どうじょうがたいへん!?
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■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:05月17日〜05月22日
リプレイ公開日:2007年05月28日
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●オープニング
その日、泡を食った様子で飛び込んできたのは、2人の小さな少年。
「た、たた、たいへんなの!」
「し、しらないひと、いっぱいどうじょうにいたです!」
飛び込むと言ってもてちてちと駆け込んできた所ですが、その少年、彦坂兵庫という若侍が師範代を務める道場にいた平太と吉太郎はあわあわと手を振って、それまで依頼書を前に悪戦苦闘していた様子の受付の青年のまわりをぐるぐる。
「あれ? 君達は‥‥どうしたの? 道場に知らない人って?」
首を傾げる受付の青年、混乱している少年達2人を宥めようとするのですが‥‥。
「ま、まはらちゃん、とりかえすーってしないぶんぶんおこってるです!」
「たかよしくんとめてるけど、やつひろくん、なんとかできないかって‥‥あぶないの、あのひとたち、かたなぬいたりして、あぶないの!」
泣き出しそうな子供達を前に受付の青年の方が泣き出しそう、とにもかくにも宥めながら話を聞けば、乱が始まる直前当たりに、江戸市内が危ないかも知れないと、兵庫が暫く道場を休むから、大人しく皆で安全な場所にいるようにと告げていたそう。
そこで、吉太郎も平太の家へと避難し、子供達はまはらの大伯母の家へ良く集まって、みんなの両親は無事だろうか、そんな話ばっかりしていたそう。
「あのね、せんせいもしんぱいだったから、やさいをかぁちゃんうりにくるときに、のっけてもらってきて、よしちゃんのおうちによったあとで、どうじょうみにいったの‥‥」
道場を閉じて、別の場所に寝泊まりしているはずと言うことは、おぼろげに聞いては居たのですが、すっかり忘れてしまった子供達は、道場に行けば分かるかも、と見に行ったようで。
「‥‥‥そしたら、刀を抜くような男の人達がうじゃうじゃいた、と‥‥? 駄目だよ、危ないじゃないか。それに、子供達だけであちこち行くのも、まだ危ないと思うし‥‥」
受付の青年が言えば、ごめんなさい、ぺこりと頭を下げる少年達。
「でもね、しらないひとたちにどうじょうにいられるの、みんな、いやだなってぼくたち、おもったんです‥‥」
「だから、あのね、あぶないひとたちじゃないかどうか、かくにんしてほしいの‥‥」
まはら達の滞在する家で年嵩の子供達がてんでばらばらなので、どうして良いか分からなくなってやって来た様子の子供達に、困ったような表情で頬を掻く受付の青年。
「つまり、安全かそうでないか、それを知りたいと?」
「うん‥‥ぼくたちのたいせつなどうじょう、わるいことにつかわれたら、やなの‥‥」
しょんぼりと吉太郎が言うのに小さく溜息をつくと、受付の青年は依頼書へと手を伸ばすのでした。
●リプレイ本文
●どうじょうがしんぱい?
「まはらさん、勇む気持ちは最もです。でも、あなたが怪我をされては皆さんはとても悲しみます」
江戸から歩いて半日の所にあるまはらの大伯母の家、鷹瀬亘理(eb0924)は何やらやる気満々のまはらに優しく窘めれば、強く頷くのは高由少年。
「ただでさえ、まはらは突っ走りすぎて危なっかしいのに‥‥何が起こるか分からぬだろう」
高由は分かっている様子なのに亘理は微笑を浮かべて頷くと、考えるように腕を組んでいる八紘少年にも顔を向けて首を軽く傾けて。
「八紘さんも、私達が確認をしてきます。それまで皆さんはお家で大人しくして下さい。必ずご報告致します」
「ん‥‥気にはなりますが、そう仰るのでしたらわたくしも少し我慢してみることにしましょう」
眉を寄せる八紘に必ず報告します、そう約束する亘理。
「あの‥‥あのね、どうじょうにいたひとたち、かたなをぬいてたです、すわって、なんかしていたです」
「吉太郎くん、心配しないで、大丈夫よ。きっとみんなで何とかしてあげるからね」
