【憂愁】鳶目の沖松

■シリーズシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月05日〜01月10日

リプレイ公開日:2008年01月20日

●オープニング

 その日、冒険者ギルドでその男を前にして、ギルド受付の青年代理・正助は戸惑いがちに依頼書を手にしていました。
「あの、白鐘の紋左衛門親分さんの‥‥?」
「へぇ、沖松と言いやす、以後お見知りおきを」
「は、はい」
 正助少年は先程綾藤より帰ってきたばかりで、他の呼び出しの連絡も入り慌てていたところ、この沖松にまで呼び止められたという次第で、今日に限って何故こんなに仕事があるのだろうかと訝しがっていたり。
「実はですねぇ、色々と冒険者の皆さんに於いては忙しく立ち働いていただいたと、こう親分が申しておりやして。折角なら労いも兼ね、ここは一つ新年会をと、そう言いつかって来やした」
「ご、ご丁寧に説明を有難う御座います。えぇと、では、綾藤で、でしたっけ?」
「あぁ、話が早くて助かりやす」
 声を落として綾藤で平蔵達に新年会をするという旨を聞いていたのを伝え、頷く沖松は宴席に出るのは親分と自分であることを伝え、他の構成員達は途中で少し顔を出してお酒のご相伴にとくるかも知れないと言うことを告げ。
「つまりはまぁ、新年ぐらいは暗ぇ事を忘れて、ゆるりと新しい年を迎えていただきてぇ、それが親分のご意向です」
「分かりました、ではこちらの方、依頼として出しておきます」
 沖松に頷くと、正助は依頼書へと筆を走らせるのでした。

●今回の参加者

 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3827 ウォル・レヴィン(19歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea6982 レーラ・ガブリエーレ(25歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)
 eb2004 北天 満(35歳・♀・陰陽師・パラ・ジャパン)
 eb2719 南天 陣(63歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb2872 李 連琥(32歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

