嘆きの木神
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■シリーズシナリオ
担当:塩田多弾砲
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:9 G 63 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月04日〜08月10日
リプレイ公開日:2008年08月12日
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●オープニング
江戸より数里離れた、木神山。
そこには、緑したたる森林がおおいつくす、自然に恵まれた地。
ふもとの林道村は、この木神山の恵みを受けつつ、穏やかに毎日を過ごしていた。
林道村の住民は、皆が皆森に対して敬意を表し、決して必要以上に森を破壊したり、山の幸を多めに取ろうなどとは考えていなかった。
森と村との共生。今のところは、これがうまくいっていると思われた。
今のところは。
林道村にて、魑魅魍魎の類に襲われたといって村長の家に駆け込んだ者たちがいた。
村長の越後文左衛門は、医療も学んでおり、医師のいない林道村にてただで治療していた。本人は江戸で医学を学び、医術を会得した者。その知識と技術を無償で村人たちに提供していたのだ。
彼らを診た文左衛門は、手の施しようのない事を知ったのみだった。犠牲者は両足を、否、下半身を噛み砕かれるようにして食いちぎられていたのだ。文左衛門を一目見ると、犠牲者はそのまま息を引き取った。
一体どうしたのだと問いただしたところ、駆け込んできた村人たちは言った。
「木神山の中ですだ。あそこに入り込んだ、旅の猟師たちが襲われたんですよ!」
山には「木神さま」と呼ばれる守り神が住む言い伝えが残っている。
その周囲の山の幸や動物は採っても良いが、決して木霊さまへ無礼を働いてはならない。そして、知らぬ者は迷い込まないようにと封印のしめ縄が森の境界には張られている。
村の人々は、そこから先には用事がない限りは入り込まないし、近づきもしない。入るのは、村の祭りの時など、一年に数度くらいだ。
そして、被害者の猟師たちもその事は聞き、承知していた。が、彼らの一人は襲われ、「木神さまに喰われた」というのだ。
「どういうことだ? あの木神さまが、人を食うだと?」
話はこうだ。
猟師たちは、村への帰り道に木神さまの森へと入り込み、イノシシを一頭仕留めた。
そして、帰ろうとしたその矢先。何者かの集団に襲われたのだ。
その集団が何かは、その時点ではわからなかった。ただ、小柄な人間、あるいは人間型の生き物が数十人集まり、弓矢を射かけてくる。
一人は、弓矢の犠牲者となった。針刺しになったかのように、矢を全身に受けたのだ。
残る猟師たちが、仲間の後を追わされる前。彼らはなんとか必死になって逃げた。しばらく走った先、逃げた先には、大木があった。
助かったと思った猟師たちは、その大木によりかかり、一休みしようとした。先刻の盗賊団によって、一人が足に矢を受けていたのだ。周囲には動物の姿は無い。狼やクマなどに襲われることはないだろう。じきに夕方だが、応急手当した後で、村に戻り手当てをしよう。まずは一休みだ‥‥。
が、彼らは致命的な失敗をした。周辺が薄暗くなったため、何かに食いちぎられた狼やクマの死体を見逃していた事。そして、狼やクマを食いちぎった存在が、すぐ目の前にいた事に気づかなかった事を。
猟師たちの悲鳴を聞いたのは、帰りがけの村人たち。山に山菜や薬草を取って、その帰り。入り込まない場所から何者かの悲鳴が響き、悲鳴の主がこけつまろびつ走って来たのだ。
それは、二人の猟師。一人がもう一人を背負い、恐怖より逃走したかのように村人たちの前へと転げ落ちるようにして現われたのだ。
一人は両足を食いちぎられ、一人は体中に傷を負っていた。
「で、手当てを施したんですが。一人は手当てのかいもなく‥‥。もう一人も、傷がもとで亡くなりました」
文左衛門が、その時の様子を思い出しつつ、君たちに報告していた。
「もう一人は、矢傷を負っていました。どうやらそいつに毒かなにかを塗られていたようです。あの様子は、死因は毒とみて間違いないでしょう。高熱を出したその猟師が言うには『矢を射掛けてきたのは、獣みたいな顔をした小柄なやつら』との事でした。それで‥‥」
ごくりとつばを飲み込んだ文左衛門は、心中穏やかではない様子で話を続けた。
「問題は、木神さま、あるいはそれに似た何かです。猟師の言葉では、そいつは巨大な、まるで縦にした材木か何かのようだったとか。で、木の枝のような腕を伸ばし、仲間の足を噛みちぎったそうで」
何か、獣が出たのだろうか?
