貪婪たる悪群

■ショートシナリオ


担当:塩田多弾砲

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 48 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月23日〜01月30日

リプレイ公開日:2007年02月01日

●オープニング

 ジャパンに新年が訪れた。
 が、ここ数年、とある村の連中は毎日を疎ましく思っていた。
 なぜか? 大量の小鬼や茶鬼が現れては、周囲を荒らしまわるからだ。

 数年前からの事である。
 大河内村の周辺には、ごろつきがたむろするかのように、小鬼が集まり、悪さをするようになっていた。
 当初は道行く旅人から、荷物や食糧を掠めたりする程度であり、頭数もそれほどはなかった。
 であるため、村の村長たちは事態を重視せず、村や周辺地域に対しては注意を促すのみに留めていた。事実、それなりに武装を整えた旅人、もしくは集まりであれば、十分に対処し退散させられる程度の集まりであったのだ。小鬼など、数以外はそれほど問題になるまい。誰もがそう考えていた。

 が、それから少し時間が経過しての事。
 家畜や畑の作物が奪われる事件が頻発した。犯人は件の小鬼ども。
 それが毎日のように発生し、村人たちは安心して生活できなくなってしまった。
 当然、村長にこの話を持っていくが、ケチでごうつくばりな彼は渋っていた。小鬼どもを退治するにも退散させるにしても、金がかかる。自分のためにならない事になど、極力金を使いたくは無い。
 が、渋っていたツケを村長は支払わされた。江戸の大商店へと嫁いでいた娘が、暫くぶりに村を訪ねて来たのだ。
 しかし、父娘の再会はかなう事無く終わった。たくさんの土産物を荷車に積み、帰路を急ぐ娘と護衛たち。それは小鬼どもにとっての格好の獲物。
 最初、弓の掃射で油断させ、その後に数でゴリ押しする。普通の隊商や旅人の集団は、数匹の小鬼ならば対処できるだろう。が、戦いを生業としている者たちならばともかく、素人に対処などできようか。
 無論、彼らは用心棒をかかえていた。それも、それなりに腕の立つ者を数名。老境に差し掛かっても、中にはかつて外国はイギリスで邪悪なる竜や悪鬼すら屠った元冒険者もいた。彼らは戦い、何匹かの小鬼を殺し、屠った。が、それでも『何匹か』。全部ではない。
 用心棒に守られていた娘は赤子を手に抱いて、祖父となった父に見せるのを楽しみにしていた。が、小さくこしゃくな生き物どもには、そんな事は知る由もない。そして、知ったところでどうするだろう? 小鬼にとっては、人間の女も赤ん坊も、獲物であり面白半分に殺して喰らう対象でしかない。
 赤子と娘を守るべき護衛は、全てが数で押す小鬼の前に斃れ、敗れ去った。そして小鬼は、腹が減っていた。
 
 村長にとっては、娘は宝であり命であった。たまたまこの光景を目撃した村の百姓は、大急ぎで逃げ帰り、小鬼が赤子を喰らう様子を村長に伝えた。
 狂気に捕らわれる前に、彼は手持ちの金を全てつぎ込み、この小鬼どもを皆殺しする事を決意。冒険者やごろつきを10名ほど雇い、村周辺に存在する全ての小鬼を殲滅するようにと依頼した。
 6名は人間性に問題あるものの、破壊と殺戮、勝利と報酬への執念において、どんな下劣で汚い事も平然と行なうごうつくばりな者たち。金のためなら前の主人を裏切り、より多く得をするためなら恥知らずな行為も厭わない。そんな連中。
 が、その分実力は確かだった。小鬼の10匹や20匹ならば、彼らにとってものの数では無い‥‥。そのはずだった。

