夏襲来!〜遊動編〜

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月27日〜09月01日

リプレイ公開日:2008年09月06日

●オープニング

 その日、ギルドで依頼の整理をしていた正助は、先程から不思議そうにギルドに顔を覗かせてきょときょとと中を確認している男に気が付くと怪訝な表情で暫くそちらを見ていました。
 目があった瞬間、やばいと感じ慌てて目を逸らしますが、向こうも取り敢えず手が空いてそうで話を聞きやすそうな正助に気が付いたためかずかずかと入ってくると、受付の青年が居ないかと聞いてくるのに、やっぱり、と遠い目をする正助。
「えぇと、僕が代理です‥‥」
 そう応えると驚いたような表情を浮かべたその人物は、金魚屋の親仁。
「む、勝負を逃げたか」
「‥‥いえ、そもそも勝負に参加してないと思いますよ?」
 過去の依頼を参照しながら言う正助ですが、あまり親仁は聞いていないよう。
「よし、じゃあ坊主でも良いや、ちぃとばっか頼まれてくれ。実はぁな、ちょいと過去に世話になったことがある香具師の元締めんとこに挨拶に言ったついでに、上とか何とか関係ない祭りに参加してぇって相談してよ、ねじ込ませて貰った訳よ」
「‥‥‥えぇと、もしかして、お寺でやるとか言いませんか、その祭?」
「お、なんでぇなんでぇ、なかなか有名な祭りなのか? いやいや、折角祭りに参加できる気か一点だったら、やっぱりやらなきゃなぁ? 勝負をよっ!」
 ふっふっふと、不適なつもりで笑う親仁ですが、正助は何となく遠くを見て。
「それで、えぇと‥‥じゃあ、挑戦者を集う、と言うことですか?」
「おう、それなんだが、今回は三組程呼んでくれやしねぇか?」
「? また多いですね、なんで三組なんですか?」
「いや、小屋を三棟用意したからだ」
「‥‥一組一棟?」
 まさかなぁ、とばかりに乾いた笑いを浮かべる正助ですが、大まじめに頷く親仁。
「前は複数棟を繋げてイッキにとやったわけだが‥‥お陰で被害は甚大だ、そこで考えた」
「何をです?」
「難易度とか集める傾向とか分けたら、せめて、二棟ぐらいですまねぇかなと‥‥」
「‥‥‥僕にはむしろ、そこまでして勝負に拘る気持ちが理解出来ません‥‥」
 僅かに遠い目をして言う親仁に、こちらも違う方向に遠い目を向ける正助。
「じゃ、じゃあ、取り敢えずは実力事か、傾向事に募集をかければいいわけですね?」
「おう、あぁ、だがな、それぞれ行き来は可能な小屋だからよ」
「‥‥」
 それじゃ意味がないんじゃ、喉まで出かかった言葉を押さえて、正助は依頼書へと目を落とすのでした。

「じゃあ、一つめの小屋が‥‥」
「おう、ここは比較的のびのびと掴み取りを楽しんで欲しいかなと。比較的平和に、ただ、あまり高そうな物は入れてないんで‥‥」
「難易度は、初心者向け、としておきますね」
 一つ頷くとさらさら書き足す正助。
「大怪我するような罠はないはずだ」
「それは初心者向けじゃないです」
「‥‥ひ、一つめの小屋は、罠を外そう‥‥」
 言う親仁ですが、実際の所罠を全て把握しているのだろうか、などと正助の脳裏には不安が掠めるのでした。

「それと、ちょいと郊外で酒飲んでたときに良い浪人さんみっけてよ、常に笠被って顔を見せようとしないんだがこれがほれぼれするほどの腕でよ、このお人と郊外の道場で子供と遊んでた兄ちゃんに、周りに迷惑書ける奴を摘み出してくれるように頼んだから」
 何となく片方はそのまま想像が付くために、何となしに目を彷徨わせる正助。
「あまりに酷いと判断したらその人達に摘み出される危険があると言うことですね?」
 正助の言葉に金魚屋の親仁は頷くのでした。

