【凶賊盗賊改方】行く年来る年

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:12月30日〜01月04日

リプレイ公開日:2007年01月11日

●オープニング

 受付の青年は凶賊盗賊改方の役宅へと通されると、そこには長官・長谷川平蔵の姿と共に、彦坂昭衛の姿もありました。
「おう、よう来たな。ま、入れ」
 そう笑みを浮かべて言う平蔵に頭を下げて部屋へと入れば、依頼書を出す受付の青年。
「実はな、今年もあと僅か、皆にはよう頑張って貰ったからな、年忘れの宴をと、そう言う話になってなぁ」
「折しも綾藤にての会話故、お藤がそれならばご一緒しませんか、となったのだが、実は清之輔の実家である比良屋からも誘いを受けていてな」
 清之輔君という利発な少年を養子として迎えた昭衛、気がつけば嫁女を貰う前に既に男やもめとなってしまった訳ではありますが、比良屋とも清之輔ともどうやら良好な関係を続けているようで。
「そこで、比良屋にも声をかけたらな、これがまた大いに乗り気のようでな」
「比良屋も年の暮れは奉公人が里に帰っていたりと、ちと静からしくてな」
 なるほど、頷いて筆を走らせる受付の青年。
「では、宴は綾藤で、他二組と一緒に、と言うことで宜しいですか?」
「おう、そんな感じで出してくれ」
「あ、あと、これは個人的な頼みであるのだが‥‥」
 平蔵が言えば、昭衛はなにやら少し言いづらそうに口を開きます。
「その、子供に何を与えれば喜ぶか、ちと、相談に乗って貰えると有り難く。清之輔と、妹のお雪殿、あと丁稚の荘吉に、だったな」
「おお、それよ、俺は鶴吉とお美名に、あそこの家に顔を出す時に何か、土産を持って行こうと思っておったのよ。それもなにやら良い物が有れば教えて貰いたい」
 昭衛と平蔵の言葉を頷いて書き留めると、まだ行っていないなら綾藤と比良屋に顔を出してくれと言われて、受付の青年は役宅を後にするのでした。

●今回の参加者

 ea2702 時永 貴由(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2724 嵯峨野 夕紀(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3731 ジェームス・モンド(56歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea4653 御神村 茉織(38歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6780 逢莉笛 舞(37歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea6982 レーラ・ガブリエーレ(25歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)
 ea7394 風斬 乱(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8191 天風 誠志郎(33歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●サポート参加者

