難波屋の物資輸送

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 95 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:11月18日〜11月25日

リプレイ公開日:2006年11月27日

●オープニング

「物資輸送の護衛ですか?」
「はい、うちの御店の旦那様のご親戚がいらっしゃるそうなんです。それでその方々は隣の村に主にお世話になりながら、何とか後片付けをして、今少しずつ家を建て直したりしているそうで‥‥」
 少々雲行きの怪しいとある昼下がり、難波屋の看板娘・おきたが尋ねてきて言うのに首を傾げる受付の青年。
「‥‥その村って、もしかして‥‥異国人に燃やされた‥‥?」
「ええ‥‥江戸までやって来た少年はまだこちらの診療所で治療を受けています」
 頷いて答えるおきた。
 おきたの話ではこの度村長の家の基礎を作るために村の生き残り総出で現場に野営して突貫工事をするのだとか。
「それでですね、荷馬や驢馬に野営のための道具や、色々な食材などを持って行って炊き出しのお手伝いをしてきなさいと言われたのですけれど‥‥」
 そのために茸や魚、大根などを色々と運ぶ手配をしたり、毛布や仮の寝床など色々と用意をしているそうなのですが、そこで耳にしたのが気になる噂。
「追いはぎ?」
「はい、こちらの通りではそれらしい者がいるとか‥‥噂なので何とも言えないのですが。でもまっすぐ街道沿いを行けば‥‥」
「‥‥いけば?」
 聞いた話なのですけれど、そう付け足して少し迷うような表情を見せるおきた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥猪が出るそうで、大きな」
「‥‥‥‥じゅるり」
 おきたにすれば猪対策の護衛というのも申し訳ないのだと思ったのでしょうが、咄嗟に頭に過ぎったものにちょっと食いしん坊万歳な気分の受付の青年。
「‥‥ああ、その気にしないでください。えぇと、ではその村までの護衛、ですか?」
「はい、荷物には私とあとその村の出身なうちの厨房にいるおじさんが一緒に行きますので、宜しくお願いします」
 おきたがそう言って頭を下げると、受付の青年は言われた旨を依頼書へと書き付けていくのでした。

●今回の参加者

 ea0276 鷹城 空魔(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea4630 紅林 三太夫(36歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 eb2872 李 連琥(32歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 eb3701 上杉 藤政(26歳・♂・陰陽師・パラ・ジャパン)
 eb4721 セシリア・ティレット(26歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb5761 刈萱 菫(35歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb8455 マヤ・ナリンカ(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb8830 土守 玲雅(26歳・♀・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

留菜 流笛(eb7122)/ 河太郎 寿(eb8456

●リプレイ本文

●依頼内容は‥‥鍋?
「物騒な噂のある危険な道を、食料や物資を運んでいくなんてこれは‥‥そう、カモがネギを背負ってですね」
「か、鴨ですか?」
 マヤ・ナリンカ(eb8455)がぐっと力説しているのに目を瞬かせる、難波屋看板娘のおきた。
 荷を運びながらのんびりと歩く、長閑な昼下がりの道行き。
 マヤは目を瞬かせているおきたに頷いて続けます。
「ええっ! 頑張ってカモをお守りしますよ!」
「は、はい、お願いします」
 果たしておきたは追いはぎや猪の鴨なのかそれとも?
 何はともあれ
「道が分かれるのはどの辺りだ?」
「あ、はい、ここをもう少し行った先に左の森へと入っていく道が有りまして‥‥」
 確認を取るように上杉藤政(eb3701)が尋ねれば軽い身振りで道を示すおきた。
「それにしても助かりました。少しでも多く物資が運べるにこしたことはありませんから‥‥」
「幾つか運ぶのを諦めていた食材も乗せらましたからね」
「いくら持って行っても足りないという事は無いはずと思いましたので。お気になさらず使ってください」
 荷馬と台車を引く驢馬などで運ぶ物資はかなりの量がありますが、日持ちするものを少しでも多くと荷を確認しながら話していた2人に自身の愛馬・疾風を使うことを快く勧めたのは土守玲雅(eb8830)。
 先を進む紅林三太夫(ea4630)も愛馬・菊童子を提供し、馬たちが荷を運ぶ足取りも軽く。
「それにしても猪が出ると言う話、少し怖いですね」
「いやなに、もし出たのなら返り討ちにして一緒に炊き出しの材料にしてくれましょう」
 微笑を浮かべて言うと沖田の言葉ににっこり笑って応える玲雅。
「中には既にどう料理するかで話し合いまで始まっている所まであるようです。‥‥私は鍋に一票」
 玲雅が言う言葉におきたは笑いながら頷くのでした。
「というのも上手くいけば猪が食材として手に入るのよね‥‥」
「上手く退治できたら、やはり鍋かしら?」
 セシリア・ティレット(eb4721)が荷へとちらりと目を向けながら呟くと、刈萱菫(eb5761)は軽く首を傾げます。
「‥‥上手くいけばですよ」
「まずは荷物の安全、その上で倒せればよね」
「村の方々が総出で野営して突貫工事をしていらっしゃるという話ですし、それに対してお米に魚の塩漬け、茸に後は取れたての大根…と精力をつけるにはちょっと物足りない気がしますから、食材が新たに手に入るのは良いことですよね」
「村の力を付けて貰うためにも、荷物の護衛も頑張らないとね」
 笑みをかわして言う2人。
「‥‥後は話にある山賊達と村で暴れた老人達の関係が気になるところですけど‥‥」
 何事もなければいいのですけど、小さくセシリアは呟くのでした。

