる結城友矩(ea2046)と、それだけではとたしなめるように自分にも言い聞かせる天螺月律吏(ea0085)の間を掻き分けてパタパタと野村小鳥(ea0547)が駆けてきた。
「もらえるものは病気以外ならなんだってもらう‥‥ 『追加報酬』なら、特にな」
ウェス・コラド(ea2331)のセリフに微妙にコケながらも竜隊は鬨(とき)の声を上げた。
●戦いの前に
問題の砦の近くまで来た一行は、馬や荷物を置いて砦に近づいた。
数回のプラントコントロールで枝を器用に操りながら木の上に登り、丘の周囲に広がる林から砦を眺めた。記憶を手繰り、砦の弱点を探ろうとするが、砦の構造に不備は感じられない。さすがに戦闘のプロが作った物である。ウェスの学識は、そう告げていた。そもそも見晴らしの良い場所に建てているのだから、見つからずに砦に近づくことはできそうにない。
「だが‥‥」
どんな時でも冷静沈着、陰謀や策謀を好むウェスの顔に笑みがうかんだ。打ち捨てられてから長い間、風雨に晒され続けているいるのである。脆そうな柵や柱はいくらでもあるように思えた。
「打ち捨てられて長い上にこちらには見取り図もある‥‥ 『砦』と言っても、こうなっては『藁の家』と変わりはないな」
ウェスは調査結果を仲間に伝えた。ガーディアも同意見だった。遠くから見ても、その古さは窺える。それに‥‥ 小鬼たちは砦を修復するとかそういった気はないらしい。必ず砦自体に隙があるはずだ。
「砦が捨てられてかなりたっているらしいので、まずは砦の現状を把握するのが先決だと思います」
堀が埋まっている場所、柵が壊れかけているところを木板に写してきた砦の地図に印を入れて、砦の機能していない場所を纏め上げた。
「困りましたね。こんなに厄介だと依頼中は禁酒をしないといけませんね」
いくら酒に強いとはいえ、酒の入った状態で満足に戦えると思うほど南天流香(ea2476)は楽天家ではない。ただ、三度の飯より好きなお酒が飲めないのはちょっと辛いと、思わず苦笑いをしていた。
●奇襲
砦だからと小鬼たちが律儀に見張りなどやっているわけもなく、思ったより簡単にウェスと玖珂は砦に近づくことができた。
「行こう」
ウェスはサイコキネシスで柵の脆くなっていそうな部分を崩そうとするが、パラパラと破片が落ちてくるだけで思った効果は得られなかった。(到達距離15m、遠隔操作10kgまでですから)
「そんなに頑丈なのか?」
玖珂刃(ea0238)が腰を入れて力を加えると柵はメリメリと音を立てながら崩れた。
ギャッ!! グギャァ。悲鳴と共に、小鬼が潰される音が鈍く響いた。そこにいた小鬼たちの集団と目が合う。
「居合いの技、見せてやるぜ」
一瞬早く我に返った玖珂がブラインドアタックで小鬼に斬りつけた。小鬼たちが斧を手に取るまでに1匹は倒したが、目の前にはまだ5匹もいる。
「今まで悪さした報いを受けてもらうぞ。青き守護者カイ・ローン、参る」
どうしたらいいのかわからないかのように、その場に留まる小鬼に短槍を繰り出す。それが小鬼たちに火をつけた。激怒して3人に斧を振るうが、グットラックの効果か幸いにしてカイたちはその攻撃をかわすことができた。
「退くぞ」
玖珂はウェスとカイに撤退を促した。
●敵は目前にあり
「砦の小鬼を殲滅するでござるよ」
砦の門が見える木の陰で、結城は油の容器と火打石を確認して懐にしまった。玖珂とウェスとカイが手はず通りに撤退を開始している。
「もう少し、敵が食いついてきたときが好機でござる」
少し離れたところを小鬼の集団が玖珂刃たちを追いかけて森へと踏み込んだ。こちらの作戦は順調のようだ。自分も頑張らねばという気負いからか少し緊張気味だが、戦場(いくさば)の雰囲気はこんなものだ。