「いえ、それはないでしょう。もしも獣が出て襲われたのならば、犠牲者二人は生きては戻れません。傷を負ったにしても、二人は逃げてこれたわけですから。それに、逃げる際に二人はちらりとですが、見たんです。食いちぎられた狼や熊の死体を。もしも獣だとしても、熊や狼を食うとは思えません。餌食にするのなら、鹿や猪などを襲うはずです。それに‥‥」
文左衛門は、恐ろしい考えを脳裏に浮かべたかのように、ごくりとつばを飲み込んだ。
「それに、獣だとしても、そいつは熊や狼以上に恐ろしい何かであるのは確かです。現に、それら山の獣を殺した事には違いは無いのですから」
それともう一つ、そう言って文左衛門は話を続けた。
「木神さまに襲われる前の、獣の姿をした矢を射かけた集団‥‥にも、気になるところがございます」
林道村の周辺には、山の中に小さな規模の村が点愛している。その多くが、山や森の中で自然とともに生活する事を選んだ者たち。猟師や山菜取りなど、人付き合いよりも自然とともに生きる事を好む者たちであった。
が、彼らのことごとくがここ最近、何かの襲撃を受けて殺されていた。
それは、おそらくは矢を扱えるだけの者たちで、おそらくはかなりの数であろう。なぜなら、小屋には矢がいくつも射掛けられ、針刺しのようになっていたからだ。
襲撃された村人たちも、無力な者ばかりではない。彼らもまた、山鬼や熊程度ならば槍や弓矢で十分倒せる程度の自衛力くらいは持っている。
が、それでも謎の襲撃者たちの前には不十分であったわけだが。
「襲撃者たち」は、まず間違いなく食べ物目当てで村人を襲ったと思われる。なぜならば、襲撃された後には食料が根こそぎ奪われていたのだ。そして、村人の遺体すら。
飼っていた馬や鶏、牛なども、略奪された後だった。それはおそらく、そのうちに林道村にも襲ってくるに違いない。
「ギルドの皆様、わしらのお願いは、二つの『何か』の正体‥‥木神さま、またはそれらしき何かの正体と、襲撃者たちが何かの正体を確かめる事です。わしには、木神さまがそんな事をしたとは全く思えませんし、もしも何か別のものならば、退治するにしろなんにしろ、それを確かめたいと思いまして。
それに、襲撃者どもが何かも気になります。そいつらがここ最近の山の中を荒らしている奴らの正体ならば、なおさらです。
どうか、お願いします。わしらの山の平和を守るため、お力をお貸しください」
●リプレイ本文
「ふむ‥‥聞いた話によると、どうやら人喰樹と『木神さま』とやらを間違えたのだろう〜」
けだるげな口調と、やる気の無さそうな態度。
しかしその無気力な雰囲気をまといつつも、トマス・ウェスト(ea8714)の頭脳は回転し、扉を開く鍵を探していた。‥‥「謎」と言う名の扉の鍵を。
村人たちの視線を背中に受けつつ、彼が検分しているのは調べているのは、二人の猟師の遺体。一人は確かに、何かに両足を食いちぎられている。もう一人は、既に抜かれている矢、及びそれに塗られていただろう毒によって命を落としたようだ。
「この遺体の状態‥‥傷口の状態から、間違いは無さそうだね〜‥‥」
だとしたら、犬鬼か。しかし、連中は弓矢を使えるのか? ケシ粒程度の間抜け頭脳しか持っていないボケナスどもが、弓を使えるほどに頭が回るのだろうか? 二人そろってでようやく半人前の知性しか持たない連中が?