●のこのこ出てきた具材
「荷物の護衛か〜‥‥でも、真の目的はその道中に出てくる猪‥‥肉‥‥肉‥‥!」
「今年二度目の牡丹鍋食べるのだ〜」
 一方、どこか違う方向に目標一直線なのは先行した男性陣。
 鷹城空魔(ea0276)は既に対処する相手が猪自体と言うよりはお肉となって現れてしまいそうな勢い、そして紅林は既に味わった今年の味覚をもう一度、楽しみにしている様子で。
「い、いやいや、じゃなくって、真の目的は荷物の護衛だって!」
 空魔は思わず自分で訂正を入れつつ、目的の肉、もとい障害を確認しようと各人手分けをして慎重に辺りの様子を窺います。
「‥‥一度依頼を受けたからには死守せねばならない」
 1人深刻そうな表情で先行する男性陣の1人である李連琥(eb2872)も、実のところちょっと猪と肉という言葉に反応したりして。
 と、補助として手を貸していた留菜流笛と河太郎寿が聞き込んで猪が出ると言った村にも程近い地点に斥候3人がたどり着くと、さっと大きな影が過ぎるのを目に。
「‥‥」
「‥‥」
「村ごと賄えておつりは十分そうな大きさだな」
 連琥の身体程に大きく見えるその猪に思わず目を瞬かせる3人。
 急ぎそれを伝えに戻れば罠を設置してそこにおびき寄せようという、かねてよりの計画通りに動き出し。
「ぐるるるぅぅっ! ばうばうっ!!」
 空魔の愛犬・千代錦が猪に唸り声を上げて吼えかければ、その隙にすかさず分身の術を使い囮となる空魔。
 巨体を震わせて鼻をひくつかせると、街道へと飛び出しかけていた猪は千代錦の剣幕に慎重にじりじり街道へと出てくることに。
「はっ!」
 連琥の連撃に怒りに声を高く上げて突進してくれば、そこへ空から舞い降りる空魔の鷹、・鷹ノ心。
「むぅ、猪ごときにやられて‥‥ぐはっ!!」
 まっすぐに突っ込んできた猪の目を狙い襲いかかる鷹に僅かに狙いがそれて、辛うじて直撃を免れて吹き飛ぶ連琥。
 勢いを殺さずに荷に直進する猪ですが、その鼻先に繰り出された、薙ぐような菫の槍の一振りをまともに受け倒れかけ、反転、距離を置こうとする猪ですが。
「縄をこちらに! そっちから回り込むのだ〜」
 紅林の言葉に立ち上がり戦線に復帰する連琥が投げられた縄を受け取れば、マヤと玲雅も互いに縄の先を手に持ち逃れようとする猪を絡め取りその足を鈍らせて。
 4人がかりで縄で押さえ込もうとするも、その縄事物凄い力で起きあがりかけた猪に打ち込まれる上杉のサンレーザーでがっくりと膝を突いたところへ‥‥。
「捕らえましたっ!」
 セシリアから放たれたコアギュレイトでその動きを封じると、後は獲物を確実に仕留めるだけとなったのでした。

