鷹取大作戦

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月14日〜06月19日

リプレイ公開日:2004年06月22日

●オープニング

 依頼人に話を聞くために冒険者ギルドで暫く待っていると、どこか浮かれたような青年が弾むような足取りでやって来て、ギルドの人間に確認するとすぐにあなた方がたの方へと嬉しそうな様子で歩み寄ってきました。
「この度は依頼を受けていただけるそうで、ありがとうございます。いや〜もう私など楽しみで楽しみで、今日は眠れませんでしたっ」
 どこか興奮気味にそう言うと、軽く咳払いをしてから照れたように頬を掻いて笑い、席について依頼と報酬の確認をし始めました。
 ここから2日ほど行った村の付近の森で、卵を抱えた鷹の巣を村人が見つけたとのこと。もう生まれるとのことで、親鳥と雛を捕獲し、保護・飼育をして鷹狩りができるようにするのが目的とのことです。
「あの辺りは獣が出たりするので、鷹の親子を放っておけば獣に襲われてしまいます。そこで、私たち鷹匠が保護して育てれば鷹もきっと幸せでしょうっ。いえっ、幸せに決まっていますっ!」
 徐々に熱を帯びていた様子に気が付いたのか青年は慌てて謝ると、目的の森の様子を説明し始めました。
「あの辺りですが、野犬や狐がうろうろしているそうです。捕まえるために簡単なノウハウなどは心得ていますが、私だけでは捕まえる事など不可能でしょうから一人で行くわけにも行きません。親鳥が暴れた場合など、とてもとても‥‥なので依頼は私の護衛と、鷹の捕獲を手伝って貰うことになりますね。それと‥‥」
 青年はそこまで言うと、少し考える様子を見せてから小さく溜息をついた。注意事項として付け加えました。
「命あっての物種ですし、最悪の場合には雛鳥だけの確保になっても仕方ありません。どうかよろしくお願いいたします」

●今回の参加者

 ea0452 伊珪 小弥太(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0868 劉 迦(29歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1040 ゲオルギー・アレクセーエフ(39歳・♂・ファイター・人間・ロシア王国)
 ea1170 陸 潤信(34歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1192 クレセント・オーキッド(33歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea2476 南天 流香(32歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3118 ララ・ルー(20歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●幸せ? 不幸せ?
 鷹の巣がある森付近の村に向かう途中の会話です。
「状況が状況だから手は貸すけど。‥‥自然の中で生きているのを、人に保護される事が彼等にとって『幸せ』と言い切るのはどうかと思うわね?」
 自然界への干渉を幸せとすり替えるの思い上がりだと、クレセント・オーキッド(ea1192)は鷹匠の青年に一喝。僧兵の伊珪小弥太(ea0452)も同意を込めて頷きます。
「とー然、親鷹も無事に助けるぜ。だから俺達に任せとけって! けど、鷹が保護されて幸せな筈、とは思うなよ? 鷹は野生の生き物だ、人間に保護されるより自然にいた方が幸せに決まってっだろーが。それが自然の理だぜ?」
 小弥太がそう言って青年を落ち着かせようとしますが、そんな様子を見て青年は肩を竦め首を軽く横に振ると口を開きました。
「私たち鷹匠はそれを生業にしています。鷹が幸せだと信じなければ調教など出来ないのですよ」
 初めての自分の鷹になるのですから浮かれてはいましたがと、青年は少しむっとした様子で言い、後ろからかけられた声に振り返って声の主に近づきました。声の主は南天流香(ea2476)です。
「もしお疲れでしたら言ってください。わたくしの馬にお乗せしますわ」
「ありがとうございます。今のところ大丈夫です、疲れて歩くのが辛くなりましたら乗せていただきますね」
 そう笑って言う青年に陸潤信(ea1170)とゲオルギー・アレクセーエフ(ea1040)が並んで歩き話しかけます。
「自然界が弱肉強食の世界とは言え、自分達の手が届く物は守って上げたいですね」
 陸がそう言って笑いかけるのに、青年はほっとしたように微笑みながら頷きます。
「わたくし白い鷹が欲しいですわ、育てたり相方にするにはどの様にしたらいいのでしょう?」
 流香が青年に聞く様子にゲオルギーや陸、劉迦(ea0868)や天城烈閃(ea0629)も鷹を飼うことに興味があるようで楽しげに青年の話を聞いています。劉は陸に通訳をして貰い楽しそうに聞いています。
 なかなかに話も弾み、青年とだいぶ仲良くなったと判断したゲオルギーは、青年へと口を開きました。
「鷹がどれほど心配でも、戦いになったら俺達の指示に従うように」
「はい、本職にお任せしますね」
 そう頷く青年をララ・ルー(ea3118)はにこにこしながら見ています。
「狐穴にいらずんば狐児を得ずっていうのは真実ですよね。危ない橋を渡らないと、良い物って手に入りませんし」
「狐を捕まえてどーする」
「それを言うなら虎でしょう」
 思わずゲオルギーと青年がつっこみを入れました。