御神楽 紅水(ea0009)/ 野乃宮 霞月(ea6388)/ 神哭月 凛(eb1987)/ 若宮 天鐘(eb2156

●リプレイ本文

●気持ちの切り替えを
「んー火薙の樹一郎を取り逃しちまってるから、宴会を楽しむ気分にはいまいちなれないんだが」
 悪い気がしてねぇ、そう言う御神村茉織(ea4653)に天風誠志郎(ea8191)も眉を寄せて頷きます。
「そうそう、これで宴の席で振舞う酒を買って来て頂きたい。足りぬ分はまた後ほど‥‥」
「おいおい、店ごと買うつもりか?」
 誠志郎がそう言って懐から出す巾着の、見るからにずっしりとしたその重みに低く笑うのは、凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵その人。
 ここは船宿綾藤の一室、女将のお藤はくすくす笑いながらお酒の手配はしておきましょう、と笑って言います。
「私は里帰りしない予定だからちょうど良い。お世話になった改方や鶴吉くん達と一緒に年末年始を過ごすのは良いな」
「今年はいい事も嫌な事もたくさんあったが‥‥良い年の締めくくりになると良い」
 逢莉笛舞(ea6780)が時永貴由(ea2702)に言えば、先の事件の話に僅かに目を落とした貴由も小さく首を振って顔を上げると微笑を浮かべて頷きます。
「昨年同様、手伝わせていただけたらと‥‥」
「まぁ、皆様お客様ですのに」
「三組合同となりゃ、準備も大変だ、俺も手伝うぜ。なに、手伝いだって足りねぇってこたぁねぇだろう」
 嵯峨野夕紀(ea2724)がお藤に言えば、御神村も頷いて口を開き。
「お正月ー!! 今年の締めくくりと新しい年! びばお正月!」
 そして、なんだかとっても浮かれ気味にはしゃいでいるレーラを見て小さく笑うジェームス・モンド(ea3731)に、猪口で一杯やりながら悠然と座っている風斬乱(ea7394)。
「今年も散々だった、来年も散々なのだろう‥‥」
 風斬はそう言うも口元にはにやりと笑みを浮かべていて、せめて三が日ぐらいは、と笑って付け足すと、頷くモンド。
「それにしても子供達への贈り物‥‥」
 彦坂昭衛がお藤から熱燗の徳利を受け取りモンドへと勧めれば、ちびりちびりとやりながら目を細めるモンドはしみじみと言ったように続けます。
「女の子には、なんと言っても人形の類がよいと俺は思いますなぁ、うちの娘達が小さかった時、時々買って帰ってやったものですが、喜んだ顔が今でも忘れられません」
「‥‥‥‥ほう」
 自身には手酌で注いで杯を口元へと寄せた昭衛は何気ない風に相槌を打ちつつも、その目はどこか興味深げな色を浮かべ。
「おねぇちゃんの人形の方がと喧嘩になった事もありましたが‥‥そして、人形を喜んでくれているうちが、一番良いのかもしれません」
 酒を進められて杯を干すうちに、しみじみがどこかほろりと思い出したことがあるようで目元を僅かに赤くしながらほうと息をつくモンド。
「昭衛さん‥‥あんたが一日子供達の相手をしてやる方が喜ぶと思うよ?」
 そんな様子を見ながら、ねぇ、平蔵さん? と風斬が振ればそりゃあそうだろうな、と低く笑う平蔵。
「昭衛様は良き父親ですね。贈り物を決めかねているのでしたら一緒に店まで行きましょうか」
 実際に御店で見比べてみれば助言も出来ましょう、そう言う貴由が平蔵にも振れば、良い考えだ、そう笑って答える平蔵。
「でも荘吉くんにはもうちょっと大人向けの物が必要そうか‥‥おや?」
「あ、あの、おじゃまします‥‥」
 舞が考えるように言えば、そこにかけられた声とそうっと中を覗き込む少年の姿に笑みを零す一同。
「鶴吉くんか。すっかりふっくらとして見違えた」
「丈はまだあまり変わっていないかな?」
「は、はい、今ぴったりで‥‥」
 舞と貴由の言葉にはにかんで笑う鶴吉は、レーラが元気そうで何よりじゃんといって頭をぐしゃぐしゃ撫でるのにも嬉しそうに頷いて。
「俺様ちょっと行くとこがあるから、後でたっくさん遊ぶじゃん♪」
「うん、レーラおにいさん、やくそくだよ」
 レーラの言葉に鶴吉は嬉しそうに笑うと、舞に手を引かれて家族の待つ部屋へと向かうのでした。

