弔いの香を

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月07日〜08月12日

リプレイ公開日:2007年08月19日

●オープニング

 その日、女性と少年がギルドへと連れだってやって来たのは、前日まで少し強い雨の続いたとある日の昼下がりのことでした。
「実は、村に行ってお線香をと思いまして‥‥」
 そう話す女性は奈都と言い、一緒に来た少年は沢。
 先の乱のときに村が伊達兵たちに略奪に遭い、夏の弟である沢ら5人の子供たちは奈都の依頼もあり山賊や残党のいた森からギルドの依頼で助けに行った人々の手により江戸に辿り着き、暫く穏に暮らしていました。
「あれからどんな調子です?」
「はい、お陰様で子供たちも無事に見つけて頂き‥‥子供たちは皆うちで育てることになりました。子供達も何かとお店のお手伝いをしてくれるようになりなりましたし、少しずつ、落ち着いてきたみたいで‥‥」
 そう微笑を浮かべる奈都に受付の青年も釣られたように笑みを浮かべて頷きかけてから、ふと首を傾げます。
「ところで、今日はどうしたんですか?」
「それなんだけど‥‥姉ちゃんと相談して、僕ら姉弟だけでも村に行って、線香をあげてやりたくって‥‥他のは、まだやっぱり村に行くのは辛いって‥‥」
「‥‥いろいろ思い出すんでしょうね。君は大丈夫、なの‥‥?」
「うん‥‥‥ちょっと、気になることもあるし、おっとうとおっかぁ、それに村のみんな、線香の一つも貰えないなんて、やっぱ、寂しいだろうし‥‥」
 そういう沢に、そっか、と受付の青年は頷くと筆を執り。
「同行するのは奈都さんと沢君だけで良いんですね?」
「はい、お願いします」
 頭を下げる奈津に、暫く筆を走らせていた受付の青年はふと思い出したかのように手を止めて沢へと顔を向けて。
「ところで、気になることって?」
「義兄ちゃんの店に来る旅人が村のこと知らなくて立ち寄ったらしいんだ。そん時、村の真ん中に幾つも小山が出来ててちょっと粗末な棒が立ててあって、村には血の跡とかはあっても遺体がなかったから、誰かが‥‥」
「村に残されていた物などが荒らされた様子はなかったそうで、逆に少しこぎれいに片付けられていたとか‥‥村人の遺体がなかったことから、どなたかが埋葬して下さったのだと思いますが‥‥」
「? 心当たりはないんですか?」
 受付の青年が聞けば、顔を見合わせる奈津と沢。
「僕はあんまし村の周りのこととか分からないし‥‥」
「私も、早くに嫁いできたので、村が近くの宿場以外に交流があった人達などは詳しくは知らないのです」
「‥‥付近の村、ですかね?」
「考えられるのは‥‥ただ、取り敢えずはそれよりも無事に村に行って、そのお墓にお線香を、と‥‥」
 奈都の言葉に頷くと、受付の青年は再び依頼書へと筆を走らせていくのでした。

●今回の参加者

 eb0575 佐竹 政実(35歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb2408 眞薙 京一朗(38歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb2872 李 連琥(32歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 eb2963 所所楽 銀杏(21歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb3496 本庄 太助(24歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 eb5401 天堂 蒼紫(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb5402 加賀美 祐基(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ec2786 室斐 鷹蔵(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

