大荒れ蟹合戦!!

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:10〜16lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 33 C

参加人数:8人

サポート参加人数:5人

冒険期間:05月04日〜05月10日

リプレイ公開日:2006年05月13日

●オープニング

 松林の陰から青い顔の男たちが覗いている。
「何だってんだよ‥‥ こいつぁ‥‥」
 荒くれの海の男どもが、こうまで恐れる原因は浜を見れば一目瞭然だった。
 蟹‥‥ カニ‥‥ かに‥‥
 そう。蟹である。それも一面の‥‥
 まぁ、ただの蟹であれば蟹鍋宴会だぁなんて暢気に騒ぐこともできるだろうが、流石に大小1対の鋏のうち大きな方が1mもあろうかという大蟹ともなれば笑ってはいられない。
「おっかねぇ‥‥」
「けど、美味そうではあるよな」
「蟹だもんなぁ」
 岩場に囲まれた浜を我が物顔に占領する大蟹たちを見て怖がっていたはずなのに、この会話‥‥
 結構大らかというか、何と言うか‥‥

 さて‥‥
「浜いっぱいの大蟹って聞いたときには源徳様に頼めばって思ったけどな。
 よくよく猟師たちの話を聞いてみたら10匹くらいだろ?
 しかも追っ払って戻ってこなけりゃ、必ずしも倒さなくてもいいって条件付きだしな。
 お前さんたちくらいの実力があれば何とかなるさ」
 笑顔でまくし立てる江戸冒険者ギルドの親仁に、冒険者たちは苦笑いした。

●今回の参加者

 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4734 西園寺 更紗(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8714 トマス・ウェスト(43歳・♂・僧侶・人間・イギリス王国)
 ea8917 火乃瀬 紅葉(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea9027 ライル・フォレスト(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0370 レンティス・シルハーノ(33歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

チップ・エイオータ(ea0061)/ システィーナ・ヴィント(ea7435)/ ネイ・シルフィス(ea9089)/ マクシミリアン・リーマス(eb0311)/ 太 丹(eb0334

●リプレイ本文

●右肩上がりの士気
「けひゃひゃひゃ、10匹程度か〜。上手くいけばいいがね〜」
 ドクターことトマス・ウェスト(ea8714)は、浜に並んだ蟹たち‥‥
「無闇に倒すのは可哀相だけど‥‥ 漁師さん達も困ってるだろうから、出来る限り頑張ろうよ」
 何か仲間たちの目の色がおかしいことに気がついて、ライル・フォレスト(ea9027)は苦笑いしている。
 結構、壮観なものがある。あ、流れ着いた魚を餌に集まってきたらしい。やはりとドクターがニヤつく。
「で、どんなやつかわかるか?」
 猟師たちと協力して取り残された船を回収したレンティスたちは、本格的に退治を開始することにした。
「強力な鋏を持った凶暴なカニで、意外と素早い動きをするので注意が必要にございます。特に攻撃を避ける横の動きは秀逸と聞いておりまする」
「じゃぁ、横薙ぎに攻撃するか」
 火乃瀬紅葉(ea8917)の説明にレンティス・シルハーノ(eb0370)は思いつきを言った。飛んだり跳ねたりしないし、確かに中りやすいかも‥‥
「硬そうだよな。刀とか効くのか?」
「大丈夫でござりますが、威力のあるものでなければ太刀打ちできますまい」
 日向大輝(ea3597)は頷いた。刃が通らないことも考えて槌を持ってきているから、その辺は大丈夫だ。刃こぼれするのも嫌だし‥‥
「むやみに命を奪うのも悩む所ですが、まずは、接近する前にファイヤーボムでこんがりと焼きますわ」
 クレア・エルスハイマー(ea2884)は、にっこり微笑んでいる。
「焼く‥‥ 倒した蟹って、食べれるんやろか? 試しになんか作ってみたら何方か食べてくれるやろか」
 砂浜だとやはり足元が悪いと、西園寺更紗(ea4734)は感触を確認しながら呟いた。
「ところで皆様、これは大事なことにございますが‥‥ 焼き蟹はお好きにございまするか?」
 民が困っているのを捨ててはおけぬ。しかし、それと同等なほど、焼き蟹が好物と火乃瀬は力説し始めた。
 ファイヤートラップをどこに仕掛けようかという相談を中断してまで‥‥
「大蟹か。大味だが食べでがあって美味いんだよなー。たくさん倒せたら村人呼んで宴会だな」
「悲しいですが、これも生存競争の現実、蟹には今日の夕飯になって貰いましょう」
 レンティスはまだしも、ルーラス・エルミナス(ea0282)まで‥‥ 蟹は人を変えるものらしい‥‥
「ところで弱点とかないの? 例えば腹の部分の甲羅が薄いとか」
「表に比べれば軟らかいかもしれませぬが、やはり硬うごさりますし、鋏が待っておりまする。危のうござりましょう」
 一瞬現実に戻され、我に返った火乃瀬たちは、ライルに先導され、砂浜を進んで大蟹たちとの距離を詰めた。
 目印を立て、ファイヤートラップを仕掛け終わると‥‥
 いよいよ蟹尽くしの、いやいや、蟹との決戦の幕が上がるのだった。