神哭月 凛(eb1987

●リプレイ本文

●宴前のひととき
「うっし、こんだけありゃあ大丈夫だろう。俺だけじゃねぇだろしなっと」
 参拝道の裏手にある酒屋の前、大八車にでんと大きな酒樽を2つ乗っけて満足げに頷くのは氷川玲(ea2988)。
 宴の前、折角ならと旨い酒を買い出しに来た氷川は、リーゼに酒屋の場所を聞いてくると、祝いの酒だから良い味のものをと言ったようで。
 店主がこれがいいのではと2つ3つ、自慢の酒を試飲用の湯飲みで汲んで味見を勧めれば、特に気に入った二樽を買い求めて運ぶところです。
「お、若頭ぁ〜俺らが運ぶっすよぉ?」
「おう、お前ぇらこれから行くところか? こいつぁ船で運びこむからよ、そこの船着き場までなんだがな」
「へへ、若頭の姿ぁ見たってぇのに素通りしたら、それこそ鳶目の兄ぃに張っ倒されまさぁ」
 そこへ通りかかるのは威勢の良い若衆で、白鐘の紋左衛門の配下たち。
 氷川を見かけてわらわら集まって、話す先から大八車を船着き場の方へすたこら運んで行ってしまいます。
「まぁ、楽で良いっちゃ良いんだが、ちょいとすっきりしねぇな」
「そこの堅気外れ、道のど真ん中で突っ立っておれば暴れ牛に跳ね飛ばさんとも限らぬぞ? 虎はまだ島の上のようだがな」
 声に目だけちらりと向ける氷川、見ればよく見知った誠志郎の姿があり
「‥‥誠志郎はまたえらく憔悴してんな、おい」
「はは、調書は待ってくれんのでな‥‥漸く一段落つけてきたところだ」
 肩を竦める誠志郎に、とりあえず行くか、と頭を軽く掻いて船の方へと足を進める氷川、誠志郎も頷くと歩き出すのでした。
 それからすぐ、同じ場所には、あわあわとレーラ・ガブリエーレ(ea6982)に引きずられる正助少年の姿が見受けられます。
「いいじゃん、せっかくなんで一緒に来るんじゃん〜」
「ぼぼ、僕が行ってもどうにもならないでしょ!?」
「む〜、せっかくの新年会じゃん、楽しい方がいいじゃん♪」
 レーラにしてみれば、改方の仕事以前の、冒険者として働くきっかけになったころからの付き合いの正助少年に、ちょっとしたお兄さんであるかのような気持ちを持っているのかもしれません。
「それに、受付の人もよくこーいうのに呼ばれてきてたじゃん? だから大丈夫じゃん!」
「あぁぁぁ、なんだか大変な泥沼に物凄い勢いで落としこまれているような気ががが‥‥」
 有無も言わずに引っ張られている正助少年は、まぁ、結局のところこのお兄さんぶるレーラに悪感情を持っているわけではなく、そのためそのまま新年会の会場・綾藤へと引きずられていくことになるのでした。
「ほ、本当に行っても‥‥?」
 賑やかに去っていく二人を見送りながら小さな少年がおずおずと聞けば、ウォル・レヴィン(ea3827)は少年と、その少年に寄り添うように歩く女性ににっこり笑って頷きます。
「だって、お姉さんもちゃんと来て良いよって、親分さんに言われてだろ?」
「うん、白鐘のおじさんに、ねぇちゃんと一緒に来るといいって‥‥」
「ほら、なら大丈夫だ。そうそう、友太郎くん、俺異国の人間だからこのあたりのお参りにいいところって詳しくないんだ。後で案内してくれると助かるんだが」
「あ、うん、たくさん神社とかお寺、しってるよ。あとで、あんない‥‥」
 こっくりと頷く友太郎にウォルはにっこり笑ってその頭を撫でてやるのでした。
「ふむ、このようなところだろうか?」
「‥‥はぁ、陣様がそう言われるのでしたら構わないと思われますが‥‥」
 道沿いのとある茶店の窓に面した座敷出で茶と菓子を頼み、南天陣(eb2719)が丁寧に化粧を施し確認するかのようにわずかに顔を離してみれば、北天満(eb2004)は相変わらずの無表情で僅かに首を傾げます。
「満は素材は悪くないのに、とかく笑わぬからな‥‥」
 ふむと微苦笑交じりに陣が言うと、ふと店の前を通り過ぎるのは何とも言えない表情を浮かべている李連琥(eb2872)で、通り過ぎる連琥を見送ってきた道へと目を向ければ、そちらは水茶屋などのある方角。
「‥‥何か良いことでもあったんでしょうか」
「まぁ、あったのであろうな。と、店主、ここの勘定を。我々もそろそろ行かねばな」
 代金を払い包みを受け取ると二人も連琥の消えた方向へと足を向けるのでした。

