雨宿り
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■ショートシナリオ担当：想夢公司 対応レベル：1〜3ｌｖ 難易度：普通 成功報酬：0 G 52 C 参加人数：8人 サポート参加人数：-人 冒険期間：06月29日〜07月04日 リプレイ公開日：2004年07月07日 |
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●オープニング
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●今回の参加者
ea0073 無天 焔威（31歳・♂・浪人・人間・ジャパン）ea0561 嵐 真也（32歳・♂・僧兵・人間・ジャパン）
ea0722 東樂坊 春慶（36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン）
ea2319 貴藤 緋狩（29歳・♂・浪人・人間・ジャパン）
ea2454 御堂 鼎（38歳・♀・武道家・人間・ジャパン）
ea3741 レオーネ・アズリアエル（37歳・♀・侍・人間・エジプト）
ea3829 跳 夏岳（33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国）
ea3913 エンジュ・ファレス（20歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国）
●リプレイ本文
●娘「今夏だから‥‥こちらも最善を尽くすけどさ‥‥」
無天焔威（ea0073）が言うのに、娘は頷きました。娘は言われたことを半ば覚悟していたのか、ぎゅっと手を握りしめ、何とか笑みを浮かべようとします。
「御無理を言っているのですから」
そう声を震わせながら言う娘の肩をレオーネ・アズリアエル（ea3741）がそっと抱いて慰めています。犬を貸して欲しいという申し出も了承し、犬と共に父親の財布も預けてくれました。
「肉親への愛情ってのぁ凄いな‥‥」
貴藤緋狩（ea2319）は微笑を浮かべ呟くと、すぐににっと笑って口を開きました。
「よし、俺の分の報酬は要らね。とりあえずその分で食い繋いでおけ。俺らが‥‥父親が帰って来るまでな」
貴藤の言葉に、娘は目一杯に涙を溜めると何も言えず深々と頭を下げました。
●後妻
東樂坊春慶（ea0722）は絶えず降り続ける雨を見上げて小さく息をつきました。
「‥‥梅雨明けはもう少し先みたいだな」
春慶はふと娘の姿を思い出します。義理の娘・仲間の娘を河原の小屋に住まわせるなど、明らかに可笑しい。それを確かめる為に春慶は小間物屋へと足を向け、中へと入っていきました。
春慶を迎える女は年の頃３０辺りの『女狐』という印象がぴったりな、つり目の女です。
「おや？ 店主は娘さんと仕入れにでも行ってるのかい？」
「たまには娘と２人でゆっくりと出かけたいと、前の奥さんのお墓参りに出て居るんですよぉ」
自然と紡がれる言葉に女は笑いながら首を振って愛想良く答えます。もっともらしい言葉でも明らかに事実と違うものです。
「そうか、それは残念だ」
そう言うと、二言三言言葉を交わしてから春慶は店を後にしました。
●旅程
まだ明け方の霧雨の中を二頭の馬が街道を駆け抜けていきます。先行して走る無天の馬にはエンジュ・ファレス（ea3913）が、貴藤の馬には嵐真也（ea0561）がそれぞれ相乗りをしており、犬はエンジュが抱きしめています。
「この雨、晴れると良いがね‥‥」
降り続く雨に嵐が小さく言います。既に一日、夜には馬を引いて進んでいた一行。聞いた先はこの早さで行くと、夕方には辿り着ける筈でした。
