幼馴染み
|
■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:5 G 84 C
参加人数:8人
サポート参加人数:10人
冒険期間:02月16日〜02月21日
リプレイ公開日:2007年02月20日
|
●オープニング
その日は風も穏やかで比較的暖かい、そんなお昼前。
「はっ、何が凶盗方だよ、なんにでもしゃしゃり出て来やがって」
3人しかいない部屋、2人の男が不満を吐き出しているようですが、どうもやる気も根気も出世も無さそうな同心達で、そこから少し離れた場所で黙々と筆を走らせている男、これも若い同心のよう。
そこは、町方の奉行所の一室で、へらへらと笑っている2人の男と対照的に、書き物をしている男はどうにも顔を顰めているよう‥‥いや、今青筋が立っていますよ、奥さん。 むっとした様子で書き物を手早く纏めて、がたんと音を立てて出て行く同心に、ぎょっとした顔で見送った2人の同心は、訳知り顔に侮蔑を浮かべて。
「なんだよ、あいつ‥‥」
「ほら、彼奴の幼馴染みって‥‥」
「あー、はいはい。凶盗に移ったもんな。まぁ、成り上がりの商家の息子が、金でなった同心だ、自分にお呼びが掛からなくてふててるんじゃないかね」
お前らはどうだ、という突っ込みが入るわけでもなく、へらへらと笑う男達の声を背中に聞いて荒い足取りで歩き去る同心は、むしゃくしゃした様子のまま町中をいき、ふと擦れ違う男と目があって、思わず瞬きます。
「祐一郎!」
「おお、賢三か、どうした、そんなに苛ついた顔をして」
のんきそうな浪人身なりは凶賊盗賊改方同心・早田祐一郎。
賢三、と呼ばれた同心は戸田賢三といって商家の次男坊で、お金で同心になる権利を手に入れたという人間ではありますが、仕事も出来、そして早田同心の本当に幼い頃からの親しい友人でもあります。
「昼喰ってないのだろう? どうだ、そこいらで蕎麦でも手繰るか?」
くさっている様子の戸田を誘って蕎麦屋へと入った早田同心は、まぁいろいろと愚痴に付き合うことになるのですが‥‥。
「第一、普通の案件はそちらの管轄だろう。それに薮田さんとかが良い例で、波風を立てないように気を遣ってやって居るぞ?」
「そりゃ、俺だって薮田さんが上手くやってることも分かっているが、何より腹立たしいのは何もしないくせに他の者を扱き下ろすって言うのがどうにもこうにも許せんっ! それでなくとも、そちらに移ったお前のことまでわざわざ持ち出して言うのが‥‥」
「あー、裏切り者呼ばわりされたこと有るなぁ、町中でばったりあって」
あははと笑う早田に、身体に悪そうな程かっか来ている戸田同心。
「それでなくても最近妙な悪戯が多くて頭に来ているというのに‥‥」
「妙な悪戯?」
「あぁ、変な女が出るんだよ、私は殺されましたーって」
「‥‥」
真剣な顔をして見返す早田にちょっと面食らったように言葉を止める戸田ですが、促されて話し始めれば、同心長屋に女が現れて『私は殺されました』と言うそうで。
戸口などの向こう側に立って言うそうですが張っていれば思いがけないところにあらわれてまた言うと。
「それって、今も続いているのか?」
「‥‥いや‥‥ちょっと前までは暇を見つけて街を探しもしたが、遊んでも居られないとそのうちただ寝不足になるだけだと怒り出す奴まで出て。薮田さんは気になっているようだが、あの人は忙しいし、俺は‥‥町人出だからな、まぁ‥‥そう言うことだ」
しかし何で、聞きかけた戸田は思わず言葉を途切れさせます。
「‥‥その女、な、昨夜俺の所にも来たぞ‥‥一昨日は忠次の‥‥っと、同僚の所にも、来た」
