愚かな娘

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 64 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月02日〜04月07日

リプレイ公開日:2007年04月10日

●オープニング

 その日、その少女が言う言葉に、受付の青年は目を丸くして、ぽかんと見ていました。
「え‥‥えぇと、つまりは、お兄さんの敵討ち、ですか?」
「そんなものですよね。相手だって一度死んだら懲りるでしょうし」
 他愛もないことのように言う少女は齢16、人目を惹くような美貌を持った、どこか危うげな雰囲気のある娘さんですが、それ以上に、この娘さんの言動は危ないものがありました。
「死んだらって、ギルドは殺人を請け負うところではないんですよ?」
「あら、あたしが頼んで居るんだもの、それにあたしは兄を殺された可哀相な女の子。当然でしょう? 相手を殺すのは」
 あまりの物言いに口をぱくぱくしている受付の青年、少女はふて腐れるかのように卓に肘を突いて頬杖をつき。
「それに、あの役立たずの兵庫、友人が殺されてるっていうのに、仇討ちは引き受けないだって。あたしが頼んで遣ったって言うのに!」
 意味不明なことを口走る少女にほとほと困りながら、順を追って話を聞こうとすれば、理解できていないのかと馬鹿にしながらも話し始める少女。
 少女の両親は先に他界し、一回り違う兄と暮らしていたそうなのですが、その兄が無頼に絡まれて殺されたとか。
 なのでその無頼を思い知らせて遣って欲しいとのことなのですが‥‥。
「それにしても、お兄さんが殺されて、悲しんでいないですね」
「だって、生き返るんでしょ?」
「‥‥‥は?」
 聞いてみれば、冒険者なら死のうが何しようが生き返らせられるんだから、あたしが頼めば兄は生き返らせて貰えると本気で思って、実際そう言いきる少女。
「えぇと、その、結構高いですよ? それに、話から考えると、お兄さんもう埋葬されちゃっていたはずじゃ‥‥」
「あたしがそうして欲しいって言って言うこと聞かない方が悪いのよ。生き返らせてっていったら生き返らせてくれるに決まっているじゃない!」
 受付の青年の言葉に臍を曲げたのか甲高い声を上げてどんと巾着を叩き付けるようにして立ち上がる少女。
「いいから、あんたはあたしが言ったようにお駄賃渡して冒険者に兄の仇を殺させりゃいいのよっ!」
 そう言って出て行く娘を呆然と受付の青年が見送ったのは、半刻前。
「‥‥で、わたくしが呼び出されたのですか‥‥」
 沈痛な面持ちで額に手を当てて溜息をつくのは、彦坂兵庫。
 彦坂兵庫は現在町道場で、他行中の師匠に変わり子供達の稽古を見てやりながら暮らしている、旗本の三男坊で、件の少女の兄には、兄が同世代だったと言うこともあって可愛がって貰っていたそう。
 話を聞けば、一回り違う兄が年の離れた妹を兄が可愛がるのは当然、そして高齢であった両親にしても同じ事。
 ただそこで違ったのは、兄は妹をやんわりとですが諫め、両親はそんな兄を叱りながら、娘を蝶よ花よと可愛がったそうで、裕福だった家も、娘のために食い潰したそう。
「あの方が亡くなったのも、ご両親があちこち借り手歩いた金子を返済して疲れ果てた挙げ句、大分恨みを買っていた妹さんを助けようとして死んだとか‥‥」
 恩はあるが仇討ちはする気がなく断ったという兵庫は、娘さんのことは好きではないようで、本当に疲れたように溜息をつきます。
「あの子に関しましては、あまりに目に余ることがあるようならば、遠縁の親類に預けるのもやむを得ないかと、あの方は辛そうに仰っていましたが‥‥」
「何か問題でも?」
「茶屋ではあると聞いて居ますが、本当のところは私娼を抱えているところのようで‥‥」
「‥‥なるほど。でも、実際これで仇討ちって言うのは、不可能ですからねぇ‥‥」
 巾着の中身を見て溜息をつく受付の青年は、兵庫と暫く相談すると、取り敢えず娘の言い分と素行、今後についての相談も兼ねて、依頼を出すことにしたようなのでした。