●新年会
「お上手な方が多く、恥ずかしいですが‥‥」
 つと前へ出て一礼する満が巫女装束で新年の祝い歌を歌えば、ウォルの手伝いに来ていた神哭月凛が華を添えようとばかりに優美な舞を披露し。
「白鐘の親分、元気そうで何よりだな」
「おぉ、レヴィン殿ですかえ、これは久しい。お元気そうでなによりさねぇ」
 相変わらずがっしりとした体躯に穏やかな様子の香具師の元締め・白鐘紋左衛門が、徳利を手に歩み寄ったウォルににっこりと笑って頷いて。
「友太郎君とお姉さんが元気そうで安心した。面倒見てくれてるんだって?」
「うちの茶店の一つをよぅく切り盛りしてもらっているからねぇ、面倒見ているんじゃない、働いて貰ってるのさねぇ」
 一杯、注いで貰った酒をくっと飲み干せば、盃をウォルへと渡し、注ぐ紋左衛門。
「さーて、ということで新年会はかくし芸!? そろそろ俺様の大っ手品!!」
「いや、毎年やってるからかくし芸も何も‥‥」
「良いんじゃん、かくし芸言ったらかくし芸なんじゃん――! と言うことで、一つっ! ばばーん」
 念のために周囲を警戒しに来ていた伊勢同心が何気なく呟く言葉を一喝すれば、すちゃっと取り出すのは扇と何やら布のようで。
「実はこの蝶、ひらひらひら~~♪」
 ていっと空中に広がる布でできた蝶が、扇で扇ぐのに合わせてひらひらとまるで生きているかのように縦横無尽に飛び回り、おお、という声も漏れたり。
「お次は水を出すじゃーん」
「ねー、若頭」
「なんだ?」
「あの賑やかしい芸人の背中から垂れてる、あれなんでしょ?」
「あー? なんか、水っぽいが、ようわからん」
 ひそひそと、なんだかいろいろ気になる白鐘の若衆に、ちょっと水溜まりが出来てしまってあそこが傷まなきゃ良いんだが、となんとなしに現実的なことを考えてみる氷川。
「みーずげーじゃーん」
「‥‥やっぱり」
 なんだか盛り上がる中、たぶんあの水は手品の水なんだろうなぁ、とちょっと生暖かく氷川は手品を見ているのでした。
「‥‥良いのだろうか、本当にここにいて‥‥」
 そして賑やかに盛り上がる様に、その中で居辛い様子でちょこんと座ったままあたりを見回しているのは、受付の青年代理の正助少年。
「遠慮することはないようだ、折角なのだから、もう少し楽しむが良いのでは?」
 正助に声をかけるのは連琥で、お藤から受け取った菓子や寄場で搗いたという振舞い餅を正助へと勧めて。
「‥‥でも、僕は代理だし、しかも冒険者としての代理じゃなくて受付なわけで‥‥」
「そんなの関係ないじゃん、折角御呼ばれしたんだったら、いっぱい楽しもうじゃん?」
 所在なさげに目を落とした正助に、手品を終えたレーラが突撃し。
「それに受け付けの人もよくこういう風に呼ばれてたし、今日はお休みじゃん? 気にする必要ないじゃん」
「まぁ、たまには休息も必要であろう」
「んー‥‥そだね」
 力説するレーラと菓子を進める連琥に頷く正助は、軽く首を傾げると受け取った菓子をもしゃもしゃと食べ始めるのでした。
「あら、零してしまっているわよ」
 こちらも子供ではありますが、出されたお菓子を素直に受け取って嬉しそうににこにこと食べるのは友太郎で、零してしまえば姉に窘められて手拭で慌ててこしこしと拭い。
「焦らなくても、沢山あるからゆっくり食べな」
 そんな友太郎に面白そうに笑い声をあげて撫でるのはウォルで、言われてはにかんだような笑いを浮かべてこっくり頷く友太郎。
「美味しいか?」
「うん、とってもおいしい‥‥」
 ウォルが聞けば何度も刻々頷く友太郎に、清之輔がお饅頭とお茶を持ってきて友太郎と話し始め、ウォルはその間に友太郎の姉に近況などを聞くのでした。
「自分は繁華街に慣れておらぬからな‥‥始めは皆について動くのが精一杯だった、いやはや情けない」
 陣が笑えば、紋左衛門は僅かに眼を細めて頷きます。
「繁華街なんてぇものはね、入り浸っちゃいけない。お仕事としては大変かも知れませんがねぇ、それが一番なんでございましょ」
「まぁ、だが、凶賊のやつ等は尽きる事はないからな。それを打ち倒すということなら、またお呼びが掛かれば手を貸そう」
「それは実に心強い。ま、今年も宜しくしてやって貰えますかえ、お互いに、ねぇ」
 盃をゆっくり傾ける紋左衛門に、ふっと陣も笑みを浮かべれば、そこへやってくるのは満で、見れば前の方ではほろ酔いのモンドが百面相を披露しています。
「白鐘の紋左衛門様に、実はお願いしたいことが御座います」
「ほう、なんですかえ」
「今後またお仕事をさせていただくことになると思いますが、その際噂話を集める時に部下の方に話を聞いてまわる許可を頂けないでしょうか?」
「あぁ、うちの若い衆や松に話をと言うわけですかぇ。世御座いましょ、うちの者達には、うちのシマのことしか答えられないでしょうが、それで良ければこちらは全くかまやしませんよ」
「‥‥有難う御座います」
 紋左衛門の言葉にぺこりと頭を下げると、微笑を浮かべる紋左衛門。
「それに何より、うちには潤いも彩りもありゃしない、可愛らしいお嬢さんの質問にゃ、口止めしたって喋る奴が出かねないからねぇ」
「親分、流石にそこまで命知らずな奴ぁいやしやせんぜ」
 見れば氷川を囲んで笑いながら酒に飛びついてた男達がどっと笑い、満は軽く首を傾げながら、その時には宜しくお願いします、とぺこりと頭を下げてみたり。
「‥‥」
 二言三言言葉を交わしている満を見ながら、陣が煙管を手にすれば、紋左衛門が火を撮して貰い、ゆったりと紫煙を燻らせて。
「おう、何だか嬉しそうじゃねぇか」
「もう少し愛想良くすれば映える娘なのだがな」
 嵐山が笑って陣に言えば、氷川も側に来て酒を煽りつつ、何処か満足そうに陣も煙管を燻らせているのでした。

