納涼夏祭り準備・街道警備
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■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 20 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月16日〜08月21日
リプレイ公開日:2004年08月25日
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●オープニング
「そろそろ祭りの準備もあちこちで見られるようになりましたなぁ‥‥」
その商人がやってきたのは、風が涼しくなった夕暮れ時でした。きっと商売を終えたその足でやって来たのでしょう。恰幅が良く柔和な顔つきで、何度も手拭いで汗を拭いながら、ぱたぱたと扇子を取り出して扇ぎます。
「毎年、納涼夏祭りが近づいて江戸の付近で祭り用の荷が増えると、それを狙う輩が街道をうろうろしていけません」
少し回りくどくそう言うと、ふと気がついたように苦笑して、ぱちん、と扇子を閉じて額に手を当てます。
「いや、申し訳ないです、どうも商売柄、核心をつくような話し方はあまり慣れておりませんで‥‥お願いというのは、その期間、街道に現れる盗賊が出ないようにとこう、見張っていて頂きたいんです。すでに幾つかの荷が届いておりませんので、追加に注文し直したのですが‥‥」
そう言うと商人は、ほぅと溜息をつくと扇子を袖へとしまい、手拭いで額の汗を拭います。
「ちょっとばかり大変ですし、お代の方は勉強させていただきます。また、贅沢を言ってはあれですが、捕まえていただければ更に色を付けさせていただきましょう」
聞けばこの商人、祭りを大変に楽しみにしていて、だいぶ惜しげもなくお金を使っている様子です。そのためにも、荷が届かないでは、ただでさえ損得抜きでお金を出しているのに、祭り自体にも影響が出てしまうので切実なようです。
「商いは商い、祭りは祭りですからね、こう言うときこそぱっと景気よくやらなきゃいけません。祭りを成功させるためにも、どなたか雇われては頂けないでしょうか?」
●リプレイ本文
●囮の荷車
一行は荷物を途中まで取りに行くと、荷物を運ぶ人足達と合流しました。
3組の積み荷へと案内されると、早速、最後の一組分の荷物を手分けして、前の積み荷に移して、比較的何かあっても良い物を3組目の荷車へと移していきます。
「祭りは多くの人達が楽しみにしてるだけじゃなくって、祖先の霊も楽しんでいくんです。僕達が頑張らないと!!」
佐々宮狛(ea3592)の言葉に巽弥生(ea0028)も頷きます。
「せっかくの祭りをふいには出来んからな」
そう言いながら弥生は積み荷を眺めると、視線の先では大宗院鳴(ea1569)が積み荷を覗き込んでいます。
「中には何が入っているんですか?」
荷の整理をしている人足に声をかける鳴。人足は突然に話しかけられたのに驚いた表情を浮かべながらも、包まれている荷の中身を説明しています。
「あぁ、細工物の材料ですね」
おっとりとした様子で微笑みながら言う鳴の横では、さらしを巻いて褌を締めて人足に扮した巴渓(ea0167)と鷹宮清瀬(ea3834)が、自分たちが警備する真ん中の荷を確認していました。
「興を削ぐ連中もいるものだな‥‥」
「追加報酬はともかく、祭りの成功の為にも、手癖の悪い連中は少しでも減らさなきゃならねェな!」
鷹宮が溜息混じりに言う言葉に、渓が拳を握りしめてきっぱりと言いはなっているのでした。
●街道警備
準備を整えてどこか長閑な様子の街道を進んでいきます。先頭の荷には鳴の他に、本所銕三郎(ea0567)と死先無為(ea5428)が付いて居ます。
赤い手拭いを手にしながらすれ違う旅人や行き違う荷などを油断無く警戒する無為の側を、愛馬サジマに跨りながら胸を張って堂々と進む銕三郎。出来うる限りに警備が硬い様子を見せようとしています。
続く2組目の荷車には、人足に扮した渓と女中に扮した神有鳥春歌(ea1257)、そして耳を澄ませながら荷について歩く鷹宮の姿がありました。
3組目には弥生と狛、佐上瑞紀(ea2001)と馬場奈津(ea3899)が囮となるべく、辺りを伺いつつ街道を進んでいました。
「悪さしてでも楽して儲けようとする‥‥私にはそんな考えは理解出来ないわね」
3組目の荷車の横を警戒しながら、瑞紀はそう呟きます。
