●リプレイ本文
(時折、行動不成立の理由や解説が付記してあります。リプレイ的にはお見苦しいことをお詫びします。今後の参考にしてくださいね)
●細工は流々
目的の砦に到着した虎隊は、ギルドから入手した地図を写してきた木板と現地の地形を比較確認しながら、狩りで食事のネタにありついていた。煙や匂いで小鬼たちに気づかれるのも何なんで、本隊の潜伏場所も考慮済み。更に、突撃する地点や小鬼たちが逃げ込むように仕向ける場所も選定済みである。
「罠は仕掛けてきましたよ」
「細工は流々、仕上げを御覧(ごろう)じろだぜ」
戦場での工作に長けた闇目幻十郎(ea0548)と伊珪小弥太(ea0452)が、小鬼たちが逃げ込んでくる場所に罠の設置して帰ってきた。それを手伝った狩多菫(ea0608)とリーゼ・ヴォルケイトス(ea2175)と霜月流(ea3889)も一緒だ。
「期待してるぞ。やはり、まずは敵を知る事だな。砦にしても、小鬼達にしても隙だらけだ‥‥」
近くまで接近して砦を探った天城烈閃(ea0629)は、ブレスセンサーで敵の数や配置を確認し、突撃経路に罠がないか調べて帰ってきた。優れた視力と嗅覚を持ち、殺気を感じ、兵法を知り、忍び歩く。志士でありながら忍者顔負けの活躍であるが、特に忍び歩くことに関しては天城が最も優れており、偵察の内容から言っても彼以外に適任者はいなかった。
情報を統合し、作戦は予定通りに行われることになった。小鬼の数が多いのが気になったが、この機に少しでも減らしておくに限る。
「明日に備えて寝よっ」
罠作りで疲れたのか、狩多は寝袋にもぐるとすぐに寝息を立てた。見張りを立てて他の者たちも眠ることにした。
●挑発
さて、準備万端、虎隊は戦いに望んだ。
闇目と狩多はわざと姿を現して砦に近づき、罠を張ったときについでに作った即席の弓を砦に向けて放つ。武器としての効果は期待してはいない。誘き出せればそれで事足りるのである。
「ゴブ〜〜!!」
たった2人での攻撃。そして当たりもしない弓矢。小鬼たちは完全に舐めきって砦から出撃した。狩多が火のついた松明を投げつけるが、悪あがきくらいにしか思わなかったのだろう。2人の逃げ出す素振りに小鬼たちは笑い声さえあげながら向かってくる。
奇襲班が小鬼たちを体よくあしらいながら砦から引き離しに成功したのを確認して、虎本隊は潜んでいた草叢からとび出した。
「ゴブッ?」
小鬼たちは背後に現れた冒険者たちに驚いたが、いままでの優位にひたっているのか、まだ数で勝っていることに拠ってたっているのか、斧を構えると突撃してきた。
「俺の六尺棒の餌食になりたい奴は来やがれってんだ!!」
伊珪は六尺棒を大振りで払い、武器の重量を乗せて小鬼に叩きつける。ブンッと唸りをあげる六尺棒の間合いを避けるようにリーゼが伊珪を狙う小鬼たちに牽制をかけて援護した。(ポイントアタックのスキル説明での「敵の無傷HP数」に関しては誤解しているPLは多いかなと思ったので少し解説‥‥ 小鬼のように防具をつけていないモンスターに対してポイントアタックを使う場合、特定の場所を狙えるだけで追加ダメージはないと考えてくださいね。PCデータにもありますよね。『無傷:2』とか‥‥ あの値が追加ダメージとなります)
(「これなら私が手を出すまでもないな」)
前衛の討ちもらしを処理しようと考えていたリーゼは、当たり外れが大きいが一撃ごとに小鬼を叩き伏せる伊珪に戦闘を任せ、伊珪の後ろに下がりオーラエリベイションを唱えた。
「闇目、狩多、配置について」
リーゼは首や目を狙って小鬼たちが詰め寄るのを切り開き、乱戦に巻き込まれていた闇目と狩多を逃がした。
「ありがと、リーゼさん」
狩多が手を振って駆け去っていく。
「そっちへ向かった小鬼は放っておけ!!」
伊珪が叫ぶ。無理をすれば、ここにいる小鬼を全て倒せるかもしれない。しかし、砦の中にまだまだ小鬼はいるのだ。奇襲班が待ち受ける方に向かったのなら問題はなかった。
「わかったよう」
僧侶成行(ea0799)は斧と交錯するように六尺棒の石突で小鬼に突きを入れた。仲間と連携して、向かってくる小鬼を確実に倒していく。(プレイングにあるオフシフト・カウンターアタックは『回避(0AP)+オフシフト(1AP)+カウンターアタック(0AP)+攻撃(1AP)=2AP』ですので、AP1の今回は不成立となります。COはAP消費(または追加消費)が必要と表記されていない限り0APで発動しますが、攻撃する時には最低でも1AP必要ですのでお気をつけて)
「そこっ! 俺に見つかったのが運の尽きだったな」
ヒュンッ! 長弓から矢が放たれる。(プレイングには『クイックシューティングを使い』とありますが、体力10ではEP8の長弓をクイックシューティングできません。EP5以下の射撃武器を装備しましょう)
「ギャッ」