●先発隊と後発隊
 途中烈閃が狩りをしたり青年の用意していた食料で食事を賄いながら、無事に村に辿り着きました。村の外れにある狩人の家へと尋ねていくと、先に連絡を受けていた壮年の男性が待っています。
「良かった、巣の位置が普通より村に近すぎてな。雛が居るから下手に村人が森に入って近づくと怪我をしかねず困っていたのだ。そこで馴染みのあるその青年に連絡をしたのだが‥‥」
 そそっかしくてなと溜息混じりに事情を説明すると、巣への正確な位置と目印を教えてくれました。
「それから、どうやら巣の近くで狐を見かけた者もいるので、気をつけた方が良い。早く行った方が良いかもしれんな」
 狩人の言葉に、一行はその場で先発隊と準備を整えてから向かう後発隊に別れることにしました。
 先発隊は劉、ゲオルギーに陸、クレセントとなり、すぐに出発していきました。他の者は青年と準備です。先に送っておいたらしき親鷹用の箱を受け取ったり荷物からエガケを取り出すなどの準備をしています。
 烈閃が途中の狩りなので矢を使ってしまっていたことを聞くと、狩人は自分の矢を分けてくれました。
「準備ができたんなら早く行こうぜ」
 鷹捕獲用に麻袋を用意してから、小弥太はそう言うと青年に促すように目を向ける。
「では、急いでいきましょう」
 青年が頷くのを見て、烈閃は弓を握り直しながら先に立って歩き出しました。

●親鳥と狐
 先発隊は注意深く辺りを確認しながらも速い足取りで進んでいきます。劉が先頭に立って優良視角と殺気感知を駆使して居るため、思いの外早く先へと進めている部分もあります。
 そろそろ教えられた巣の辺りに着こうという頃でした。劉の目に不意に飛び込んできた光景があります。2匹の狐に襲われ必死で翼を動かしている鷹の姿です。
『あ、あそこですわ〜』
 華国語で言いながらそちらを指さし仲間へと伝えると、それを認識した陸とゲオルギーはそのまま狐へと走り込み、劉はクレセントを庇うようにしながら陸に続いて狐の方へと飛び込んでいきました。
 陸の繰り出した蹴りは今まさに親鷹の喉に食いつかんとした狐を跳ね飛ばし、1匹にもゲオルギーの蹴りが弾き飛ばします。ゲオルギーに蹴られた狐は木の陰に走り込んで隠れ、陸に蹴り飛ばされた1匹はそのまま木に叩き付けられるもすぐに跳ね起きて、じりっと陸へと向き直ります。
「早く回復をっ」
 そう言うゲオルギーの目に、木から落とされた様子の巣が転がっているのが見えました。親鳥はこの巣を庇って、不利である地上で狐と戦っていたようです。
『雛さんは無事ですわ〜〜。ほわほわして小さくて、可愛らしいですわね〜〜』
 駆けつけたクレセントが親鳥を回復している間に、劉は転がる巣を確保しに近づいて、巣の中で寄り添いながら見返す鷹の兄弟雛を確認し、その言葉を陸がゲオルギーとクレセントへ伝えます。
 言葉のままに、本人も思わずほわ〜っとしてしまっていたのですが、それぞれが自己の分担に手一杯で気が付いては居ませんでした。
 翼を怪我して暴れる鷹に、陸がオーラテレパスで話しかけます。このままでは回復しようとしているクレセントも危険なので、落ち着かせられれば良く、最低でも目隠しできるほどにしなければならないからです。
『私たちは敵ではありません、獣からあなたや雛鳥を保護する為にやって来たのです。落ち着いて、今傷を治しますから』
 陸が鷹を見詰めてそう伝えるのに、鷹は動きを止め様子を窺うようにしていますが、クレセントが高速詠唱でリカバーを唱えて回復するのに、痛みが消えたためか信用したように陸の指を甘噛みしました。
 ちなみに、そんなほのぼのした空間の中で、ゲオルギーが必死にナイフで狐を防いでいたりしていたのは秘密です。

