黄色い襲撃者
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■ショートシナリオ
担当:塩田多弾砲
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:7 G 32 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月02日〜10月08日
リプレイ公開日:2008年10月09日
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●オープニング
常陸南部。
江戸より北東の隣国。北に幾つかの山の連なりが見えるのは、下野と常陸の境の筑波連山だろう。
山の向こう、北常陸の水戸は今も国は荒れていると聞く。西の江戸も、南の房総も穏やかとは言い難い世情だから、この南常盤の土浦へと続く街道も、往時に比べれば、めっきり人通りが減っていた。
それでも戦は始まっておらず、亡者もここまでは来ていない。田舎特有の、どこか弛緩した空気が漂っていた。
山間部に生きる若き農民・権三郎は、秋空と山々を眺めながら、村の仲間とともに、牛に荷車を引かせていた。彼の牛が運ぶのは、山の幸。色とりどりの秋野菜に漬物、川魚や雉、イノシシなどの干し肉や毛皮などなど。
そういったものを荷車に積み込み、この南常陸の中心都市である土浦を目指していた。
権三郎は農民ではあったが、彼は商人になりたかった。それも、いい農作物をできるだけ安価で売る、良心的な商人に。自分なりに商法を学び、商人の知り合いも多く作っては店を作る準備も行っている。あと必要なものといえば、資金。十分に金をため、まずは土浦に店を構えるのだ。
そして、土浦で店を大きくして、いつかは江戸に出店したい。そのためには、もっと働き、もっと稼がなければ。
「なあ、そろそろ一息入れるべ。おら、腹減ったよ」
権三郎へと、仲間の一人が問いかけた。既に朝早く村を出て半日、そろそろ正午だろう。自分も腹が減った。
「んだ、それじゃあ一休みするべか」
異論は無く、みんなで一休みする事に。ちょうど近くに、澄んだ水をたたえた池も見つかった。そこへ荷車を止めると、牛は池の水を飲み始めた。
権三郎たちはそれぞれ座り、青空を仰ぎつつ持参した握り飯を取り出し、それに食らいついた。それを、竹筒の水で流し込む。
「‥‥いい天気だ」
腹がいっぱいになると、疲れが出たのかついうとうとしてしまった。そろそろ出発しないとならないが、少しだけうつらうつらしてしまった。小鳥たちの音色が、いい感じに権三郎の耳をくすぐる。
その刹那。
「?」
小鳥たちの鳴き声が、不意に止んだ。それだけではなく、周囲の喧騒までもが止んだ。まるで、何かに「黙れ」と命じられたかのように。
周辺は、緑が滴る山間。この周辺には、人は住んでいないはず。山賊もこの周辺に出るとは聞いてない‥‥ここはあまり、おいしい獲物が通らないからだ。荷物を満載した隊商を狙うのなら、もっと土浦近くの街道に出没するはず。同じ理由で、小鬼どもが出たという話も聞かない。
しかし、今権三郎たちは、何かが近づいてくるのを感じていた。おそらく、危険であろう何か、恐ろしい何かが。
「!」
「な、なんだ!」
彼らは、知った。
自分たちが襲撃を受けている「何か」が何なのかを。
夕刻。
隊商を組んだ商人、梅屋の若き主人、梅沢功七は、隊商を組んで土浦へと向かっていた。もうじき、山奥の村に続く道が見えてくる。
街道に交わった三叉路、そこから北へと進むことで、友人の住む村へたどり着くことが出来る。