「きゃっ‥‥」
突然、それまで大人しくしていた犬が身体を捩り、咄嗟に無天は馬を止めます。犬は何とか落馬を免れたエンジュの腕から必死で出ようとしているようです。
「どうした？」
追いついてきた貴藤が馬を止めると、嵐がそう尋ねながら馬から下りて辺りを見渡します。エンジュは怪訝そうに辺りを見渡しますが、見えるのは畑の中にある百姓家ぐらいです。犬はどうもそちらの方へと行きたがっているようです。
「‥‥行ってみるか？」
本当ならば急ぎたい所、それでも一行は犬の様子に思わず顔を見合わせ。ぽつりと嵐が言うのに頷くと、用心深く百姓家へと足を向けるのでした。
百姓家では、一日が始まったばかりの様でした。誰かが苦しげに呻く声が聞こえてきて『水を汲んで来い』と言う怒鳴り声と共に転がるように小さな男の子が飛び出してきます。
馬を引いて様子を窺っていた一向に気が付くと、男の子は真っ青な顔で声をかける間もなく水桶を抱えたまま飛び込んできます。
「父ちゃ、刀とか持ってるのが来たっ！」
「何っ！？ 早くこの人を抱えて逃げろっ！」
会話が聞こえる中、エンジュの腕から犬が抜け出して家に飛び込むのに、一行は家の中へと犬を追って入っていきました。中には貧しそうな百姓夫婦に、伏せっていた男性を連れて逃げようとしている１４、５の男の子２人。それに小さな子供が何人かみられます。
ぐったりしている男性を見て、酷く青ざめ荒い息をしているものの、嵐はそれが娘から聞いておいた父親の風体と同じ事に気が付き口を開きます。
「待て、俺たちはその人の娘さんに頼まれて探しに来た者だ。その人を狙って来たわけではない」
「生きているじゃねーか‥‥」
嵐やエンジュが事情を理解して貰おうと説明している間に、貴藤がどこか嬉しそうに呟きます。最悪の場合に遺品だけが残されるのを覚悟していただけ、喜ぶ娘の姿が思い浮かばれ自然と口元に笑みを浮かべます。漸く折れた百姓夫婦に父親の様子を見せて貰うと、斬りつけられた傷は深く、熱が出て重傷のようでした。
「リカバーでは無理だわ」
「では俺がメタボリズムをかけよう」
嵐が魔法をかけている間に無天と貴藤が百姓夫婦に話を聞くと、どうやら行きに子供の具合が悪くなり困っていたら宿を求めに立ち寄ったこの父親が薬代を出してくれて恩に感じていた、３日程前に血を流して這って逃げてきて力尽きていたのを子供が見つけて看病していたことなどを話してくれました。
「因果応報‥‥良い事したらちゃあんと戻ってくんだな」
貴藤はそう言うと無天と共に、エンジュと嵐に魔法を使って看病されている父親を眺めていました。
●酒場の侍
ギルドのレオーネが滞在する部屋。みなこれから豪遊している侍が居る酒場へと向かうために集まっています。
「大丈夫。お姉ちゃん達がみんな、ちゃんと終わらせるから。貴女は此処でゆっくり休んで、ね‥‥」
そう言いながらぎゅうっと娘を抱きしめるのに、目を潤ませた娘は何度も礼を言いながら微かに笑みを浮かべます。
娘を残して侍が豪遊しているという酒場へと向かうと、既に中は大変な盛り上がりを見せています。中心にいるのは噂の侍でしょう。景気よく飲み食いをしていて、何人もの女を側に侍らせてご満悦です。
「おうおう、お大名だねぇ。イイ飲みっぷりじゃねぇか。やっぱ酒は愉しく呑まなくちゃいけねぇよな。ま、一杯いっとけ」
酒を手に御堂鼎（ea2454）が歩み寄って酒を注ぐのに、侍がにやにやとしながらそれを杯に受けてぐっと飲み乾し笑います。
「まぁな、あんたもどうだい？ 一緒に呑まねぇか？」
側にある酒瓶を軽く振ってみせる侍に、笑いながら近くの席へと腰を下ろしていると、レオーネが跳夏岳（ea3829）を連れて歩み寄り、侍の前へ来て蠱惑的な微笑みを浮かべます。
