危急の謎々

■ショートシナリオ


担当:塩田多弾砲

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 64 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月30日〜09月03日

リプレイ公開日:2009年09月09日

●オープニング

 それは、一人の商人の死去から始まった。

 喜代乃河原鬼右衛門。商店「喜代乃屋」の家主。
 趣味・謎々。
 彼は勤勉に働いたため、一代で財を成した。が、ひとつだけ困った点があった。それは「謎々」。
 謎々が好きで、暇な時には周囲の人間へと謎々を問いかける事を事のほか好んでいた。家族は当然ながら、この趣味に辟易してはいた。
 が、この謎々に夢中になる事以外はいたって普通、否、普通以上に勤勉かつ誠実かつ善良、そして親切であり心優しかったため、家族を初めとして、彼を悪く言う者はほとんど皆無であった。
 が、それでも問題が無かったわけではない。
 謎々好きが講じて、彼は築き上げた財産を保管し、その場所を謎々で隠すといった事を行っていたのだ。
 
 こんな調子で、様々な値打ちものや大金を手に入れた時。その全てに謎々で保管場所を記していた。
 しかし、そんな彼もまた、病と歳には勝てず、この世を去った。
 
「父が亡くなり、遺族に財産と店の権利を相続する事になりました」
 ギルドは応接室に、利発そうな少年が訪ねている。
「私の名は、清野幸吉。母方は江戸の武家の生まれです。そして、鬼右衛門の息子になります」
 なんでも、鬼右衛門は女性好きで、何人もの女性を見初めてはしていたという。出来た子供も、一人や二人ではない。
 しかし、その子らに対しても分け隔てはしなかった。決して放置などはせず、常に自分の財力で彼らの住まいや生活費を世話する事は行っていたのだ。幸吉もまたその一人だった。
「で、私も含め、何人かがその相続権を与えられる事になったのですが‥‥」
 ひとつ問題があった。
 まず、相続権は鬼右衛門と正妻との間に出来た長男・観七郎、および鬼右衛門の弟である作左衛門。この二人を初めとして、数名に権利が与えられた。
 商才ある鬼右衛門ゆえ、その財産は莫大なものがあった。が、そのほとんどが観七郎と作左衛門に割り振られるだろう、との事であった。
 こうして、第一候補の作左衛門の名義で、第二候補の観七郎が実務を取り仕切る事となった。作左衛門はこのところ古傷が痛み、あまり出歩く事ができなくなってしまったのだ。ゆくゆくは、観七郎が全てを継ぐ事になるだろう。
 第三候補の幸吉、そして以下の候補者たちも、相続は辞退。これで全て丸く収まる‥‥と、思われた。

 しかし、収まらなかった。莫大な遺産は時として、余計な存在をも呼び寄せる。遠縁の、候補としては十番目くらいの位置にいる欲深い者がこれに不満を申し出たのだ。
 が、家の者たちは当然彼に反対し、その言い分もまた当然ながら通る事は無かった。
 ここから、この欲深い男‥‥矢島玄之助は、悪知恵を働かせたのだ。
 
 その日、事件が起こった。
 そしてその日より、新たなる問題が起こることとなった。

 観七郎が、商品を仕入れに土浦の本店から、江戸へと赴いている最中。その帰り道に行方不明になったのだ。
 商品の積まれていた馬と荷車が、街道沿いに放置されていたのを旅人たちが発見していた。荷車の商品には手が付けられていない。連れていた愛犬・太郎もまた姿を見せない。
 そして翌日。甥が行方不明になり気を揉む作左衛門の元へ、素性の知らない者が尋ねてきたのだ。
 身なりはきちんとしていたが、その男から漂っていた雰囲気は、堅気のそれではなかったらしい。奥座敷でなにやら話し合っていたが、
「そんな話は聞けぬ!」と怒りをあらわにして、作左衛門は客を追い返した。

