四つの蔵の謎々

■ショートシナリオ


担当:塩田多弾砲

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 78 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月10日〜04月16日

リプレイ公開日:2006年04月17日

●オープニング

「どうか、みなさん。このわたくしに知恵を貸してください」
 大茶壷四乃(おおちゃつぼ・しの)と名乗る依頼人は、丁寧な口調でお辞儀をした。美しい着物と、丁寧に結われた髪。控えめな化粧は、清楚さをかもし出し、なお可憐な美しさを際立たせている。
「わたくしは、皆さんに知恵をお借りしたいのです。遺産がどこにあるかが分からぬことには、遺産が手に入らないのです」
 そういいつつ、「彼」は深くお辞儀をした。

 大茶壷一家は奇人で有名な富豪である。「大茶壷商店」という大きな商店を経営する商人一家で、まっとうな商売で財を成し、客に対しても礼儀正しく、扱う品物の品質もまたそれなりに良いものであった。
 が、その一家は全員が奇癖を有していることで有名である。家主の大茶壷礼之輔は奇書や怪書の蒐集家であったし、妻の比呂子は妖怪変化や魑魅魍魎の墨絵を描く妖怪画家。長男の一造は奇食、次男の二作は拷問器具や処刑用具の収集、三男の三閑は男女かまわず人体を艶かしく描く春画作家、そして四男の四乃は女装と、こういった按配。
 この点を除くと、大茶壷家は実に平和そのもの、むしろ理想的な家族とも言えるような一家であった。
「ですが、つい先日。祖父の大茶壷舞那須(おおちゃつぼ・まいなす)が倒れました。当年とって99歳、いつ亡くなってもおかしくない年齢です。お爺様はわたくしたちに、遺産を残すと申しまして、有している莫大な遺産を相続することになりました。ですが、ここで問題が起きたのです」
 よよよと、彼は泣き崩れた。
「わたくしのお得意様が、悪質な詐欺師にだまされ、借金を背負わされてしまったのです。それだけではなく、わたくしの知り合いが経営している孤児院も、経済的にうまくいっておらず、このままでは孤児達を路頭に迷わせる事になりそうです。また‥‥」
 大げさな身振りで、彼は悩んだ様子で宙を仰いだ。どうも素でこういう行動をしてるらしい。
「一造兄の友人、ないしはその家族に、治療に高い薬が必要な病気にかかった方がいらっしゃるとの事。また、三閑兄の恩人が結婚するそうなので、その祝い金も用意しなくてはならないし、二作兄の行っている慈善活動の予算も、最近になって盗まれてしまい、活動できないでいるのです。二作兄の作る食事を待っている、家のないご老人や子供達に、これ以上難儀させるわけにはいきません。
「つまりは、遺産を手に入れれば、それを使ってこれらの問題を解決できるのです。もちろん、我々も努力しました。二作兄は拷問器具や処刑用具を売り、いくばくかのお金を作りましたし、一造兄も奇食仲間からお金を借りました。三閑兄も春画を売り、わたくしも踊りや‥‥その、色々な事を行ってお金を稼ぎました。が、それでは足らないのです」
 再び、よよよと泣き崩れる四乃。
「お爺様は、知恵のある者にのみ遺産をついでほしいとお考えです。ですが残念なことに、わたくし達はその知恵がありません。兄たちや両親は『潔くあきらめよう』と言いましたが、わたくしはあきらめきれず、貴方がたにお願いに来た次第です」
 何が問題なのかと聞かれ、彼は書物を取り出した。
「お爺様は、遺産相続に条件を出しました。父と母、それにわたくしを含めた四人兄弟の六人。このうちの誰か一人でも、この四つの蔵の謎々を解いた者に、遺産を譲ると。この巻物に、その謎々の写しが書かれています」
 巻物を広げ、中を改める。それには、以下のような内容が書かれていた。