「たいそう羽振りが宜しいですわね。私もご一緒しても？ こちらは私が目をかけている華国の踊り子。どちらも退屈はさせませんわよ」
「ほう、異国の遊び女か‥‥面白れぇ、おい、お前らあっち行け、今日はこのねぇさん達と呑むからよ。おっと、あんたも居てくれ、別嬪さんに囲まれて飲む酒は格別だからな」
侍る女達を追い払うと、御堂を引き留めつつ酒を更に注文する侍。上機嫌で酒を奢りながら話す侍を煽てながらのませるレオーネと御堂に、踊りを披露しながら侍の様子を窺っている夏岳。少し離れたところでは春慶が酒場内の様子に来を配り、辺りの話へも注意を払っています。
「何か大きな仕事をしたのかしら？」
「別に、大したことをしちゃいねぇさ。ただでっかい運が舞い込んだだけでよ」
「そいつは羨ましい話だ。あやかりたいねぇ」
にやにやとレオーネの身体を見回しながらそう言う侍に、酒を注ぎながら合いの手をうつ御堂。なかなか口を割りそうもない侍へと兎に角酒を飲ませると、一通り踊った夏岳がすぐ側に腰を下ろしてお茶を受け取って飲みながら会話に混じります。
「そう言えば、どっかのお店のおじさんが殺されちゃって、その犯人ってのが身包み剥いで財布まで取っていったろくでもない山賊まがいの犯人なんだって。人相も醜悪に違いないよ」
暫く酒を飲ませながら談笑しているときに、夏岳が話を振りますと、レオーネが頬に手を当てて溜息をつきます。
「本当に怖いわね。でも、そう言う山賊まがいの人に限って、実は臆病者だったりするのですよね。」
「ちげぇねぇ。どんなやつだか見てみてぇな」
そう３人が笑うのに、ひくっと頬を引きつらせながらも、男は酒を注いでぐっと飲み乾して口を開きました。
「きっとすんげぇ色男だよ。もうそんな話は良いじゃねぇかっ、酒だ酒っ！」
少し苛つくように話を逸らす男の目に手応えを感じたレオーネは、御堂とがんがんに酒を飲ませ、酔い潰れかけた侍の懐から酒代を出すと、肩を貸して『しょうがねぇなぁ』と言いながら酒場の外へ、そして真っ直ぐに人の通らないような裏道へと運び込みました。
春慶は辺りを窺いながら続いて店の外へと出ると、裏の道へと足を向け合流して、ぐでっとした侍を見下ろしています。そして、不穏な光を目に宿したレオーネが、軽く侍の頬をはたき意識を戻させます。
「何しやがんだっ」
そう言う侍の前に立つレオーネの手が一瞬動いたかと思うと、はらりと侍の上着が布きれとなって自然に舞い落ちます。
「小間物屋のご主人の話です。総てを話して貰いましょうか‥‥因みに、怒っている私は残酷ですよ」
咄嗟に刀へと手を伸ばそうとする侍を、夏岳が素早くホールドし、ギリギリと締め上げていきます。
「話して頂けますよね？」
微笑みながら言うレオーネに、絶望的な顔をした侍は観念した様子で手を力無く下ろしました。
●大団円
そこからは思った以上に順調に進みました。春慶が侍の声色でおじ様や後妻と侍の繋がりを確認し、『こいつがきっちり吐いてくれたよ！』と捕まえた侍を証人として引き立てたことにより、小間物屋を乗っ取ったと言うことが明るみに出たからです。
侍が『そのままでも死ぬから放っておいた』と言うのを聞いて、娘に一縷の望みが残されました。
父親を引き取りに言った者達が戻るその中に、馬に乗せられた父親の姿を見つけたとき、娘は嬉しさに泣きじゃくったそうです。
いつの間にか、ずっと続いていた霧雨は止み、明るい日が差し始めています。
「本当に‥‥皆様、本当に有り難うございましたっ！」
そう頭を下げる傍らには父親の姿が。
「本当に、お礼の言葉もございません」
そう頭を下げる父親の横で、娘はまるで明るく輝く太陽のような笑顔を浮かべていたのでした。