 彼らが戻ってきたのは、退治に赴いた翌日。戻ったのはたった一人。
 針刺しのごとく矢を全身に受け、腕は片方が食いちぎられ、体中に深い傷を負っていた。
「や‥‥やつら‥‥尋常な数じゃあ‥‥ねえ‥‥」
 臨終の言葉は、それだけ。死んだその男は、かつて熊と素手で戦い、ひねり潰したほどの実力の持ち主。
 されど単体の巨体を持つ相手を倒せても、無数の小さき相手に対しては無力も同然。たとえ熊であっても、無数の殺人蟻に対しては反撃もままならず、骨まで食われ終わるしかない。
 今回も同様。6人程度の古強者では、小鬼どもに対し不足であったのだ。
 いくら強くとも、数十匹の小鬼相手に、たった6人で何が出来よう。

 無論、彼らとて蛮勇ではあっても無謀ではない。引き際はわきまえており、今日の逃亡と敗北が明日の勝利につながる事は十分承知。ゆえに、敗走の屈辱を味わいつつも、態勢を立て直すべく村へと戻る事にしたのだった。
 が、逃げた先には別の脅威が存在した。あるいは、類が呼んだ友というべきか、はたまた手繰られた見えぬ糸というべきか。
 犬鬼の群れが、そこにはあった。しかも彼らもまた、獲物とする存在を探していた。飢えているのみならず、苛ついてもいたのだ。そのような状況に、疵ついた人間がひょっこり顔を出した。その結果、6名のうち5名が犠牲となり、1名は半死半生の状態で逃げ帰ったのだった。

「状況は、切迫してます」
 この話を聞いて、急遽かけつけたのは、村長の弟。僧侶である彼、巌山は、大河内村から山二つほど離れた村にある寺の住職を勤めていた。
「以前より兄から、大河内村の周辺に小鬼の群れが出るとは聞いていました。それに対し配慮が足らず、このような事態を招いたのは、ひとえに兄にも責任があるのもまた事実。然れども、まずはそれより、状況をなんとか好転させるように行動する事が必要かと」
 村長は、一人で江戸に向かっていた。が、その時に小鬼の群れに襲われ、そのまま殺されてしまった。
 当初、彼は一人で逃げたのだろうと噂されたが、実は江戸はギルドに依頼をしに向かっていた事が判明した。村に駆けつけた巌山が、兄の屋敷は書斎より書付を見つけたのだ。それにはしたためられていた。この件をなんとかすべく、江戸の冒険者ギルドに依頼しにいくと。
「そして、こうも付け加えられておりました。『もしも我が身に何かあれば、弟の巌山に後を託す』と。村の人々に聞いたところ、小鬼と犬鬼の群れは、街道のみならず毎夜の様に襲撃してくるそうで。逃げ出す者ももちろん多いですが、やつらが見張っているせいか、街道を逃げているところをいきなり襲い掛かる事も多く、逃げるに逃げられない状況ではあります」
 が、一つ利点がある。小鬼と犬鬼、互いの群れは互いに対立しているようだ。
「どちらも、大河内村を襲って我が物にしたいようですが、お互いににらみ合い、先に動き出せない状態のようなのです。どちらかが動いたら、そこを襲い掛かり、全面戦争に。そうなったら互いに大きな被害が出ることは必至。彼らもそれを危惧しているためか、中々動こうとしません」
 それに何より、村が戦場になれば村民も被害に遭うことは言うまでもない。
「拙僧にとっても、この村はふるさと。怯えている村民のため、そして‥‥僧職に就いている者が言うべき事ではありませんが、どうか愚かな兄と、哀れな姪夫妻の仇討ちをしてはいただけませぬか。これは、兄が残した最後の財産。これでどうか、皆様に小鬼と犬鬼の群れを殲滅していただきたい。どうか、宜しくお願いします」

●今回の参加者

 ea0276 鷹城 空魔(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb5532 牧杜 理緒(33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb7311 剣 真(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb7341 クリス・クロス(29歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7464 ブラッド・クリス(33歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7708 陰守 清十郎(29歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb8646 サスケ・ヒノモリ(24歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