「‥‥町方で動いて貰えないから、そっちに行った?」
「ちょいと気になるな‥‥よし、ちょっと人手を借りて、俺らで調べてみないか?」
「でも、手が足りないし、どこから手を借りると‥‥」
「冒険者に頼めばいい」
早田の言葉に目を瞬かせる戸田ですが、さっさと代金を払って先に出る早田に慌てて追いかける戸田。
半刻後、ギルドで受付の青年を前に話をする、町方と凶盗方の同心という不思議な光景を見ることが出来たのでした。
●リプレイ本文
●女性の面差し
「改方の方々とは久しぶりだ、町方の方とは初めましてになるかな。さて‥‥単なる悪戯か、恨みつらみか、見極めさせてもらおう」
早田同心が小福ごころのいすゞ屋で戸田同心、それに町方の2人の同心を引き合わせたのは初日のお昼手前。
改方、町方、それぞれが常連の場所というのも勝手が悪かろうと、いすゞ屋のご厚意により小座敷を借りて顔合わせをすれば、柚衛秋人(eb5106)の言葉に笑みを浮かべ頷く早田に、きちんと座り直して頭を下げる戸田。
「おーっす早田の兄ぃ! ひさしぶりー? これお土産〜」
徳利をはいと差し出しつつかっくり首を傾げるレーラ・ガブリエーレ(ea6982)に、ウォル・レヴィン(ea3827)は改方の人相書きの紙を受け取りながら女性の特徴を確認していて。
「でも、その女性って言うのは幽霊なのか?」
「女性の正体は悪戯か幽霊か‥‥」
ウォルの言葉に菊川響(ea0639)もどうなんだろうな、と首を傾げ。
「毎夜の如く現れる女か、奇妙な話だけど面白い話だな」
「しかしわざわざ影を確認させておいて姿を隠すというのが解せん‥‥」
「ああ、本当に。わざわざ現れるなら全部話してくれればいいのに」
むうと眉を寄せて言う日向大輝(ea3597)と、腕を組んで小さく唸る戸田。
「依頼の内容からすれば、幽霊君は何か頼みたいということかね〜? ちゃんと手続きをすればよいものを〜」
依頼書は貰ってきたがね〜、ぺらりと白紙の依頼書を振りながら言うトマス・ウェスト(ea8714)。
「それにはまず、その依頼人自身を確認して話を聞きませんとね」
北天満(eb2004)が町方の同心に現場を、切絵図を開いて確認をとりながら言えば、先ほど手伝いに来ていた天堂になにやら手紙を渡し、加賀美から簡単な報告を受けてから考え込むように目を伏せているケイン・クロード(eb0062)。
「殺された、か。‥‥それが本当なら、いったい何処で殺されたんだろうね」
呟くように言うケインに、羽ペンが引っかかるのか先ほどから苦戦して紙に似顔絵を書き込んでいたレーラが顔を上げ。
「やっぱり事件の匂いがするじゃん。事件の真相をしってるとかかな?」
「焼け落ちた小屋の女性に川に浮かんだ女性‥‥色々と気になることも多いし、気を引き締めて頑張らないと」
ウォルとレーラが書き上げた物憂げで大人しそうな女性の人相書きを手にとって、大輝は大きく一つ頷くのでした。
●現場の状況
「碌でもない奴らがあの辺りにつるんで暴れて、危ないなぁとは思っていたんだよ」
はき捨てるように言う女性は、早田とともに顔を出したレーラやウォル、そして柚衛に慌てて謝り。
「いや、構わない。それよりそこの川に女性が上がった時の事や、様子を教えていただきたいのだが」
首を振って無礼をわびる女性に大丈夫だと伝えてから尋ねる柚衛の言葉に考え込むように首を傾げる女性。
「特に行方不明になっている届けが出ていた女の人と一致してないから、どこの誰かよくわからないんじゃん? なんか覚えてることとかないかなぁって」
上がった遺体の様子から、顔が判別がしっかりと出来ずにそう聞くレーラですが、これに見覚えはないそうで。