が、三叉路を目の前にして。功七は見た。そこに、ぼろぼろになった誰かが倒れているのを。
「おい、しっかりしろ!」
功七は、丁稚とともにその行き倒れた者を助け起こした。そして、その者の顔を見て、驚きを覚えた。
「権の字? お前、権三郎か?」
「‥‥こ、功の字か‥‥お、襲われた‥‥荷車ごと‥‥」
知り合いの農民、そして商人になりたいと考えていた功七の友人、権三郎に他ならない。が、このひどい傷は、尋常ではなかった。
「何に襲われた? 山賊か? それとも小鬼か茶鬼の盗賊どもに襲われたのか?」
功七の問いかけに、権三郎はかぶりをふった。
「そ、空から、黄色い、あいつが‥‥あいつらが‥‥」
それだけつぶやくと、権三郎は息をひきとった。
「その周辺には、確かに一人歩きの旅人が行方不明になる事は多いそうです。ですが、あまり人が通らないもので、そういう事件があったとしても、あまり騒がれなかったそうで」
江戸、冒険者ギルド。
そこで功七は、状況の説明を行っていた。
「何があったのか、権三郎がやってきた道を護衛の浪人数人と向かってみました。するとそこに、あったんです。壊された荷車と、運んできただろう荷物が。そして、権三郎の仲間の変わり果てた姿も見つけました」
が、不思議なことに、積荷にはほとんど手がつけられていなかった。干物などの肉類は食い散らかされていたが、野菜の類は無視され散乱していた。
さらに奇妙なことに、荷役獣である牛の姿が影も形もなかったのだ。手綱が引きちぎられていたが、それは牛の力によるものなのか定かではない。それに、よしんば牛が荷車から逃れ逃げたとしても、その足跡が全く見当たらなかったのだ。
周辺の地面は土が軟らかく、かならず足跡がつく。なのに、牛の足跡は数歩後で、ふっつりと途絶えていた。その場に消えたかのように。
他の場所に歩いて、または走って逃げたのならば、足跡が付くはず。なのにそれがない。仮にそうだとしても、足跡をどうやって付けずにすむのか。
わからない、まったくわからない。
権三郎と、彼の仲間の遺体もまた、奇妙な点が残されていた。切り傷は無く、巨大な刺し傷を負っていた。
「私は、隊商の危険を回避するという理由以前に、権三郎の仇をとりたいのです。まずまちがいなく、『そいつ』は強力な怪物か妖怪変化でしょう。だからこそ、皆様のお力を使って、こいつらが何物かを突き止め、そしてあだ討ちしていただきたいです」
彼は、報酬を取り出しつつ言った。
「この怪物、何かはわかりません。ですが、どうかこいつを退治してください。お願いします」
●リプレイ本文
「成る程、権三郎殿は商人に、それも良き商人になりたいとお考えでしたが」
落ち込んでいる功七らから、大柄な宿奈芳純(eb5475)は、話を聞きだしていた。ジャイアントの彼はその巨体に反し、穏やかな口調と性格を有す陰陽師。その言葉に救われ、立ち直った者は数知れず。
「‥‥わかりました、あとは我々が引き受けましょう」
彼は、捜し求めていたものを手にした。功七が、友人を無くした現場と、その状況の情報を。
「で、彼はなんと言ってたのですか?」
クールなエルフ、銀髪の美青年にしてフランク王国のウィザード、ゼルス・ウィンディ(ea1661)。
宿奈は彼を含む今回の冒険の仲間たちに、功七から聞き出した情報を伝えていた。
「湖のほとり、そこで殺害されたのは間違いないでしょう。そして、空からそれは襲ってきた。犯人はまず間違いなく‥‥」
「‥‥大蜂、という事になるのだろうな」
宿奈の答えを、天城烈閃(ea0629)が先取りした。
「大蜂、おそらくそれが複数。かなり厄介だな。事前に策を立てなければならないだろう」
