《江戸納涼夏祭》達蔵探し
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■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月24日〜08月29日
リプレイ公開日:2004年09月01日
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●オープニング
妙な取り合わせの青年と少年がやってきたのは、祭りが始まる直前で、慌ただしいときでした。
青年はちょいと派手な着流しで、いかにも遊び人といった風体の人間で、名を達蔵と言いました。少年は姿形は武家の家の子供らしく、きちんとした格好をしています。しかし顔はと言うと人懐っこそうな顔をしていて、今も達蔵の手を握って興味深げにギルドないを眺めています。
「人捜し、お願いしたんだけど‥‥達蔵を捜して欲しいんだ」
そう言って、ギルドの人間が怪訝そうな顔をするのに軽く首を振ります。
「あぁ、違うんだ。俺じゃ無くって、侍だか浪人だかの達蔵だ。この子の叔父さんらしくてな。3年前江戸に上がってきたらしい。んで、せっかく江戸に居るんだったらと、祭りに合わせてこの子を江戸へと来させて、叔父さんに預けて、江戸で学問を、と思ったらしいんだが‥‥まぁ、達蔵を辿ってきたら、遊び人でそこそこ有名らしい俺んとこにきちまったってわけ」
そう言って、遊び人の達蔵は肩を竦めつつも、少年の頭を撫でています。
「でさ、せっかく祭りに来たってんだ、餓鬼の浴衣ぐらいの金には困ってねぇし、祭りを満喫させてやりてぇ。んでもって、ついでに叔父さんを見つけて欲しいなぁと。この坊主と一緒に祭りで遊んでくれる人間と人捜しを手伝ってくれる奴募集って感じだな」
そう言って、遊び人の達蔵は少年の頭をワシワシと撫でます。
「期間は5日間。それまでに見つからなかった場合はまた、連れてきてくれた人達と家の方に戻るらしい。でもそれじゃあ折角やって来て、1人で尋ね歩いて他のが無駄になるからな。金なら俺が出す、手ぇ貸してくれないか?」
●リプレイ本文
●初日〜御蔵〜
祭りの初日、混み合っている中を少年の手を引いて、御蔵忠司(ea0901)は屋台を見て回っていました。主に食べ物関係を回っているらしいのですが、武家の子らしくと考えているのか、遠慮してしまっている様子が見えます。
「すごい人ですね‥‥」
人の多さに圧倒された様子で少年が目を瞬かせて言うのに、御蔵は笑いながら頷きます。
「これ、みんな江戸の人達なんですか?」
「特に大きな祭りですから、たくさん人が集まるのですよ。江戸の近くに住む人達も、だいぶいらしてるんじゃないですかね」
はぐれないようにしっかりと御蔵に付いてきながら少年が聞くのに、頷きながらそう答えると、御蔵は蕎麦が出ているところで立ち止まります。
「蕎麦、食べていきましょうか?」
少年は暫く迷う様子を見せると、こっくりと頷きました。
一方、遊び人の達蔵。それを見かけたのは、大宗院透(ea0050)でした。出店の手伝いで、足りなくなったお酒を取りに行くところでした。。
「うう、祭りの間は結構稼ぎ時だが‥‥あの坊主が可哀想だし‥‥」
なにやら葛藤している様子の遊び人・達蔵の姿が目に入ります。暫く賭場らしきところの入口で迷っていましたが、何か吹っ切れた様子で顔を上げます
「って、賭場は逃げねぇ、坊主には期限がある、優先順位は決まり切ってるだろうに、俺って奴は‥‥」
そう言いながら賭場の前を足早に去っていく達蔵を見送って、透も自分の用事へと戻りました。
●2日目〜流花・輝〜
「じゃあ、和君と呼びましょう」
少年の名を聞いて、にっこりと笑いながら南天流香(ea2476)がそう言って少年の頭を撫でます。少年が顔を赤くして流花に手を引かれて歩きだしますと、一歩前に出て歩く南天輝(ea2557)が振り返って少年へと声をかけます。