 その日の午後。傷だらけの太郎が商店へと戻ってきた。
 太郎は、首に何かの書付を持たされていた。それを作左衛門に渡すのを見届けると、愛犬はそのまま逝った。

 更にその翌日。
 作左衛門は、診てもらっている医師の庵へと向い、その帰り道。
 彼は、辻斬りにあって致命傷を負ってしまったのだ。
 たまたまその場にいた幸吉が駆けつけたが、遅かった。辻斬りは逃げてしまい、作左衛門は虫の息。
「わたしの、書斎にある書付を‥‥」
 そう言って、作左衛門は事切れた。

 その書斎も、いつの間にか何者かに入り込まれ、荒らされている。
 が、書付は無事だった。それによると、壊れ物を入れた土蔵の扉を開けよ、と記されていた。
 幸吉は事情を家人に話し、土蔵を開けた。そこには、三枚の書付が隠されていた。
 
 一枚目には、この事件の裏側。
 先日に来た客は、矢島玄之助の手の者で、どうやら観七郎を襲撃したのも彼らしい。
 が、観七郎は怪我を負ったものの、捕まる事無くどこかに隠れているらしい。そこで、どこにいるか知らないかと訪ねてきたのだ。
 そしてもうひとつ、矢島は観七郎と作左衛門の二人に、自主的に自分へ相続権を譲与させたいらしい。そうすれば、後から何事も無く自分のものとできる、と考えての事だそうだ。
 もちろん、このような申し出は聞けないと、作左衛門は突っぱねた。

 だが、作左衛門は観七郎の居場所を知っていたのだ。あの犬・太郎が命をかけて持ち帰った書付。それには謎々が書かれ、「この謎々の答えと同じ蔵に、自分は居る」と、観七郎の書名が入っていた。
 それには、紛れもなく書き記されていた。謎々が。
「皆様には、この謎々を解いて、観七郎殿を助けていただきたいのです」
 そう言って、幸吉は紙切れを取り出し、君たちの前に広げた。
 書付は二枚一組らしく、次のような文句が書かれていた。

 一枚目。
『以下の四名のうち、誰かはわからぬが一人だけは正直者。それゆえに嘘はつかない。
 さて、四名のうち一人が盗みを働いた。彼ら四人の言い分は以下の通り。
二作「盗みをしたのは孝三だ」
孝三「盗んだのは五助じゃ」
四郎「おらはやってないだよ」
五助「孝三はおらだと言ったが、ありゃ嘘だべ」
 盗みを働いたのは誰か?』

 二枚目
『商店には、数多くの武器も商品として置かれている。短刀に弓、槍に脇差、金剛杖、そして刀など。
 商品の、刀の数を述べよ。
 槍の数の三分の二が、脇差の数に等しい。脇差と弓とを足すと、金剛杖の数と一致する。
 短刀の数は、脇差の半分。槍と脇差と短刀を合わせた数は、金剛杖の倍になる。槍と脇差と弓に一を足し倍にした数が、刀の数なり。
 なお、短刀の数は、一枚目の謎々で盗みを働いた犯人の名前、その数字に十を加えたもの。
 
 これを見つけて謎々を解き、刀と同じ数字の蔵に、自分はいる』

 喜代屋には、番号が振られている土蔵を土地周辺に有している。その数は合計三百以上。
 うち半数以上は使われずに放棄されていたり、中には人に貸しているものもある。が、それでもあちこちに散らばっているため、短時間で全てを探し回る事はとても不可能。
「このように謎々で自分の居場所を記したのは、矢島に見つかったときに、簡単に知られないためだとか。ともかく、現時点で相続の候補が自分になった以上、観七郎殿を助ける責任があります。ですが、謎々は苦手でして」
 そして謎々を解き、その蔵に向ったとしても。おそらくは矢島の部下が着いてきて、後ろからいきなり襲い掛かるかもしれない。
「知恵と、守る力を、皆様にお借りしたいのです。報酬は多めにさせていただきますので、どうかよろしくお願いします」

