ごろつきーずを追い出して!
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■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月14日〜06月21日
リプレイ公開日:2004年06月22日
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●オープニング
今回の依頼は、江戸より2日ほど行ったところにある宿場町からのものでした。
具体的な話を聞こうと依頼をしに来た人間に話を聞くために、記載されていた滞在先の部屋へと行くと、宿場町にある一つの宿に奉公している若者が頭を下げてあなたがたを迎えました。
「よろしくお願いします、私達の町に現れたごろつきを追い払って欲しいのです。このままでは町の人間は暮らしていけなくなってしまいます」
若者は畳に擦りつけんばかりに頭を下げてから、頭を上げてあなたがたへと目を向け話し始めました。
「一月ほど前でしょうか、私どもの宿場町にごろつき達が現れまして、町の外れにあります荒れ果てた寺を根城にして、急に所場代を払えと3日に一度取り立てに来るようになりました。」
町の血気盛んな若者が逆にごろつき達数人を、少し痛い目をみせて叩き出した事もあったのですが、ごろつき達はすぐに犬2匹を連れた浪人らしき男を連れて戻ってきたため、犬をけしかけられてその若者は大怪我をしてしまったとのことです。
「それに、その先生と呼ばれていました浪人様もなんだか無表情で怖い雰囲気で……もし強い人でしたら下手に私どもが手を出してもけが人が増えるだけで危険と思いまして。それ以来、町の人間は奴らに逆らえません」
若者は悔しそうに唇を噛んでから話を続けた。
まだ死者も夜逃げする者も出ていないそうですが、これ以上続くとあまり裕福でない者や野菜を売って生計を立てていた者達が食べていかれなくなってしまいます。
すでに酒場などはごろつき達がお金も払わずに飲み食いをし騒ぐので他のお客も寄りつかず、今ではかつかつの暮らしをしているそうです。
「余裕のある者はまだ良いですが、そろそろ食べていかれなくなる者が出始める頃です。彼らを追い払い、また、都合の良い願いとも思いますが、町の者達がやっていくためにも、できましたら彼らが奪った分のいくばくかも取り返していただけますと‥‥報酬の方は私どもあるじが責任を持ってお支払いいたします。なにとぞお願いいたします」
そう言うと若者は、再びあなたがたに深々と頭を下げたのだった。
●リプレイ本文
●宿場町、宿と町の人々
その宿場町に着いたのは3日目の昼頃でした。
道中食料を釣りなどで賄ったため、2日目の夜に着く予定がずれ込んでしまっていたのです。
道行く人々はどこかおどおどとしながらも、一行を歓迎しているらしく頭を下げてすれ違っていきます。青年は町の中で一番大きい、雰囲気の良い宿へと一行を案内しました。
宿へと足を踏み入れた一行に気が付いたらしく、ふくよかで人の良さそうな中年男性が小走りに歩み寄ると何度も頭を下げて、自ら部屋へと一行を部屋に案内し、すぐに質素ながらも手の込んだ食事が運び込み心のこもったもてなしをしてくださいます。
「酒場ですと店の開く時間から昼か、夕方には寺の方へと戻って行ってしまいますので、待ちかまえたりなさるのでしたら明日、皆様がこの町に着かれた時間頃に向かわれるのが宜しいかと」
食事がある程度終わった頃、荷物を置いた奉丈遮那(ea0758)は立ち上がり、町の様子を偵察するため部屋をでました。旅人や町の人間に紛れ込んで調べてまわると、酒場では10人前後のごろつきが馬鹿騒ぎを、あまり裕福ではない長屋辺りでは子供達が食事をする横で、母親が痩せるためと言い食事を抜くという光景がちらほらと見られます。
奉丈は僅かに眉を顰めながら廃寺に居るというごろつき達の様子を見に足を進めます。境内に忍び込みますと寺は閉まっていて表向きは静かです。
