捕り物・引き込み女

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月05日〜01月10日

リプレイ公開日:2005年01月16日

●オープニング

 行く年もあれば来る年もあります。
 当然のことなれど、どうしても新しい年を迎える心が出来ない少年が居ました。
 少年が壮年の男性に付き添われてやって来たのは、年末に集金の金を狙っての急ぎ働きが数件起きていたなど、世間が少し騒がしかったとある、寒い朝のことでした。
「あの女を雇ってたんです、ええ、確かにあの女は御店が襲われた数日前に雇われて‥‥いつの間にか居なくなってたのに、信じて貰えないんですっ」
 泣きながら言う少年は、年の頃12、3で、やはり急ぎ働きの所為で皆殺されてしまったと言われている御店の丁稚をしていました。
 少年は、斬り殺されたその御店の主人が上に倒れ込んできたときに、主の身体と棚の陰になったため、必死で息を押し殺して生き延びることが出来たと付き添う壮年の男性が説明します。
「あんな事があって、みんな死んだと思ってたのに、あの女、生きてて、何食わぬ顔で、茶葉屋の御店から出て来るのを見かけて‥‥そこで働いて居るみたいで‥‥」
 そう言うと、少年が悔しそうに目を落として唇を噛みます。
「この子はこう言うのだが、御店にはその女を雇ったという証拠が残って居らぬのだ。嘘や間違いを申しては居らぬと思うが‥‥」
 そう言って壮年の男は眉を寄せて少年へと目を向けると、再び顔を上げて口を開きます。
「もし何も掴めずにその女を捕らえれば、逆にこの子が責めを負うことになるやも知れぬ。そのためその女を調べて貰おうと思いこちらへ参った」
 そう言うと男性は少年の頭をくしゃりと撫でてからギルドの人間に向き直ると頭を下げるのでした。
「問題がなければ良し‥‥だが‥‥出来ればその女の尻尾を捕まえて、これ以上犠牲が出ないようにしたい。女が明らかに押し込みの一味に荷担していると分かれば捕らえて貰えぬだろうか」

●今回の参加者

 ea3365 久世 慎之介(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5694 高村 綺羅(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7901 氷雨 雹刃(41歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8470 久凪 薙耶(26歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8802 パウル・ウォグリウス(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ea8846 ルゥナー・ニエーバ(26歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9848 紀勢 鳳(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0160 黒畑 丈治(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●内偵
 氷雨雹刃(ea7901)が差し出した書面を読んで、茶葉屋の主の顔は見る見る血の気が引いていきました。
 書面はギルドの紹介状で『店が引き込み強盗に狙われている。目付けの者を遣すので彼を下働きとして雇って頂きたい。又、数日後一味が犯行に及ぶと思われますが、その晩は護衛を数人遣しますので御安心を。尚、他言は無用に願います』と言う内容。
「これはまた‥‥そう言うことでしたら、是非是非、宜しくお願い致します」
 そう言って頭を下げる主は、使用人として氷雨が使用人の振りで入り込むことを了承します。
「そうだな‥‥仮に弥平とでも呼んでくれ」
「分かりました。あぁ、一応表だっては使用人扱いですので、同じく最近雇ったばかりのおきみさんと一緒に動くことが多いと思いますけど‥‥」
 そう言いながら軽く御店の説明と店内の配置を氷雨に説明してから、主はきみと引き合わせます。
 きみはまさしく、丁稚の少年が言った女性と特徴が一致します。少年曰く、前の店ではきよと名乗っていたそうで氷雨は一瞬きみが氷雨を探るような目つきで見たのを見逃しませんでした。
 同じ頃、久世慎之介(ea3365)は役所で見せて貰った調書から、少年が働いていた店に仕事柄頻繁に出入りしていた乾物屋の主に目星を付けて訪ねていました。事件の前日にもやはり訪ねて行っていたからです。
「そ、そんな‥‥わ、私までとばっちりを受けたら‥‥」
「そこをおして頼む。このままではまた同じような事件が起きてしまう」
「け、けど‥‥」
 先ほどからこの様なやり取りを繰り返した後、久世は主に金を握らせると、主は溜息をついて金を返します。
「そ、そこまで言うなら証言させて頂きますが‥‥あぁ、何事も起きなければいいのですが‥‥」
 久世も他の者も、この主の言葉が現実になろうとは、この時点では誰も思っていなかったのでした。
 茶葉屋で氷雨がきみと仕事をしていると、きみは時折主人の部屋の掃除の時など、妙に手間取って遅くなることが多く、氷雨が気配を消して様子を窺うと、書面などを収めている箱を漁って居るのが見えます。
 目的の物が見つかったのか、素早く抜き取るとそれを懐へとしまい込み、その場を離れるのを目にします。
「あぁ、ここにいたのか」
「あら弥平さん、ちょっとお掃除に手間取ったのよ」
 ごくさりげなく氷雨が声をかけると、きみも直ぐに引きつった顔を笑みに変えて氷雨に笑いかけます。好意的に接して見せた分、きみも氷雨を扱いやすいと踏んだのでしょう、その間に氷雨に懐に収めた書を抜かれていたことに気が付きもせずに部屋を連れ立って出たのでした。