●蟹、蟹、蟹‥‥
 フレイムエリベイション、オーラエリベイション、オーラパワー‥‥と各々ありったけの魔法をかけると配置に散らばり始めた。
 ひょいと穂先が見えたり、手が上がったり‥‥ 準備万端のようである。
 一瞬の後‥‥
 ズドォオオン‥‥
 凄まじい熱気と共に火球が膨れ上がり、直径30mほどもファイヤーボムが焼き尽くした。
 巻き込んだ7杯のうち、甲羅が一部赤く変色した蟹は4杯。残りも酷く焦げている。
「フレイムエリベイション‥‥ 便利ですし、私も次に修得しようかしら」
 威力を目の当たりにして、う〜んとクレアは首を傾げた。
 クレアの実力では、この威力を成功させるには3割。フレイムエリベイションの助けがあれば5割までもっていける。
 本気で悩むところである。おっと、そうこうしている間に‥‥
「けひゃひゃひゃひゃひゃ、コ・ア・ギュレイトォ!!」
 少々浮かれ気味なドクターの掛け声と共に3体の大蟹が動きを止めた。
「ちっ、かっこ良くは決まらなかったね〜」
 最大数5体を一気に止められなかったことは不満だが、それでも戦果は十分!
「巌流西園寺更紗、参ります。祖は一にして二成り、二にして一成り、舞え飛燕の如く」
 右足を引き、半身にて対峙。長巻を構えて水際に展開していた西園寺が逃げてきた大蟹に一刀!
 右からの袈裟懸けで深い傷を与えるものの、足を取られて二の太刀がぶれる。
「あきまへん」
 横の動きにかわされ、大蟹は海へ逃げ込もうとしている。
「おぉおお、逃がさない!」
 片手でも触れるようになった槌を両手でしっかりと構え、日向は横殴りに足を払うように振りぬいた。
 フラフラしながら海へ逃れようとしているところへ、もう1発! 蟹は動きを止めた。

 別の場所では、甲羅の変色した蟹がルーラスの方へ突っ込んでくる。
「ウーゼルの白い戦撃! 止めてみせる!!」
 助走をつけ、威力を十分に乗せ、繰り出したルーラスの槍は大蟹の腹に深々と突き刺さった。
「手応えはあったが‥‥」
 瞬間、ぶくぶく泡を吐いて大蟹は仰向けに倒れた。
「みんな、やるなぁ」
 ライルは、日の光を浴びて炎が揺らぐような霊刀を鋭く振って甲羅を切り裂いた。
「止めを!」
 クレアのローリンググラビティのスクロールが発動し、大蟹が裏返る。
 そこへライルの剣が、ルーラスの槍が止めを差していく。
「俺達のお腹を満たす為だ、早く大人しくノされちまいな!」
 別の大蟹が突っ込んできたところ、大鋏を盾で受け、レンティスはミョルニルを鋭く突き出した!
「お任せ!」
 ライルの霊刀が甲羅を切り裂いた。