(「!!」)
門を開けた小鬼が砦に入ろうとしているのを見て、結城はスラリと日本刀を抜き放ってダッと駆け出した。それに気がついた小鬼が慌てて門を閉めようとするが、閉まるより速くバーストアタック・スマッシュEXで脆くなっていた門扉を砕く。
バリバリッ! 砕けた扉の下敷きになって小鬼が驚愕の表情を浮かべたが、一息整えて改めて放たれたスマッシュEXの一撃で息も絶え絶えとなり、目は虚ろになった。躊躇なく止めを刺すと、火を放つ予定の場所を探す。
(ここで少し解説を‥‥ プレイングにある『バーストアタックEXスマッシュで鎧ごと両断する』は『スマッシュ(武器攻撃AP1で発動)+バーストアタックEX(追加消費AP1)= AP2』であるから使用者のAPが1であるこの場合、AP不足で行動不成立となります。ですから、使用者のAPが1なら、バーストアタック・スマッシュ(またはバーストアタック・スマッシュEX)で物品にダメージを与え、次のターンにスマッシュ(またはスマッシュEX)で相手にダメージを与えるしかありません。)
「あれでござるな‥‥」
そもそも野戦の後に放棄された砦の址である。さほど広くはない。しかも、門の周りにいた小鬼たちは、数を頼りに玖珂たちを追いかけていってしまい、結城が本陣に辿り着くのは難しくはなかった。
ただ‥‥ 敵に気づかれる前に火をつけようと油をかけて火打ち石を打つが、なかなか火がつかなかった‥‥(提灯に使うような弱可燃性の油ですので‥‥ アイテム説明を参照してください)
「時間がかかりすぎたでござるな‥‥ 次は火種を用意しておくとしよう」
ようやく火がついたころには戦いの趨勢は決した後だった。気がつくと周りには小鬼たちが‥‥
●突撃
林に隠れた突撃班は、奇襲班が小鬼を引き連れて林の中へ走りこんだのを確認して砦へと接近した。門扉は壊されていて侵入に苦はなかった。そこに10匹近い小鬼が現れる。
「小鬼なんかに負けるはずはねぇが、慢心はせず、気を引き締めて挑むぞ!!」
「おぅ!!」
三宝重の咆哮に、仲間も咆哮で応えた。
数と手数で圧倒しようとしてきた小鬼たちと仲間の間に六道寺が割り込む。
「うおおぉぉお!!」
ガタイのいいジャイアントが六尺棒を振り回している絵は、小鬼たちの士気を砕くのに充分だ。その棒術も大したもので確実に小鬼を捉えていた。ボガッ!! 攻撃が当たるたびに小鬼たちの戦闘力は確実に奪われていった。
「はっはぁ!手前等如きが俺に敵うわけねぇだろうがぁ!」
仲間と協力して確実に小鬼へのダメージを累積していく。そして、それに耐え切れなくなった小鬼から順に脳天から叩き割られ、首を跳ね飛ばされ、その数を減らしていった。
にわかに慌しくなってきた砦を、南天はリトルフライを発動させて上空から眺めていた。バラバラに動く敵集団を見る限り、心配したような指揮官の鬼はいないようだ。竜虎両隊の主力が砦を攻めているのが見て取れる。
脆くなっていそうな柵の近くで着地した南天は、ライトニングソードとライトニングアーマーをかけた。この柵の裏側では仲間たちが戦っている。確実に柵を壊すために繋ぎ目をバーストアタックで狙い撃ちした。ズズン‥‥ 崩れた柵の向こう側には小鬼たちが驚いたように振り向いている。
「雷を恐れぬなら覚悟! 雷使い流香、参ります」
一気に間合いを詰めると日本刀とライトニングソードで小鬼を切り伏せた。小鬼たちの混乱に拍車がかかる。
「お願い、おびき出されてきて」
味方を援護するように、小鳥は適当にオーラショットを放つと小鬼たちの一部の注意を自分に引き付け、砦の外へ誘い出した。