「‥‥ふーむ?」
蒼き目と白髪を有する僧侶は、訝しんだ。弓矢を使えるとは思えない連中に、何かが弓矢を使わせるようにしたのか?
確実に言えるのは、唯一つ。
人喰樹と、毒矢を用いる何者かの群れ。その両方と対決し、そして勝たなければならないという事。
「では、村長さんが案内してくれるんですか?」
エルフのウィザード、ジェシュファ・フォース・ロッズ(eb2292)。
「はい。まずは『木神さま』の場所まで行っていただきたいと思います。少なくとも、我々村の者が知っている『木神さま』と、猟師を襲った『木神さま』とは、どうも一緒とは思えないのです。まずは、それを確かめていただけないかと」
「承知。然らば、『木神さま』を確認した後で、調査を開始しましょう」
ジャイアントの陰陽師、宿奈芳純(eb5475)。彼は文左衛門に向かい、励ますように微笑んだ。
「聞き込みも終わった。それじゃあ、まずは行ってみようじゃあないか。‥‥『木神さま』とやらの元へ」
雀尾嵐淡(ec0843)、猛き僧兵が促した。
それは、荘厳。それは、重厚。それは、齢を重ねた巨大なる魂。
その大木の周辺には、荘厳なる空気が漂い、森林の他の地域とは異なる空気をかもし出していた。草木はもとより、虫や動物たちもが遠慮し、畏まっているかのようだ。
文左衛門と村人たちが案内し、連れてきた場所。
そこに至るまでの道は、実に入り組んでいた。同じような木々が生え、目印を立てたとしても迷いそうな下生えに覆われ、知らない人間が迷い込んだら確実に迷い込む。ところどころに付けられた、わずかな目印。それらをたどることで、ようやく「そこ」に到着できた。
そこには幾重にも木々が重なり生えた場所。下生えが密生する中、まるで木々の王かのごとく「それ」はそこに根を下ろしていた。
「ほう‥‥これは‥‥」宿奈が感嘆の声をもらし、雀尾もまた驚きに目を見開いた。
「少なくとも、悪い気配はしないな。邪悪な気配も、獣の猛々しさも無い」
「ええ、そうですね。むしろ‥‥」ジェシュファは思った。むしろ、いるだけで温かみを感じる穏やかな性格の人を、目の前にしているようだと。
「こちらが、我々の守り神『木神さま』ですだ」
文左衛門の言葉通り、それは神秘を感じさせる大木。少なくとも百年くらいはここに根を伸ばし、立ち続けていたのだろう。枝は大きく、力強く茂っている。まるで、この山そのものを守る神のごとく。
節くれ立っている樹木の表面には、まるで齢を重ねた老賢者のような顔が浮き上がっていた。それは顔などではなく、うろのような穴や自然に出来た陰影などから顔のように見えるに過ぎないだけなのだろう。だが、それでも微笑んでいるかのよう。
神の御前に進み出るかのように、ジェシュファと宿奈は進み出た。
「やはり、トレントの一種? ‥‥けど、とても穏やかで、とても優しい風が生じてる‥‥」
森の妖精、エルフ特有の感覚。木々と草木の色、緑の匂い、穏やかに駆け抜けるそよ風を『木神さま』から受けると、穏やかな感情を覚える。
『‥‥陰陽師の宿奈芳純と申します。よろしければ猟師達を襲った理由をお聞かせ願えないでしょうか』
宿奈は精霊魔法、テレパシーを用い、『木神さま』に接触した。精神と精神、魂と魂が触れ合い、両者に繋がりをもたらす。
『‥‥襲っていない? 確かなのですね?』
『‥‥』
『‥‥承知しました。返答に感謝します』
「なんと言っていた?」武器の柄に手を置いていた雀尾は、対話を終えた宿奈へと聞いた。ディテクトライトフォースで、『木神さま』が精霊のたぐいである事は判明してはいたが、それでも真意までは判明していない。その点をぜひとも聞きたいと思っていた。
「いや、私が聞いてわかった限りでは‥‥ここしばらくの間、見た人間は我々だけだという答えでした。猟師を襲っただの、弓矢を持った集団だのといったものは、知らないとの事です」
