今年も夕涼みを‥‥

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月08日〜08月13日

リプレイ公開日:2005年08月18日

●オープニング

 夕刻、昼の厳しい暑さがやや収まった頃、70を過ぎた、人の良さそうな老夫婦がギルドを訪ねてきました。
「夕涼みに行くための護衛を、どうか引き受けては頂けないでしょうかのう」
 そう言いながら、傍らにいる品の良い老婦人を気遣う依頼人。
「あぁ、そう言えば去年‥‥」
「はい、お陰様で通行料をと脅される方々から守って頂き、郊外の村の別邸へ、無事に送っていただきました」
「ええ、そうでしたね。‥‥もう、そんな時期なんですねぇ‥‥」
「はい。近頃は少々物騒といえますので、やはり念のため、護衛をお願いしましょうかと‥‥家内は足を悪くしておりまして、あまり急いだ旅も出来ませんし、何かありましてはと‥‥」
 そう言うと軽く首を傾げる依頼人。
「確かに、近頃あの辺りの道で時折追い剥ぎが出るって言いますしねぇ‥‥」
「ええ、ですのでこうして参った次第なのですよ」
「分かりました、護衛の依頼ですね。出しておきましょう」
「有難うございます、宜しくお願いいたします」
 受付の青年がそう言って依頼を確認するのに、依頼人とその老婦人は改めてお礼を言って頭を下げるのでした。

●今回の参加者

 ea2139 ルナ・フィリース(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5988 冬里 沙胡(31歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb0084 柳 花蓮(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb0891 シェーンハイト・シュメッター(22歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2017 夜咲 凛華(26歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2905 玄間 北斗(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb3236 マリー・ベネディクティン(31歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3258 狗 芳鈴(23歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

霧島 小夜(ea8703

●リプレイ本文

●夕涼みへ出発
「はじめまして! 冬里沙胡です。しばらくの間ご一緒させてもらいます」
 元気に老夫婦に声をかけるのは冬里沙胡(ea5988)です。沙胡は荷を軽くして老婦人を乗せられるようにと愛馬の手綱を引いてやって来たよう。
「お久しぶりです。去年ご一緒させていただいたのですが覚えていますか?」
「おぉ、今年もいらして下さいましたか、勿論覚えておりますぞ」
 老夫婦に声をかけたルナ・フィリース(ea2139)に、嬉しそうに笑って頷く依頼人。
「美人さんが一杯でとっても華やかなのだ」
 先程情報収集から戻ってきていた玄間北斗(eb2905)がそう言うのに同感ですな、と頷く依頼人。
 この際その美人さん達の中に1人男の子が紛れているのは気にしない方向で行った方が良いようです。
「夕涼み‥‥ですか。確かに今、ものすごく暑いですからね‥‥ジャパンの夏は、非常に蒸し暑いですよ‥‥」
 ほうと溜息をついて言うマリー・ベネディクティン(eb3236)に老婦人はのんびりと笑いながら手拭いを差し出したりしています。
「やはり異国の方にはこの時期のこの気候は大変なのですねぇ」
「ですから、こういうのは良いと思います☆ 私も、お供させていただきます☆」
 にこにこと笑顔でそう言うマリーに老婦人も笑顔で頷いています。
 そんなやり取りの隣ではぐっと握り拳で何やらやる気満々の人が。
「ふっふっふ‥‥初めてのお仕事だよ、どきどきだよー。がんばるぞぉぉぉ」
 狗芳鈴(eb3258)は張り切った様子でそう言うと、ふと気が付いたように老夫婦に顔を向けます。
「そう言えば、名前はなんて言うのかな?」
「おお、申し遅れました、わたくしは清右衛門。家内は竹と申します」
「セイエモンにタケ、ね。了解だよー」
 そんな会話をしている間に、情報収集に出ていた柳花蓮(eb0084)が、手を貸してくれていた霧島小夜から依頼人に頼まれた往き帰りの食料を受け取ると、調べてきた追い剥ぎの出る地点を仲間へと説明し、出発となりました。
「最近暑いから、涼しいとこでのんびりしたいね♪」
 そう子犬のようにはしゃいで傍らの女性にじゃれつきつつ歩くのは夜咲凛華(eb2017)。
 シェーンハイト・シュメッター(eb0891)と揃って『お出かけ』が出来るのが余程嬉しいらしく、シェーンハイトもその様子に優しい笑みを浮かべて頷いて凛華と手を繋いでいます。
「夕涼み、お姉ちゃんとのんびり出来たら良いな♪」
 上機嫌にそう言う凛華の様子に、老夫婦も思わず笑みを零しているのでした。