●初詣
「天気が良くて良かったな」
「本当に‥‥でも流石に初詣は少し人の流れも落ち着いてきていますね」
 空を見上げて連琥が満足げに言えば、一緒に歩いていた難波屋のおきたがくすりと笑って答え。
 のんびりと参拝道を行く連琥とおきたは互いに晴れ着を身につけ、ちょうどこれから初詣なのですが、ちょっと連琥は緊張気味。
 話しかけておきたがにこにこ返せば、顔を赤くしつつ少し慌てたように言葉を返す、と言うのを繰り返しており、その様子におきたもつい少し頬を染めつつあわあわとしており。
「少し見ていっても良いであろうか?」
 通りかかる参拝道の小径の小さなお店、細々としたお守りと飾りが一緒になっている根付けに目を留めれば、楽しげに見て回っているおきたに見つからないようにそのうちの一つをそっと買っておいてしまう連琥。
 後で渡すときにおきたが喜ぶ様を想像しつつ、連琥はまた顔を赤らめるのでした。
「次はどこ行くの‥‥?」
「んー‥‥そうだ、このお寺、知ってるか?」
 てこてこと道を案内するのは友太郎で、ウォルは友太郎とその姉と共にお参りが済んで参拝道を戻っているところでした。
 友太郎の姉には買い求めておいた落ち着いた花の簪を贈っており、友太郎へもお小遣いの意味も込めて紙で包んだお金をお駄賃として渡しており、初めてのお手伝いでのお駄賃に友太郎も頑張って案内をしているよう。
「おはかまいり?」
「ああ、ちゃんと挨拶をしておきたくてな」
 伊勢の怪我はもう良いらしいことを聞いて安心したウォルは、もう一つの心残りである先の乱で命を落とした改方の同心達の元へも挨拶に行っておきたかったようで。
「じゃあ、おはなやさん、あそこがいいの‥‥」
 友太郎がお線香とお花を一緒に売っているところへと歩く後を追いながら、ウォルは変わらぬ繁盛に改めて礼を言う菱屋や、代わりのない様子だった宴の一同を思い出たし、小さく笑みを浮かべるのでした。
「お前らー、堅気に迷惑かけるんじゃねーぞ」
 ある意味引率者の2人だけで十分に目立って影響がないわけではないのですが、氷川が言えば沖松もそれを徹底させるかのように賑やかに談笑する若い衆へと目をじろりと向けています。
 白鐘の若い衆を連れての初詣、ちょっと神社は大賑わいになるのですが、まぁ迷惑をかけるわけではなく、各自ばらばらな方向に向かいつつもちゃんと後をついていく様は、ちょっと見物かも知れません。
「若頭ぁ、これが終わったら、また戻って騒ぎやしょうよ」
 綾藤の合同の宴会は一時解散にはなりましたが、実際の所は初詣などで出かけてきた人達が居るだけで、留まって期間中各人お祝いを続けているようで。
「んじゃ、帰りに酒買い足してっかねぇっと」
 氷川の言葉に若い衆は大いに盛り上がるのでした。
 そして、そんな一行より遅れて、レーラは正助を引っ張って初詣に来ていました。
「今までの冒険者たととかの中で、憧れるとかってあるの?」
「そういわれても‥‥」
 戸惑ったように言葉を返す正助ですが、そういった会話が嫌なわけではないようで、レーラの言葉に1つ1つきちんと返しており、レーラはにこにこと楽しげです。
「んーっ、それにしても去年は色々と合ったじゃん。今年は良い年だと良いじゃん〜だから願掛け〜」
「‥‥異国の方も普通に神社にお参りするのか‥‥」
 その辺りの違いはないのかとちょっと戸惑った様子の正助ではありましたが、嬉しげに空を仰ぎ見るレーラにつられたように空を見上げて。
「きっと、今年は良い年になるじゃん」
「‥‥ん‥‥そだね」
 良く晴れた冬晴れの空の下、思い思いの気持ちを込めながら、静かで穏やかな時間はこうしてゆっくりと流れていくのでした。