所所楽 石榴(eb1098

●リプレイ本文

●穏やかな道行
 じりじりと照りつけるような暑さの中、木々や田畑に囲まれた道、依頼人である姉弟を守るように挟んでその街道を行く一行。
「‥‥でも、一体誰が埋葬したのですか、ね‥‥?」
 同い年の少年・沢と並んで歩く所所楽銀杏(eb2963)が言えば、沢も首を捻り口を開いて。
「隣の村だったらあっさりと話が済んで分かり易いのだけどな。どんな理由でこんな‥‥」
 大変な時期に、とどこか困ったような言葉を小さく付け足す沢ですが、軽く首を傾げてみる銀杏ににっと笑って返して。
「それにしても、この犬何だか格好いいな! きりっとしてるって言うか、何か強そうだ」
「柱次は強いです、よ」
 姉である所所楽石榴に護ってあげてねっと言い聞かされていた柱次はくいっとばかりに誇らしげに顔を上げて銀杏を見上げています。
「線香の一つもか・‥‥、そっか、そろそろそういう時期か」
 そんな楽しげに語らう銀杏と沢の様子を眺めつつ本庄太助(eb3496)が言えば、奈都も頷いて。
「今のところは以上はないな。‥‥やはり沢も顔馴染みが一緒なら道中も安心だろう」
「本当に‥‥あの子もここのところだいぶ落ち着いてきましたし、それに同い年の友達も出来れば、村から離れた暮らしにも早く慣れるのではと思うと‥‥」
 先行しては定期的に戻ってきて現状を伝える眞薙京一朗(eb2408)の言葉に奈都の表情にも微かに笑みが浮かび、その様子を李連琥(eb2872)もほっとした笑みを浮かべて見ています。
「なっちゃんたっくん姉弟の墓参りだし、向こうでも晴れると良いよなーっと」
 加賀美祐基(eb5402)がのんびりと歩きながら言えば、少し気になったのか小さく首を傾げると加賀美の愛馬・橘さんと加賀美を見比べながら口を開く佐竹政実(eb0575)。
「あの、その荷物は‥‥?」
「差し入れの保存食だ!」
「保存食‥‥」
 目を瞬かせる政実ですが、加賀美は上機嫌に荷を背負って奈都たちと同じ歩調で歩いており。
 加賀美の相棒である天堂蒼紫(eb5401)は偵察も兼ねて先へと進んでおり、一行の後ろをぶらぶらとついて歩いてくる室斐鷹蔵(ec2786)。
「ただ五日付き添うだけで三両‥‥こう割の良い仕事、他にそうあるまいて?」
 低く笑って言う室斐はわいわい賑やかに話しながら歩いている一行を視界に収めたまま僅かに嘲りにも似た色を浮かべて呟くと悦に入っているようで。
 確かに何事もなければ、そしてたいした危険がなければ割りの良い仕事であるのには間違いはありませんが。
 ともあれ、暫くの間、一行は長閑な旅を続けるのでした。

●田舎道の追剥ぎは‥‥
 そろそろ日もだいぶ落ち、あたりが茜色に染まり始めた頃。
「‥‥村の側で待ち構えているということは、付近の‥‥」
 辺りを窺うようにして木々の間を通り抜けるのは天堂。
 急ぐ旅でもなく、依頼人達の足を考えゆっくりと進む一行は手前の宿場で休むか夜営かと話し始めている頃。
 天堂は村の入口手前の道で見張りらしき男を見つけ音を忍ばせ近寄ろうとしたのですが、その男へと歩み寄った一回りほど大きな男の様子を見て息を殺しゆっくりと下がり。
「迂回して行くことも可能だが、万が一村に来られると厄介だな」
「あの者達を避けて通るには少し森道へと踏み入れなければならんな。その場合足場の悪い中、誤って囲まれてしまえば厳しい」
 同じく先行して周辺を伺っていた京一朗と確認を取れば、それが元からの山賊ならともかく被災民ならば命を取るまででもない、そう告げる京一朗。
「依頼人が1つ手前の宿場で休んでも良いと言っているのならば、その間にこちらで調べておこう‥‥」
 天堂の言葉に頷くと、一時確認のために後から来る一行の元へと向かう京一朗。
「途中の道にいる賊がどのような素性の者達か分からんのでな、大事を取って夜は宿を取った方が良いだろう」
 京一朗の言葉に頷くのは連琥。
「土地勘があるだけでも、実力がどうであれ相手の方が有利‥‥ならば無理に相手にあわせる必要もないであろうな」
「待ち構えられれば相手の灯りを目印にしても厳しい状況になりかねませんしね」
 政実も同意を示して手前の宿場へと入れば、天堂が戻ってくるのを宿の前で待ち侘びる加賀美。
 さて、山賊らしき男達を探りに行った天堂は。
 丁度道を見張っているらしき男を呼び戻した男達、後を尾ければちらりと見える数人の影にそれまで以上に神経を研ぎ澄ませて様子を窺っていると、ちらりと見えた2人の男の様子に目を止める天堂。
「‥‥長居は無用、か‥‥」
 目の端に男達の姿を映し、その数をもう一度だけ確認すると、天堂は一行の元へと駆け戻るのでした。
 天堂からの警告を受け、翌日宿を出立した一行は道々を警戒しつつ進んでいき。
「必ず守ります。ですから離れないようにしてくださいね」
「最近この先で見られるって言っていた山賊達だと思うからな。前までさっきの宿場辺りから一人で通っても問題なかったって言っていたし、この山賊達をどうにかして、村の方をなんとかできれば‥‥」
 政実が笑みを浮かべて告げれば頷く沢、本庄が確認するかのように問いかければ、奈都は頷き。
「ええ、そうすれば街道の宿場からあまり大した距離ではありませんし、もっと頻繁にくることが出来ると思いますので」
「それは良いことだ。親しい者が香や花を手向けに来てくれればどれほどに心休まるであろうか」
 奈都の言葉に連琥も微笑を浮かべて言うも、不意に森へと目を向けて。
「チッ‥‥仕事か」
 先行していた天堂からの合図に気が付いた連琥、その様子に面倒だとばかりに舌打ちをして刀へと手を触れさせる室斐。
 直ぐに聞こえてくるがさがさと草を踏み荒らす足音に庇うように奈都と沢を制して立ちはだかるは李と政実。
「目を伏せていろ。良いな」
 そして奈都と、そして何より沢に強く言い聞かせ一歩踏み出す京一朗。
「決して人が戦う様なぞ見せてなるものか‥‥特に沢には」
 小さく、もう三月、だがまだほんの三月なのだ‥‥本当に小さく呟くと京一朗は刀に手をかけて数歩前へと出て。
「‥‥大丈夫、必ず護る、です」
「ん‥‥ごめん」
 銀杏の言葉に小さく謝る沢ですが、数珠を握りしめた銀杏は小さく首を振り。
「謝るのは、違うです、よ」
「わうっ!」
 銀杏とともに一声吠えた柱次が後の方へと目を向ければ、回り込んで森から躍り出た男の前に立ちはだかったのは、天堂と本庄。
「金目の物を置いていって貰うぞ!」
「もっとも、置いていっても逃げられねぇけどなっ!!」
 大柄な2人の男が斧を手に躍りかかれば、その男達と対峙するのは京一朗に加賀美。
「巫山戯んなっ!! 自分たちがやられたからってやり返して良いってもんじゃないだろっ!!」
「なっ‥‥!」
 天堂が探っていたときに耳にした言葉、そこから付近で乱のどさくさで小さな村が焼かれ、その生き残りらしかったことを知った加賀美は複雑な思いを抱えもしましたが、だからといって彼等の行為は許されるものではなく。
「何故痛みを知っていながらそれを他者にまで味あわせようとする」
 刀での一撃を受け流すように弾くと、振り下ろしきったその斧の柄へと渾身の一撃で振り切る京一朗、斧の柄を握りしめていた男は地に刺さった斧を引くように慌てて飛び退こうとしますが、その手には握りしめた柄の部分しか収められて居らず。
「っ!?」
 切り落とされた斧に言葉を失う男、その直ぐ横では加賀美が一撃を受けようと斧を反射的に前に出した男の目の前で、柄の部分を力任せに叩き折り。
「それ以上は近付けさせません!」
 佐竹が掌から打ち出すオーラショットで威嚇をすれば、その男の背後に回り込み、首筋に落とす一撃で意識を刈り取る天堂。
 森から真横を撃とうとした男の足下には深々と地に突き刺さる矢。
 見れば弓を構え矢をつがえた本庄が狙いを定めており、その側には連琥の鉄扇が薙ぎ払っており、その側でじっと見つめる銀杏に気付けば、男はそこで初めて身体の動きを封じられていることに気が付いて。
「な‥‥何なんだこいつ等‥‥」
「フッ‥‥運のない奴じゃ。このまま逝くか‥‥?」
 不意を打ちかけた男が、瞬く間に倒される仲間を見て呟くように言えば、ふんと嘲り笑って言う室斐。
 男達はそれまでに既に悪さをしていて初めてではないことなどから、天堂が呼んできた宿場の役人へと引き渡すと、一行は急ぎ村へと向かうのでした。