●なだらか道の追い剥ぎ
「今年も必ず御二方を村まで御守りします」
 ルナがそう言うのに、馬乗せに揺られた老婦人が微笑んで頷きます。前回のことを思い出してか全幅の信頼を寄せているようです。
 同じく老婦人の側で警戒していた花蓮も、先行した玄間を信頼し前を任せつつ、時折背後から追い剥ぎが迫ったりしていないようにと魔法付きで警戒したりしているようです。
 同じく背後を警戒しているのはマリー。
 そんな中ではしゃぐ凛華とそれを眺めながら気を配ってあげているシェーンハイト。
 先行する玄間がその男達に気が付いたのは、木々が少しせり出してなだらかな道に影を落としている辺りでした。
 馬を背後の仲間達に預けてぽえ〜んと気の抜けた様子で歩いていたため、とりあえずいっとくか、みたいなノリで出てきたのかも知れません。
「おぅ、そこの気ぃ抜けた兄ぃちゃん、身ぐるみ剥がれたかなぁったら有り金と持ち物全部置いてくんだぁな」
 ぬっと現れた男達は端から見ても屈強な男達で7人。
 道を塞ぐように4人が前に立つと、玄間の後ろに回ろうとする3人。
「微塵隠れの術を覚えたから、少々先行してもすぐに合流できるのだぁ〜」
「はぁ? 何を言っ‥‥ぐはっ!?」
 掴みかかろうとし囲んでいた4人が突如爆風に巻き込まれて吹き飛ぶのに、即座に反応したのはルナと芳鈴。
 一行が玄間に僅かに遅れてやって来ていたのですが、何やらぞろぞろと男達が現れたのを木の陰より確認すると、老夫婦をそこに留め置いて駆け出す2人にすっと現れ後衛と合流する玄間。
「早くこちらへっ」
 そう玄間に声をかける沙胡。
「指一本たりとも触れさせません!」
 沙胡は老夫婦にそう言ってにっこりと笑うと玄間に手綱を預けて刀を手に2人に続きます。
「何故毎年あなた方の様な輩が現れるのでしょうか‥‥」
 男達に聞こえるか聞こえないかの声音で言うと、視界を確保してから問答無用で衝撃波を撃ち放つルナ。
 それを喰らって怯みもんどり打つ男達の直中に芳鈴が突撃。
「う゛〜〜‥‥っっ! ここであったが100回目、二度と追い剥ぎなんて出来なくなるくらいボコボコにしてやるぅっ!」
「なっ、ちょ、ちょっと待‥‥!」
「問答無用です。徹底的にやらせてもらいます!」
 がすがすと文字通り手近な男をぼこしている芳鈴に追いついてきた仲間達も臨戦態勢。
「な、何だてめぇらはっ! 命が惜しかった‥‥がはっ!? ぐおぉぉぉおっ!?」
 的の首領角の男が一行に向き直りかけ‥‥押され気味なのに脅しをかけようと口を開いた瞬間に足下に爆発が起こり足を押さえてのたうち回り。
 それを見てなんだかちょっと満足げな凛華。
 そしてがすがすとブラックホーリーを撃ち込む花蓮にシェーンハイト‥‥端から見ていて一方的な展開ですが、これも自業自得。
「皆さ〜ん、避けちゃってください☆」
 その言葉にこれでもか、とばかりに男達をぼこしていたルナ・芳鈴・沙胡の3人がさっと避けると、そこににこにことマリーがアイスブリザードを撃ち込みます。
 ‥‥暫く後になって‥‥。
「命ばかりはお助けを」
 一行に平伏している男とずたぼろで昏倒している男達。
 所詮は一行の敵ではなかったよう。
 少し足止めではありますが、さっくり街道沿いのお家に括った男達を預けて役人に引き渡すことになった時点で彼らはほっとしたように役人に連れて行かれることになるのですが、その頃には一行は目的の村の入口へと辿り着いているのでした。
「折角だから気持ちよく過ごせた方がいいのだ。御手入れ手伝うのだぁ〜」
 別宅を管理している男性が出迎えてくれて、荷を置いてのんびりとお茶などを頂いていると、清右衛門が荷を片付けたりちょこちょこと作業を始めるのに玄間はそう言って道具やら昨日のうちに干しておいたお布団を運んだりとお手伝いを始めます。
「たいしたことは出来ませんが‥‥」
 そう言いながら割り当てられた客間をそれぞれはたきで掃除している花蓮にお洗濯する物を選り分けておいている沙胡など、管理していた人だけでは手の届かなかった部分も準備が終えた頃、村のお百姓さん方の手による心尽くしの料理が振る舞われ、1日が終わるのでした。