●宴の前の光景
「む‥‥むむむ‥‥」
「そうですね、女の子なら、簪や櫛はいかがでしょう?」
「櫛や簪か‥‥」
 先ほどから難しい顔をして唸っている昭衛に、貴由はくすりと小さく笑みを浮かべて小間物屋の一角へと足を運びながら言います。
 舞の手伝いに来ていた神哭月凛の勧めで来た御店は細工も手の込んだ物が多く、上方からの物も揃えている、知る人ぞといった様子、平蔵も昭衛もそのお店の雰囲気を好ましく思ったようなのですが、どうにもこうにも昭衛は品選びに苦戦をしているようで。
「長谷川様、美名ちゃんには珊瑚などいかがでしょうか。こちらにある桜なども良いと思いますし」
「ほう‥‥美名ならば珊瑚の方が良いであろうな。それにしてもなかなかの細工だ。おう、これを貰おうか」
 いくつか見ていた平蔵に貴由が薦めれば、品の良い細工の簪を平蔵も気に入ったようですぐに包んで貰うのですが、やはりそこでもいくつかの簪と櫛を前に眉を寄せて難しい顔をしている昭衛。
「おう、どうしたぃ、決まらねぇのか?」
「むむむ‥‥簪や櫛など自身で買ったことがない故、どれもこれも細工も飾りも良いとは分かるが、喜ばれる物となると‥‥むむ」
「そうですね‥‥翡翠の玉簪なども良いと思いますし、お雪ちゃんですからこちらの雪を模した白い飾りの彫りのある簪も良いかと」
「む‥‥そうだな、商家では多少派手であろうと思っていても、意外とそちらのほうが映えるやも知れんな」
 細かい細工の物を幾重も重ねて作り上げられたその簪に、いくつか見た後頷いて包んでもらった昭衛、ふと見れば一角にある小さな和紙人形に目が留まったようで、なにやら無言でじっと見つめており。
「‥‥どうしました?」
「‥‥人形も娘ならば喜ぶと、確か‥‥」
 モンドの言葉が甦ったのか赤い着物の人形を手に取るとそれも包んでくれという昭衛に目を見合わせる平蔵と貴由。
「こりゃ‥‥子供相手だと形無しだなぁ」
 平蔵が低く笑うのに、貴由も笑みを浮かべて頷くのでした。
 貴由が自身で買った布などの包みを抱えて戻ってくれば、綾藤の一室で子供たちが集まってわいわいと楽しそうに話しています。
 その中で、珍しくなんだか少し寂しそうにしているのは比良屋のお雪で、舞の膝の上にちょこんと腰を下ろして綺麗に色が塗られた木彫りのお人形をぎゅうっと抱えていて。
「あ、きゆおねえちゃん‥‥あの、あのね、おゆき、おしえてもらいたいことがあるの‥‥」
「なにやら手作りで贈り物をしたいらしくてな。材料は揃えてきたんだが、いくつか細工をしたいらしくて」
 舞へと目をやれば、舞は貴由へと事情を説明し。
「そうか‥‥私もいくつか縫い物がある、一緒に隣の間で作ってみようか?」
「うん!」
 貴由とお雪が隣へと移動するのを見送ると、舞はにこにこと鶴吉が差し出す絵双六の賽を受け取るのでした。