「四つの蔵。
その蔵に、遺産の隠し場所の地図が隠されている。
が、その前に、以下の謎々を解き、知恵ある事を証明せよ。知恵に長けた者でなければ、遺産はそのまま眠らせる。

:昔、四人の大悪党がいた、彼らの名は「角太郎」「山朗太」「鬼之助」「月兵衛」
それぞれが親玉となって盗賊団を結成、領地を荒らした。四つの盗賊団は、「狂月組」「屠殺組」「鬼竜組」「屍瘴組」。
 そして彼らは、組の家紋を持っていた。紋の絵柄は四種類。「髑髏」「短刀」「鷹目」「甲虫」。
 彼らは全て処刑されたが、かつての事件を忘れないようにと、領地の東西南北に蔵をつくり、盗賊団の名を付けた。

 誰がどの盗賊団の親玉で、家紋はどれか。それらを答えろ。
 手がかりは以下の八つ。

壱:髑髏か甲虫のどちらかの家紋を持っているのは角太郎。
弐:鬼之助の家紋は、鷹目を持つ。
参:月兵衛の家紋は、短刀ではない。
四:山朗太は、甲虫と髑髏の家紋を持たない。
伍:狂月組の親玉は、月兵衛と山朗太のどちらでもない。
六:月兵衛は、屠殺組の親玉ではない
七:鬼竜組は、髑髏、短刀、甲虫の家紋ではない。
八:甲虫の家紋ではないのは狂月組」

「いかがでしょうか。この謎々の答えが判った者は、お爺様の前でその答えと、理由を述べなくてはなりません。然る後に、見届け人であるお婆様とともに各蔵を回り、その答えを確かめなければならないのです。ですが、お婆様は高齢。それに、領地の蔵の周囲には、10人以上の追いはぎ連中が出るそうなのです。お婆様はもとより、わたくしたちも暴力を好まないため、情け無い事に身を守ることすら出来ませぬ。
 できるならば皆様には、蔵を回る間にわたくしとお婆様との護衛もしていただきたいと思います。
‥‥わたくしが、このように皆様のお知恵をお借りすることが卑怯であることは重々承知。しかし、わたくしは大切な人々にのみ、遺産を使う所存です。わたくし達を愚かなる者とお笑いになるのは構いませぬが、もしもお力を僅かでもお貸しいただけるのならば、どうかお慈悲です。聡明な冒険者の皆様のお知恵を、わたくし達にお授け下さい」
 女装しているその男は、あらためて深く頭を下げ、銭入れを差し出した。銭入れは、ずしりと重い。結構な額の金銭が入っていると思われた。
「これは、わたくしの着物を売ったお金。あなた方に対する報酬としては些か足りないとは思われますが、もしもわたくしの頼みを聞いていただけるのならば、わずかばかりのこのお金をあなた方に差し上げます。
 後生です、どうかお慈悲を‥‥」
 四乃は再び、頭を垂れた。