 ガチン!
 際どいところで大きな鋏を避け、日向は足を砕こうと回り込む!
 逃げ出そうとしたところに待っていたのはルーラスの槍。貫かれたところを日向の槌が待っていた。
 ズガン! ボンッ!
「逃がさないよ、焼き蟹ちゃん」
「おとなしくなさい。往生際が悪うござります。焼き蟹のために迷わず成仏してくださいまし」
 クレアのライトニングサンダーボルトの雷光が浜を走り、火乃瀬のマグナブローが火柱となって大蟹を焼いていく!
 海へ逃げられないと陸の方へ蟹走りするものは、猟師たちと仕掛けた網にかかって少しの間、動きを止めたり、ファイヤートラップに焼かれて再び海を目指したり。
「秘剣、ツバメ返し‥‥ まだ、うちの手にはおえんどすか」
 足場のせいにしないところが西園寺らしい。
 偃月刀を構えると、一息吸って近付いてくる大蟹を一閃、鋏ごとぶった切って甲羅を割った。
「流石に凄い威力やわ」
 突き刺した長巻を背に、仲間たちが討ち漏らした大蟹を叩き切っていく。その間にも‥‥
「追いかけられた恨み、忘れていないぞ〜」
 ドクターのコアギュレイトが次々と大蟹たちの動きを止めていく。
「なんのことだ‥‥」
 ドクターの言葉に首を傾げながらもレンティスは槍を繰り出し、大蟹を倒した。
「最初のファイヤーボム、あれが効いたな」
「だが、半端に耐えたのがいなかったら、いくらかは逃げられていたろう」
「だな‥‥」
 レンティスとルーラスは大蟹から槍を引き抜いて言葉を掛け合った。
 彼らが残る大蟹目指して走って行く間に、ダブルのマグナブローで蟹が焼かれ、他にも次から次へと狩られていく。
 大蟹が全滅するのは時間の問題だった‥‥

●大蟹鍋、大鍋蟹
「これで大丈夫。感謝するのだね〜」
 冒険者たちの被害は軽微。トマスのリカバーで、ちゃちゃっと治してしまった。
「すげ〜、天女様だぜ。きっと」
「努力が報われたのかしら?」
 クレアが魔法で起こした火を見て、猟師たちが喝采を送っている。
「蟹女神としてお祀りしようかな」
「遠慮しときますわ」
 いつの間にか仲良くなってしまったようだ。浜の猟師の家族たちも集まってきた。
「やっぱ、塩茹ででしょう」
 甲羅をそのまま鍋に見立てて、海水と身を放り込んで焚き上げる、宴会モードのレンティスたちとは別に‥‥
「喜んでくれるかな」
 仲の良い者たちのために、お土産を持って帰ろうとライルは一足早く帰還することにした。
「ふ〜ん」
「何だよ〜」
「半分同士がくっついている分にはいいのだよ〜。けひゃひゃひゃ」
 ドクターは、嫌味っぽいが優しい目でライルを見つめ、手の平をヒラヒラするのだった。
「念のために蟹避けの松明を当分浜に灯しておくといいよ」
「ありがとな。優男さんよ」
 妙なノリの猟師たちに別れを告げ、ライルは別れた。
「さーて、やっぱ甲羅酒でしょう」
 既に猟師たちが用意していた酒を、ダバダバと別の甲羅に注いでレンティスや猟師たちは一斉に口をつけた。
「無邪気どすな」
 偃月刀を振り上げて一気に振り下ろす西園寺は、仕方ない人たち‥‥と、ばかりに溜め息をついた。
 ぱかっと縦に割った蟹足を甲羅鍋に放り込んでいく。んで、ちょっぴりつまみ食い。
「体動かした後だから何でもうまい‥‥ってわけじゃないよな」
「あたぼうよ。海のもんは塩で焼くか海水で煮るのが一番美味いんでぃ」
 日向は、あははと声を上げて笑った。
「最後は餅入れるからな。今日は蟹鍋尽くしだ〜」
「おぉ〜」
「至福の時でござりまする〜」
 そんな彼らを見て、火乃瀬は満足そうに焼き蟹の足を頬張っている。
 幸せそうな顔が連鎖していく‥‥

 さて‥‥
 猟師たちは宴会を楽しんだ甲羅を砂浜に置き、蟹避け用に逆茂木を立てた。ルーラスの立てた十字架に組んだ杭と共に。
 この浜に再び大蟹が現れたという噂は、まだ聞けない‥‥