夜の貌
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■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:5〜9lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 29 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:03月28日〜04月02日
リプレイ公開日:2006年04月08日
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●オープニング
その日、ギルドへとやって来た男は、どこかほんわかとした穏やかな風貌で、ともすれば子供っぽくも見えるような、何とも不思議な中年男でした。
「いやいや、ちょっと厄介なことになりまして‥‥」
そう言う男、仕事は表向きは小さな小間物屋を営んでいるとのことなのですが、もう一つ仕事があるとか。
「夜の仕事‥‥と言いまして、別に必ず夜に出かけるわけじゃあございませんよ」
そう言いながらほうと小さく溜息をつくこの男、堅気の女が已むに已まれぬ事情で金がいるときに、これはと思った客に紹介する色事の斡旋業、いわゆる阿呆鴉をしているそう。
「いえ、それはもう、これはと思うような確かな旦那にしか引き合わせませんし、女の方で希望しない限り、嫌がる客にお任せするようなこともいたしません」
「はぁ‥‥」
そうは言っても本来はあまり良いお仕事とはいえないのでぴんと来ない様子の受付の青年、このご時勢、依頼人のような者達を頼らざるを得ない者もいます。
「ですが、同業者にはそんな最低限の当たり前のことも守れない奴がいるようで‥‥」
そう溜め息を吐いて煙管を取り出す依頼人、どうやら依頼人の話では先の大火で身よりも何もかもなくした女が頼ってきたのですが、依頼人の前に女を掴まえていた阿呆鴉に酷い目にあっていたらしく逃げ出してきたそう。
暫く依頼人が引き取って世話をすれば直ぐに健康を取り戻し、とある大棚の旦那にこの度支度金を沢山頂き小さな一軒家まで用意して貰った矢先、その男が現れたそう。
「あろうことか、その男は自分の女だと言い出し、お相手さんから金を引き出そうとしているんですよ。あの娘さんが旦那にそれはもう大切にされているのを偶然に見たのでしょうが‥‥」
ある意味小間物屋とは別の一種の『誇りを持ってやっている生甲斐』に泥を塗られた気分の依頼人、相手の旦那には自分の差し金じゃないかと疑われているようで、問題の阿呆鴉もこの仕事で仲介料をたっぷり取っているだろうと踏んでか金を寄越せと生活を脅かされるようになっている態だとか。
「こういう仕事ですからお上に届けられないですし、それに半ば趣味のようなもの。かけた費用の回収と、ほんの少しのお礼以外は一切頂かず、娘さんへと渡してあるんですよ」
そう言うと、依頼人はゆっくりと煙管を蒸かすと頼むのでした。
「私の護衛と、娘さんの新しい生活を守るために、あの阿呆鴉を何とかして頂けないでしょうか?」
●リプレイ本文
●旦那と娘さん
「僕たちは依頼を受けた冒険者です。この件はきちんと解決しますので、その期間、少し、協力をしては貰えないでしょうか?」
マクシミリアン・リーマス(eb0311)が言うのに、その商人は渋い顔をして胡散臭げにマクシミリアンを見ます。
「そう言ってまた金を強請り取ろうと‥‥」
「すみません、言葉が足りませんでしたね、その期間だけ、安全のためにもあの方の所にいらっしゃるのを控えて頂けないかと‥‥」
「どういうことでしょう?」
慌てて誤解を解こうと首を振って言うマクシミリアンに、まだどこか疑いの眼差しを向ける商人ですが、金を取ろうというわけではないという言葉に怪訝そうに聞き返します。
「あの女性もそうですし、僕たちの依頼主も、あの浪人たちや悪質な阿呆鳥さんに苦しめられていますので、それを解決する為に僕たちが雇われました」
頷いて促す商人に、少しほっとしながら続けるマクシミリアン。