●今回の参加者

 ea6982 レーラ・ガブリエーレ(25歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)
 eb1555 所所楽 林檎(30歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb1591 キドナス・マーガッヅ(23歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ec4859 百鬼 白蓮(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●勝負の前は
「勝負‥‥とは、具体的に思いつかないのだが、構わないのだろうか?」
「大丈夫じゃん? 暗い小屋の中で何か探すだけじゃん〜♪」
 キドナス・マーガッヅ(eb1591)が首を傾げて言えば、にこにこ楽しそうにしているレーラ・ガブリエーレ(ea6982)が、んんーっとばかりに伸びをしながら笑って言って。
 ここはお寺の境内、準備された小屋の中でもばんと『初心者用』と扉の上に書かれた紙が張り出されているところで。
「小屋で宝探しってなんだかお祭り的な依頼じゃん?」
 だからお祭りを楽しめばいーんじゃん? 首を傾げて言うレーラにふと微かに笑みを浮かべて頷くキドナスは、ぶんぶんと楽しげに腕を振っているレーラにつられるかのように自然と話しに手ぶりが付いて。
「いや、最近妹が子を出産したとの知らせを受けたのだが、‥‥祝いに行こうと思うのだが、これと言った手土産が無いため切欠がつかめないのだ」
「わー、それはおめでとうーなのじゃん? ふつーに行くのが駄目だったら、甘い物ー?」
「それも考えなかったわけではないが、やはり何かそれとは別に、な。流石に子の世話であまり外出も出来ないだろうし、祭りと、この変わった小屋とその興行主の話でも土産話にするのも悪くなさそうだ‥‥と」
「あー、そっか〜。喜んでくれるといいじゃん♪」
 互いの健闘を祈っているというよりは、なんだかのんびりあまり緊張感とかとは無縁な様子の二人、その近くでは、てくてくとのんびり歩いてくる所所楽林檎(eb1555)と、先程から小屋の外側を観察している様子の百鬼白蓮(ec4859)が。
「む、半迷路的な暗い小屋とのことだし、先ずは目を慣らしてから行動し始めた方が安全にて候えば‥‥」
 先程から頭の中で色々と想定をして考えているようすの白蓮は、そこまでかつかつと考えるもふと僅かに口元に笑みを浮かべて。
「ま、偶には、楽しむも良きに候」
 小さく呟く白蓮の傍を小さく首を傾げて通り過ぎれば、林檎は緩く息をつくと、ふと反対側にある小屋へと目を向けて。
「小屋ごとに、どれほど違いがあるのでしょう‥‥?」
 頭に浮かぶは激闘組に参加している様子の妹である銀杏や、互いに憎からず思い合っている崔軌のこと。
「ところで、金魚屋のおやじさん?」
「お、なんでぃ、お譲ちゃん」
「この子を一緒に抱いて入って構いませんか?」
「おお? なんだかびかびか光ってる兎さんか、へぇ、綺麗なもんだなぁ‥‥っと、かまわねぇよ? だーれも多分連れて入っちゃ不味いなんざ考えてねぇだろうしなぁ」
 林檎に抱っこされてふんふんと鼻を動かしている雷兎の穂垂を見て珍しいものを見るかのように見てから笑って頷く親仁は、たぶんこの兎の危険性を理解していないかもしれませんが、それはそれ。
 大切な家族に来るななどと野暮なことは言うつもりはないようです。
 林檎は礼を言ってからもう一度だけ、激闘の方の小屋を見てから、自身が入る小屋へと目を向けるのでした。