「無論です。けど、どうやって?」
冒険者たちの紅一点、妙道院孔宣(ec5511)が不安そうに仲間たちを見回した。
「聞くところによると、空中から襲い掛かるというだけでなく、危険な毒針に凶暴で貪欲な性格。それが複数あるならば、一体どのようにして対処すればいいのでしょう?」
宿奈と同じジャイアント族の彼女だが、冒険者としての経験はこの中では一番浅い。まだ冒険を始めてわずか、不安を覚えるのは当然。
「心配は要りませんよ」同じジャイアント族の宿奈が、不安を解消させるような口調で言った。
「作戦は立ててあります。この事件の犯人たちは、たとえ何者だろうと二度と起こさせません。こんな悲劇をね」
次の日の夜明け、冒険者たちは旅立った。荷車と荷役獣、そして誘き出すための餌。それらを提供してくれた功七に感謝しつつ、彼ら四人は現場近くへと到着した。
「それでは皆さん、打ち合わせどおりに」
宿奈の言葉にうなずいた三人は、周囲を警戒するように青空へと視線を向けた。
「既に流れ去りし、時の残滓よ。今ここに、我が元に其を映し出さん。『パースト』」
彼の唱える呪文の詠唱が終わるとともに、その効果が現れ始める。過去に、何が起こったのか。何がこの場で起きたのか。宿奈はそれを幻視した。古き書物を紐解くように、彼の視覚に過去の情景が浮かび上がってきた。
まず見えたのは、一休みしている数名の男たち。
その一人は、宿奈も名を知っていた。権三郎。今回の被害者の一人。
木陰で休んでいる彼は、いきなり何かに気づいたように、顔を見上げた。宿奈もまた、それに合わせて同じ方向へと顔を向ける。
同じく、聞こえてきた耳障りな羽音。鳥のものではない、少なくとも、鳥の羽ばたきはこんな音を出したりはしない。
天城の予想が当たった事に、宿奈は感心するとともに、不安を募らせた。予想が当たったとはいっても、自分たちの仕事が‥‥そいつの掃討が、楽ではないと確認できただけのこと。
それは、まるで虎だった。だが、虎の黄色と黒の縞模様が危険と優雅、美しき感銘を与えるのに対し、そいつの黄色と黒にはそれが無い。あるのは冷酷にして残忍な、飢える欲望。
そいつらは、権三郎の姿を見て空中から急降下し、いきなり襲撃してきた。腹の針は、下手な刀や槍よりも太く鋭い凶器。羽音が刻むのは、死の旋律。表情の無い複眼は、冷たく見つめ返し、その大あごはせわしく動く。
そう、天城の予想は当たっていた。雀蜂、それも巨大な雀蜂が数匹、権三郎たちとその荷車へと襲撃したのだ。
一人が棍棒を振るったが、かすりもしなかった。そのまま針に頭を突き刺され、事切れる。
別の大蜂もまた、毒針を突き刺して別の男を抱え上げる。当然、荷台の干し肉や干し魚なども蜂はむさぼっていた。
唯一、権三郎は最後まで戦っている。さすがにその抵抗には手を焼いたのか、とうとう蜂も連れ去る事を断念したようだ。
もっとも、だからといって無傷ではすまなかったが。鉤爪のある三対の脚に左右に開く大顎で傷つけられ、尻の針により何度もひっかかれた。直撃は無いものの、権三郎を殺すには十分すぎるほどの痛手。
三匹目の蜂は、牛に襲い掛かっていた。さすがに牛が相手では、蜂もおいそれと手出しはできない。が、牛も最終的には針を突き刺され、蜂どもの食料となった。
牛を抱え上げるのには苦労した様子だが、それでも蜂の貪欲さには限りが無く、ねじくれた六本脚が抱え込み運び去るのに時間はかからなかった。運び去った方向は、湖の向かい側だろう。それがどこかは確たる事は判別できなくとも、湖の上空を通り、その先にある地点へと向かっている事はわかった。