「一応、この女性に見覚えはないか少し見てもらいたいんだけど」
ウォルに差し出される女性の人相書きにも、首を傾げ考え込み、申し訳なさそうに女性は謝ります。
「済まないねぇ、覚えはないよ。もし遺体があがった前後の様子が知りたいんだったら、現場前で茶屋を開いている爺さんに聞いて見るといいよ」
女性の答えに頷いて礼を言うと、4人は現場へと向かうのでした。
「何だ、あの‥‥」
ひそひそと悪意や好奇の目が向けられる中、町方の同心長屋の中に入り、協力してくれる同心と共に女性の現れた後や順番などを確認している満の姿が。
「では、こちらから‥‥」
「ああ、一番最初に現れたのは、そこの磯島の長屋からだったな」
初めは誰も本気にしていなかった女性の話、次々と体験することによって趣味の悪い悪戯と片付けられかけていた中、ぱったりと出なくなったので、諦めたのだろうと思っていた者が多かったようで。
「これは‥‥こちらの現場の方から徐々に移動してきたようですね‥‥」
小さく呟き、あちらのほうも確認してきます、そう協力してくれた同心に継げてその場を後にすると、満は改方の同心長屋へと足を向けるのでした。
川沿いの一角、川原に下りる階段の傍に、焼け跡はありました。
大火のこともあってか、火を消し止めるのに躍起になった付近住民は、火が収まった後女性の亡骸があったこともあり、気味悪がってあまり近寄らず、そのためそのまま放って置かれているようでした。
「悪戯と判断しても、何の意味があるんだろうかって感じだからなぁ」
女性を雇ったり足を引っ張ったり知る意味もないし、と内部の悪戯の可能性を一応念頭において調べながら、菊川は小さく息を吐き。
「悪戯としても外部だろうし、殺されたなんて悪戯だったとすれば趣味の悪い話だ。さっきガブリエーレも言っていたけど、表立って訴え出られないような立場の者なのかもな」
焼け跡に屈み込んで様子を伺っていた大輝がそう返しながら見て、怪訝そうに眉を寄せて。
「火事場泥棒なだけかもしれないけど、この焼け跡、なんだか荒らされてる‥‥」
「え‥‥? 本当だ、焼け落ちた木材で、形が残っているものを上に乗せて誤魔化しているみたいだけど、なんだか踏み荒らされているようだね」
「だが、女性の遺体を運び出したときには、このような後はなかった。つまり我々ではないから‥‥」
大輝の言葉にケインも確認して頷くと、覗き込みながら答える戸田。
「‥‥ところで、この小屋のことを連絡したって言う旗本の息子たちって、あれかな?」
3人が難しい顔をして踏み荒らされたあとを見ていると、辺りを確認するようにぐるりと見渡していた菊川が戸田へと問いかけます。
「‥‥ああ、親の立場を強調しこの件を終わったものとさせたこともあり引っかかるが、女性の身内もおらず、確実に殺されたという判断も出来ないのならば、それ以上はそれを主として取り扱うわけにも行かないからな。どうしても御用を任せているものの情報収集に頼るのが現状だ」
「こちらに気がついて急ぎ足で帰っていくって事は、俺たちが調べている様子を見に来たというわけじゃないよな?」
菊川の言葉に焼け跡へと目を落とす大輝。
「‥‥ここを漁って、何かを探していたのかもな」
呟く様に言う大輝に、戸田は考え込むかのように腕を組んで押し黙るのでした。
●残された者の想い
「いや、見事なもんだね〜。建物が焼けたというよりは、直接焼けたって感じだったね〜」
けひゃ、と笑いながら借りてきた遺体の様子を書き取った写しを借りてきたドクター、事故なら直接着物に火が燃え移ったんだろうね〜と、まったくそれを信じていない口調で要約した状況を伝えます。
曰く、ぶっちゃけ、燃やされた?