●長閑な夕涼み
 わうわうと愛犬の鳴き声が響く中、花蓮はお散歩に出かけていました。戻ってくると既に朝餉の用意が出来ており、素朴ながら悪くない味の食事はその村の雰囲気と合わさってほっとする物です。
「むむ、そうきましたか‥‥ではほれ、ここに」
「あ、そ、そこに置かれると困るのだぁ〜」
 涼風扇片手に清右衛門と将棋に興じているのは玄間。流石年の功というか、打たれた手に玄間は眉を寄せて次の一手を考えますが、ふと庭で花蓮が愛犬と遊んでいる声にふと目を向けます。
「わんこと戯れる柳さんは可愛いのだぁ〜〜」
「おお、では勝負はいったん中断しますかな?」
 将棋と言っても規模が少々違い駒も沢山、休憩は多々あったりする物。玄間は頷いてそのまま縁台から庭へと飛び出していきます。
「おいらも戯れに行って来るのだぁ〜」
 その言葉通り庭に出て元気に遊ぶ様子を眺めると、清右衛門は笑って煙管に手を伸ばすのでした。
「あ、タケ、足もと気を付けてね?」
「はい、有難うね」
「あ、あの花は何と言うんでしょうね?」
「あら、可愛らしい花ですねぇ」
 足の悪くなった老婦人と共にゆっくりと村の周りを見ていくのは女性陣。
 芳鈴が足場の悪いところで手を貸せば、沙胡は見かけた花に顔を綻ばせます。
「ジャパンは来たばっかりだから色々教えて欲しいよぉ♪」
「私もジャパンの風習や文化などに興味が‥‥」
「皆さんからジャパンの風流な夏というのを教えていただきたいと思ってますよ☆」
 老婦人は口々に言う言葉に嬉しそう。
 ある意味長年の豊富な知識を持った老夫婦は確かにそう言った事柄に適任なのかも知れません。
「お姉ちゃん、見てみて!」
 山から畑へと流れ込んでくる清水に笊で冷やしてある野菜が乗っているのを見て、凛華が声を上げてシェーンハイトを呼ぶと、それを冷やしていたお百姓さんが笑いながら無造作に笊からきゅうりなどを取り出して差し出します。
「そのまま食べられるの?」
「んだすよ、嬢ちゃん、ようぅ冷えてうんめぇんだぁ」
 笑いながら言う様子にそれをそうっと囓ると、それはよく冷え、日を一杯に浴びて美味しくできていて、嬉しそうににこにこしながらシェーンハイトと半分こ。
 手を振っておじさんにお礼を言ってからシェーンハイトを引っ張って去っていく凛華を、おじさんも笑って見送ります。
 一行が屋敷へと戻ると、花蓮がスクロールでお水と氷を作り出し、それをみんなで分けて食べたり、老夫婦の話をじっと聞き入ってみたり。
 夕方になればご近所から果物やら何やらと差し入れを貰ってそれを食べたりしながらまったりと縁側で夕涼み。
 遊び疲れたか凛華はすっかりシェーンハイトの膝枕で幸せそうな笑みを浮かべて眠っています。
「これからも、守ってあげられたら‥‥でも、いつか、凛華さんも私を追い抜いていくんでしょうね‥‥」
 その出自からかそう言う物を沢山見てきたであろうシェーンハイトですが、何やら小さく寝言で呟いている凛華にどこか寂しそうな笑みを浮かべます。
「んぅ‥‥お姉ちゃん‥‥大好き‥‥」
 そっと頭を撫でてやるシェーンハイト。
 穏やかな時間はゆっくりと流れていくのでした。