●まずは小手調べ
「そろそろ漸くに目が慣れて来たで候‥‥」
 他の小屋から賑やかな声が聞こえてくる中、白蓮はぼそり小さく呟くとゆっくり床屋の中を見回していました。
 小屋の中は暗くも風が通っているのを確認すれば、目を懲らして微かに明るく感じるのが、黒い布を張った窓と思しきところで。
「ふむ‥‥空気の流れが‥‥」
 締め切りと思われる小屋も、窓を通気性の良い布で塞いでいるお陰か張ってある水のお陰か、心地好い涼やかな中をゆっくりと慎重に歩を進める白蓮。
「ふむ‥‥他と比ぶれば危機の少なき小屋にはあるも‥‥」
 微かに人の気配がするのは他にも同じ小屋を選んだ人の気配であろうと確認すれば、そっと壁に手を触れさせそれを伝って更に歩を進めていく白蓮、小屋の中は幾つも壁が建てられており、暗闇からか進む道が見つけにくいのが難点とも言えて。
「こちらも行き止まりに候‥‥」
 やがて辿り着く壁に囲まれた場所に小さく呟くとゆっくりと引き返して分岐点に向かおうとする白蓮、と。
「お‥‥おおお?」
 数歩歩いてあるはずの分岐点を見失う白蓮は、そうっと壁を押してみれば、ゆっくりとするする、嫌に滑らかに回る壁。
「壁ごと、回っているに候か?」
 あまりに滑らかに回る壁と、そうっと罠にかからないように手を這わせて歩いていたため、所々壁が回っていたことに気が付かなかったようで、緩く息を吐いて少し考え込む白蓮。
「ふむ‥‥おおよその方位など、もう少し気に書けて歩くべきに候か‥‥」
 取り敢えず出発地点がどちらだったかな、等と考えつつ注意深く回る壁を調べる白蓮は、壁が水面より上で回っている事と、回るに際して細い溝が勢い良く回らないように押さえていること、ある一定の位置以上回らないように調整されているのに気が付いて。
「回る壁の始点は、反対側の留め具の方に押していけば着くに候な」
 回る壁をゆっくりと回して戻していけば、始点側の所に壁が着く寸前、何やら微かに紐状の物が見えて、警戒しながら始点と壁の隙間をそっと手で触れゆっくりと引けば、予想に反して手応えもなくそれはするりと抜けて。
「わらしべ‥‥?」
 手にとって見ればそれは短く古びたわらしべですが、それだけではないようにも白蓮は思えて。
「取り敢えず、外に出てからよく調べるに事にするに候」
 ゆっくりと今度こそ怪しげな部分も無しに始点へとぴったりとはまり込む壁を確認すると、白蓮はそっと懐にわらしべをしまい込んで、再びゆっくりと歩き出すのでした。

●お魚に挑む
「万が一があった場合? あぁ、構やしねぇな。中で他ん奴相手に刃傷沙汰ぁ不味いだろうって事だけだからなぁ」
 むしろその事以外を全く想定していなかっただけのようで、故意に人を傷つけることさえしなければ、今まで参加者同士の大乱闘なども珍しくもなかった部分もあり、今更ながらに頭を掻く親仁。
「ふむ、そうか‥‥では、行かせて貰おう」
 行って入ってくのはキドナス、レーラはもう少しのんびりお祭を楽しんで来てから入るとのことで、ぶんぶん手を振って頑張ってくるじゃん〜等と見送っていて。
「外から見た小屋の距離からすれば、この辺りが最奥部か」
 張られた床をしっかりと踏みしめて歩いてきたキドナスは、最短距離を突っ切ってきたためか罠らしい罠にはまることもなく、辺りをゆっくり見回してから、さて何が何処にあるだろうなどと呟くと。
「しかし‥‥まさかとは思うが、魚のエラ等に景品が引っかかっているということもあるまい‥‥」
 呟いてみてから、その考えが妙に頭の中に残っているというか、むしろ口にした所為で気になり始めてしまったというべきか。
「いかん、一度考えたら気になってきてしまった、魚も一匹一匹確認してみることにするか‥‥漁の経験は無いのだが‥‥」
 言いつつも暗い小屋の中、最奥部のその足場の周りに広がる水面へと目を向けるキドナスに、まるで確かめてみろよと言わんばかりにぴしゃっと小さな水音を立てて跳ねる魚影に腕捲りをして。
「やってやれぬこともあるまい。第一、疑問を消化不良にするのも私の流儀ではないからな」
 少し開けた水場を探してその一角に歩み寄ると踏み込むキドナスは、足から伝わる水の冷たい心地好さに緩く息を付いて屈むように水面を覗き込み、見えた魚影にせいっと手を突っ込んで伸ばして。
「く、なかなかすばしっこいものだ‥‥だが‥‥」
 暗闇とすばしっこい動きとはいえ、慣れてくればその動き持てに取るように分かってきて、やがて魚を捕まえてはぽいと少し離れたところに戻すを繰り返していたキドナスは、大きな魚影を捕まえてその感触にぎょっとしたように見て。
 それはとても大きな鯰、ですが、よくよく見れば、何やら加えているようにも見え、足場に一度引き上げてそれを何とか引っ張り出せば、それは何やらナイフ、それも料理などに使い物のように見えて目を瞬かせるキドナス。
「これを使って調理しろ、とでも言うのだろうか‥‥」
 ぼそりと呟く言葉が分かるとも思えませんが、大慌てでびちびち跳ねた鯰が、足場の反対側から水に転がり落ちて、信じられないような速さで泳ぎ逃げる光景に、流石にキドナスも驚いた様子で目を瞬かせて、泳ぎ去った方を見つめているのでした。