●宴
「はじめまして、ネム・シルファです。いつも音楽など奏でさせて頂いています、よろしくお願い致しますね」
 にっこりと笑ってネムが言えば、軽く咳払いをしてのどの調子を整えている様子のリフィーティア。
「今年もいろいろとお世話になりました、来年もよろしくお願いいたします」
 ゆったりとした旋律の中、宴が始まり改方の平蔵を始め、武兵衛達や同心の田村・忠次などの一行へと挨拶に回る夕紀。
「やや、これは有難い。いやぁ、良いものですなぁ、美人のお酌で美味い酒に旨い料理、堪りませんなぁ」
「忠次様は、来年はもっとしゃんとなさいませんと‥‥」
 思わずだらしなく相好を崩す忠次に釘を刺す夕紀は席を立ち、酒を互いに注ぎつつ何やら妙にじんわりとした様子の一角へとお銚子を手に歩み寄ります。
「彦坂様もモンド様も、さ、御一つ‥‥来年もよろしくお願いいたします」
「おお、こちらこそよろしくお願いしますぞ」
「うむ、面倒を掛けるやも知れぬが宜しく頼む」
「ところで、どうかされたのですか? お二人とも」
 軽く首を傾げれば頷く昭衛。
「息子は手元で育ち一人出しするさまを見られるが‥‥娘は育てば嫁に行ってしまう、そういう話をしていて、ついな」
「はぁ‥‥」
「こういった事柄は、国の違いなどあまりないのでしょうな」
 何やら子供の話についつい盛り上がっているのか盛り下がっているのか微妙なところなのでしょうが、子煩悩な父親というのはそういうものなのかもしれません。
「今年はお世話になりました。これ、皆で飲んでくださいませ‥‥じゃん?」
 いいのかな? という顔で首を傾げるレーラに、低く笑う平蔵と口の端をゆがめて笑う風斬。
「平蔵さんのところにはひっきりなしに挨拶があるね」
「おぅ、まぁもっと酒がはいりゃ挨拶どころじゃねぇだろうがな」
 違いない、にやりと笑う風斬にレーラが置いていったお膳のお銚子を取り上げて酒を注ぐ平蔵。
「そうそう、平蔵さん、来年の抱負はどんなものだろうね?」
「そうさな‥‥まぁ、周りに余計な心配ぇかけねぇようにしねぇと、な」
 泣かれ叱られ大変だったと笑う平蔵に風斬は杯を口元へと運び一口、大騒ぎだったからねぇ、と口元を歪めて。
「まぁ、年明け早々ぐらいは寝正月と行きたい所だが‥‥なかなか難しそうだね」
「あぁ、お互ぇにな」
 そう言いながらもどこか楽しそうに、二人は杯を満たし軽く掲げるのでした。
「一段落着いたのか?」
「御節の方も一通りは終わったし、それぞれ挨拶も済んだから‥‥」
 御神村の言葉に微笑して頷き、のんびりと酒を楽しんでいた御神村と舞のところへ貴由が戻ってきたのは、宴もたけなわの頃。
「じゃんじゃじゃ〜〜ん♪ 俺様手品するじゃん!」
 後ろでは賑やかにレーラが大きな羽織を取り出して愛犬すわにふを出してきたりやんやと盛り上がる面々。
 見れば嵐山が投げたおひねりが当たってレーラが転がったり、そのうちごろごろと樽ごとお酒が出てきたり、そんな様子を眺めては笑って杯を傾ける3人。
 やがて御神楽紅水が初詣に来られない代わりの神楽や、年越しに当たっての野乃宮霞月の説法に無病息災と家内安全の祈願祈祷が始まり。
 宴は盛り上がって盛り上がって、しんみりして笑って泣いて。
「今年は波乱の年でした。来年は良い年にしたいものです、お頭」
 誠志郎が平蔵にそう告げれば、平蔵は笑って煙管を燻らせているのでした。

● 行く年来る年
 宴も終わりいよいよその年最後の晩、綾藤ではのんびりと時間を過ごす者や、家に戻る者たちなど、その中で包みを忠次に渡しながら頷くのはモンド。
「ちと張り切りすぎてしまいましてな、宜しければ食べて頂きたく」
「おお、役宅でこれを開けるのが楽しみだ」
 モンドの作ったイギリス風の料理を加えた御節の包みを受け取った忠次に、貴由と誠志郎を伴って綾藤を後にする平蔵。
「今年笑顔で終わるのですもの、来年はきっと良い年ですわね」
「そうですね‥‥」
 お藤が言えばかすかに笑み頷く夕紀。
 やがて綾藤で蕎麦が配られ、比良屋で子供たちが眠い目を擦りながらお蕎麦を啜り。
「今年もあと僅かですな‥‥」
 役宅で他の同心、そして平蔵の奥方・久栄と共に打った蕎麦を誠志郎が運んでくれば、遠くから聞こえてくる鐘。
「さ、年が明けねぇうちに、な‥‥」
 平蔵が言えば平蔵夫婦に貴由、そして誠志郎の4人は箸を手にして。
 蕎麦を啜り除夜の鐘を聞き、他愛のない事で話に花を咲かせ。
 残り僅かの年をそれぞれに思いながら、時間はゆっくりと過ぎていくのでした。。