「とりあえず林の方まで誘い出さないと」
小鳥が必死に駆けるが小鬼たちのほうが速い。追いつかれるのは時間の問題だった。
仲間たちが砦に突入したのを確認して天螺月とガーディアは砦に近づいた。砦の反対側からは虎隊が攻撃開始したのであろう、遠くから剣戟の音が響いてくる。
「来た‥‥」
小鳥を追いかける小鬼たちを見つけて駆け寄ると、ガーディアはオーラパワーで威力を上げたロングソードを小鬼の斧に振り下ろした。斧を砕かれた小鬼は腰を抜かしたようにその場に座り込んでしまった。天螺月がガーディアに背中を預けるように日本刀を振るい、変化をつけた剣筋に小鬼から血飛沫があがった。この場所なら刀を振るう充分なスペースもある。敵に囲まれる心配も少ない。
「さてと‥‥ そっちじゃないぞ」
剣から放たれた衝撃波が、脇をすり抜けようとしていた小鬼の目の前に土煙が上がる。
「ゴブッ!!」
慌てて方向を変えて小鬼たちが逃げていったのは‥‥ 玖珂たちの待ち受けるトラップゾーンだ。
●罠、ワナ、わな
(「小鬼の性質から少数の俺達に対していい気になって出てくる筈だ」)
カイの思惑通り小鬼たちは3人を追ってくる。大げさに敗走するふりをしているのだ。
「数を減らせればいいんだ。無理せずいこう」
トラップゾーンに飛び込んだ小鬼たちは猟師の心得のあるカイが張り巡らせた罠に足をとられ、ロープで編んだ網で絡め取られて転倒した。そこへ3人の攻撃が繰り出された。
「種切れだ。そろそろ引き時かな」
自分たちで引き寄せた小鬼たちに加えて突撃班が誘導した小鬼たちを迎え撃ち、カイの作った罠はほとんど発動してトラップゾーンとしての機能を失っていた。
「ギャハハハハ!! 行ったぞ!! 兎に角、一匹たりとも逃がさねぇ。全部まとめてぶっ殺だ!」
新たな小鬼たちが三宝重の笑い声に追いかけられるように迫ってくる。
「個人的な恨みはないけどごめんね」
目にも留まらないような素早い小鳥の鳥爪撃の蹴りが小鬼の背中に決まる。今度は数からいっても士気の面からも小鬼たちが圧倒的に不利な状況である。小鬼たちが勝利するような要素は全くないと言ってよかった。
●苦い勝利
竜虎両隊は攻めては退き、数度にわたって砦を攻撃した。しかし、所詮は烏合の衆。1度目の攻撃で士気崩壊していた小鬼たちは逃走モードになっており、2度目以降の襲撃にほとんど手ごたえはなかった。
六道寺とカイと結城、3人も回復能力を持ったものがいて、怪我をした者を逐次回復したため、竜隊に怪我をした者はいない。奇襲班も無理はせずに仲間と合流したため、掠り傷程度だ。
「さすがに重症は直せませんけど簡単な怪我くらいなら手当てできますしね」
小鳥が応急処置を施していった。
「大丈夫?」
ただ1人、ボロボロになりながら何とか小鬼を突破してきた結城を六道寺が癒すと、砦に小鬼たちが残っていないことを確認して一行は帰路につくことにした。
「お疲れさん。首尾はどうだった?」
「小鬼たちの数、説明にあったよりもかなり多かったですね」
砦はある程度壊したので、砦としての脅威はなくなったであろうこと。また、竜虎2隊でかなりの数を倒したものの全ての小鬼を倒しきれなかったことを南天はギルドの親仁に報告した。天螺月は、包囲網からこぼれた小鬼たちを誘導して逃がしていた体格の良い鬼がいたことも付け加えた。
「予想よりも多かったか‥‥ 報告ご苦労さん。それに撤退を誘導する鬼か‥‥」
心配そうに溜息をつくと、親仁は腕組みして考え込んでしまった。
「近くに集落でもあるんだろうか‥‥」
親仁は台の上に報酬を置くとブツブツ言いながら奥へと引っ込んだ。