●今回の参加者

 eb1420 プリュイ・ネージュ・ヤン(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb3021 大鳥 春妃(26歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3843 月下 真鶴(31歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb4640 星崎 研(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb4847 古屋 えんら(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「いかがですか。天日にて乾燥させた虫を、油で軽く炒めたものです。香ばしくて中々美味ですよ」
 お茶うけとして差し出された菓子入れには、乾燥した蛆やイモムシ、小さな甲虫が入っている。それらをつまみながら、依頼人の兄、大茶壷一造は穏やかに微笑んだ(無論、冒険者達は断ったが)。痩身な優男で微笑を絶やさないが、奇妙なやぶにらみの目つきをしている。
「お話は、四乃より伺っていると思います。それで、謎かけの知恵をお貸し下さるだけでなく、蔵を回る護衛までしていただけるとか。本当にありがとうございます。どうかひとつ、躍らせて下さい」
 母親の比呂子が、またも踊りだした。先刻に冒険者達が屋敷を訪れた時、「我が家に来て頂いた事に関し、感謝と歓迎の舞を舞います」と、踊ったのだ。
「我々は、全く自分が情けない。誰かを助けたく思っても、それを行なうだけの器量も力も持たぬとは。微力ながら、私たちもできる限りのお手伝いをさせて頂く所存です」と、これは父親の礼之輔の言葉。彼は自分の禿頭に、春画を貼り付けている。『淫らなる我が煩悩を表し、それを他者に嘲られる事で自らへの戒めとなす』という意図の下、こうしてるらしい。
「僕ちゃんたちの力ぶしょく(不足)と不徳のいたしゅところ、十分にはんしぇい(反省)しなきゃと思いましゅ。どうか皆しゃん、よろしくお願いしましゅ」
 次男の二作。四人兄弟で一番の巨漢だが、童子がそのまま大きくなったような見た目と服装と舌っ足らずな口調である。が、その瞳は鋭く真剣で、深淵を見通すかのような知性をたたえていた。実際、学問をいくつか修めているらしい。
 三男の三閑は、こくこくとうなずいた。彼は強面の風貌だが、人見知りが激しく、とても恥ずかしがり屋で無口なたち、とのことだ。
「改めて、御礼申し上げます。そして、私たちに希望という名の光を投げかけていただいて感謝します」
 四男の四乃が、丁寧にお辞儀をした。

「‥‥ふう。世の中にはいろいろな趣味を持った人がいるんだ‥‥改めて思い知らされたって感じだよ」
 用意された部屋にて、月下真鶴(eb3843)は仲間達とともに用意しつつつぶやいていた。
「ま、すっごく変だけど、確かに悪い人ではないね。ならば助けてあげないと」と、星崎研(eb4640)。
「とはいうものの、一造さんの料理は勘弁して欲しいけど。好き嫌いってのは別にして、ちょっとね‥‥」
 依頼を受けた時に『一造さんがどんな物食べているか聞いてみよう。献立の参考になるかもしれない』と、考えていた古屋えんら(eb4847)だが、台所に赴いて即座にそれを却下した。
『剥がしたての大蛙の皮に、鼠や犬・猫や蛇・蜥蜴などの獣を詰め込んで3年くらい発酵させる。十分に発酵した後に取り出し、獣の肛門からドロドロの腐汁になった内臓を吸って食べる』という料理の現物を見て、彼は引いてしまった。
 それに、虫やミミズを食うのはまだしも、「おやつ代わり」にと土蔵、ないしはその土壁を剥がして食べるのも、やはりどこか間違っているような気がするのだが。
「まあそれはおいといて。四乃さんに教える用意はできたかな?」
「ええ、ものを教えることに関しては、わたくしも多少心得がありますし、四乃さんにうまく教える事ができればよろしいのですが」
 御陰桜(eb4757)の言葉に、大鳥春妃(eb3021)が穏やかな口調で相槌を打った。
「これがうまく行ったら、後はそれを実行するだけです。大丈夫、きっとうまくいきますよ」
 プリュイ・ネージュ・ヤン(eb1420)、ノルマン王国のウィザードが、皆を元気付けるように言った。

「して、四乃。儂の遺言どおり、オヌシは儂が出題した謎々を答え、自らに知恵ある事を証明する、というのだな?だな?」
 床についている老人、大茶壷舞那須が、四乃に対し言った。彼はその体中に、余すところ無く刺青を入れている。「自らの肉体を用いて、刺青という芸術を少しでも伝えたい」という意図の下、刺青を掘り込んでいたのだ。
 その妻である、祖母の大茶壷意凝(おおちゃつぼ・いこる)は、白髪を虹色に染めていた。幼少時から様々な色に憧れていた彼女は、染物を学び、現在は自分の着物や持ち物、肌や髪を様々な色に塗っては、その鮮やかさを周囲に振りまいていた。
「はい、お爺様。四乃は謎々を解きました。意凝お婆様の立会いの下に、その正否とともに、遺産を受け継ぐに相応しいかをご判断下さい」
 ぺこりと、四乃は頭を下げた。下げつつ彼は、昨日の冒険者たちからの教えを思い起こしていた。
‥‥‥