夜に改方の同心長屋で、ちょうど今療養所で治療に専念している伊勢同心の部屋を占拠して情報交換をすれば、自然と声は小さく落とされていて。
「水死のほうはあれだ、勢い良く突き落とされたのかね〜痣がついてたが、それが故意か事故かはわからなかったけどね〜」
どちらにしろ、どちらの事件も外的要因が大きいようですが、江戸の人間の数に同心たちの数、とにかく人手が足りない状況で考えれば、やはり身寄りも事件性もはっきりと断言できない事件よりは、確実に急を要する事件へと手が行ってしまうのは仕方がないようで。
「‥‥それでなくとも町人は後回し、武家もある一定以上はこちらでは手が出せないからな」
「ま、町人が後回しって言うのは置いておいて、ある一定以上手が出せないのは仕方あるまい。何事も分担、それそれの役割をやっていかなけりゃ、全部背負い込んで何にも出来ないぞ」
怒りに小さく肩を震わせて顔を赤くする戸田同心に、相変わらず気楽な口調で言う早田同心。
「話をまとめると、焼死のほうは傷の具合は判断つかないぐらいに燃えてしまっていけど、おそらく他殺で燃やされたということかな? 水死は突き落とされたか突き飛ばされたか、それで川へ落ちて溺れてしまったのかなと」
ウォルが言えば、ほぼ間違いないねとドクターは頷いて。
「‥‥しっ‥‥」
そのとき、小さく声を静止したのは満。
とはいえ、死角になる戸口傍の窓下に潜んでいるので姿は見えませんが。
「屋根の上じゃん?」
満の耳が捉えた音に耳を凝らしたレーラも気がついたらしく言えば、出来るだけ足音を忍ばせた様子のそれは、そっと戸口の前へと降り立って。
「‥‥もぅし‥‥お願いにござりまする‥‥私は殺されました‥‥」
消え入りそうなか細い声の主を確かに見届ける満、それは人相書きにある物憂げでほっそりとした大人しげな、『人間』でした。
「殺されただけではわからん‥‥それはいつの事だ?」
「‥‥あはれと思うて下さるなれば‥‥今一度‥‥お調べを‥‥」
部屋の中から見える影が細い女性を映し出せば、柚衛の問いかけにも調べて欲しいとだけ返し、室内でレーラとドクターが構える、その気配に身を翻し飛び上がりますが‥‥。
「待ってください、逃げないで話してください」
屋根の上の影から姿を現した満にびくっと立ち止まる女性は慌てて振り返り、そこに一行が見ているのを見て今にも泣き出しそうな表情で満へと目を向けて。
「あなたの事は周囲には伏せて調査をしますのでお願い致します」
「‥‥あぁ、そんなことを言って、あたしを捕まえるんだろう‥‥?」
「‥‥訳を聞かせて頂ければ‥‥それを判断するのは同心のお二人ですから」
満の言葉にもう一度下を振り返る女性は、構えながらもなんだか困ったような表情を浮かべているレーラを見ると、小さく項垂れて。
「‥‥わかったよ‥‥」
頷くと、満に促されるままに小さな音と共に屋根を降りる女性は、気遣うように中へと勧める、先ほどまで裏口を張っていたケインに頷いて伊勢の部屋へと入るのでした。
「あたしは幼い頃に里子に出されまして‥‥軽業の見世物をしておりましたが、幼かったあたしにはその一座が裏で悪いことをしていたのを、良く理解できていませんでした‥‥」
そう話出す女性は、年頃になったあるときそれを知って逃げ出したそうで、記憶を頼りに江戸に流れてきて双子の姉の元へと身を寄せ、身寄りをなくしていた姉が温かく迎えてくれたのを嬉しく思っていたそうです。
一座がその後捕まったと聞き、追われる恐怖がなくなった女性は別の江戸に暫く留まっていた一座に入り、また戻ってきたと気に姉との再会を楽しみにしていたそう。
戻った時、姉は姿を消していたそうで、その頃の姉はたちの悪いのに付きまとわれて周りとも疎遠になってしまったため、どうなったのかがわからなくなっていたそう。