●今回の参加者

 eb9825 ラーダ・ゲルツェン(27歳・♀・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ec0097 瀬崎 鐶(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec0804 澤田 桔梗(24歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 ec2039 阿倍野 紅太(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●兵庫の話
「なんだか今まで色々とあったみたいだけど‥‥知っている範囲で良いから教えてくれないかな?」
 皆で連れたってやって来た兵庫の勤める道場、お茶と茶菓子のもてなしを受けながらラーダ・ゲルツェン(eb9825)が口を開くと小さく溜息を吐いて頷く兵庫。
「どう言えばいいのでしょうか‥‥子供時分ならば許される我が儘や癇癪、といいますか‥‥まぁ、子供相手でもその辺りは腹立たしいでしょうが」
 言葉を探しながら口を開く兵庫に瀬崎鐶(ec0097)と澤田桔梗(ec0804)も思うところがあるように話を聞いていて。
「過去にも人の飼う犬が気に入ったからと我が儘を言い、御両親がお金で買い上げようとして揉めたこともありますし、何より悪気が無いのですが、思ったことを言ってしまう上に、臍を曲げると思って無くとも口を極めて罵ってしまったり‥‥」
「うあー‥‥うううっ、こういう勘違い娘はむかつくー!!!」
 自身も犬や猫という家族ではないですが、ゴーレムという大切なお友達がいる身として同じ事をされればどれだけ腹立たしいか、それを思ってきーっとなるラーダ。
「普段何をしているか聞いてええか? 習い事やら行きつけの場所やら‥‥それに、お兄さんのことなんかもな」
「未だ通うことが許されているのは踊りだけでしょうね。それまでは唄に三味線、鼓も習っていたのですが‥‥先に通われている方々と合わなかったらしく‥‥」
 口論となったまでならまだしも、かっと来て罵倒し辞めてしまった者も出て、当然お師匠は迷惑だからとお断りされてしまい、今は唯一ものになっているため続けることが出来ていた踊りだけとか。
「でももうほとんど何も残っていませんし、直ぐに食うにも困ることとなるでしょうから‥‥」
「‥‥」
 親の作った借金は必死で返した兄ですが、今後の蓄えとして残されたのは本当に僅か、当然習い事はそれなりに出来ても今までやらなかった家のことが出来るわけでもなく。
「‥‥そう、聞きたかった事があったんだ」
 なんとも言えない沈黙を破ったのは鐶でした。
「‥‥依頼人の娘さん‥‥」
「歌奈が何か?」
「‥‥うん、その歌奈さんが、お兄さんが殺されたのを聞いたら『医者だ』って言っていたんだけど」
 鐶の言葉に兵庫は頷いて。
「ええ、実は突然倒れたそうで、殴られた時の打ち所が悪かったのだろうとおっしゃいまして」
 世話になった相手の事なので兵庫も話を聞きに行ったところ、亡くなった前日になにやら娘のことで数人と揉めている姿が確認できたそうです。
 前ならば相手にならない様な人たちであっても、すっかりと疲れ果てていた兄は彼らに殴る蹴ると酷い目に遭い、彼らはそれで満足したのか娘に二度とこの間のような真似をしないようにと脅して帰って行ったとか。
「こないだのような?」
「ええ、詳しくは知りませんが、なんでも人様の前で手酷く恥をかかせたとか‥‥」
 桔梗が聞き返すのに頷いて答える兵庫に、鐶は改めて幾つかの心当たりを兵庫へと尋ねるのでした。

●娘
 同じ頃、とてもとても大変な思いをしている人間が一人。
「いや、だからこそ‥‥お兄さんのことがあればこそ少し大人しく‥‥安全である事を確認してから‥‥」
「何でそんな事であたしが我慢しなきゃいけないわけ!? そう言うのを何とかするのが仕事でしょう!」
 先程から郊外に遊びに行きたいと駄々をこねた歌奈、危ないからと少し状況が分かるまで待つように告げた阿倍野紅太(ec2039)はほとほと困り果てています。
「もしお兄さんを殺したという者達がまたやって来たらどうするつもりだ」
「そしたらそのまま仇を討てばいいでしょっ!」
「‥‥はぁ」
 先程から繰り返される会話、娘を相手にしながら紅太は深く深く溜息を吐くのでした。
 さて、兵庫の元を退出した3人は途中まで対策を話し合いながら歩いています。
「ほな、たま‥‥仇討ちのほうの情報収集は任せたで」
「‥‥」
 桔梗の言葉にこっくりと頷くと兵庫から聞いた辺りへと足を向ける鐶の後姿を見送って、緩く息をついて。
「さて、私は依頼人の方にいって、もう少し詳しい話を聞いてみるかな、ご近所さんとか‥‥本人とか」
「うちはまず習い事の先生らから聞いてみるさかい、大変やろうけど頑張ってな」
 ラーダの先程の様子で、戻ったときにはどうなっているだろうか、一瞬そんな事を考えた様子の桔梗ですが、やがてもう一つゆっくり息をついてから歩き出すと、やがて辿り付くのはそこそこに良い値のする長屋の一室、その戸の前。
「誰です? 今日はお稽古は無いはずですよ」
「あ、うちは稽古に来たんやなく‥‥ちと話を聞きたい思ぅて‥‥」
 中から聞こえてきた声に目を瞬かせ慌てて返せば、やがて戸が空けられ首を傾げた婀娜っぽい女性が中へといれてくれ、お茶を出して貰うと口を開く桔梗。
「実はうち、歌奈ちう娘さんとそのお兄さんの事で、お話聞かせて貰いたい思ってきましてん」
「お歌奈? ‥‥あの子がまた何か‥‥」
「あー‥‥実はちょっと‥‥」
 露骨に疲れたような表情を浮かべる女性に、桔梗が困ったように頬を掻けば、女性は既に破門にしておりますが、と先に付け足してから話し始め。
 聞いてみるとどれもこれも悪気があったようではなく、今までのことの我が儘の積み重ねだそうで。
「なにか反対されるとかっと頭に来てしまうようで‥‥習い事に関しては真面目にやっていましたよ」
 その後に必ず他の人と揉めて大喧嘩だったそうで、仕事にもならないしとお断りしたときにお兄さんがとても申し訳なさそうにしていたのを良く覚えている、と小さく息をつく女性。
「お兄さんは根気良く諭していたようで‥‥お歌奈も悪気があるわけではないと分かるので、ねぇ‥‥」
 困ったような表情で小さく息をつく女性に礼を言って席を立つ桔梗は、他の習い事のお師匠を訪ねてみて同じような話を聞くことに。
 その中で、今でも通い続ける踊りのお師匠の所では、なるほど厳しい稽古の中で娘のような罵声はあまり珍しくないと言いますか、娘が踊りは光るものがあるから続けていけること、後はもう少し謙虚ささえ知ればという話を聞いてくることが出来るのでした。