●隣村の気になる話
「隣村、行かなくていいのか?」
 村の様子は人が住まなくなったためか少し建物などが傷み始めているようで、その片付けを手伝っていた銀杏に聞く沢と、こっくり頷く銀杏。
「加賀美さん達が、一緒に聞いてくれる、です」
「そっか‥‥」
 銀杏が来る道々で似顔絵を見せて話を聞いていたのを知っているからかそう聞いた様子の沢ですが、銀杏の答えに頷くと、一緒にまだ使える台を運び出して、村の中央の墓となったらしき一角へと運び。
「私が行っても迷うだけですしね‥‥埋葬を行った方のことは気になりますが」
「本当に、どなたがしてくださったのかと‥‥人に様子を伝えて貰いました時も、そのままにしていた村のことを思えばと‥‥」
 政実と言葉を交わしながら村の片付けをする奈都に、その心情を思い仕方のないことですよ、と慰める政実。
「他の家は大分傷んでいるようだけど、まだ手を入れれば何とかなるな」
「ここだけがまだ人が住んでいたかのような‥‥暫く埋葬などが終わるまで滞在していたのであろうな」
 村をぐるっと見渡してから、一軒の家の前で目を泊める本庄に、連琥は戸に手をかけると中を覗き込みそう返して。
「村に残っていたものは手を付けていないようです」
 暫くして、村の片付けや様子を確認していた一行に、記憶を辿った奈都が言えば、頷く京一朗。
「やはり村自体と繋がる者達だったのだろう。何もなければあえてこの村に留まり埋葬するだけの理由もなければ、先程の賊達の様な者達への警戒にも注意を払う必要があってまで留まったか‥‥」
「幾ら善意でも今はそれだけの余裕がある人達の方が少ないですしね」
 京一朗に頷き答える政実は村の入口へと目を向けて。
「あとは、隣の村から聞いてくる話で判断だろうな」
 本庄が使えそうな板と棒を抱えながら言えば、銀杏も頷いて。
「戻ってくるまでの間に出来るだけのことはやっておいてしまおう」
 そう言って墓となっている一角へと足を向けて柵を作る当たりを付ける本庄を見てから、それぞれ自身の作業へと移るのでした。
「では、本当にこちらの食料を頂いても宜しいのですか?」
 加賀美の差し出す大きな包みを受け取り中身を見て、目を瞬かせるのは隣村の村長。
 2人は加賀美の持ってきた保存食を手土産に村のことを聞けば、良く舟を出して江戸へ向かう途中の中継に使わせて貰っていたことや、時折田畑の物を持って暫く滞在しては通過や必要な物資と交換していた人達がいたことを話します。
「余り詳しいことは詮索しないようにして居ったのですが、村より外のことには余り興味を示さない様子の‥‥村と親しいと言うよりはあの村の村長が彼等に便宜を図っているといった様子でしたが‥‥」
 良く聞けば、村長と一部の村人達がその男性等が来ると必要な物を宿場、場合によっては江戸で調達してきて渡すと言ったことをしていたようで。
「それと‥‥口止めされておってそれを言うのは心苦しいですが、これだけして貰いましたで‥‥暫く前のことでしたが、うちでも怪我人は出たで、宿場から傷に効くという薬などを買っていたところにその人達が来ましての」
「この村に、来たって?」
 目を瞬かせて聞く加賀美に言うには、どうにも宿場などには出て行きたがらなかったようで、この村で買った分の幾つかを分けて欲しいと、上質の毛皮を手土産に頼まれたそうで、少し分けたとか。
「何でも怪我人を拾ってとか、まだ死なせるわけにもとか、その様なことを言っておりましたが‥‥あまりお役に立てず済まないですの」
 銀杏から預かった似顔絵を見せても怪我人自体は見ていないのでと申し訳なさそうに首を振る村長に礼を言い。
「そうそう、宜しければ是を持っていってくだされ。昔儂が貰った物ですが、この村で暮らすには使わぬ物で」
 わざわざ食料をお持ちいただいたお礼です、そう言って加賀美に指輪を握らせる村長。
 情報収集が済むと天堂と加賀美は村へと急ぎ戻るのでした。