宿奈の答えに、ジェシュファは付け加えた。
「そうですね、感覚的な事を言ってしまえば‥‥単なる勘ですから、確たる事は言えませんが、『木神さま』は襲撃した犯人ではないと思います。少なくともこの周辺には、争った後は無く、食い散らかされた獣も見当たりません」
「ふむーっ、となると‥‥やはり我輩の思ったとおりであるな。犠牲者は道を間違えて、何かを『木神さま』と誤解し、それに襲われたのだろう。だが、誤解した『何か』が何なのか。それを探らねばな」
ウエストが木々を仰ぎ見た。彼の言葉に賛同するかのように、木々の枝もまた風を受けてさらさらと音を立てていた。
「この、木々の分かれ道。ここで被害者たちを発見したんですね?」
「はいです。ここから『木神さま』の場所までは、それほど離れてはいません。知らない人間は、たどり着けずに別の場所まで迷い込んでしまう事も多いんです」
文左衛門たちの説明を聞き、宿奈は立った。そこは、犠牲者たちが発見された場所。
時間も聞き出していた。本来ならば、インフラビジョンを用い、山全体を一望する場所から『木神さま』と襲撃者たちを調べようかと考えていたのだが。しかし、一望できる場所は無かったため、村人たちの協力を得て別の方法で事実を確認しようと試みていた。
「過去の出来事よ、我が目、我が耳、我が肌へ、その時に起こりし息吹とともにここへ映し出せ‥‥『パースト』」
宿奈の感覚が、過去へと‥‥襲撃された犠牲者たちが見つかったその時間へと旅立った。
宿奈とともに、周囲を調べていた冒険者たち。少なくとも、この周辺には今のところは何も出ないだろう。そう考えていた矢先。
「?‥‥!‥‥!?」
ジェシュファの感覚に、ウエストの予感に、雀尾の勘に、何かが漂ってきた。悪い何かが。
見える。
夢の中にたゆたうように、過去の情景が見える。パーストの呪文は、何の問題も無く発揮しているようだ。
目の前に、ひどい様子でのたうちまわっている、二人の男の姿。まさしく、検分した遺体の二人。宿奈はそのまま、その情景からずっと奥の方へと向かっていった。
暗く、周辺には何がいるのか、どんな動物や植物がいるのか、知るのは困難。当然松明も付けておらず、周囲の木々が生い茂っているために星明りも届かない。確かに緑が繁殖してはいるものの、その繁殖が『木神さま』のそれとは異なる何かが感じ取れる。
宿奈がさらに奥へ、奥へと進むと、次第にその異なる「何か」、おそらくは二人の男を殺しただろう「何か」の気配が、ますます強まっていくのを感じとる。
周囲の道や草木の様子は、正直なところ先刻の、『木神さま』のそれとほとんど同じで、見分けがつかない。村人たちに言わせれば、わずかな手がかりによって『木神さま』への道は判別するそうだが。‥‥なんでも、昔に隣の山にいる村と小競り合いになり、その村人たちから御神木である『木神さま』を守るために、そのような処置を施したとか。
そのまま進むうちに、死臭と腐敗の臭いとが強く漂ってきた。緑は茂り、青々としているようだが、暗くて良くはわからない。が、確かにその周辺には「生命」ではなく、「死」が漂っていたのだ。
視線の先に、宿奈は「見た」。『木神さま』に酷似した影の大木を。
だが、それは洞の形をした巨大な口、年輪がごとき、悪意あるまなざし。そして得物を引っつかみ、絞め殺し口に放り込むためだけの腕‥‥、否、腕の役割を持つ枝。
「‥‥人喰い樹だ!」
それを確信したとき、呪文の効果が切れ、彼は現実に引き戻された。そして、現実では新たな問題が発生していた。
「危ない!」
一本の矢が、近くの地面に突き刺さる。別の矢が、木の表面へと打ち込まれた。ジェシュファが宿奈を押し倒してくれなければ、放たれた矢‥‥間違いなく、毒矢‥‥に当たっていたことだろう。