●本当の敵は
「‥‥僕は話が聞きたいだけだから」
「話だぁ? あの気分悪い小娘の事で、何があるってんだ」
 そう言って肩を怒らせている男ですが、話を聞きに来た鐶に対してどうこうという様子はありません。
「‥‥何かあったのかと‥‥あと、彼女のお兄さんについて‥‥」
 それが聞きたいと告げれば、見世物小屋で娘に会ったときのことをいろいろと話してくれる浪人者の男、たまたま隣の席になったときに見世物の内容にちょっと盛り上がってしまったようで、娘さんの肩と手がちょんとぶつかり、それで手酷く罵倒されたよう。
「今思い出しても腹が立って腹が立って‥‥よっぽどひっぱたいてやろうかと思ったのを我慢したんだ、むしろ感謝してほしいぐらいだ」
 肩を竦める男に怪訝そうに首を傾げてみる鐶、男は気がついたように付け足して。
「ああいったところで小娘に大の男、しかも落ちぶれ浪人がやり込められていると見りゃ、面白がるやからも多いわな。今でも腹ぁ立つが、小娘一人見つけて殴ったところで腹の足しにもならんし、他にも色々とやらかしていると聞く、そのうち痛い目見るから良いさとな」
 自分に言い聞かせて我慢したという男、どうやらこの男自身は敵ではないそうですが、他に起きた話も知っているようで、話を促す鐶に肩を竦めて話し始める男は、ちらちら見られて気持ちが悪いと、蕎麦屋で頭から蕎麦の汁をぶっ掛けられた浪人話を始めます。
「‥‥その人は?」
「あぁ、親しかないがちと顔見知りでな、思い知らせてやるだかやっただか言っていたが‥‥」
 男の言葉に考え込む様子を見せる鐶、それを見て、男は小さく溜息をつくとその男と引き合わせてくれると言うのでした。
「だーかーらっ、わっかんない子だなぁ」
 むと眉を寄せて言うラーダ、歌奈はすっかりと拗ねてむくれて、先程からぎゃんぎゃんラーダと口喧嘩中、紅太はすっかりげんなりしながら先程少し同じ志士たちに話を聞きに行っては見たのですが、歌奈の事を知っている者はほとんどおらず。
「そもそも遭遇する事がないのだな‥‥行動範囲から考えて」
「そー言う事になるだろうねぇ」
 決まった狭い範囲しか知らない歌奈にしてみれば当然の事、少なくとも普段居る世界の中ではそこかしこで揉め事を起こしているよう。
 彼女の事を知っていて許している人たちは歌奈に『悪気が無い』と言う事を良く知っているからということが痛いほど理解でき、また兄への同情もあるようで。
 癇癪を起こして家の中に居る娘さんに、長屋の入り口に出て参ったなぁと顔を見合わせるラーダと紅太、そこへ桔梗が戻ってきます。
「2人ともお疲れさん。お、たまもお帰り‥‥‥‥っと、そちらさんは?」
「‥‥お兄さんとやりあった人と、その付き添い」
 目を瞬かせている一行の前に連れて来られたのは、がっしりとした体格の男と、細身で神経質そうな様子の男、つまり2人の浪人です。
「‥‥‥こっちの人が蕎麦屋での仕返しにやってきた人」
 そう言って鐶が見るのに神経質そうな男はいらいらとしたように目を向けますが、長屋へと目を向けると少し気まずそうにふいと目を逸らし。
「‥‥お兄さんが亡くなった事は知らなかったみたい」
「あの女に思い知らせてやろうとしたところに割って入ったんだ、痛い目には遭わせたが殺してはいない」
 鐶が言うのに視線が集中すると、神経質そうに唇を振るわせつつ口を開く男。
 どうやら抵抗したため、一緒に来ていたほかの浪人たちと殴る蹴ると暴行し、ぐったりとしたのに『懲りたらよく言い聞かせて置け』という捨て台詞と共に去って行ったそうで、そのときには生きていたので死ぬとは思っていなかったよう。
「故意だろうがそうじゃなかろうが、一言詫びるのは当然だろう」
「‥‥って、この人が連れてきてくれたんだ」
 2人の浪人に詳しい話を改めて聞くと、桔梗は深く溜息をついて長屋の戸を開けるのでした。