屋根裏に忍び込んで様子を窺うと中に6人の男たちが茶碗に賽子を放り込んで賭をしていまして、頭と呼ばれる厳つく人相の悪い男が側で煙管をふかし、奥にはなにやら無表情で犬と遊び戯れている浪人風の男が見えました。
●酒場、哀愁のごろつきーず
翌日、奉丈の持ち帰った情報を元に一行は奉丈を除いて酒場へと向かうことになりました。奉丈は残ったごろつきが逃がさない様に廃寺の方を張るそうです。
酒場に向かうと丁度店の娘が戸を開けて暖簾を出しているところで、一行に驚いたようでしたら、事情を聞くと馬を連れて酒場の陰に隠れる無天焔威(ea0073)に不思議そうに首を傾げながらも嬉しそうに笑って迎え入れてくれました。
宿の主持ちで出されるお茶と酒を飲みながら待つこと半刻。俄に通りが騒がしくなり、表を掃いていた娘がごろつきに押し込まれるかのように店の中へと入ってきました。
娘の腕を掴んでいるごろつきの手を捕まえて握ると力を込めながら、鷲尾天斗(ea2445)は店の娘へと笑って見せています。鷲尾は思わずぽっと赤くなる娘に気をよくしながら開け放たれたままの入り口の方に突き放しました。
「ちょいと兄さん自分の顔を見てからにしときなよ。あんたじゃこんな可愛い娘が可哀想だ」
「てっ、てめぇっ、何しやがるっ!」
「俺らを誰だと思っ‥‥てやがるんですか」
ごろつきたちが兄貴分らしい男を押し出して後ろに隠れながら口々にそう言うのに、礼月匡十郎(ea1352)が立ちふさがり、押し戻されたかのように声が小さくなっていきます。
「あんたらみたいなのに出す酒はねぇ。文句があるんだったら表ぇ出やがれっ!」
その巨体から出される迫力の声にびくっと体をすくませ、じりじりと後退するのに、六道伯焔(ea0215)はほっとした様子を見せました。店に被害を出さなくても済みそうだからです。
「おまえ、今俺の足を踏んだな?」
後退するごろつきに、入り口近くに座っていた鬼頭烈(ea1001)が軽く足をかけると立ち上がり、躓いた男の胸ぐらを掴んで外に追い出すように突き飛ばしました。
「踏んでな‥‥うぎゃあぁっ!」
勢いよく外に転がりでるごろつきが一瞬見えた影に跳ね飛ばされるのに表へと追いかけるように向かいました。
「何ぶつかってんだっ畜生、俺の愛馬が痛がってるだろっ治療費払えっ」
表にはその愛馬に跨り、無惨に馬に轢かれ跳ね飛ばされ転がっていたごろつきたちを見下ろす無天が居ます。
「ち、畜生、ぶっ殺してやる」
辛うじて轢かれなかった男たちがよろよろと立ち上がり、数瞬後‥‥。
「さぁ、さっさとお財布とお別れ言おうね」
「お前等のねぐらに案内しな、死にたくなけりゃな♪」
必死に逃げてゆく男を見送ると、無天がしっかりとシメたごろつきたちから財布を奪っています。その横で伊達正和(ea0489)が別の男を酒場で借りた縄で括って引き立てながら声をかけています。ごろつきたちのねぐらに強襲をかけるため邪魔になる男たちは括って酒場に一時預けて、引き立てた男に案内させながら一行は廃寺に向かいました。
ちなみに静月千歳(ea0063)は一通り騒ぎが収まって移動するまで、お茶を啜りながらのんびりと見ていました。
●廃寺、境内の死闘
境内に潜んで寺の様子を窺っていました奉丈は、ぼろ雑巾のようになりながら戻ってくる男の姿に気が付きました。寺へと転がり込んで助け起こされるのを盗み見、作戦通りに事を運んでいるのに町の方へ向けると、仲間が縄で繋いだ男に案内させながらやってくる姿が見えてきます。
「くっそぉ、冒険者を雇いやがったなっ」
頭らしき男が歯ぎしりをするのと寺の戸が勢いよく開け放たれるのはほぼ同時でした。
「御用改めである! 最近貴様らが近辺の村で狼藉を働いているという事を耳にした。おとなしく奪ったものを返してお縄につけ! さもなくば我らが成敗する!」
「なっ、なんだとぉっ!」
高らかに告げる鷲尾の声にその場にいた男たちが一斉に立ち上がるのも構わず、言った本人はにっと仲間に笑ってみせています。
「一度言ってみたかったんだよね〜、この口上」
「くっ、先生、お願いしやすっ」
「うわ、まじでそんな台詞言うんだっ」