 その小鬼どもは、すっかり油断していた。彼らは、何か獲物がうろついていないか探していたのだ。
 そして、見つけた。ボロ布を体にまとった、四人の村人を。
 人間どもの、それも百姓どもの力などたかがしれている。うさ晴らしに叩き殺してくれよう。十数名いた手下の一人が、奇声をあげつつも飛び掛った。
そいつは、剣に串刺しにされた。
 正確には、剣真(eb7311)の持つ名剣、法城寺正弘によって。ボロ布を取り払ったそこには、蝙蝠の外套と鷹の布鎧に身を包んだ、雄々しい志士の姿があったのだ。触れれば切れる白刃が、小鬼の眼前へと向けられ冷ややかな鋭気を放つ。
 怯んだ小鬼たちだが、それでも数は勝る。左右と後方、そして正面から、多くの小鬼が一斉に飛び掛った。
正面からの小鬼は、クリス・クロス(eb7341)の剣にて切り伏せられた。神聖騎士の凛々しい姿は、魔物ですら怯みそうな、金髪碧眼の勇姿。それを見た小鬼もまた怯み、慄くように唸りを上げる。
 後ろのほうから切りかかった一匹は、ボロ布の下から繰り出された強力な一撃、龍叱爪とリベットナックルの手痛い攻撃を食らった。
 牧杜理緒(eb5532)が放った拳の一撃。鋲が肉に突き刺さり、爪が肉を切り裂く。どす黒い血液をしたたらせつつ、別の一匹も事切れた。
 別の方向から、槍を手にした小鬼がつきかかった。が、最後の「村人」も例に漏れず、そいつらにとっては恐るべき処刑人であった。
 ボロ布の下には、邪悪なる意匠と紋様が施された黒きローブ。手には楯と名剣モーグレイ。名匠による鋭い切っ先は、小鬼の粗末な槍など一閃で両断し、もう一閃でその首を落とす事など容易なる事。
 地面に崩れ落ちた小鬼から視線をそらし、ブラッド・クリス(eb7464)は剣を構えなおした。
「問おう、神の御許に行きたい者は誰だ!」
 クリスの言葉とともに、残る小鬼が襲い掛かってきた。

「で、うまく行ったんだな?」
 サスケ・ヒノモリ(eb8646)の言葉に、牧社はうなずき、小鬼から奪ってきたものを見せた。
「あいつらの一匹、大きなのぼりを背中に背負っていたわ。それにしても、悪趣味なガラよねえ」
 爪目の汚らしいデザインが、そこには描かれていた。
「他にも、手ぬぐいやら小さめの旗やらを持っていた。これらがあれば、事足りるだろう」同じ意匠の汚い布を、ブラッドは取り出した。
「私たちの方も、同じようにうまくいきましたよ。おそらく犬鬼たちは、怒り心頭のことでしょう」
ニコニコとした表情を崩さず、陰守清十郎(eb7708)もまた、仲間と得た紋章を見せた。八角形の、黒っぽい髑髏。微妙に歪んでおり、それが邪な悪辣さ、貪婪さをもかもし出している。
「しかし、冒険者諸氏。果たしてうまくいきますかのう?」
 不安を隠し切れぬ表情の巌山。が、それを払拭したのは力強い一声。
「心配いらねーぜ。俺たちが必ず奴らをぶっとばしてやるさ!」
 鷹城空魔(ea0276)、若き忍者の言葉が響き、不安という名の暗雲を輝きでかき消した。
彼は、この依頼を受け、そして立案していた。いかにして小鬼と犬鬼とを退治するかを。うまくいけば、両者を共倒れさせる事ができる。
「じゃあ、作戦通りにいきましょう。いいわね?」
 牧杜の言葉に、皆はうなずいた。

 黒髑髏の頭、「軋り歯」‥‥いつも歯を軋らせている犬鬼は、爪目一味に怒りを覚えていた。
 昨日、仲間が殺された。しかもそいつらの近くには、憎き爪目の紋章がかけられていた。間違いなく奴らに違いない。面白くない、全く面白くない。
「!?」
 戻ってきた仲間の報告を聞き、彼は再び怒りのうなり声を上げた。
 仲間たちが殺されていた。それもまた、憎き爪目の紋章が掲げられた近くで!
 もう許さねえ、戦争だ! この村は俺のもの、あいつらに渡すくらいなら、目にもの見せてやる。