●怨みは多いけれど
 案の定、鐶が調べた事柄を報告すれば、なぜ仇を討って思い知らせないと怒る歌奈、そんな歌奈に根気よく諭す桔梗と、怒り出しそうなのを抑えるラーダ。
「はっきり言わせてもらうで? 仇討ちは無理や、一方的な言い分で信憑性が薄いさかいな‥‥それに、お兄さん生き返らせるのももう無理や」
「何でよ、実際に生き返る人が居るじゃない!」
「ねえ、それならあなたの両親は生き返った? 人は簡単に生き返ったりしないんだよ」
「せや‥‥ええか? 寺で生き返らせてもらえるのは遺体が残ってるときだけや‥‥この意味、分かるか? お兄さんはもう戻ってこないっちゅーことや、現実は受け止めて欲しいねん」
 桔梗の言葉にもぶんぶん首を振って声を荒上げる歌奈。
「何言ってるのよ、遺体ならあるじゃない! 寺に行って掘り出させれば‥‥」
「もう痛んでしまって生き返らせられる条件は整わないわよ。あなたはもう天涯孤独なのよ。それなのにそんなわがままばっかり言って」
「君が気に入らないというだけで人様に迷惑をかける度、何かが犠牲になるんや、誰かがどこかで悲しむんや‥‥人は独りでは生きていけないんやで? このままの生活を続けたら回りには誰もおらんかもしれへん」
 桔梗とラーダの言葉にがっと立ち上がる歌奈が逆上して罵倒し始めるよりも早く、ぱん、と小さな音が部屋に響いて。
「な‥‥何するのよっ!!」
「いい加減目ぇ醒まし!」
 桔梗に頬を張られ掴みかかるのには今度はラーダが飛び出して。
「人に迷惑かけてることぐらい気づきなさいー!!! もう、誰も助けてくれないのよ!!」
 それが理解できていない歌奈とラーダの取っ組み合いに、外で待っていた浪人たちも戸の隙間から覗き込んできますが、そんな事もお構いなし、髪を引っ張って引っかいての大暴れで、その様子を悲しそうに見る桔梗。
「‥‥皆君のことが心配なんや‥‥」
 一通り暴れ疲れて荒く息をつく歌奈と、引っかかれた頬をさすりながら見るラーダ、そして水に浸して絞った手拭いを2人に差し出して傷を拭く様に促す鐶、そんな中で桔梗がぽつり。
「‥‥うちとたまやて、年齢も近い‥‥だから幸せになってほしいんや」
 わかってや、小さく付け足す桔梗に見る見る目に涙を溜めると、やがて声を上げて泣き出す歌奈に、鐶が奥に移ってお茶を入れて戻ってきて。
「‥‥飲むと落ち着く、よ‥‥」
 しゃくりあげる歌奈にそう言ってお茶を出す鐶と、今まであった事、あちこちでどう思われているか聞いてきた事、ゆっくりと子供に話すかのように噛んで含んで言い聞かせる桔梗に、歌奈はしゃくりあげて。
「一人になって、これからは大変やと思う‥‥せやけどうちはいつでも味方になるさかい、頼ってええで?」
「‥‥‥‥‥友達ぐらいにはなってあげてもいいし」
 引っかき傷を手拭で冷やしつつラーダも言い、目に涙を溜めたまま歌奈が見ると、鐶もこっくりと頷いて。
「‥‥一件落着、なのか?」
 我侭は簡単には直らないけれど、既にいっぱい恨みや反感は買ってしまっているけれど、漸く本来あるべき気持ちに一歩近づいた様子の歌奈。
 歌奈は初めて出来た心配してくれたりそっと黙って見守ってくれる友達や喧嘩するほどはっきりとものを言うお姉さんたちに囲まれた夕暮れ時に、初めて。
 本当に初めて、怒ってばかりいた顔に微かな笑みを浮かべて目元を拭うのでした。