●暗闇は怖い?
 レーラが小屋に入る事になったのは、少し時間が経ってから。
 お面を頭に乗っけて、途中で遭遇したこの辺りの元締めの所の若衆達とばったりあって会話をして、飴やらお団子やら竹の玩具やらを買って貰ってご満悦で戻ってくれば、どうやら既に白蓮は出てきたと聞いて。
「んー俺様もそろそろ行くじゃん? あ、お団子食べる〜?」
「‥‥‥頂きます‥‥」
 兎を撫でながら頷く林檎がお団子を貰って食べながら小屋を眺めていると、他の小屋では更に盛り上がりを見せているようで、賑やかな様子に何とはなしに二人して他の部屋を眺めると、レーラはぴょこんと立ち上がり。
「じゃあ賑やかで怖くないうちに、行ってくるじゃん〜」
 そう言って元気良く出発したレーラだったのですが。
「暗い‥‥怖いじゃん‥‥」
 何でか違う方向で恐怖を憶えてしまった様子のレーラは、掴み取りがとかそう言う範疇を超えて居る気もしますがそれはそれ。
「でも、罠とかないみたいだし、あんまり怖いことはないはず〜」
 ざぼざぼと目が慣れるまで待ってから水に入ったレーラは、ちょっぴりびくびくと水音や時折耳を撫でる風にびくっとしていたり。
 そんなレーラは先程から水の中を手でパシャパシャ探っているようで、どうやら大きめの物狙いで行っている様子が見えて。
「大きいアイテムならきっと凄いはず〜、狙うはでっかいアイテムじゃん〜この国の大きな置物は猫とか狸とか、なんだか面白アイテムがおおいじゃん」
 暗闇がちょっぴり怖いのかそんな風に自分に言い聞かせても居るようで、先程から手に何か引っかからないかなぁとばかりに手を突っ込んでは何も感じられずに次の場所へと進むレーラ、と。
「ごぼ、がばばば」
 手に何か感じられてていと掴んで引っ張ったレーラですが、それがなかなか持ち上げられず、更に深く手を差し入れて持ち上げようとした瞬間、その大きな物を引っ張ると同時に足元がぐいと何かに攫われたようで尻餅をついてごぼごぼと溺れかけて慌てるレーラ。
 安全なだけで罠がないわけではなかったり、それはとも書くとして、やっとの事で掴んでいたそれを話して足場に這い上がると、恐る恐る触った物を確認して頑張って引き上げれば、それは希望していた狸の置物‥‥に、何やら縄が括り付けてあって。
「‥‥この縄わっかじょーになってるじゃん?」
 ある意味簡単な仕掛けで、ぐいと引っ張ったらその縄事引っ張ったと言いますか、それに足を取られてすってんと転んだレーラは、ごそごそとその縄を押さえていた物も手探りに探し、今度はちょっぴり慎重に引き上げると、それは招き猫。
「うー吃驚したじゃん‥‥」
 ほっと胸を撫で下ろしつつレーラは、足場に置物を並べてほうと息を付いているのでした。