●今回の参加者

 ea0988 群雲 龍之介(34歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb8588 ヴィクトリア・トルスタヤ(25歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ec4507 齋部 玲瓏(30歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 ec5127 マルキア・セラン(22歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

「この手のリドルは、良くありますね。正直者以外が必ず嘘をついている‥‥という前提で、一番目のリドルを解いてみましたが」
ヴィクトリア・トルスタヤ(eb8588)、ロシア王国より来たれる美しきエルフは、自らが導き出した謎々の答えを説明し始めた。
依頼を受けた冒険者は四名。
誠実なる眼差しと志を持つ、義の剣士・群雲龍之介(ea0988)。
優しき微笑と、長き黒髪を有する陰陽師・齋部玲瓏(ec4507)。
そして、赤き髪と青き瞳の、エルフの血を半分受け継いだメイド服姿の美少女・マルキア・セラン(ec5127)。
四人は今、幸吉の家の応接室にて、幸吉と書付を前に謎解きしている最中であった。
書付を受け取り、冒険者たちはその謎々に挑戦してみた。が、ややこしいこの謎々には、さすがに皆の手にあまり、四人中三人は確信にたる答えを出す事はできなかった。
「ともかく、答えは出ました。それが正解ならばよいのですが」
しかし、ヴィクトリアは答えを導き出した。
依頼人の幸吉は彼女と相対し、その白磁のような白く美しい肌と髪に、豊かな胸、緑の宝石がごとき碧眼と目尻のほくろにしばし見とれ、言葉を失っていた。さらに加え、その頭の良さにも感心するとまでは思ってもいなかった。
「‥‥と、申しますと?」
 若干顔を赤らめつつ、質問する幸吉。
「結論から申しましょう。一枚目のリドルの答えは『四郎が犯人』という事になりますね。最初の前提が、あくまでも『一人は常に正直で、ほかの三人は常に嘘をつく』と仮定しての話ですが」
「はあ」
「他の3人が必ず嘘を吐いているのなら、逆の事を言っている孝三と五助のどちらかが正直者に、二作と四郎は嘘を吐いている事になる為‥‥やっていないという四郎が犯人となります。理論から導き出せば、こうなりますね」
「な、なるほど。して、二枚目は?」
「こちらは、計算の問題になります。四郎が犯人であるならば、数字は四。四に十を足した十四が短刀の数。そして、短刀の倍が脇差ですから、脇差の数は二十八になります」
「‥‥確かに、それから?」
「槍の三分の二が脇差なのだから、槍の数は四十二。槍と脇差と短刀の合計が、金剛杖の二倍。となると、八十四の半分で四十二が金剛杖」
「‥‥ふむ、ふむ!」
 ウィザードゆえか、魔法のみならず謎解きにもここまで造詣が深いのかと感心しつつ、幸吉はヴィクトリアの答えを食い入るように聞き入っていた。
「脇差と弓の合計が金剛杖の数。したがって、金剛杖から脇差の数を引けば、弓の数が出ます。すなわち、四十二から二十八を引いた、十四が弓の数。そして、槍と脇差と弓の数を合計、四十二と二十八と十四を足した八十四。それにひとつ足して八十五。その倍の数が‥‥」
「‥‥百七十か! なるほど! さすがは冒険者様!」
「喜ぶのはまだ早いですよ、幸吉さん」
 思わず躍り上がった幸吉を、ヴィクトリアは諌めた。
「あくまでも、最初のリドルの前提が正しければ、の話です。可能性としては、ほかの数字になることも考えられますから、145、158、182番の蔵にも人をやっておいてもらえますか? 私たちはこれから、170番の蔵へと向かいます。場所を教えてください」

