蛇の道はヘヴィだぜ‥‥

■ショートシナリオ


担当:塩田多弾砲

対応レベル:1〜3lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月19日〜01月24日

リプレイ公開日:2005年01月27日

●オープニング

「え? ああ、お茶ですか。これはこれは。安いお茶をどうもご馳走様です。
 はい、ワタクシ、商人です。え? なんだか老けてる? 失礼なこと言っちゃあいけません。これでもまだまだ現役でがんばってます。自分で言うのもなんですが、これでも頭脳明晰、身体も健康。虫歯だってありませんぞ、全て差し歯ですからね。
 え? 本題に入れ? ああ、はいはい。そうですね。時は金なりと申しますからね。
 ワタクシ、商人の銭葉拾夫と申します。落とした小銭を拾うのが趣味でして、ぜにはひろお、名は体を表しますなあっはっは。
‥‥面白くない? そうでしょうねえ、ワタクシも面白くないと思いましたよ。
 それで、ギルドの皆様に依頼したいことなんですが、まあ話せば長くなる‥‥短くしろ? 今そうしようと思ったところなんですよ。
 まあ、年甲斐も無く、ちょっと若い女の子に恋した老商人を想像してください。あ、ワタクシじゃないですよ?
 で、金の力でその女の子をいただいちゃいました。まったく、金の力は偉大ですよねえ。男は金ですよ金。金のある奴ぁ夢が無いとか言いますけど、あれは無いやつのひがみですね。皆様も、金持ちになればモテモテですよ。経験者のワタクシが保障します。
‥‥話を先に進めろ? ええ、進めますとも。そうせっかちにならないで‥‥。
 それで、金の力で結ばれたと申しますか、まあ大人の関係になったわけですよ。まあ、金遣いが荒いのが難点ですが、そこもまたかわいいんですよ彼女‥‥あ、ワタクシ関係ないですよ?
 ともかく、その老商人は毎晩若い女性と良い感じなところまで進んだわけですが、一つ問題が起きまして。寄る年並みには勝てぬと申しますか、夜になるとバタンきゅーと倒れてしまうんですよ。当然、彼女も欲求不満でして。はあ、我ながら情けない‥‥あ、ワタクシじゃないですよ?
 ともあれ、こればかりは金ではニンともカンともならないわけでして‥‥あ、そこのアナタ、笑ってますね? そんな事したら老人差別でお上に訴えますよ? お金の力は偉大なんですからね? マジですよ? 本気とかいてマジとふりがな振るくらいマジですよ?
‥‥はいはい、先に進みますよ。ほんとに最近の若いのはせっかちなんだから。
 まあともかく、ちょっと精力つけたいと思いまして、色々試したわけです。その結果、マムシ酒がかなり効きまして、常飲するようになりました。ええ、かなり強めですが、これがまた癖になる味で‥‥。
 まあ、ちょっとハマったわけですよこれが。それで、自分でも作ってみようと思いましてね、店の若いのにちょっと言って手に入れたんですよ。何をかって? 決まってるじゃないですか、蛇ですよ蛇。毒蛇のマムシをね。もちろん生きてるやつですよ?
 ところがワタクシ‥‥もとい、その老商人。あろうことか屋敷の酒蔵でマムシ酒を造ろうとしたその時、大きなくしゃみしてしまいましてね。壷に入れる前に逃がしてしまったんですよ。
‥‥だからアナタ、笑ってんじゃないですよ? マムシが逃げてしまったら、マムシ酒造れなくて、彼女との夜の生活が大変なことになってしまいますからね。まあともかく、マムシたちは酒蔵の中に逃げてしまったわけです。
 ええ、急いで酒蔵の周囲を囲いまして、ネズミ一匹猫の子一匹通れないように細工しましたとも。もっとも、蔵が広すぎて肝心のマムシがどこにいるのか、未だにわからないのが問題なんですが。
 え? 蔵を自慢してるみたい? いえいえ、みたいじゃなくて自慢してるんですよ。先代は金にあかして自分専用の酒蔵作り、そこで酒を造っては売り物にしてましたからね。酒蔵の大きさと広さは、我ながら大したもんだと思いますよ? 造るお酒もなかなかですし。
 先代も、ここでお酒を作っては若い子と飲んでたそうです。もっとも、酔っ払って滑って転んで頭を打って亡くなりましたが。皆さんも、こんなことにならないように注意してくださいね? え? 余計なお世話? 親切に忠告してるのに、ぶつぶつ。
 で、依頼したい件は‥‥ええ、お察しの通り、ワタクシの酒蔵に来て、マムシを捕まえて欲しいわけです。
 あ、殺すんじゃなくて、捕まえる、ですからね? 生きたままじゃないと、マムシ酒にした時の精力と芳醇な味わいが出ませんからね。
 かまれたら危ない? それをやるのがアナタ方のお仕事でしょう? こんな老人に毒蛇生きたまま捕まえろなんて、そんな残酷なこと言えませんよね。店の従業員にやらせたら、労働基準法やらなにやらで訴えられて、あとあと面倒ですし。
‥‥だからアナタ、そんな目で見ないでくださいよ。ワタクシお金しか能の無い、寂しくて孤独で無害でちょっぴりお茶目でもうじき死んじゃう哀れな老人なんですから。せめて死ぬ前に、若い女の子と遊んだりマムシ酒飲んで楽しんだりするくらい、バチあたるもんじゃないでしょう?」