そこまで見て、呪文の効果が薄れ、そして‥‥幻視は終わった。
その後。
宿奈は更なる呪文とスクロールによる探査を行った。インフラビジョンのスクロールで熱源感知の目を持った後、テレスコープとエックスレイビジョンにて、遠方視と透視の目を併せ持った宿奈は、「見た」。
視覚のぎりぎり範囲内ではあったが、蜂の巣と、そこで蜂が、まだ知らぬ被害者や獲物を噛み、幼虫の餌にしている様を。
「‥‥やはり、ラージビーですか」ゼルスがつぶやく。
宿奈が見たものを伝えられ、一行は予想が的中したことを確認した。それと同時に、更なる戦慄をも覚えた。‥‥並みの怪物よりも厄介な相手。それとこれから戦わなくてはならないからだ。
「パーストにて見たところ、相手は子牛ほどもある巨大な蜂。確認できた成虫は三匹のみでしたが、放置しておくと大変な事になるのは間違いないです」
「‥‥幼虫が、いるのですか?」
妙道院の言葉に、宿奈はうなずく事で答えた。
「巣は、湖の向かい側。内部が枯死した大木の中に、巨大な巣を作り出しています。それは後で炎か、あるいは呪文で焼き払うとしても‥‥問題は動ける成虫をいかにして倒すか。それが問題です」
巣を焼き払うにしても、成虫が逃げては話にならない。そいつが雌ならばまた別の場所で卵を産み繁殖するだろうし、雄だとしても襲い掛かり脅威になるのは変らない。
巣と同時に、成虫を倒す必要がある。それが成功しない事には、またこの悲劇が繰り返される結果となろう。
巣‥‥と思しき地点より、近い場所。
そこに置かれた荷車、ないしはそれに詰まれた荷物からは、腐臭にも近い臭いが漂っている。腐りかけた肉や魚が発する臭い。その腐臭に引かれ、普通の虫がたかっている。腐肉にたかり、腐汁をすする大量の虫たちの姿を見るのは、やはりいい気分ではない。
ここは、巣より離れてはいるが、街道からも離れた森林内の一角。すり鉢状になった地形の中心に荷車を置き、周囲の木や岩などに隠れて大蜂の襲撃を皆で待っていた。
木々が枝を茂らせているため、空からの襲撃はある程度防げる。それを利用し、一気に殲滅する。
果たして、うまくいくか。うまくいってくれればいいが。
「! ‥‥どうやら、間違いなさそうです」
遠く、視界にぎりぎり捕らえられる場所にて。朽ちかけた巨大な木、ないしはその洞より、蜂が飛び出した。
何かを警戒しているかのように、上空を舞っている。餌となる獲物を探しているのだろう。
「ゼルス。この場所から、呪文でやれるか?」天城がたずねたが、銀髪碧眼のエルフは首を振った。
「残念ですが、雨雲が全くない快晴のこの状況では使えません。それに‥‥」
ゼルスは指差した。その先には、黄色い三体の襲撃者が強襲をしかけている様子があった。
「それ以前に、あいつらを倒さなければ!」
さながらそれは、空を飛ぶ死神のよう。蒼天の青色から襲い来る黄色と黒の悪魔は、視覚に対しても不快なる暴力を持って攻撃しているような錯覚を、冒険者たちに感じさせた。
そのうちの一匹が、体を丸めて針を突き刺さんと迫る。が、針よりも鋭き切っ先が蜂へと襲った。
天城の携えた強弓「十人張り」より放たれた矢が、蜂へと命中したのだ。ゼルスにより、フレイムエリベイションの呪文を付加されて命中効果が増加していたこともあり、鋭き矢は見事に蜂を串刺しにして、獲物をしとめていた。一匹目の蜂が、飛行能力を失い地面へと落下した。
残る二匹は、荷車、ないしはそれに積まれた荷物へとたかっている。腐肉を顎で噛むと、味わうように咀嚼している様子が、宿奈たちが隠れた場所からでも見えた。
「杏香! ファイヤーウォール!」