ブレスセンサーで呼吸を感知できる天城にとって、草叢に隠れるなど隠れていないも同然だった。
「悪いが、そう簡単に逃がしてやるわけにはいかないんだよ」
包囲から逃げ出そうとしている小鬼たちは、わざと逃げられるように仕向けた場所へ向かった一部を除いて、ことごとく矢をくらうことになった。
「逃げる方向はそっちじゃないよ」
体に電気を帯びた天狼寺雷華(ea3843)が、孤立しないよう注意しながら小鬼の行く手を遮る。慌てて方向を変えた先は言わずもがな‥‥
●ブービートラップ
小鬼たちが近づいてくるのを確認して闇目は湖心の術の印を組んだ。術の発動を確認して草叢に伏せるが、その音はしない。
三菱扶桑(ea3874)は、どぶろく片手に林の中に潜んでいた。
「ふっ、この程度の酒で酔うものか‥‥ おまえもやるか?」
「戦の前です。遠慮しときます」
霜月は酒を勧めたが、それを丁重に断った。
あらかじめ決められた場所へ追い込むと、小鬼たちは次々と転んだ。その足元には輪になるように結ばれた草があちこちに見える。
「ギャア!」
「グブッ‥‥」
鋭く尖らせた杭が小鬼たちの胸や腕に突き刺さった。続いて後ろを走っていた小鬼たちもそれに気づいて止まろうとするが、団子状にもつれて倒れてしまう。
霜月、狩多、闇目、三菱が各々隠れていた場所から飛び出す。
倍近い体格差と雄叫びで三菱は小鬼を威圧して、日本刀を振り回した。どの流派とも言いがたいが、その剣筋は並みではない。確実にさばき、打ち込むたびに小鬼たちに悲鳴が上がった。
「この燃え盛る正義の炎をぶつけてあげる! ‥‥なんちって☆」
トラップゾーンを器用に避けながら狩多は小鬼に火炎剣を衝き立てた。
立ち上がろうとする小鬼たちの足元を霜月の短刀と小柄が払う。武器が武器だけに大きな傷を負わせることは出来ないが、小鬼たちが体勢を立て直す暇を与えないことには成功している。転んだ状態から振るわれた斧をかわして一度距離をとると、足元の罠に気をつけながら再び間合いを詰めて両手の刀を振るった。
「大人しく成敗されてね☆」
追いついた仲間が半弓状に包囲網を作ったのを見て、狩多たちは残る一方を封鎖した。逃げ場を失った小鬼たちが何とか突破を試みようとするが、今度は冒険者たちのほうが多い。傷つき、または身動きの取れない小鬼たちに勝機などあろうはずもなかった。
●『連携』と『協力』
一度終結した虎隊は、傷ついた者たちには迷わずリカバーポーションを使って傷を癒すと再度襲撃をかけるか話し合った。
「全く‥‥ 塵も積もればとはよく言ったものだ」
10頭近く倒したにもかかわらず、まだまだ多数残る小鬼に三菱は思わず呟いた。
明らかに小鬼たちの連携は高まっている。小鬼たちの後ろにチラと見える体格の良い鬼のせいなのではないかと思われるが、判断しきれない。その鬼に指揮されるように小鬼たちは続々と集結していた。
「なんとかならない数ではないでしょうが、情報を持ち帰るのが任務です。一度退いて体勢を立て直しましょう」
霜月は奇襲班に撤退を示唆した。
「そうだな。きっちり生き残ることが今回の目的だ。無理をする必要はない」
リーゼも撤退に同意した。
「しかし、倒せるときに倒しておいたほうがいいのも事実だ」
「確かに‥‥ わかった。だが、引き時は私の指示に従ってもらう。それで良いなら襲撃しよう」
伊珪たちは小鬼たちの漸減を望んでいたが、深追いせず下手な色気を出す気もなかった。そこで、リーゼたち偵察重視派と双方が歩み寄る形で方針が決定した。
抵抗が散発的であったため鎧袖一触これを蹴散らして、三菱が皆の踏み台になって堀を渡り、柵を壊して砦に侵入した。しかし、砦は蛻け(もぬけ)の殻。残っていた数頭を撃破すると虎隊は帰路についた。
「報告は聞かせてもらったよ。なかなかやるじゃないか」
ギルドの親仁はニッコリと笑って虎隊を見渡した。
「これは約束の特別報酬だ」
台の上には報酬のお金が入った袋と一緒にリカバーポーションがズラリと並んでいる。使ってしまったリカバーポーションを補充しても人数分あったのはありがたかった。
「大した物とは言えないが、これからの依頼できっと役に立ってくれるはずだ。頑張れよ」
竜虎共に似たような作戦で活躍したのは間違いなかった。そんななかで虎隊の方が評価されたのは『偵察・罠設置・襲撃・誘引・待ち伏せ・撃破』と一連の作戦に隊が一体となり取り掛かっていたことだ。
『連携』と『協力』、このような依頼では特に重要なものを彼らは持っていた‥‥と、ギルドの幹部がしきりに感心していたと風の噂で聞くことができた。
作戦は一応の成功裏に終了したが、問題は残されたままだ。
砦に集結していた小鬼たちを分散させてしまったこと‥‥
戦いの最中に現れて小鬼たちの撤退を誘導していた鬼の存在。
鬼たちの集落が近くにあるかもしれないという可能性を示唆するものとしては確実性に欠けたが、危惧するに充分な情報だった。