「よう、江戸はどうだ。人は多くて活気があるだろ。いいか、人が多いと言う事はいい奴も多いが人の弱みに付け入る奴も多いと言う事だ。この先、達蔵と共に暮らし学問を修めるなら覚えておいて損はないぜ。‥‥よかったな、ギルドに連れてきた達蔵はいい奴でな」
言われる言葉に頷いて輝のあとを歩きだす少年と流花。
どこかおずおずとした様子で付いてくる少年に、輝がぽんぽんと頭を撫でて口を開きます。
「悪いな、お前から見ればおっさんが共に祭り見学とは。だがこの日は俺に甘えろ、俺にはこの流香や他にも妹がいるからな。頼られた方が嬉しいんだよ」
「そうですよ、今日は私達に甘えて良いんですよ」
何かを思い出しているかのように微笑むと、流花がそう言います。その言葉に顔を赤くしながらも、どこか嬉しそうに笑って頷く少年。
「あれ欲しいわ、ね」
暫く祭りを楽しんでいると、流花が弓で的を射る遊技へと目を向けてから、輝と少年に微笑みかけます。景品はお面や独楽など、玩具が主のようです。
暫くして、その屋台からお面を二つほど手に入れて出てくる3人の姿がありました。感心したように少年を褒める輝に、お面の一つを少年の頭へと乗っける流花。2人から差しだされた手を見て赤い顔で見るも、嬉しそうに顔を赤らめながらそれぞれの手で握って、2人に挟まれるようにして楽しげに少年は歩きだすのでした。
その頃の遊び人の達蔵は、酒が出る活気の良い店を転々としているのを、鷹宮清瀬(ea3834)に目撃されています。その度に酒の誘惑に負けそうになりながらも、どうやら真面目に達蔵探しを続けている様子でした。
●3日目〜玲・嵐山〜
「とりあえず食え」
氷川玲(ea2988)がそう言って菓子などを差し出している様子を、なんだか妙な笑顔を浮かべながらも、どこか困ったように嵐山虎彦(ea3269)が口を開きます。
「玲、それじゃあ却って俺らが人攫いに見えるぞ」
通りすがりの人達が訝しげな目で見ながら通り過ぎていくのに、ますます困ったように妙な笑顔を浮かべる嵐山。
「堂々としてりゃいいんだよ、念のため、こういうの貰ってきたからな」
そう言いながら、ギルドの、人攫いではない旨の書き付けを見せつつ言う玲。その様子に、いきなりお菓子を差し出されて吃驚したような顔をしていた少年が嬉しそうに笑って飴を受けとって微笑みます。
「あの、怖くないです、大丈夫です」
前の二日間が余程楽しかったのか現状に慣れたのか、少年はそう言うと歩きだす玲に続いて、嵐山と並んで歩きだします。途中で風車などを見つけて買い与える嵐山。だいぶ歩き回って疲れた様子を見せ始める少年に、にっと笑って嵐山が屈んで肩車をします。
「わぁ‥‥」
嵐山の巨体での肩車のため、物凄く高い位置から辺りを見回すと、少年はなんだかきらきらと目を輝かせて祭りの様子を見下ろしていました。
その頃の達蔵。3日目で息切れ気味に会場の端っこでへたり込んでいるのに、通りかかった御蔵がお茶を渡していたとか。
●4日目〜玲・御輿〜
人待ちをしているときでした。演目が終わっておかれたままの和太鼓に玲は近づきながら、ばちで幾つか感覚的に打ち込んでいるのを、少年が眺めています。正規の太鼓の節とも少し違う、玲には慣れ親しんだ戦闘時の感覚で打ち込んでから、どうやら来ない様子に小さく息を付くと汗を拭い、玲は少年に手を差し出します。
「今日は折角御輿が出るんだ、見に行くぞ」
「はい!」
差し出された手を掴んで急いで立ち上がる少年。はぐれないようにと手を握ったまま、玲は御輿が見えやすい所へと、どんどん分け入っていきます。
「‥‥見覚えがある男が担いでいるのは、きっと気のせいだよな」
「‥‥あれ?」
「どうした?」
達蔵を捜しているはずの嵐山が御輿を担ぐのに加わって居るのに玲が呟くと、少年が目を擦るのを見て短く聞く玲に少年は困ったような顔をします。
「いま、向こうのお御輿の方に叔父上がいた気がしたんですけど‥‥すぐに見えなくなっちゃいまして‥‥」