宿奈の言葉に反応し、彼の近くを漂う鬼火が炎を放つ。それは燃える炎の壁となり、蜂の前に立ちはだかった。
「燃える力よ、我が掌によりて、我が命に答えよ!『ファイヤーコントロール』!」
さらに、その炎の壁を操り、宿奈は荷車、ないしは蜂を囲った。一匹は即座に空中へと逃れるも、一匹は羽を燃やされ、地面へと転がり落ちた。更にその甲殻をも炎に飲まれ、火達磨になった。
香ばしい悪臭が漂い、はぜるような音とともに、大蜂が炎の壁を通り抜けて現れた。が、翼を失い、致命傷を負い、そいつは脅威ではなくなっている。
「行きます!」
そいつの息の根を完全に止めんと、妙道院が進み出た。まだそいつは危険。針は健在、鋭き大顎も健在。ほとんどの生命力を失ってはいても、危険はいささかも衰えてはいない。
大顎で噛み砕こうとする大蜂だが、妙道院の携えた武器、語法の薙刀の刃がそいつの体へと食い込んだ。いやらしい音と体液がほとばしり、蜂は明らかに苦しそうな声を、断末魔の声を響かせている。
再び、一閃。鋭い薙刀の一撃が、蜂の頭部を完全に切断した。
「また来ます!」
先刻空へと逃れた一匹が、またも襲い掛かる。それは仲間の敵を討たんと、妙道院へとまっすぐに襲い掛かってきた。
もしも、彼女が一人で戦っていたら。この一撃で彼女は巨大な昆虫の餌になっていただろう。
しかし今回は違う。頼もしき、そして強力なる仲間と行動している事の幸運に、彼女は感謝していた。
「風の刃よ、我が剣となりて我が敵を切り裂かん! 『ウインドスラッシュ』!」
ゼルスの放った風の刃が、大蜂の翼を切り裂き地面へと墜落させたのだ。
「迷わず、成仏しろ!」
二度、三度と、天城の矢が大蜂へと打ち込まれる。ひくひくと動くそいつは、いやらしくうごめいていたが、次第に動きを止めて事切れた。
「‥‥ふう、ようやく終わりましたね」
安堵とともに、ため息をついた妙道院だったが、
「‥‥まだだ!」
天城が、妙道院へと矢を向け、放った。
「!」
いきなりのことで、彼女は対処できなかった。
矢は、彼女の肩越しにとび、彼女の後ろの藪へと飛んでいった。そして、倒れる音。
天城は、妙道院の後ろへと歩いて近づいていた大蜂をいち早く見つけ、それに矢を放ったのだ。眉間に深く矢が食い込み、三匹目の大蜂もまた退治された。
炎が、木を、ないしは大蜂の巣をなめていく。赤い舌が巣をなめ、赤い手足が踊る。それとともに、肉が焼けるおぞましい臭いが周囲に充満し、冒険者たちに吐き気をもよおさせた。
内部からは、やはりはぜるような、破裂するような、そんな音が聞こえてくる。巨大な幼虫が燃えながら巣から這い出てくるも、炎は容赦なくそれを燃やす。赤い炎の中には、幼虫のみならず多くの蛹も垣間見えた。
まだこの巣には、成虫が三匹しかいなかった。それらは幼虫に多くの餌を与えんと、獲物を取りまくっては与えていた。おそらくはそれが、権三郎にも矛先を向けられたのだろう。実際、天城や宿奈のその予想は正しいものだった。
孵化直前の卵や、羽化寸前の蛹も、残らず焼かれていく。宿奈の持つ鬼火が放った炎の勢いはすさまじく、火が消えた跡でもしばらくは草木は生えず、虫も寄り付きはしないだろうと思わせるほど。
「巣の除去は、これで十分でしょう。権三郎さん、仇はとりました」
ゼルスの言葉に皆はうなずき、そして心の中で犠牲者たちの冥福を祈った。
そして妙道院もまた、犠牲者たちが化けて出ぬようにと、簡易ながら改めて祈り、弔った。
後日。功七は改めて墓参りを行った。
「お前の分まで、俺は商人として成功してみせる。だから、ゆっくりと眠ってくれ」
それ以後、功七は前にもまして働くようになった。友人の分まで、商いを成功させるために。