「ですが、気がかりなのが、その間に逢いに来られた貴方が巻き込まれたり怪我をしたりということがありえますので、どうか、その間は‥‥」
「良いでしょう、片がつきましたら、きちんと知らせてくださるのが条件ですが」
「はいっ、必ず!」
マクシミリアンは約束を取り付けると、急ぎ娘の家へと戻るのでした。
「依頼人は、気持ちのよい男だな。ぜひ力になってやりたい」
「本当に、私もあの方に救い上げられなければ今頃‥‥」
アシュレイ・カーティス(eb3867)が言うのにそう言って目を伏せるのはほっそりとして大人しそうな娘さん。
娘さんは夜間に備えて休むというアシュレイに、直ぐに別室に床を整えると、変わりに番をと差し出される仔犬を見て頬を染めて目を細めます。
「形が形なので、少々頼りなく見えるかも知れんが‥‥何、私には私の力がある。心配には及ばんさ」
別室に休みに立ち上がるリウ・ガイア(ea5067)が言えば、じんわり目元を潤ませる娘さん。
「どこの国にも、人の幸せを食い物にしてやがる下司はいやがる」
「せっかく幸せになれる機会があるのですから娘さんには幸せになっていただきたいです」
モードレッド・サージェイ(ea7310)が言うとラフィリンス・ヴィアド(ea9026)も同意を込めて頷くのでした。
●最初の襲撃
「こちらの旦那さんのしていることはあくまで営利を目指したものではないのです」
桐生和臣(eb2756)が依頼人の店に、阿呆烏の代理として押しかけてきたとき、裏へと回って貰い言えば、妙にひね媚びた目つきのその破落戸は一瞬せせら笑いかけ、直ぐに桐生の様子に舌打ちをしながらふらりと通りへと向かいます。
「うるせーっ! 後で見ていやがれっ!」
「‥‥全くねぇ‥‥いちいち言うことに芸がないじゃん」
退屈そうな様子で二階の窓から顔を出して言うアルティス・エレン(ea9555)に、フィーネ・オレアリス(eb3529)は怒ったようにむと眉を寄せています。
「お金欲しさに、女の子の幸せを摘み取とうなんて絶対にゆるせませんわ。きっちりお仕置きして、二度と悪さができないようにしてあげるわ」
「‥‥それにしても阿呆鴉ねぇ‥‥まぁ、女の方は恵まれてるって事には変わらないか」
苦笑しながら言うアルティス、そこへ桐生が二階へと上がってくると口を開きます。
「あの様子では今夜にでもこちらへまた嫌がらせをしに来るでしょうね」
「その時にきっちりと思い知って頂きますわ!」
びしっと言い切るフィーネにふぅ、と小さく息をついて外を眺めるアルティス。
果たして、その夜‥‥。
だむだむと乱暴に叩かれる店の裏、依頼人の住居の家の戸が乱暴に揺すられ、2、3人の男達の怒声が聞こえます。
「出て来いやぁっ!」
「ぶち破んぞ、こらぁっ!」
「‥‥」
ピシャリと戸が開けられると共に戸に手をかけていた男の身体が宙を舞います。
「なっ!?」
「あまり野蛮なことは好きではないのですが‥‥言って分からぬようなら身体で理解していただくしか有りませんね」
そう言って出て来る桐生に刀を抜きつつ動きやすい通りへと向かう2人の男。
「!!」
「聖母の赤薔薇が阿呆鴉さんを聖母さまに代わってお仕置きですっ!」
と、1人がびくっと小さく身体を震わせたかと思えばそのままぴったりと動けなくなり、縄を手に立ちはだかるフィーネと巨大な陰が。
「な、何だその化け物はっ!?」
ばさばさ差と大きな羽根の羽ばたきがなおのこと恐怖感を煽ります。
「このっ!」
直ぐ側に迫ってくる桐生にやたら滅多等に刀を振りまわし、何とかその巨大な陰、グリフォンから逃れようとする唯一動ける男ですが、刀で簡単にいなされよろめくと、その脇を駆け抜けようとして。
「ひっ、ひぃいっ!」
突如目の前に上がる巨大な火柱に何とも情けない声を発し、2階から見下ろすアルティスを見上げる男。
「殺されなかっただけでも感謝しな? あたし達は慈悲深い冒険者だからねぇ。また今度同じような事があったら、その次の日の朝日は拝めないと思ったほうがいいじゃん」
へっぴり腰で仲間を置いて逃げ出す男を見送り、アルティスは息を吐きます。
「ほっ、本当に俺は酒場でくだをまいていたときに小遣いが稼げるって話を振られただけなんだ、助けてくれっ!?」