「それにしても、見事なものですね。あのように謎々を解いてしまわれるとは」
 道中、玲瓏はヴィクトリアへと声をかけた。170番倉庫は、土浦から馬で半日のあたりに位置する場所に建っていると教えられた一行だが、そこは場所が悪く、道もあまり整備されてはいなかった。
「いえいえ、大した事はありませんよ。それより、本当にこっちの道でいいのかしら?」
 馬を駆って、獣道と大差の無い道を先にと進む。玲瓏は早雲に、群雲は碧王丸にまたがっていたが、馬のないヴィクトリアは、幸吉から馬を借りていた。そして、マルキアは空飛ぶほうき‥‥フライングプルーフにまたがって、空中を移動している。群雲から借りたものだ。彼女もやはり、馬を持っていなかった。
 群雲の碧王丸には、犬が付いてきている。跳丸、群雲の忠実なる愛犬。
「もらった地図には、こちらで良いと記されている。いるが‥‥」
 周囲のうっそうとした気配に、群雲は不安を禁じえない。170番の蔵は、かつては隠し金蔵のような目的で作られた蔵で、盗賊よけにとあえて行き来しにくい場所に建てられた、との事。しかしあまりに不便なため、もっと便利な場所に金蔵を建てようという事になった。
 内部の物品はすべて移され、蔵そのものはそのまま忘れられた‥‥というのが、簡単ないきさつ。
「しかし‥‥許さぬぞ、矢島玄之助! 貴様の悪行は、身をもって償わせてやる」
 木々の密集とともに、群雲は悪人への怒りをあらわにした。群雲は聞いていたのだ。出発する直前に、幸吉より聞いた話を。
 玄之助の周辺、または近しい人間を、幸吉は間者を放って調べさせていた。その結果、隠居した老人が水死体になって発見されたという。老人はごく普通で、とりたてて怪しい面などまったく無い人間だった。唯一の娯楽は謎々で、謎々を作ったり解いたりする事を得意としていたらしい。
 発見される前日、老人は怪しげな数人の浪人と言葉を交わしていたという証言があった。間違いなく、玄之助の手のものに間違いなかろう。そして、謎々を解くのに協力させられ、解いた後に殺されたのだろう。それを思うたび、更なる怒りが群雲の胸中に膨らむ。
 この無念、必ずやつに後悔させてやる。手綱を取る手に力を入れつつ、群雲は碧王丸を急がせた。

「‥‥やっぱり、付いてきているみたいですねぇ」
 心の中で、マルキアはつぶやいた。彼女は今、フライングプルーフで空中に浮かび、周囲を警戒しつつ先に進んでいる。特に後ろから、何者かが追跡していないかを注意していた。
 果たして、後ろを振り向くと、遠くから何かが近づいているのがわかった。そいつらは色つきの布をかぶった数名の人間で、こっそりとこちらを尾行している。
 距離はかなり離れているので、後ろから不意打ちされる事はないだろう。しかし、連中はどうやら自分たちを追跡する事で、観七郎の居場所を突き止めようとたくらんでいるようだ。
「気をつけなきゃあ、いけませんねぇ」
 観七郎さんを助けたとしても、一戦交える事になりそうだ。それを思い、マルキアはちょっとため息をついた。

 森の中、崖のすぐ近くに建っているそこは、完全に荒れ果てていた。土蔵の壁には蔦が這い、草木が生えて、半ば森林の一部と化している。廃墟と化していたが、蔵の扉はまだまだ頑丈で、扉として機能していた。分厚い鉄で作られたそれは、侵入者を拒み続ける番人のように、ぴったりと閉じられていた。扉に刻まれているのは「百七十」の文字。
「ざっと見たところ、罠らしきものは見当たらないですね」玲瓏が周囲を見渡し、調べてみる。確かに見たところ、罠らしいものは見当たらない。
「跳丸、どうだ?」群雲は、忠義心にあふれた小さな仲間へと声をかけた。すでに跳丸には、観七郎の使っていた服や持ち物から、匂いを覚えさせている。
 犬は主人の期待に答え、吼えながら蔵へと向っていった。
「開けてみましょう。きっと中に、隠れているはずです」
 ヴィクトリアの言葉は、当初は期待。そして、期待通りの結果がそこにはあった。
 玲瓏が、次に言葉を発する。それはおそらく、受け取る側が最も聞きたいと考えていた言葉。
「観七郎さん、ですね? 助けに来ました」