「四乃ちゃんっていい匂いするね、お化粧どんなの使ってるの?」
「最近はそれほどよい白粉が手に入りにくくて‥‥、桜さんも、お肌がすべすべで羨ましいです」
 四乃に抱きついた御陰は、挑発するように豊かな胸を押し付けた。四乃はそんな御陰に対し、うっとりとした顔で彼女の髪を愛しげに撫でる。
「それに、こんなにきれいな髪‥‥まるで、咲き誇った桜のよう‥‥」
「あら、四乃ちゃんの髪だってきれいよ‥‥。お肌も、白い百合の花びらみたいな色‥‥」
「あー、そこまでにしといてもらえませんか? ちょっと目のやり場に困るので」
 桜でなく百合の花が咲きそうなところに、星崎の物言いが入る。
「さて、それでは四乃さん。謎々に関して私たちが知恵を貸しましょう。ただし、その前に言っておくことがあります」
 大鳥の口より紡ぎだされた言葉は、薄絹の衣のように軽やかに、四乃の耳を包み込む。
「わたくしたちは、あなたに知恵をお貸しします。けれど教える事は、謎々の答えではなく、解き方。結果ではなく、結果に至るまでの道筋を示す事を、あなたに教えたいと思っております」
「誰かに謎々を代わりに解いてもらったら、それは自分で解いたことにはなりません。ですが、解き方を教えてもらい、それをもとに自力で解いたのなら、四乃さんが自ら解いたことになります。つまり、自力で謎々を解く事で、正々堂々と遺産を手にする事が可能になると」
 大鳥の言葉を、プリュイが補足する。
「こちらに、12枚の札を用意しました。盗賊の頭四人と、盗賊団四つの組と、それぞれの家紋。これらの札を用いていけば、理解しやすい事と思います。四乃さん、それでよろしいですか?」
 最後に、星崎が促した。
「‥‥‥わかりました、よろしくお願いします」
‥‥‥

「では四乃よ、答えよ。盗賊の頭と組、その家紋の内訳を。そしてその答えに至ったわけを、我が前で話すがいい」
「はい。謎々の答えは‥‥」
 後ろで控えている冒険者達も、四乃とともにごくりと唾を飲み込む。
「[鬼之助]は、「鬼竜組」、家紋は『鷹目』です。[角太郎]は「狂月組」で『髑髏』、[月兵衛]は「屍瘴組」『甲虫』、[山朗太]は「屠殺組」『短刀』です」
「ふむ、して、その理由は?」
「それは‥‥」再び四乃は、昨日に教えられた内容を思い起こしていた。
‥‥‥

プリュイ「まず、弐と七の手がかりより、一つの組み合わせはわかりますね?」
四乃「ええと‥‥弐より、鬼竜組の家紋と頭は、鷹目に鬼之助となります」
大鳥「では、次です。鬼之助は決まりました。では、伍の手がかりで除外されますね?」
四乃「‥‥そうか、鬼之助は鬼竜組だから、狂月組は角太郎! 壱と八の手がかりから、狂月組の家紋は髑髏! すごい、もう二組がわかりました!」
古屋「安心するのはまだ早いですよ。では、次。六の手がかりから、月兵衛さんは、鬼竜組と屍瘴組と狂月組のどれですか?」
四乃「屍瘴組です。鬼竜組と狂月組が解ったため、残った屍瘴組が月兵衛に。そうか、では参の手がかりから、屍瘴組の家紋は髑髏と鷹目でない、甲虫!」
星崎「そう言うこと。あとはもうわかりましたね?」
四乃「はい! 最後の屠殺組は、残りの頭と家紋、山朗太と短刀になります!」
御陰「はい、良く出来ました! 四乃ちゃん、やるじゃない!」