グルグルに縄で縛られグリフォンの爪がその縄にかかると、男は泣いて懇願します。
もう一人も手当をして貰えるわけでもなく、叩き付けられたときに折れた腕にうんうん唸りながら同じ事を言っています。
「まぁ、これで大人しくなるか、収まりがつかないで押しかけてくるか‥‥ですね」
桐生はそう呟いて、捕まえた男達の処分を考えるのでした。
●撃退
そして、娘さんの所は大人数が居着いたのを見てか起きなかった嫌がらせですが、既に相手も焦れたか、すっかり日の落ちた頃、大人数の足音で、一同は彼等の来襲に気が付きました。
「‥‥ざっと15人、というところでしょうか‥‥良くもまぁ‥‥」
小さく苦笑するマクシミリアンに目配せをし表に向かうアシュレイに裏へと足を向けるモードレッド。
「案ずるな、任せておけ」
娘さんに言って窓からすっと抜け出すと、男達を見下ろすリウ。
「ぎゃっ!?」
見れば庭には二手に分かれた男達が侵入を試みていて、モードレッドが仕掛けた糸に足を取られたりと、憐れな様を晒しています。
表の戸が打ち破られると同時に盾で押し返すアシュレイに、すかさず隙間から躍り出て刀の峰を叩き込み一人を転がすラフィリンス。
「そう言った物騒な物を振りまわしているのです、それを受けたときの痛みもよくご存じでしょう?」
言うとゆっくりと呼吸を繰り返し気を静めるラフィリンス。
「一応殺さないよう手加減ぐらいはしますが、多少痛い思いをしていただかないと引いてもらえないでしょう? この際骨の1、2本はしょうがないですよね」
言って向ける刀にざわりと男達が殺気立ちます。
「うるぁあっ!」
鋭い太刀筋で大上段から撃ち込んでくる浪人ですが、それはアシュレイが受け流すと問答無用にこちらも刀で胸部へと一撃を入れてじろりと睨め付け。
「あばらの2、3本は折れる覚悟をしてきたのだろう?」
呻いて悶絶する男にさらりと涼しい顔で言い放つアシュレイ。
裏口では何とか庭の中程まで慎重に入ってきた男達へとリウの声が良く通ります。
「ふむ、嫌がらせに雇われた浪人者というのはお前達のコトか」
言うと共に娘さんの家の庭の物と通りに置かれた雑多な物を巻き込んで、浪人達がふっと空へと舞い上がります。
「ぐ‥‥ぁ‥‥」
庭に鈍い打撃音と共にいくつもの呻き声が上がり、何とか起きあがって逆上する男もいるにはいますが‥‥。
「ったく、懲りねぇなぁ、大人しく倒れとけよ」
起き上がり様にモードレッドにクルスソードでぶん殴られて庭へと沈む男たち。
「‥‥さて、と‥‥お前達を雇った男の居場所を教えて貰おうか? あ、言いたくないなら言わなくて良い、もう一発痛い目を見て貰って別の奴に聞くからな」
「ま、待ってくれ、い、言う、言うよ‥‥」
ずたぼろのぼろ雑巾のようになった浪人が言えば、表の方へと声を上げるモードレッド。
「こっちは片付いたぞ、そっちはどうだ?」
「こちらもちょうど片付いたところだ‥‥」
アシュレイが答えれば、こちらも死屍累々、苦しげに呻きながらよたよた互いに手を借り、地面を這って逃げようとする男達の姿が。
「ん、阿呆烏の居場所も聞き出したぜ」
モードレッドが捕まえた男の胸ぐらを掴んで持ち上げれば、縋るような目をして、男は一同を見るのでした。
●幸せな未来
それから、合流した一同は狼になったマクシミリアンに怯えたりぐりふぉんに掴まれて空の散歩を楽しんで貰ったり、骨の一本や日本、といっているうちにあれよあれよと言うまに大変なことになり、診療所送りが必要なほどになってしまうほどに良く思い知ってもらったよう。
「あたしは女がどうなろうが関係ないし。ただ今回はちょっとだけ虫の居所が悪かっただけなんでよねぇ」
お仕置きが済むと、笑ってさっさと帰るアルティス。
「本当に‥‥いや、疑って申し訳ないです」
アシュレイ達が診療所に送った阿呆烏のことを伝えれば非礼を詫びて娘さんの所へと飛んでくる商人。
「疑いが晴れて良かったですよ、本当に助かりました」
そう皆に礼を言う依頼人、そして‥‥。
「憂いは費えた。新たな人生、幸せにな」
リウの言葉に、娘さんは目に涙を浮かべ頷き、旦那となる商人も礼を言って頭を下げるのでした。