 ギルドに来た老人は、ひどく元気そうな口調で依頼内容を口にした。

●今回の参加者

 ea6780 逢莉笛 舞(37歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea8904 藍 月花(26歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0569 小 道具(35歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0576 サウティ・マウンド(59歳・♂・ファイター・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb0577 衣 装(36歳・♂・ファイター・パラ・華仙教大国)
 eb0738 ショウ・メイ(17歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)

●リプレイ本文

「これはこれは、ワタクシのために来ていただいて感謝しますよ。ギルドの皆さん」
 銭葉は、無駄に好色な目つきで、冒険者達をねめつけた。
「で、とっとと自己紹介してもらえますかな? 時は金なり儲かりまっか?ですからね。ちなみに、裏方さんの声色でなく、本人の口からお願いしますよ?」
 その言葉に、サウティ・マウンド(eb0576)は引っ込まざるを得なかった。
「逢莉笛舞(ea6780)、よろしく」
「ほうほう、無駄に大きい巨人族さんですか。でかい女性は好みですよ? ‥‥睨んでますか? 目つきの鋭い女性は嫌いではないですね。そのような目で見られると、ワタクシときめいてしまいそうです」
「藍月花(ea8904)です。よろしくおねがいします」
「背筋いいですねー。おやおや、エルフとの混血ですか? 交際に関してはワタクシ気にしませんよ? 美少女ですから特に」
「小道具(eb0569)ッス、よろしく!」
「こちらも混血さんですね。安易な名前ですけど、美少女ですから交際に関してはワタクシ以下同文です。‥‥後は男ですか、まー、ちゃっちゃと紹介しちゃってください」
 衣装(eb0577)、ショウ・メイ(eb0738)の紹介をかる〜く聞き流し、銭葉は先の女性三人を口説きはじめた。
「で、皆様はちょっと年上でお金持っててダンディな渋いオジサマは好みではないですか? 好みでない? そんな事は‥‥ないですか、そうですか」
「ちょいちょい、依頼人さん。付き合ってる子おるくせに、仲間をナンパせんといてな。ちゅうか、俺ら無視かい」と、衣。
「ああ、これはこれは失礼しました。衣服さん」
「俺は衣 装! 服ちゃうで!」
「まあ、どっちでも似たようなものでしょう。ではこちらに来てもらえますかな。意匠さん」
「衣 装! 字違うやん!」
「はっはっはー、中々ハジケてますねー♪ 個人的にはハジケた言動は明るくて好きですよ」
「いやあ、あなたも中々ですよ。証明さんじゃなくってショウ・メイさん。清く正しく明るく美しく、生きるうえにはそういうものが必要ですからね」
「‥‥この依頼人、大丈夫か?」
 限りなく不安な気分で、逢莉笛はぼそっと言った。

 依頼人の言うとおり、確かに酒蔵は無駄に大きいものだった。大きな酒樽がいくつも並び、漂う酒臭さだけで酔っ払ってしまいそうだ。
「フツーの娘さんをここに誘うだけで、酔っ払ってメロメロになりますからね。で、そこを強引に押し倒し‥‥もとい、口説き落としてみたら、女の子は陥落しますからね。皆様もおススメですよ?」
「おススメって‥‥それってただの手ごめじゃないの?」
「そうとも言いますが、藍さん、美少女がそんな細かいところを気にしてはいけません。ともかく、この中に逃げ込んでる蛇どもをとっとと捕まえてくださいね? ワタクシ、期待してますから」
 私たちの仕事が失敗して、身体で弁償しろって事を期待してるんじゃあないだろうな。逢莉笛は心の中でツッコミ入れたが、賢明にもそれを口にはしなかった。
「それでは、皆様とっととお仕事開始してください。ワタクシは、彼女としっぽりしたく思いますので、何かあったら呼んでくださいね。柵の補強や仕掛け罠が必要なら、そこらの番頭や使用人に言ってください。すぐに用意させますから。ではでは」
 そういい残し、彼は屋敷内へと消えていった。