 同じ頃。
 爪目一味の、傷をうけた顔の小鬼。傷痕がまるで、奇怪な笑みを浮かべているかのように見えるため「赤笑み」と呼ばれていた。
 一味の頭領はやはり犬鬼と同じく、怒りと憎しみに燃えていた。
 黒髑髏の軋り歯が、仲間をまた殺した。仲間の亡骸の側には、黒髑髏の紋章が落ちている。間違いねえだろう。
 やつらを脅かせば、逃げるだろう。そうしておけば村は俺たちのもの‥‥と、何も策を弄したわけでないのに、自らに都合のいい確信を抱いていた赤笑みであったが、もはや脅かすだけでは済まさなくなっていた。

「‥‥来たな」
 鷹城の呟きを肯定するかのように、村の北の方角より、多くの気配が漂ってくる。
 そして同じく、南の方角からも獣臭に近い臭いが漂う。
「計画通り‥‥だが、それでも念には念を入れないと。みんな、準備は整ってるか?」
 鷹城の立てた計画は、両者を互いに戦わせ、疲弊させる事。
 小競り合いをしている小鬼と犬鬼とを殺し、お互いに敵方の紋章を残しておく。そうする事で相手への憎しみを煽り、互いに全面抗争へと突入させる。
 そして、互いに戦いあい疲弊した頃を見計らい、残存勢力を一掃‥‥といったもの。
「ま、双方の疑心暗鬼を煽り高まらせて爆発させ、互いに潰し合いをさせる。コレこそが闇に生きる忍びのやり方‥‥なんてね?」
 小鬼に犬鬼、互いに単純で目先の事しか考えられない連中であるゆえか、見事に引っかかってくれた。
しかし、ここからが問題。互いに潰しあうのは良いが、その戦場が村になる事はまず間違いない。そして、村人たちをこの戦いに巻き込む事もまた避けねばならない。
「村の者たちは、皆言われたとおりに避難させました。ですが‥‥本当に大丈夫でしょうか?」
 巌山が再び不安に捕らわれ、鷹城に尋ねた。
 村人たちは、男手が総勢50名。しかし、傷ついていたり度胸が無かったりと、ほとんどが戦いの役に立ちそうにない者ばかりであった。その他は老人や女子供のみ。戦力としては考えない方が良いだろう。それ以外の村人たちと同じ結果に、即ち奴らに殺されて終わりかねない。
 もっとも、冒険者たちも最初から彼らを戦わせるとは考えていなかったが。
 拠点は、巌山の勤める寺。周囲に比べ小高く、村の中心から外れている。少なくとも村人をかくまうだけの場所はあったし、周囲は木々が密生しているために、天然の砦になっていた。
 しかし、合戦に巻き込まれないわけではないだろう。自衛のための策もまた、冒険者たちは整え、事に当たる事にしていた。
 剣の持ち込んだ、多くの武具。それでできる限り、村人たちを武装させる。冒険者たちは寺の周辺を見張り、可能な限り敵への警戒を行なっていた。
 うまく、事が運べばいいのだが‥‥天空を仰ぎ、クリスは神に祈った。

 それは、不意に始まった。
 村の中央まで進んだ爪目と黒髑髏の両陣営が、粗末な武器を掲げつつ互いに突撃したのだ。
 それはまさに、乱戦というに相応しい、混乱と混沌、渾然し混迷した状況であった。
「始まったぜ!」
 交替で見張りに立っていた冒険者たち。鷹城の番の時、それは始まった。
 それを聞いた村人たち全員が、恐るべき状況に戦慄し不安に捕らわれる。小鬼と犬鬼の殺し合いが、ここまでやってくるのではないか。おっかなびっくり剣を握っている農民たちは、己を守るための術を知らない者ばかり。
「皆さん、落ち着いて! あたしたちが守ります!」
 牧杜が、落ち着きの無い皆をはげました。が、それでも不安の空気は周囲にどんどんと染み出しているかのよう。
 村の中心部で行なわれている戦いの音が、その不安を更に増していた。