‥‥‥
「‥‥‥ふむ、なるほど」
 床につきつつ、舞那須は四乃の言葉を、近くに控えた書記に書き記させていた。
「では、意凝さん。真偽の確認を、お願いしますよ」
「はい、どっこいしょっと」
 老婆は夫から声をかけられ、立ち上がった。

 街道を進む冒険者一行。大茶壷意凝。老婆は四乃とともに冒険者らに守られ、二頭立てのロバに引かれた大八車に正座していた。
「そろそろ、蔵のひとつ、屠殺組にたどり着きます。よろしいですね?」
 意凝の言葉が、四乃に突き刺さる。同行している四人の冒険者達も、ごくりと唾を飲み込み緊張した。
 それは杞憂に終わった。蔵「屠殺組」に記されていたのは、山朗太と短刀の家紋だった。
 
 そして、その後も難なく確認作業は終わり、二人は大茶壷の屋敷へと戻ってこれた。
「にしても、へんですね。出てくる追いはぎたちは、一体どうしたのでしょう?」
 四乃が疑問を口にした。

 彼の答えは、すぐに分かった。12人いた追いはぎの集団は、みなが二人の冒険者、御陰と星崎によって眠らされていたのだ。
「まったく、あまりに呆気なさすぎよ。風上から隠れている場所を見つけて、これ幸いにとできるだけ近付き、二人で『春化の術』をかけたら‥‥」
「全員が見事にひっかかり、眠ってしまいました。まあ、そのおかげで捕縛するのは容易でしたけどね」
 かくして、縛り上げられた追いはぎたちは、奉行所の牢の中にぶち込まれる事に。調べによると、彼らは大した事の無い小悪党の寄せ集めで、数以外には全くと言っていいほどとりえがない連中であった。牢の看守いわく「四人集まって、ようやく半人前の頭になるような奴ら」
 彼らを束ねている物は、他の連中よりも頭が回り腕っ節が強く、大茶壷の界隈を集団で追いはぎしようと考えたのもこの男である。
 が、何も考えずに数で攻めるだけという考えのなさは、他の連中と対して変わらないものであったが。
 星崎は縛り上げた頭に対し、同行させた愛猫「雨水」に顔を引っかかせたり、「今度自分に捕まったら‥‥火遁の術で燃やし尽くしますよ?」などと脅しをかけてみた。みたが、
「っんだぁぁぁらぁぁぁっ! 蚊トンボがどぉるらぁぁぁっ!? おんどぅれ! んな事で俺がんどぅるぁぁぁとんもってんかぁぁぁっ!」
「‥‥『何だ。蚊トンボがどうした? おんどれ、そんなことで俺がびびると思ってんのか』‥‥って言ってるんじゃない?」
 御陰が、意味不明なそいつの言葉を通訳してくれた。
 ちなみに、月下が言ったようにそいつらのねぐらを調べ、武器を売ろうと試みたが、全てが錆びたり傷んだりして使い物にならなくなっていた。
 ともかく、全員が捕まって牢に閉じ込められる事になったのだが、「彼らにも更生する機会を与えてやってください」と、後に四乃は奉行所に申し出たりする。

「本当に、ありがとうございました。これで全てが解決しました」
 四乃、そして大茶壷の人間達は、何度も冒険者達に礼を述べては頭を下げた。
「皆様方には、こちらを差し上げます。ほんの僅かで恥ずかしい限りですが、何かとご入用と思いまして。どうか、お納め下さい」
 そう言って、四乃は全員に手渡した。それは、小判が一枚入った財布。
「え? でも、報酬はいただきましたよ?」
「構いません、月下様。これは個人的な感謝の気持ちです」
 そう言って、彼は微笑んだ。

 かくして、事態は収拾した。したのだが、
「わたくしは、もっと知恵を身につけ、あの冒険者の皆さんのように世のお役に立てる人間になりたいと思います」
 四乃はそう言いつつ、売られている謎々の書物を手に入れては、かたっぱしから解いていき、後にそれでちょっとした有名人になったりするのはまた別の話だったりする。