●雛を抱いて
 後続隊が巣の近くまでやってきたときのことでした。前方から聞こえてくる物音に、すでに始まっている戦いに気が付くと一行は足を速め、烈閃は現場が見えるとすぐに木へと登り始め、弓を構えて辺りへと警戒します。
「巣も親鳥も無事のようですね」
 青年は嬉しそうにそう言うと、陸の側で大人しくしている鷹をエガケで守ってある手で大きな箱へと移し。餌のウズラを与えると蓋を閉めて巣を大切そうに守っている劉に目を向けました。
『餌をあげてみますか? ウズラですけれど』
「これがあの大きな鷹になるのですか? 信じられません、可愛いですわ〜」
 青年が華国語で劉に聞くのに、横から覗き込んだ流香がそう言うと、やはり欲しいですわ〜と付け足しながら加わり、なんだか3人は雛を囲んでほのぼのとしています。そんな風にほのぼのしていられるのも、クレセントのホーリーフィールドがあるからなのですが。
 そんな空気の横で小弥太はララにグットラックをかけて貰い、虎視眈々とゲオルギーを脇から狙おうとしていた狐に突きを繰り出します。その横で陸が戦線に復帰し狐を改めて蹴り飛ばしに行きます。
 人間の数が増え傷も受けたからでしょう、不利と見た狐は揃って背を向けて森の中へと駆け込んでいったように見えます。実際そう見せかけようとしたようでしたが、戻ろうとしたところを烈閃の矢が足元に突き刺さり、それで完全に怖じ気づいたようで一目散に森の中へと消えていきました。

●帰還
 狩人の家で食事などをごちそうになり一晩お世話になると、一行は帰途につきました。青年は嬉しそうな様子で陸と親鷹の様子を見ています。
 流香の申し出やかいがいしく雛の世話をする劉に少し押されたというのもあるのでしょうか、どちらにしろほんわかと幸せそうな様子で構っています。
鷹を飼うことに興味のある人が多い所為でしょうか、帰りは半ば実践の鷹飼育講座に近い様子を見せており、無事に江戸へと戻ってくることが出来ました。
 江戸に着くと、迎えに来た仲間の鷹匠と二言三言話してからすぐに一行の元に戻ってきて、ゲオルギーと陸に、申し訳なさそうに歩み寄ります。
「済みません。今兄弟子たちに相談したのですが、里の鷹は訓練されているため、お店で買うよりもおまけをしても高価になってしまうそうです。あと、雛なども我々の主に確認を取りませんと‥‥ただ、今暫くはその許可を取りに行けない状態だそうで‥‥本当にご期待に添えず、申し訳ありませんでした。もし飼い方など、そう言った方ででしたらお役に立てると思いますので‥‥」
そう何度も頭を下げてから青年は顔を上げて他の者へと目を向けます。
「オーキッドさん、伊珪さん」
 青年は行きに意見の食い違った2人に歩み寄り、一つ息をついてから頭を下げました。
「幼い頃から親しんできた鷹は、私にとって思い入れの強い、兄弟か何かのような存在でした。今回は狩り以外で里から出たことのない私にとって、戦闘がどういうものか、どんなに狭い視野だったかを知る良い経験となりました。ご気分を害されるようなことを言い申し訳ありませんでした」
 そういうと、改めて一行に向き直って、深々と頭を下げました。
「皆様、本当にありがとうございました」
 そう言って、雛と最後のお別れをしている劉と流香から雛鳥を受け取ります。
「親鳥も助かって良かったですね」
 流香の言葉に青年は、本当に嬉しそうに笑いました。