 錆びた刀を持つ小鬼が、槍を手にした小鬼とともに犬鬼へと戦いを挑んでいた。犬鬼は小鬼の刀を払ったものの、槍の切っ先を新造に受けて事切れる。
 が、すぐに疣頭の棍棒を持った犬鬼が、槍を持った小鬼を武器ごと打ち据えた。刀を持った小鬼と一騎打ちするも、互いに腹を刺され、脳漿を飛び散らせ、互いに事切れた。
 別の場所では、矢の掃射によって犬鬼の群れを薙ぎ払う小鬼たちが。しかしそれも、後ろから襲ってきた犬鬼の短刀に喉を掻っ切られ、喉笛を噛み切られたために終わった。すかさず仲間の仇討ちにと、掴みかかった小鬼との激しい格闘が行なわれた。
 そんな混乱を横目に進むのは、鷹城と牧杜。二人はそれぞれ、爪目と黒髑髏の紋章が描かれた旗を手にしていた。
「作戦通り、いくぜ!」
「心得たわ!」
 そして、鷹城は北の山へ、牧杜は南へと別れ、そのまま戦場を突っ切っていった。

 数刻後。
 鷹城の黒髑髏、牧杜の爪目を追い、小鬼の赤笑み、犬鬼の軋り歯が、二人の冒険者を追いつつ戦場までやってきた。
「ここまで簡単に事が運ぶとは‥‥」
「こいつら、よほど憎み合ってるのね!」
 手下たちとともに、憎悪を引きつれ襲い来る小鬼の赤笑み。家来どもとともに、怨念をも同行させ襲い掛かろうとする犬鬼の軋り歯。互いの手にはそれぞれの三下よりかはましな刀が握られ、獲物の血を吸い取るのを待っていた。
 二人の人間は、途中で旗を放り投げると、手近なところへと身を潜めた。
 そして、彼らの目の前で。小鬼と犬鬼との激しい戦いが繰り広げられた。

 不安が的中し、小鬼と犬鬼との群れが、寺へと襲撃の魔の手を向けてきた。が、ほとんどは獲物を相手から横取りせんと、互いにいがみあい罵りあい、そして殺しあうため、中々襲ってはこない。両者で協力して、獲物を頂こうという考えはこれっぽっちもないのは確実。
 が、それでも戦いをかいくぐり、寺に襲い掛かる小鬼と犬鬼が全く無いわけではない。急ごしらえの塀や柵を乗り越えると、血に飢えた数匹の小鬼と犬鬼が寺の境内に入り込んできた。
 そいつらはまず間違いなく、寺の本殿にて潜む村人たちを見つけ、血祭りにあげる事だろう。
‥‥冒険者たち、そして冒険者の頼りになる味方を倒せたならば。
「!?」
 小鬼と犬鬼は、まず最初に面食らった。その目前には二体の埴輪、そして一体のストーンゴーレム。
 埴輪はそれぞれサスケとクリスが、ストーンゴーレムもやはりサスケが、それぞれ持ち込んだものであった。
「小鬼どもを攻撃せよ!」クリスの言葉に従い、埴輪が動き、敵を撃ちすえ、叩き潰した。
「命ずる! 破壊の光で鬼たちを打て!」サスケのストーンゴーレムが、命令通りに動き始める。
 堅き腕持つ忠実なしもべたち。それらは恐れを知らず、感じる事も無く、迫り来る小鬼の群れへと立ち向かっていった。
「!!」
 死のきらめきが、小鬼をなめる。ストーンゴーレムの両目から放たれた死の光線が、その目前まで迫った小鬼の群れを地獄へと叩き落していった。
が、それでも小鬼を全て防ぎ切ることは不可能。かなりの数の小鬼どもを足止めはしたものの、別の場所から侵入してきた犬鬼までは防ぎきれなかった。このままでは、本殿までたどり着かれてしまう。
 しかし、十匹以上の犬鬼に対し、剣が飛び出した。
「はーっ!」法城寺正弘が、新たな獲物を切り裂き、沈黙させた。一刀が犬鬼の首を飛ばし、一閃で犬鬼の命を切り裂く。剣の雄々しきその姿に、侵入してきたこしゃくな怪物どもはたたらを踏み、警戒して距離をとる。
 ふと、鎧に身を固めた犬鬼が、四匹同時に前後左右から襲い掛かった。どんな相手でも短刀の一撃を免れない同時攻撃、しかも短刀には犬鬼特有の毒が塗られている。勝ち目は無いはずだった。
「バーストアタック!」
 が、それは犬鬼が今まで未熟な剣士のみを相手にしていたため。剣の卓越した剣さばきの前には、そのような小細工など無駄にして無意味。
 たちまちのうちに、両断された犬鬼の数が四匹に増え、地面に鮮血を迸らせた。
 勇敢なる冒険者は彼のみならず。
「ファイアーウォール!」
 陰守のスクロールにて作り出された炎の壁。愚かな数匹の小鬼は炎に激突し、炎上し果てた。
 助かった者もまた、陰守の熊犬の前にばらばらに食いちぎられる。
「この一撃を喰らうが良い! スマッシュ!」
 ブラッドが、己の剣を振るいて小鬼の首をはねる。冒険者たちの奮戦は、寺に攻めてきた小鬼と犬鬼の数を半分に減らし、死屍累々の様相を見せていた。