心配そうに志摩千歳(ec0997)へと見上げながら一生懸命に言おうとする吉太郎の頭を優しく撫でて、千歳は年少の少年達を宥めて励ましてやり。
「ほんと? ほんとにだいじょうぶ?」
「ええ、平太くんも、大丈夫よ。必ず解決してあげますから、良い子で待っていてくださいね」
「うん‥‥」
こっくり頷く子供達2人。
ちょこんと隅っこで見ている2人と同じぐらいの少年もつられたように小さく頷いていたりして。
「何も心配はないからね。きっとお兄ちゃんお姉ちゃんたちがしっかり解決するから♪」
「そうそう、だいじょうぶだいじょうぶ♪ おねえちゃん達がちゃんと調べて来てあげるから♪」
そして、元気良く子供達に言うと、いそいそと準備をして立ち上がるのはラーダ・ゲルツェン(eb9825)と天堂朔耶(eb5534)で、朔耶は幼い少年・幸満の頭を撫で撫でとするとラーダと共に家を出ると、用意された舟に乗り込んで。
「お兄ちゃんが言ってました、『困ってる人が居たら助けてあげなさい。それがか弱い子供なら、助けるのは大人の務めだ』って」
「わふん」
言った本人は天上天下唯我独尊だけどね、そんな意味合いを込めて鼻を鳴らす総司朗君ですが、ラーダはきらきら目を輝かせて。
「わー、凄いな、そう聞いたら、私も頑張らないとね♪」
なんだか和気藹々と楽しそうに進む舟、舟はやがて江戸の町へ、そして比良屋近くの川岸へと降ろして貰う2人と一匹。
「おっじゃましまーす! 彦坂兵庫さんて人居ますかー?」
「あ、お雪ちゃんも荘吉くんもお久しぶりー♪」
「くぅん‥‥」
なんだか元気いっぱいにお店へと入っていくラーダと朔耶、お店の入り口付近で荘吉が何やら書き付けているものを興味深そうに覗いていたお雪は、きょとんとした様子で顔を上げると、ぱっと顔を輝かせて。
「あ、おねえちゃん。ひこさかのおじちゃんは、にわのでまきわりなの」
お雪が答えていると、そこへ顔を出すのは番頭に呼ばれて出て来た比良屋主人。
「おやおやこれは、よくいらっしゃいました」
「あのね、ととさま、おねえちゃん、ひこさかのおじちゃんにごようなの」
「へ‥‥兵庫様ですか? それはそれはわざわざ‥‥直ぐにお呼びしますので、どうぞ中に‥‥」
直ぐにお茶とお茶菓子を清之輔が持ってくると、子供達と言葉を交わして待つこと暫く、彦坂兵庫がやって来ると、早速事情を切り出す朔耶とラーダ。
「道場に‥‥? 申し訳ありません、わたくしは暫く江戸の情勢が不安定なのと‥‥それと兄の意向もあり、こちらで護衛としてずっと詰めていましたので‥‥何方かに道場を貸すと言うことはしていなかったのですが‥‥」
僅かに眉を寄せて首を傾げる兵庫に、顔を見合わせるラーダと朔耶。
「えっと‥‥どうすればいいかな?」
伺うようにラーダが言えば、軽く頬を掻く兵庫。
「あくまで推論ですが‥‥人気の無いところをわざわざ探して潜伏しているというなら、おそらく源徳側の人間なのではないでしょうか? 伊達の人間ならあの様な‥‥‥‥えーっと‥‥う、うらびれた場所をわざわざ選ばないかと‥‥」
なんと表現して良いのか悩みつつ言う兵庫の言葉、それなりにしっかりした道場ではありますが、確かにあまり表通りというわけでもなければ、知らない人は気付かないような場所をわざわざ選ぶ者といえば、と言ったところ。
「では、排除するよりは話を聞いたほうがいいんですかね?」
朔耶が首を傾げて言うのに其の方が良いのではないかと、そう頷きながら答える兵庫。
「んー‥‥じゃあその辺も踏まえてお話聞いてきますけど、悪用されないなら暫く滞在するのも良いってことですかね?」
「そうですね、目的が道場の悪用ならば放ってはおけませんが‥‥そうでないのでしたら、そのまま居座るというのでない限りは、と‥‥」
「わかりました。じゃあ何かあったらまた来るんで、その時は宜しく、だね♪」
ラーダが言うと頷く兵庫。
2人と一匹は兵庫や比良屋の子供達に見送られて比吉屋を後にするのでした。
●どうじょうにいるひとたち
「‥‥やっぱり‥‥どうやらこの道場にいるのは、源徳側の‥‥」
床下で息を殺して道場の様子を窺っていたのは物見昴(eb7871)。
子供達の話を聞いておおよそ当たりを付けていた勘は当たったと言うところで、耳を澄ませば、先程から江戸を抜ける関の様子を確認している様子が伺えて。