江戸と荷を送り出した宿場から、ちょうど中程まで来た辺りでしょうか。その辺りは道が少し細くなり、両脇には鬱蒼と茂る林があります。先頭を行く無為がその林に人の気配を感じなにやら人影が見えるのに、そっと白くあっぱれと書かれた赤い手拭いを地面へと落とします。合図を聞いていた人足や仲間達の間にさっと緊張が走ります。銕三郎は先の道の真ん中に荷車を足止めするための木材が転がしてあるのに気が付きはっとします。
先頭の荷が木材の所まで近づくと、一斉に両脇の林から厳つい男達が現れます。それぞれの荷に3人ずつ。腕の立ちそうなのが1人に、その部下と言った風情の男が2人の組み合わせです。3組目の荷車の後には退路を塞ぐように、更に1人の男が立っていました。
「っ! 分散して襲ってきただと!?」
そう言いながら銕三郎は手綱を操り刀を抜き放ちます。
「サジマっ! 臆するなよ!」
そう愛馬へと声をかけると、人足へと向かう男達へ鳴と無為の援護を受けつつ飛び込む銕三郎。人足を庇うように男の刀を受けるとそれを弾くようにしてサジマと共に向き直ります。互いに隙を窺うように、じりっと睨み合う様な形となりました。
2組目の荷車では腕の立ちそうな男が人足へと向かった瞬間でした。
「うらぁぁぁっ!!」
「なにっ!?」
よりによってその人足に蹴り飛ばされ、何とか受け身を取って転がる男。人足がばっと手拭いを外すと、それは人足へと化けていた渓でした。
「やいやいやい! 祭りを邪魔するふてェ賊ども!! この熊殺し渓様が、まとめて地獄に叩き込んでやるぜ!!」
下っ端が荷に近づこうとするのに、春歌が弓を射かけて牽制をして居るうちに、もう1人に鷹宮が刀で切り伏せて倒します。2台目の形勢は圧倒的に荷車側が優勢に運んでいるようです。
3組目の荷車では有る意味一方的な戦闘が始まっていました。
「ぬ‥‥やはり出たか」
「怪我しても悪さしているあなた達が悪いんだから天罰だと思ってね」
弥生がそう呟くのに、いきなり現れた男達へ瑞紀がソードボンバーを打ち込んでなぎ倒して口を開きます。荷車の背後にいる男には弥生がスマッシュで斬りかかります。
その間に残る男の背後から、奈津が忍び足で回り込んで昏倒させます。
すっかり周りが片づいたのを確認して、男達を奈津が縛り上げながら一組目の荷車へと目を向けます。
腕の立ちそうな男と対峙する銕三郎の援護に、鳴がフェイントアタックを駆使して持ちこたえている間に、自分たちの荷車の方を片付けた渓と鷹宮が駆けつけ、膠着しつつあった戦況が変わりました。
不利を悟った男が林へと退こうとするところに、銕三郎が小柄を投げ、それを払おうとしたところへ、射程まで近づいてきていた春歌が手をつきだし、一瞬のうちに男は氷に包まれてしまいます。
それを見ていた、鳴と切り結んでいた男達は、怯えた様子で慌てて刀を収め、降伏を申し出るのでした。
男達を縛り上げると、弥生は満足げに息を付きました。
「ふう、とりあえずこれで祭りがつつがなく行われると良いな」
しっかりと括られている男達で、酷い怪我をした者を狛はリカバーをかけて癒していきます。
「罪を憎んで人を憎まずです。でも貴方達の祖先が悲しみますよ?御祭りは祖先の霊も楽しみに見に来ているものです。貴方達の祖父母や父上母上も今の姿を見たら悲しみます。まだやり直せるんですから、頑張って下さい」
狛の言葉は、盗賊達にどう聞こえたのでしょうか、それはきっと本人達にしか分からないでしょう。
●明日から祭り
「いやぁ、冒険者というのは、凄いですなぁ、見ていて、こう、どきどきしましたよ。年甲斐もありませんなぁ」
無事に江戸へと、荷と、そして盗賊というお土産まで付けて戻ってきた商人は、上機嫌でそう言います。
「明日からは祭り‥‥いや、ぎりぎりまでかかってしまって申し訳ない。せめて祭りを目一杯楽しめるように、本日はごゆるりと休まれて下さい」
そう言う商人は、嬉しそうに報酬と、追加の報酬を支払います。
「金はいいから祭を楽しめるものにしてくれ。祭で古物を扱う出店でもあれば、俺は金を貰うより嬉しいんだが‥‥」
「左様でございますか‥‥しかしながら‥‥こちらはお受け取り下さい。祭りを楽しむのにも、先立つものは必要でございましょう。色々な屋台が出ますし、きっと、お心にそう店も出ることでしょう」
鷹宮の言葉に、商人はにこにこと笑いながらそう返しました。
「何かと大変でしょうけど、御祭り頑張って下さい」
春歌の言葉に商人は、嬉しそうに笑って頷くのでした。
一日ゆっくりと商人の屋敷でもてなされながら、一行は祭りについて話していました。
春歌が少し恥ずかしそうに微笑みながら、紺地に花が描かれた浴衣のお披露目をしています。
「今年もお父様、お母様と一緒にお祭りに訪れたいですね」
嬉しそうに話す鳴に、狛も楽しそうに頷きます。
「どんな縁日が出てるのかな〜♪」
楽しそうに話ながら、遠くから聞こえてくる祭りの準備の喧噪を、待ち遠しげな様子で聞いているのでした。