●新しい年
「いやぁ、たまにはこういう正月も良いものですな」
 のんびりとのびのび羽を伸ばしているという様子で綾藤でおせちを食べているのはモンド。
 どうやらお姑さんの居ないお正月を、たまにはと満喫しているようで。
 そこへぞろぞろと戻ってきたのは、初詣へと行った一行でした。
 嬉しそうに貴由の仕立てた着物を身につける鶴吉と美名。
「平蔵さんや昭衛さんは独楽回しの達人らしい」
 風斬がそう言って差し出す独楽を受け取る子供達。
「これを持って教えて貰って来るといい」
 自分に被害はないしと内心思いつつの風斬、皆が集まるまでの間、子供達に独楽を教え強さを誇る平蔵に、独楽はよく分からないと眉を寄せる昭衛。
 そんな様子を眺めながらごろり横になって欠伸を噛み殺す風斬。
「やれやれ、寝正月と行きたい所だが‥‥なかなか難しそうだね」
 賑やかな子供達に徐々に戻ってくる面々、直ぐにもっと賑やかになるだろう、緩く息をついて、風斬は口の端を歪めるのでした。
『改方によき縁を齎すように。後、いつでも皆が笑っていられる年でありますように』
『世の中の平穏と言いたいとこだが、皆が怪我や病気しないようにの祈願ってとこか』
 初詣に行った貴由に御神村のお願い事は仲間の安全を。
『今年こそ追っている盗賊達を必ず捕まえてみせる』
 舞は強く心に思ったことを誓いにして。
 綾藤へと戻る間、各人は気持ちを切り替えてきっと新年を迎えられたことでしょう。
 そして、再び一同が揃って顔を合わせ。
「昨年は世話になった。今年も宜しくお願いする」
 平蔵のその言葉と共に新年の顔合わせでは、あちらこちらで書き初めが始まり、お節に舌鼓を打ち、酒が入る場所もあれば‥‥。
「手品を披露〜。今回の芸はこれ! 卓上絹布引き抜きじゃん♪」
「お、おお‥‥?」
 何が起こるのかと酒を片手に同心達が目を瞬かせれば、でんと出されるちゃぶ台。
「ここにあるは小さなちゃぶ台、布を掛けて、食器を置いて〜‥‥‥ちょー!」
 てい、と引っ張れば、布は引き抜かれて食器はそのまま‥‥ころんと木製の杯が一つ転がったのはご愛敬。
「布を引き抜いてもあら不思議♪ 器が倒れて無い! ‥‥ハズ! ‥‥あれ?」
 一つ転がっちゃった、と頬を掻くも、まぁいいかと納得したようで。
「何を書くかねぇ‥‥」
 一通り子供達が御神籤のお饅頭を食べたりして騒いだ後、持参した大筆を持ち用意して貰った半紙に向き合って首を傾げる御神村。
「今年は厄年だからな‥‥厄払いを済ませてきた」
 ほうと溜息混じりに言う誠志郎は、馴染みの仲間達と歓談中。
「新年早々忙しくなってきましたね‥‥」
「ええ、今年も楽しくお仕事が出来そうですわ」
 夕紀とお藤が笑い合えば、お汁粉を作る貴由とそのお手伝いをしている荘吉。
「餅の方は‥‥」
「はい、あと少しです。念のためもう少し焼いておきますか?」
「そうだな‥‥育ち盛りが沢山いるからな」
 後で密偵達にも差し入れしてこよう、貴由が言えば頷いてその支度をと答える荘吉。
 盗賊達に活発な動きもなく、長期戦で詰めている者にもお節やらなにやら、差し入れが行っているのですが、汁粉の温かさはきっと交代で気を張っている者達にとって有り難いもの。
 一仕事終えると皆の待つ部屋へと足を向ける貴由と荘吉。
 こんな風に、改方の新しい年は始まったのでした。