『あまり長居はしていられないが、まだ全員が動ける状態ではない‥‥』
『大丈夫とは思うが、万が一残党狩りに合えば‥‥』
『私は江戸を離れるわけには行かぬ故、江戸を抜けるまで、そこまで御一緒しよう‥‥その後、戻らせていただこうと‥‥』
聞こえてくる声、戻らねばと言う男の様子を窺えば、少し雰囲気が違うその男性に軽く首を傾げる昴。
『今、何とか役宅は無事のようだ‥‥が、出入りすることで目を付けられてはここが危なくなる‥‥』
『忝なく‥‥我々はそのように姿を変えて関の様子を窺うことは出来ぬ故‥‥』
「‥‥役宅って‥‥もしかして天堂さん達の言っていた‥‥? 他の者達はやはり源徳の‥‥」
暫く様子を窺うと、昴は江戸での合流先として指定された綾藤へと足を向けるのでした。
「‥‥‥‥流石に、目敏いですわね‥‥」
亘理は前を歩く、大人しい色合いの袷と袴で剣術家のようにも見える男の後を追いますが、既に二、三度気付かれそうになりひやりとしながらやり過ごしていて。
「‥‥渡しや街道に出る道を先程から伺っているようですね‥‥」
小さく口の中で呟いて亘理は男が伺っている場所を改めてみてみれば、やはり見えるは伊達兵が荷や人の面相をさっと簡単にではありますが確認しています。
関では当然ですが、荷が多かったり怪しいと言ったようすの者は脇に呼ばれて金銭を巻き上げられたり追い払われたり、はたまた取り押さえられたり。
悔しげに小さく唇を噛みながら辺りの道を歩き回って道を調べている様子の男は、やがて急ぎ足で、また周囲に気を配りつつ道場の方向へ戻っていくのでした。
「さて‥‥出入り口はこの辺り‥‥と」
地図に手を入れて書き込んでいた群雲龍之介(ea0988)は、横から位置関係を確認するかのように地図へと目を落とす伊勢誠一(eb9659)へ目を向けて。
「子供達が見たのは7、8人とか言っていたな?」
「ええ、ただもし奥に怪我が酷く伏せている者がいれば、その限りではないでしょうが」
群雲が伺うように言えば、伊勢も記憶を頼りに間取りなどを確認していき。
やがて一行が集まり情報を改めて聞けば、やはり道場にいる男達は伊達の落ち武者ではないか、と言うこととなり。
「一度接触を持ってきちんと話し合った方が良いだろうな」
群雲の言葉に、一行は頷くのでした。
●どうじょうでたいき
「誠一さん、念のためとはいえ、もしそれが故意にしろ故意でないにしろ、こじれたり最悪信用して頂いた後に分かれば大変なことになるかも知れませんよ」
一行が道場へと赴いて話を聞こうとなったとき、仕込み杖を持ち込もうとしていた伊勢にやんわりとですが先に釘を刺す千歳。
一行は道場へとやって来て戸を叩くと、初めのうちは息を殺して居留守を使おうとしていた男達も警戒心を露わにしながら戸を開けて。
「‥‥何者だ、お前達は‥‥」
「この道場の方々から頼まれまして、お話をと思いやって参りました」
「是非に話を聞いて頂きたく‥‥」
亘理が言うと群雲もそう言って対応に出た男を伺い。
「兎に角、中に入れて頂けませんかしら? 私たち、争いに来たわけではないのですから」
「‥‥」
信用できるか値踏みをするかのようにじろじろと見る男に、武装もお預けする、きちんと話し合いがしたい、そう告げれば暫し逡巡の後、道場の戸を開ける男。
「隠し武装を抱えておらぬと、どうやって信用すれば良い?」
「武器を預けるぐらいはするさ。話し合いで解決したいからな。‥‥何なら調べるか?」
山本剣一朗(ec0586)の言葉に、男は頷いてそれぞれの武器を預かり中へと促して。
「単刀直入にいこう。実はここの道場の子弟達が、貴殿らの事に気が付き困っているようだ」
「‥‥何?」
中には8人の男達、奥にも1人ぐらいはいそうではありますが、この言葉に苦しげに眉を寄せて刀をきつく握りしめる者も。
「現状、貴方方はここに通っている子供達から不審に思われています」
「今は混乱の最中、侍が闊歩するのは憚れます。大切な場所を占拠される悲しい気持ちは貴方がたにも分るはずです。どうか、素性を教えて下さいませ」
伊勢が男達を観察するかのように見つつ言えば、亘理は礼を尽くしてそう言葉を続け。
「素性を知ればなんと致す?」