●弔いの香を
「埋葬をしていった者達は余り外の世界と関わり合いを持たないように暮らしているようであるな」
 話を聞いてそう言う連琥に頷く天堂。
「それにしてもすっかりしっかりとしたお墓って感じだな!」
 本庄が柵で囲って綺麗にした墓に感心したように声を上げる加賀美と、途中で手に入れていた茄子を使って牛を象り備えるように進める京一朗。
 連琥と銀杏が祈りを捧げる、一行が線香を上げる様子を、村に入ってから居心地の良い木の下でだらだら過ごしていた室斐がちらりと目を向けるも。
「ただ拝むだけで死者が戻って来るなら誰でも拝むわ‥‥」
 小さく呟いて居眠りに戻ったりと言った光景も。
「大分村の手入れをしていただいて‥‥本当に有難うございます」
「いや‥‥今は無理でも、何れ帰る他の子らの為に、な‥‥」
 京一朗が言えば、本庄は小さく溜息をついて。
「それにしても、墓参りくらい姉妹二人で気軽にいけるように早いとこ落ち着いて欲しいもんだ」
 それでも、打ち棄てられた廃村ではなく、手入れを定期的に続ければいずれ戻って暮らせる場所に戻った村へ、奈都は眼を細めてどこか嬉しそうな微笑を浮かべ。
「本当に有難うございました」
 深く深く、頭を下げるのでした。
「そうだ、これ、良ければ使ってくれないか? その、お守りにでもなればって、思って‥‥」
 帰り道、一行からほんの少し遅れて話ながら歩く沢と銀杏。
 少し固い声で何気ない風を装おうとしている沢が、そう言って銀杏へと差し出すのは簪。
「女の子には、いかにもお守りって言うのより、自分で選んだ、こういうのの方が良いって、義兄さんが言って‥‥」
 僅かに顔を赤くして言う沢に小さく首を傾げて受け取る銀杏。
「危ないこととか沢山あるかも知れないけど、気を付けろよ? たいした力になれないってのは分かってるけど‥‥俺に出来ることあったら、何でも言ってくれな」
「うん‥‥ありがとう、です」
 沢の言葉にこっくりと頷くと、銀杏は受け取った簪を手に、沢と並んでゆっくりと江戸に向かって歩き続けるのでした。