「やれやれ、ようやく仕事にかかれそうッスね」
「っていうか、あの人マムシ酒なんか飲む必要無さそうなくらい、無駄に元気そうだけど」
 バリケードを補強しつつ、小と藍は言葉を交わした。
「私も同感だ、藍。しかし、相手は毒蛇。ここから逃げ出して近隣の人々を危険な目に合わせるかもしれないからな。それは避けないと」
 逢莉笛が、藍の言葉に相槌をうつ。そうこうしているうちにバリケードの補強は終了した。
次に、小と逢莉笛は罠を作り、サウティたちは適当な木の枝から先端が二股になった棒を作った。
「よし、罠は完成した。これで蔵の中に仕掛けて、しばらく様子を見よう」
 逢莉笛と小は、鳥かごから罠を数個作った。中には、餌の虫や蛙、鼠が入っている。
「じゃあ、サウティに衣にショウ、蔵ん中入って適当に罠置いてきて欲しいッス」
「え? 俺らが行くのかよ!」
「チョイ待ち、なんで俺らがお前の指図受けなあかんのや?」
「サウティ、衣。んなの決まってるッスよ。自分は女、乙女っすから、お・と・め☆ 危険な仕事はまずは男が率先して行うべきッスからね。っつーわけでとっとと行ってこいでス。罠仕掛けてる最中にかまれちゃったら、乙女な自分としては中々やばいッスからね」
「俺らは咬まれてもええんかい!」
「ええんスよ。美少女のために身体張った事実が残って万々歳じゃあないッスか」
 しばらく言い合った結果、「とっとと入って来い」と逢莉笛から睨まれたため、男どもは罠を仕掛けに中へ。
 その際、「咬まれて死んだら化けて出てやる」と誓ったのは言うまでも無い。

 罠を仕掛け、夜もふけ、朝が訪れた。皆、交代で眠り見張っていたが、蛇が出てきた様子は認められなかった。
「蛇は、全部で三匹と言っていたな。仕掛けた罠は八個。そのうちのひとつくらいには、引っかかっているかもしれない」
「どうします? 調べてみる?」
 藍の提案に、逢莉笛はうなずいた。
 
 小たちに外の見張りを任せ、二人は中に入った。酒の臭いが鼻腔をくすぐり、酔ってしまいそうだ。
「くそっ、サウディたちったらこんなとこに罠を置いてるわ。引っかかるわけないじゃない」
 文句を言いながら、藍は罠を回収した。中の蛙が、禍々しい目つきで藍と逢莉笛を見つめている。
 しかし、それも残り二個まで集めた頃だった。
「やった! 捕まってる!」
 残り二つの罠に、マムシが入っていたのだ。

「というわけで、残り一匹は蔵の中を虱潰しに探すっつー事になったワケッスね。ま、あと一匹ならいいんスけど」
「ああ、畜生。なんか面倒やなあ」
「全くです‥‥暗くて狭いのはちょっと‥‥」
 眠っていた残りのメンバーは叩き起され、最後の蔵内探索に駆り出された。
「かくして我々は、以上のような事情により微妙に奇妙、意表をつかれうひょーな状況に身を投じていくのであった! 我々の前に立ちはだかるマムシは、はたして我々の前に姿を現すのか! 次の瞬間、我々の前に予想もしなかった光景が目に入り込んできた!」
 サウティの無駄な解説の前に、本当に予想外の光景が入ってきた。
 中身が空の酒樽の中。暗いその隅に、マムシがとぐろをまいていたのだ。寒いせいか、体の動きは鈍く、ほとんど動いていない。
「んじゃ、とっとと捕まえましょうか。サウティ、マムシ取りの棒を」
「冒険者達の女性リーダー、美貌の女傑、ジャイアント族の忍者、逢莉笛は、マムシを捕らえるべく二股の棒を手にした! その棒が掴むのは明日への栄光かそれとも毒牙の一撃か。しかしこの後、最悪な瞬間が一同を襲う!」
「いいから早くよこしなさい」
 サウティが取り出した棒を手に、酒樽の中へと忍び込む逢莉笛。しかし、酒樽に入って近づいたその時。
 蛇は、酒樽から逃げ出してしまった。酒樽の底に開いていた穴から、身体をすり抜けてしまったのだ。
「なんという事か! マムシは我々の手からすり抜け、樽より逃げてしまった! 我々の追撃を逃れるとは、なんという悪魔的頭脳、なんという狡猾さ、なんという動物的本能、なんという‥‥」
「それ以上言うな! 言ったらマムシより先にあんたを捕まえて酒に漬けるよ!」

「いやあ、ここまでやってくださるとは。ワタクシ感服いたしました」
 銭葉は、冒険者達が捕まえた三匹のマムシを目の前にして、満足そうに言った。
「にしても、三匹めはどうやって捕まえたんですか?」
「ああ、酒樽から壷の中に逃げ込んだんスよ。なもんだから、それに蓋をして、そのまま簡単に捕まえちゃいましたッス」
「そうですか、小さん。それはどうもです。いかがです? これを機に小さん、ついでに逢莉笛さんと藍さんとで、ワタクシが計画中のハーレムに参加するってのは」
「お断りします。目いっぱい」
逢莉笛は必要以上に、力強く言った。
「それは残念。まあ良いでしょう。それでしたら今の彼女を目いっぱい愛しまくりましょうかねえ。あ、報酬は後ほど支払いにうかがいます」
「ところで」
 藍は、去り際につぶやいた。
「‥‥華国には、マムシ酒よりもっと効くという噂の虎の○○を粉末にしたものがあるという話ですよ‥‥私は良く知りませんが」
「それは初耳ですねえ。ワタクシ、虎の事はタイガーい(大概)知ってたのですが、蛇より効くとは、蛇(へぇび)っくりです」

 どっとはらい。