「道場を傷つけずにいる事を約束なされば、相手方にここにいてもいいよう、説得いたします。誰かに言伝があればしますが‥‥どうですか?」
亘理が言う言葉に迷うように目を見合わせる男達、千歳は穏やかな微笑を浮かべながら口を開いて。
「子供達は戦を避け郊外の親類の元へと身を寄せています、事情が分かれば無理に出て行って欲しいとも言いませんわ」
真偽を探るようにきつく千歳を見る男達に、軽く首を傾げて続ける千歳。
「見れば、怪我をしている方もいらっしゃる様ですし‥‥よろしければ診ましょうか? ささやかながら治療の術も心得ておりますので‥‥」
「場所変更も考えていただきたいことではありますが‥‥直ぐに動けない様子の方もいますしね」
伊勢の言葉に群雲は改めて男達へと言葉を発し。
「子供達はこの場所を悪用されることを恐れていた。だが、逆にこの道場とそこの子供たちに危害を加えないと確約できるなら‥‥」
見逃すつもりだし、事情によっては手を貸そう、そう言って男達の様子を見るのに、暫し検討したい、そう返して目を見合わせて一行から目を離さずに相談する男達。
「我々は一般の者達に危害を与えるつもりはない。今怪我で伏せている者や関を抜けられるか厳しい者さえ回復すれば、江戸を出るつもりだ」
「でしたら、きっとお力になれると思いますわ」
「では、子供達には我々からきちんと話を通しておこうと思う。こちらの師範代は我々の判断に任せると言っているので問題はない」
群雲が約束すれば、男達はそれを信用するしかないと見たのか、やがてそれぞれの素性、そして無事に戦場より逃れたという源徳公の元へと馳せ参じるために江戸を抜けたいと考えていることを告げるのでした」
そして、千歳が彼らの怪我の手当、癒しの術を使っての治療を行っている間、亘理は綾藤へと親にのっけてきて貰った様子の子供達と話していました。
「今、侍が外に出るのは危険な事。彼らは約束を守るなら、落ち着くまで隠れ家にしてあげて下さい。混乱が落ち着くまで、道場に行けませんが、辛いのは皆同じなのです。どうか耐えて下さい」
「むぅ、父上達と同じ仕事をしておるのでは仕方なやのう」
ちょっと偉そうに言うまはらに、八紘は男達へ思うところがあるのか協力してあげて欲しいと告げて。
「あそこにきていたひとたち、わるいことしない?」
「ええ、大丈夫よ」
「んみゅ‥‥ならだいじょうぶなのです。そのうちどうじょうはかえしてもらえるみたい、ですし‥‥」
吉太郎と平太ににっこり笑って頭を撫でる亘理、それを見ながら何か1人納得しているような高由。
「どちらにしろ暫くはばたばたして稽古処ではないであろうからな、兵庫も我々も」
そう言うと、改めて男達に対して無理に出て行かせる必要はないと言うことを話すのでした。
「摂政は房総へ退いて後、海路三河へ落ちたそうな」
「ああ、それ故我々も馳せ参じたく思うも‥‥」
昴の言葉に主格と思しき男が頷いて小さく息をつき。
「安全性を言えば、陸路を行くよりも海路で行った方が良い気もするが‥‥怪我人の具合次第か‥‥」
「大分怪我も癒して貰い、もう少し休養を取れば舟で出るだけの体力も回復するであろうが‥‥」
「それぐらいなら待ってくれるであろう、子供達もここを預かる者も」
昴が言えば頷く男。
見れば子供達が何やら荷を抱えて顔を出し、ラーダや朔耶と談笑しながら年少組は洗濯物を踏んで洗い、八紘は進んで平太の家から持ってきた野菜などを使い食事の支度を銕会ったり。
「‥‥」
その様子を何とも言えない目で見る男。
男は軽く目頭を押さえると、子供達へとそっと頭を下げるのでした。
●どうじょうへのうれしいたより
群雲が手を加え聞き及んだ範囲で伊達兵の目を掠めて通れそうな道筋を選定すれば、伊勢は乱についての情報を集め、少しでも安全な経路を抜き出し。
「舟の手配はした‥‥数回に別れて江戸を抜けることになるが‥‥郊外で合流できるところは?」
「‥‥お役目柄、私は郊外の宿で心当たりがある。そこで落ち合い先へとと思っている」
改方同心である男がそう言えば、昴も頷いて。
やがて、手引きもあったことから無事に江戸を落ちた男達の様子、また感謝の言葉を携えてこの同心が江戸へと戻ってくるのはまた少し先のこと。
彼は子供達へのお礼の言葉と一行への感謝の意を伝えてから、凶賊盗賊改方の役宅へと戻っていったのでした。