●寒い村で暖かい料理を
「おきた殿、なにか手伝うことは無いだろうか?」
「あ、済みません、それではこのお鍋をそちらで用意された簡易竈にお願いできますか?」
 連琥が声をかければ嬉しそうににこりと笑って礼を言うおきた。
 村ではそこから少し行った先にある村から、焼け出されてしまっていた村の人々が集まってきて材料などを積み卸ししたりその村からの手伝いの人間が手を貸したりとしている光景が広がり、村の端、森の前には柵で区切られた場所が。
「あそこが‥‥」
 ぶらぶらと村の中を歩いているように見せかけながら周囲を警戒していた玲雅はふと目を止めたそれに気がつき呟くと、木材を乗せた大八車を引いていた村のおじさんが聞き止めて頷きます。
「この間の事件の者達の墓でねぇ‥‥落ち着いたらお供えもん一杯供えてやらねぇとなぁ」
 しみじみと言うおじさんからそれとなく聞いたところ、村を焼いた老人達の元へと尋ねてくる者もいなかったとかで、追いはぎはまた別の要因らしいことが分かります。
「まぁ、追いはぎと言っても、今の村にゃ取るもんもねぇですからなぁ」
 そうどこか哀しそうに呟くおじさんを見送ると、玲雅は付近への警戒に戻るのでした。
「あれ、なんだか恥ずかしいねぇ」
 華やいだ声を上げる村の女性達。
 炊き出しの合間の休憩場所で菫に髪を結って貰うことは、身なりを構っている余裕も持てなかった女性達に取ってとても嬉しいこと。
「綺麗に装う女性の姿は男の方々に力を与えるものですわ」
「そんなことすら、あたしら忘れていたんだねぇ」
 久々に笑ったよ、そんなことを話ながら嬉しそうに頬を染めたり楽しげに立ち働く村の女性達を見ると、なんだかほっこりと気持ちが温かくなる気がする菫。
「うちのが旨い猪鍋を作ってくれるってぇから、あなたも食べて行ってねぇ」
 猟師の奥さんという女性が言ってとある方向を見れば、紅林と共に手早く猪で鍋を作る支度をしている様子が見え、隣の村からも大きな鍋がいくつも運び込まれており、簡易竈と鍋の前では難波屋の厨房のおじさんが右に左に大忙し。
「あ、今お茶を‥‥はい、無理は駄目ですが、頑張ってくださいね」
 炊き出しの準備の合間を見て笑顔で人々にお茶を運んだりといったお手伝いをしているのはセシリア。
「慌てなくても十分ありますからね」
 そして炊きたてで握ったおにぎりに殺到する村のお兄さん方を相手にあわあわと忙しげにお盆を持って往復していたり。
「これだけ活気があるのは救いですな‥‥新鮮な猪までいただき、本当に感謝しても仕切れませぬ」
「いや、礼には及ばない」
 村を見渡せる丘で見下ろしながら言う老年にさしかかった村長が言えば、油断無く付近へと目を配りながらいた上杉が首を振り。
「良い匂いがしてきたな〜♪」
 嬉しそうに言う空魔は鼻を鳴らす千代錦と摺り着く鷹ノ心と共に味噌の味漬けで香ばしく煮立つ鍋に目を向けます。
「みなさーん、お鍋の準備が出来ましたよー」
 おきたが声を上げれば、きりの良いところで手を止めて集まる村の人々。
「はぁ、味がしっかり染み込んでいて美味しいですねぇ」
「お豆腐もえのきも、大根も熱々で美味しいですね」
「はい、お肉もどうぞ」
 マヤもセシリアも、小鉢を手に腰を下ろしてホッと息をつけば、猪独特の匂いを味噌が上手く消してくれる様子のお肉を勧められて食べれば、芯からから暖まるその味に目を細めて。
「あ、僕は大盛り〜」
「肉、肉を〜」
 紅林と空魔はよく煮られたお肉をたっぷりと器に盛って貰いその味に舌鼓を。
「はい、菫さんも李さんも沢山食べてくださいね」
「有り難うございます、頂きますわ」
「これは忝ない」
 おきたがまだまだお鍋はありますから、と笑いながら言うと、受け取りのんびりと美味しく頂く2人。
「作業も順調に進んでいるようで何よりだな」
「はい、おかげさまで‥‥色々な物資を運んでいただいたお陰で作業に弾みもつきますし、何より皆があの様に‥‥」
 そう村長が言って見回せば、この村の後に辿り着いたときにはどこか打ち沈んでいた村の人々の顔に笑みが見受けられるようになっていて。
「さ、儂らも食べに行きましょうか」
「そうだな、私も頂こう」
 そう言って丘を降りて炊き出しの場所へと向かう2人。
 寒さが厳しい冬の村、冷たい風の中、人々は暖かいささやかな喜びを感じて笑い合うのでした。

●無事に帰途へ
 村での手伝いは3日間。
 炊き出しを行ったり皆で食事をし、野営をし。
 急ぎ作り上げられていく建物の基礎、厳しい作業も皆充実した様子で繰り返される様子に、一同も念のための警戒に力が入ります。
 そして、いよいよ帰る日。
「お陰で助かりました。きっと、村を立て直して‥‥ですので、またいずれ、今度は遊びに来て貰えると」
 そう村長が言って、総出で見送る村人達。
 何事も無く街道を行き、江戸へと着けば仕事の完了を報告に行った一同をお茶や菓子などで持てなす難波屋。
「本当に助かりました。皆さん、また何かあったときにはよろしくお願いします」
 そう言っておきたは嬉しそうに何度も一行へと礼を言うのでした。