 赤笑みが最後に感じたものは、己の体に沈んでいく軋り歯の牙、ないしはその感触。そして最後に見たものは、勝ち誇る犬鬼たちの姿。
 すでに双方ともに、ほとんどが殺しあい、潰しあい、残るはわずかな小鬼と犬鬼。否、犬鬼のみで、小鬼はほとんどが死に絶えていた。
 小鬼の屍を踏みつけ、犬鬼は誇らしげに吼え、勝利を確信した。が、軋り歯は周囲を改めた。自分を含め、犬鬼の生き残りはわずか四匹。
 が、疲弊しきったところに出てくるは、あの二人の冒険者。
「どうやら、お前が勝ったようだな」
「けれど、あたしたちにまで勝てるかしら?」
 それらの言葉に対し、犬鬼どもは邪悪にうなり、口元をゆがませて凶暴な意図をみせる。降参する気はないのは間違いなかろう、。
 軋り歯は、折れた剣を、残り三匹の犬鬼は柄や刃が折れたり欠けたりしている斧、鎌、槍を手にして向かってくる。
 対する鷹城は、両腕に龍叱爪。牧杜は右手に龍叱爪、左手にリベットナックル。
 龍叱爪の爪と剣の刃とが重なり、打ち付けられる。剣の刃が更に折れ、その武器を更なる役立たずに。
 後ろから襲おうとした犬鬼を察知し、鷹城の腕がそれを薙ぐ。更に止めの一撃!
 腰を落とし、牧杜の龍叱爪が下から上へと突き上げられた。その一撃が昇竜のごとく犬鬼を切り裂き、亡き者に。
 軋り刃と最後の犬鬼は、武器を投げ捨て噛み付こうと飛び掛った。そして。
「龍飛翔!」
「これで終わりだ!」
 牧杜の龍が如き一撃と、鷹城の獣のような攻撃が、犬鬼二匹へと引導を渡した。

「小鬼も犬鬼も、すっかり片付きました。本当にありがとうございました。ですが‥‥」
 邪魔者が一掃された村。しかし戦い終わり日が暮れて、各所には犬鬼と小鬼の屍にまみれ、畑は荒らされ、小屋は焼かれ、見る影も無い。
「確かにこれじゃあ、復興は大変だろうなあ。けど‥‥」
 鷹城が、村へと視線を送った。
「けど、村はこうやって残っている。小鬼と犬鬼はすべて倒し、村人からは死傷者は出なかったし、少なくとも巌山さんたちはこうやって生きている。重要なのはそれでしょ?」
 そうだ。生きてさえいれば、いつかはまた元に戻せる。村そのものがあれば、小屋は新たに建て直され、畑はふたたび耕される。
 そして、怪我が回復するように、村も人が戻り、徐々に回復していく事だろう。
 それをあらわすかのように、村の農民が新たな家を建て始めた。