「あたしは姉を探して‥‥その頃、あたしを見て、そっくりな女が立ちの悪いのに囲まれて連れて行かれて戻ってきていないと聞いて‥‥そのとき、姉はもういないのだと、そう、理解して‥‥」
教えてくれた人がどこの誰かもわからず、水死と焼死、どちらだどちらの事件かもわからず、縋る思いで幽霊騒ぎを起こせば、誰かが動いてくれるのではと淡い期待を込めて動いていたそうで。
「昔の一座が捕まったとはいえ、どうなったかもわからない今、その一座にいたと知られればと‥‥あたしは怖くて‥‥」
「焼死の現場側から順に長屋を訪ね歩いていたみたいですけれど‥‥」
「姉を見たと聞いた側から‥‥でも、どうやって死んでしまったかが分からなかったので、どう伝えればいいのかも‥‥」
満の言葉に困ったように言葉を途切れさせる女性。
「どちらにしろ、どちらも他殺らしい。それは自分たちに説明させれば良いんじゃないか?」
柚衛の言葉に縋るような目を向けて、女性は涙ながらに頭を下げる女性。
「ならばどうして欲しいか、一筆貰おうかね〜」
そう言ってドクターが差し出したのは、白紙の依頼書なのでした。
●悪党・愚者を纏めて退治
「うん、まぁ、大人しく話してくれて何よりだよ」
にこりと笑ったウォルは、傍らに控える白い鷲・ディアを撫でながら、引きつったような笑いを、逃げ出そうとして柚衛に打ちのめされた際にできた痣だらけの顔に浮かべている男たちに言います。
男たちをひっ捕まえて白状させたところ、詰られ恥をかかされた腹いせに突き落としたそうで、女性が泳げなかったとは思わなかったと主張しますが、一声鋭く鳴いたディアと、ほのかに刃の槍を改めて握りなおす様子に快く証言を正しいものに変えてくれました。
「この辺りで金貸しをしていて、あまりにひどい様子に付近者のたちもいなくなったのに何も届け出なかったと‥‥」
言いながらも確りと括られる男たちは困ったように愛想笑いを浮かべて。
「しょ‥‥正直に言ったんでさ、見逃して‥‥?」
「いや、どう考えても無理じゃん?」
さっくりと切って捨てるレーラ、戸田同心に同情的な同心へとディアで連絡を入れて引き取りに来て貰うと、急ぎ焼死のほうの対応に向かった一行と合流するためにその場を後にするレーラ・ウォル・柚衛の3人。
その頃、既に焼け跡傍の川原では斬り合いが始まっていました。
といっても、腕に覚えのある者たちであっても、場数を踏んできた一行とでは、力量の差は歴然で。
「町方風情がっ!!」
戸田の姿を見れば声を上げる男たちですが、戸田の傍らでなにやら手に持つ菊川の姿に、はじかれたように睨めつけると刀を抜いて。
「これは焼け跡の灰の下、その下の土を掘って埋められていたもの‥‥焼けて苦しかったろうに、確りと証拠を残してくれてたな」
菊川に逆上して切りつける男たちですが、直ぐ傍にいた大輝がそのうちの一人を小太刀で受け止めて。
「あれは偽物。本物は奉行所に既に届けてある」
「なっ‥‥この餓鬼が‥‥っ!」
「子供じゃないっ!!」
小太刀を振って押し返すと、きっと睨んで返す大輝。
捕縛の後の調べで分かったことは、彼らは殺された女性に付き纏い脅し金を巻き上げ続けていたようで、女性は忘れていった印籠を隠し、それを元に旗本の家へと辞めて欲しい訴え出るつもりだったそう。
戸田を莫迦にしていた同心2人は、証拠である血まみれの印籠をケインと満が届ける際に手柄だけを頂こうとして『邪魔をするなら相応の理由があるんだろうね?』と笑顔のまま鞘に入れたままの小太刀で十分に反省してもらったよう。
「殺された無念は晴れないだろうけど‥‥少しは供養になったのかな‥‥」
「‥‥きっと、姉も喜んでいます‥‥本当にありがとうございます」
青空の広がる下、殺された女性の墓に花を供えて呟くケインは、潤んだ目で墓を見下ろし、改めて礼を言う女性の言葉を聞きながら暫しの間立ち尽くしているのでした。