言われたところへと目を向けるも、既に見えなくなったと言う言葉通り、それらしい人間は見あたりませんでした。
その頃の達蔵は、何とはなしに目の前の兄妹のやりとりを眺めています。
「兄上もいい加減に家に戻りませんか?」
流花の言葉に肩を竦める輝を見て小声で溜息混じりに言葉を続けている流花。それを、何となく居合わせてしまったために動けない達蔵。
「兄上、祭り好きや浪人なら心当たりはないんですか?」
そう流花が聞きながら輝と歩き去っていくのを見送って、達蔵は頭を掻きました。
●最終日〜透・鷹宮〜
浴衣姿の透と鷹宮を見て少年はぺこりと頭を下げると、自分より少し年上の少女に見える透に、少しどぎまぎした様子を見せています。
「じゃあ、行くか」
そう言いながら歩きだす鷹宮について透と少年も歩きだします。
「とりあえず‥‥何がしたい? 見たいところとかあるか?」
そう言って鷹宮が聞くのに、少年はどこか困ったように頬を掻きます。とりあえず屋台を見て回ろうと言うことになり、透が人遁の術を使ってお祭りに関係したような法被の姿へと姿を変えるのに、少年は吃驚したような、興味深げな目を向けます。
「すごいですね〜」
そう少年が言うのを聞きながら屋台を巡っていると、飴細工の屋台の前へと通りかかります。
「この”屋台”は、飴”屋たい”」
「‥‥‥‥‥‥‥」
一瞬辺りの空気が止まった気がしますが、鷹宮が何事もなかったように少年の手を引いて歩きだし、少年は起きたことにどうしたらいいか分からないような顔で透と鷹宮を見比べています。
そして、同時刻。
「お侍様で、達蔵様って言うのは確かに‥‥はい、昨日も御輿担いでましたし‥‥」
遊び人の達蔵が、玲、嵐山と聞き込みをしているときに、そう答える町人が居ます。どうやらなかなか立派な屋敷を構えて、人柄的にも好かれている様子で楽しそうに話してくれます。
「ほら、ちょうどあそこに‥‥達蔵の旦那〜」
そう声をかけられた男は、目元がどこか少年と似ている、聞いた特徴と一致する男でした。すぐに町人へと軽く笑って手を上げる侍の達蔵ですが、なにやら視界に入る人間が物騒に見えたのか、軽く腰に手を当てて、刀がないのに気が付いて慌てて走り出します。
「あ、おいっ! 待てっ!」
「なんであの男達は追いかけてくるんだっ!?」
心辺りがないのならば逃げなければ良いのでしょうが、侍の達蔵が慌てた様子で走っていくのに、3人はすぐに追いかけます。途中仲間を見かけると声をかけます。
「達蔵が見つかったっ!」
その声を聞いて、兄妹で見て回っていた流花と輝も走って逃げていく男の姿に気が付きます。御蔵も目の前を逃げようとしている男を捕まえようと手を出しますが、間一髪、避けられてしまいます。
「‥‥あれ? 叔父上だ」
騒ぎに気が付いて顔をそちらへと向けた少年は、走ってくる男に気が付きそう言うと、透がすっと構えます。
追っ手を見ながら逃走していたためか、正面にいた少女らしき人影にスタンアタックを叩き込まれた達蔵は、その場で昏倒しました。
●2人の達蔵
「申し訳ない、厄介事かと思いましてな、刀を、と」
つい先ほど、透に『子供は親といる方がいいです‥‥そうしないと私の様に無愛想になってしまいす‥‥』と言われ、よくよく話を付き合わせたところ、どうやら祭りの混乱と、シフール便を使わなかったため手紙を託された人間が中に包まれた金子をくすねて手紙を捨てたらしいのでした。
「いや、祭りですっかり浮かれていてな。和坊にはしっかり埋め合わせをしないとな。‥‥それにしても皆さん、本当に有り難うございました」
お詫びに、と立派な夕食に招かれ、宴席へと入った頃、庭でぶらぶらする遊び人達蔵が見えると、輝は歩み寄って声をかけます。
「いい奴だな、お前。俺はお前みたいな奴は嫌いじゃないよ。何かあれば俺を呼べ、力貸すぜ」
その言葉に、遊び人の達蔵はにっと笑って頷くのでした。