吹き出しそうな様子で笑う鷲尾でしたが、奥から痩せた鋭い目つきの男が立ち上がるのと2匹の犬が唸りながらゆっくりと前へ出てくるのに気が付くと、一行は入り口の階段をゆっくりと後退して境内へと戻りました。狭く勝手の分からない場所では明らかに小回りの利く犬の方が有利だからです。
「これでもくらえっ!」
先生が境内へと降り立ち犬が一行へと躍り込むのと、伊達が先生と犬に日本刀を振ってソニックブームを叩き付けようとするのとはほぼ同時でした。それは咄嗟に身体をひねってかわす先生の横をかすめ、犬をはじき飛ばします。避けきったと思われた瞬間、先生の着物がぴっと浅く切れ、小さな布の切れ端が宙を飛びます。
それが戦いの口火となりました。
「はっ!」
戦いに参加しようとしたごろつきの前に鬼頭が立ちふさがり、ぶんと振った長槍がいとも容易く石灯籠を突き崩すのに、対峙したままどこか怖じ気づいたようで鬼頭の隙を窺っています。
犬に向かうのは境内の影から出て合流した奉丈と犬の背後へと回り込もうとする静月です。倒れていない方の犬に向き合って犬の声色を使いにらみ合う奉丈。
ソニックブームで弾き飛ばされた犬が起きあがって奉丈へとじりじりとにじり寄るのに、伊達は再びソニックブームを叩き付け、伊達へと残った犬が目を向けようとした時でした。
「きゃいんっ」
いきなり犬が奉丈の方に転がり込むのに慌てて避け犬の居た辺りに目を向けると、そこにはにっこりと微笑みながら立つ静月の姿がありました。
犬たちは尻尾と耳を垂れくーんと鼻を鳴らしながら飼い主へと目を向けています。
先生の正面に陣取るのは礼月と鷲尾、側面で隙を窺う六道に背後へと回り込もうとするのは無天です。
「うらあぁっ!」
全身と刀にオーラを纏いながら隙を窺う鷲尾の横で礼月は正面から右手の刀で斬りつけ、咄嗟に刀で受けるのに左手の金属拳が襲いかかります。
「くっ‥‥」
辛うじてかわしたところに打ち込まれる頭突きに押し殺した呻き声を漏らして下がりかける先生。間髪入れずに体勢を崩させ隙を作ろうと六道が少々大きめの動作で突きかかり、無天は背後へと回り込みました。六道の突きを払おうと無理に刀を上げるのに、好機と見た鷲尾が咄嗟に斬りつけます。
無理な体勢のために先生は避けられず、斬りつけられた腕から鮮血が迸ります。腕を庇いながらも再び刀を向ける先生でしたが、背後からの無天の攻撃を避けきれず、その手から刀が弾き飛ばされ鈍い音と共に鷲尾の側に落ちます。鷲尾がゆっくりと刀を拾うのを固まったまま見詰める先生にゆっくりと六道が歩み寄りました。
「‥‥潔く負けを認めよう‥‥」
低く無感情な声で六道を見てゆっくりと手を下ろした先生は、縛られるときにも抵抗しませんでした。
「お金を返してくれるなら〜命までは取りませんが〜、どうします〜?」
鬼頭に倒されて転がっているごろつきたちに静月が微笑みながら言うのに、辛うじて意識のあった者は観念したかのように突っ伏したのでした。
●江戸へ帰還
捕まえたごろつきたちを括って出すところへ引き渡し。
「壱っ今まで酒場で飲み食いしたり迷惑かけた分、村で強制労働〜。弐〜馬に積んである縄でお前等の首と馬とを繋いで‥‥後は自主規制〜。参、私刑もとい死刑」
無天がさわやかに笑いながら最後は本気の目で選択を迫ったり返すのを誤魔化そうとしたごろつきに礼月が無言で握り拳を見せるなど、なにやらほほえましい光景が展開されたものの、無事に依頼を達成。涙を流さんばかりに喜ぶ宿の主から依頼料を受け取り、その晩はゆっくりと宿で休みました。無天などはごろつきから巻き上げた分で通常の依頼料より多い金額を手に入れたのでと、依頼料を辞退し、奉丈は夜中にそっとどこかへ出かけたようですが。
次の日、宿の主や酒場の娘などに見送られながら宿を出て通りを歩いている時の事でした。
長屋から飛び出してきた子を背負った母親が、潤んだ目でじっと一行を見詰めると投げ込まれていたお金を握りしめて、深々と頭を下げました。
その母親は一行の姿が見えなくなるまで、いつまでも見送っていたのでした。