「しっ!」
 しかし、そのまますぐには助けない。いや、助けられなかった。
 後ろから、やってきた者たちがいたからだ。テレパシーでマルキアと会話した玲瓏は、その者たちの存在を知っていた。
『玲瓏さん、来ますぅ!』
 それとともにやってきたのは、柄と人相の悪い、見るからにごろつきといった風貌の、数人の男たち。
「あなたたち、ひょっとして玄之助」「たたんじまえ!」
 ヴィクトリアの言葉が終わらぬうち、そいつらは刀を抜いて飛び掛ってきた。
 だが、ヴィクトリアはそれに対して全く動じていない。不快そうな顔で、自分に一番近い場所の男を氷詰めにした。
 アイスコフィンの呪文、氷の棺により固められたそいつは、驚愕の表情のまま凍りついている。
 だが、それをかいくぐり、数人の男が扉に手をかけて内部へ潜入しようと試みた。山鬼もかくやの巨漢二人が、扉に手をかけて開こうとする。
「はっ!」
 だがその二人は、数日間寝込むほどの怪我を負うことになる。ひとりは、扉の影に隠れていた群雲の鉄拳をもろにくらい、顎を砕かれたのだ。もんどりうって倒れ、そいつはそのまま気絶した。
 もう一人は、マルキアに組み付かれた。ごろつきは組み付いてきたのがエルフの少女だと知り、最初は脅威に感じなかった。それが脅威と感じたのは数秒後の事。
 マルキアの剛力が、そいつを投げとばした。まるでつまらぬ石ころでも放るかのように、男はマルキアに投げ捨てられたのだ。追い討ちに蹴りを食らい、そいつはそのまま、地面に頭から激突した。
「ひっ‥‥!」
「逃がしません」
 一挙に形勢不利になったごろつきたちは、逃走を試みた。が、それすらもかなわなかった。
 玲瓏が、ウインドスラッシュの呪文を放ったのだ。真空の刃が発射され、彼らを降参に追い込む。
「‥‥まったく、話を最後まで聞かない人間は大嫌いよ」
 全員が叩きのめされ、行動不能になったところで。全員が縛り上げられた。
「さて、質問させてもらうわね。矢島玄之助はどこにいるのかしら?」
 先刻に出来なかった質問を、ヴィクトリアは口にした。

「た、助けてくれ! 頼む!」
「この程度ではまだ生ぬるい! 己の所業をじっくりと反省させてやる!」
 ごろつきどもを締め上げ、一行は玄之助が隠れていた隠れ家をつきとめた。
 そして、群雲は率先して殴りこんだのだ。わずかな用心棒がいたが、彼らなど群雲の敵ではなかった。
「これは犬の太郎の分! これは作左衛門殿の分! これは鬼右衛門殿の分! これは観七郎殿の分!」
 拳に血が付く事など省みない。もはや血みどろの肉塊となった玄之助の顔面だが、群雲はまだ殴り足りなかった。
「きさまを牢に送ってやる。そして二度と出てこれないように、きさまが今まで行った所業を繰り返させないように、教え込んでやる。覚悟しろ!」
 ひいひい言って慈悲を請う玄之助に対しては、冒険者たちは同情しなかった。否、するつもりもなかった。

 こうして、全てが終わった。
 かくして、観七郎にすべて権利がわたり、新たな店として再スタート。
 犯人は牢内に。
 あの世にいる犬たちの冥福を祈りつつ、このような事件が起こらぬようにと、そう思う一行だった。