●共に歩けば大丈夫
「‥‥何処か、足場の安定した場所があれば‥‥」
 そう呟いて抱きしめている雷兎を撫でるのは林檎。
 初心者用の小屋ではあまり凄い物音や声など耳にしないのですが、外から他二つの小屋を眺めていればなかなかにどったんばったん物音が耳に出来て。
 小屋に入れば足場を伝って穂垂のぬくもりにほっと緩く息を付いて歩く林檎は暫く歩いていると漸くに着く少し開けた足場の所に来ると、きょろきょろと辺りを見回し始めて。
 どうやらそこを拠点に色々と見ていこうというようすで、そうっと壁を確認したり床で少し感触が違うように思えた場所を撫でてみたり。
 ふと見れば、床に降ろして一息ついていた穂垂が鼻をひくひくさせて何やらぐるぐるしているのに、その床へと歩み寄る林檎は、首を傾げながらその床を触るも、何も感じられず、軽く首を傾げてから、思い切って足場の裏をそっと覗き込み。
「‥‥油紙‥‥」
 見れば小さな包みが足場の裏に貼り付けてあり、それを剥がしてみれば、何やら簪のよう。
「‥‥あまり無理は、禁物‥‥ですね‥‥」
 安全策をとった様子の林檎はそこから大丈夫だった場所を確認しつつ順路をゆっくりと辿り小屋の出口へ。
 小屋を出てそれを開けて見れば桜と鼓を象った簪に心中複雑なものが過ぎったか緩く息を付くと、親仁へと断ってから激闘組の小屋へを足を進め。
「桜と菖蒲が思い出になり‥‥これからは、白い朝顔を素直に愛でられる‥‥きっと、そう思います‥‥」
 小さく眼を細め道に見える朝顔やほおずきを眺めて微かに口元に笑みを浮かべる林檎。
 少しずつであっても、きっと桜や菖蒲も同じような思いで眺めることが出来るかも知れませんが、それはきっとその季節が巡ってきて、新しい想い出を手に入れてから。
 小さく笑んで激闘組の小屋へとやってくると、妹の心配や恋人の姿を見に行くのに、親仁に覗くならこの辺りは注意しな、と言われたところを避けて扉の辺りからそうっと覗き込み。
 入口付近をちょうど探っていた木賊に気が付いて見ていれば、罠を確認しては楽しげにその仕掛けや小屋の構造を見ている様子にくすりと小さく笑む林檎、目があって少し驚いたような表情を浮かべるのがまた楽しくもあり。
 後で罠の様子など、色々と聞いてみよう、そう思って幾つか言葉を交わした後再び小屋の奥の方へと戻っていく姿を見送った銀杏は、ふと何やら入口の光の反射で水中に光った物があったように感じられて首を傾げます。
「‥‥これは‥‥宝石、ですか‥‥?」
 入口付近に転がっていたためかあまり気が付かれなかった様子の、水中に沈んだ宝石を取り上げると、林檎はその石の名を思い出して眼を細めるのでした。

●遊動小屋の結果は?
 勝負と言うには比較的のんびりとした時間の後、一行は他の小屋の決着が付くまでを眺めながら、ゆっくりお茶と茶菓子を楽しんでいました。
 幾ら夏とはいえ水に浸かりっぱなしだと冷えるのではとの考えからか、お寺さんで色々と用意してくれていたものがあったそう、休憩をしながらキドナスが切り出すのは互いに何を手に入れたかという物。
 あれやこれや手に入れた物を見せ合ったり話したりしているうちに、親仁へとちょっとした興味から仕入れ先など伝手があるのかと聞けば、色々伝手もあるようですが、上の難易度の物は伝手よりも何よりも、高くて価値が分からない物も結構あったとか。
「ま、服飾品は知人の店で、魚とかは港と川沿いの村と色々な」
「ふむ‥‥その仕入れ先など、色々と興味深いな」
 少なくともまだ平穏な時間帯を、一行は暫くの間ゆっくりと楽しむのでした。