「みなさん、こっちです!」文左衛門の声とともに、冒険者たちは木の陰に隠れた。ぎりぎりのところで、矢は当たらない。どうも腕前の方はそれほどでもなさそうだ。
「くっ、誰だ!?」
雀尾が、鬼神の小柄にて矢を切り払いつつ、襲撃者を見極めんとにらみつけた。
それは、遠くにいたが、確かに小柄な人影。だが、その頭部は獣のそれ。犬のごとき顔つきに顎。この場所からは遠すぎてはっきりとは見えないが、間違いなく犬鬼だろう。確たる事はいえないが、どうやら数十匹はいるようだ。どんなに少なく見積もっても、三〜四十匹より少ない事はないだろう。
「やはり‥‥しかし、なぜゆえ犬鬼ごときが弓矢を‥‥?」
ウエストの疑問をさらに邁進させるように、一匹の犬鬼が立っていた。それは、他の犬鬼よりも威風堂々としており、大柄で、見るからに他と異なる古強者の気配を漂わせている。その手にあるのは、奪ったものと思われる、値打ちものの大きな弓。それを誇らしげに掲げ、そいつは吼えた。
矢の雨が、より多く、そして狙いが正確に放たれてきた。あの犬鬼、おそらくは集団の頭だろう。そいつの指揮で、矢を用い襲撃していたに相違あるまい。
しかし、ウエストの狙いと裏腹に、村人の数人が別の方向から放たれた矢を受け、その命を落としてしまった。
「しまった、こっちにも!」
文左衛門もまた、矢を肩に受けてしまった。
「がはっ!」
「しっかり! ‥‥どうやら、前のあいつらは陽動のようです。犬鬼のくせに、なんて頭が回るやつ‥‥!」
歯噛みする宿奈だが、認めざるを得なかった。犬鬼ごときに、一杯食わされた事を。
「逃げましょう! 一度引き返して体勢を整えるんです!」
ジェシュファが進み出ると、呪文を唱え始めた。
「我が掌に集え、清涼なる吹雪の力よ! 『アイスブリザード』!」
呪文により発生した、凍える冷たき力。ジェシュファより猛烈な吹雪が放たれ、展開していた犬鬼、ないしはそれらがいるだろう場所に向かっていった。
統率が崩れ、相手方に混乱が生じた。遠すぎて、相手に打撃を与えたかまではわからない。が、それでも混乱させるには十分な時間が稼げた。
そして、その時間を用い、冒険者たちは命拾いをした。
「我、毒の種類を見極めり。其が言葉に従い、我が命において中和せよ。『アンチドート』」
村まで逃げ帰った一行。村人で生き残ったのは、文左衛門のみ。
ウエストは、打ち込んできた毒矢を抜いて回収し、それが犬鬼の用いる鉱物毒である事を突き止めた。それをもとに、呪文で毒を中和したが‥‥。
「‥‥状況が判明したな〜。被害者は、最初にあの犬鬼どもに襲われた。そして逃げた先にいた人喰樹を『木神さま』と勘違いして‥‥」
襲われ、ある者は喰われ、ある者はそれから逃げ延びたと。
「『木神さま』が加害者じゃないとわかったのは良いですが‥‥それにしても、どうすれば良いでしょう?」
ジェシュファが、不安げにつぶやいた。人喰樹を滅ぼすのは、難しいが不可能ではない。が、問題はあの犬鬼の集団。あれをなんとかして片付けない事には、同じような事件は起こるだろう。
仮に犬鬼の集団を先に退治するにしても、どうやって? 巨大な集団であり、少人数ではまず歯がたたない。何か計略をもって、犬鬼どもと人喰樹とを何とかして両方倒す方法を考えないと。
「村の人たちは、近くの村に避難させましょう。僕たちは一度引き返し、体勢を立て直してからことに当たった方が良いかと」
ジェシュファの提案に、皆がうなずいた。
ふたたび、林道村にやってくるだろう。だがそのときには、両方の脅威を打倒する方法を携えて。
一時的な撤退をしつつ、冒険者たちは敵が潜む山を見つめ、闘志を新たにするのだった。