●浪人
「悪事が万事上手く行く訳は無い‥‥それが夜の慣わしだから‥‥」
 そう小さく呟いて少年を励ましたことなどを思い出しながら、高村綺羅(ea5694)はじっと茶屋を見張っていました。同じように黒畑丈治(eb0160)も参拝道で手頃な場所を見つけると腰を下ろして男が現れるのをじっと待ちます。
 浪人を待つと言えば、紀勢鳳(ea9848)と久凪薙耶(ea8470)もです。紀勢は茶店の少し奥まった席に陣取って茶を啜りながらゆっくりと待ち構え、薙耶は茶店に雇われて入り込んだようです。
「正月の飾りや料理を買うお金が有りません。どうか雇っては頂けませんでしょうか。お給金は働きを見た上での店主様の御判断にお任せいたします」
 こう言われては元々人の良い主人では断ることも出来ず、とりあえずこの時期は手が足りないと言いながら雇ってくれたようです。
「皆さん忙しそうですねえ‥‥あ、団子と抹茶追加お願いしますね」
 他の者がしっかりと体勢を作って居待ち構えている中で、紀勢は自分の呼吸でのんびりと気長に待つことにした様子でした。
 茶葉屋の休憩時間を使って出かけるきみが茶葉屋にやってくると、程なくして待ち合わせていたのでしょう、目つきの鋭い浪人者がふらりとやってきて、きみと背中合わせになるように腰を下ろして茶を注文します。
 それまで潜んでいた綺羅もきみの後から客を装って入ると、何とか会話を聞き取ろうと耳を澄ませました。
「新しく使用人が一人増えたけど、あたしが上手くあしらっているから問題はないわ。‥‥で、お頭はなんて?」
「明日に決まったと。手筈通り‥‥」
「ええ、分かったわ」
 そう言葉を交わすと時間を確認し有ってから立ち上がり急ぎ足で店へと戻るきみ。暫くして茶を飲み終えた浪人も立ち上がって移動します。
 浪人が店を出るのを見計らって料金を払うと、紀勢は目深に笠を被ってゆっくりと後を付けていき、物陰からも黒畑が加わり浪人の後を追います。
 途中、浪人が町人風の男と接触し別れるのを見て、紀勢は浪人を、黒畑は町人を追いこの場を後にするのでした。
 紀勢が行き着いた先は武家屋敷の通りでした。とは言えその辺りにいるのは貧乏武家が関の山。例に漏れず、浪人が入っていったのも何某とか言う武家の屋敷で、あまり風体の宜しくない者達が頻りに出入りするのが窺って居る紀勢の目にも入ります。
 じいっと耐えること数刻。建物の陰から窺った限り、5・6人の男達が出入りしている様子を突き止めると、紀勢はそっとその場を後にしました。
 綺羅が決行日を客を装って氷雨に伝えると、それぞれの店に入り込んでいる者を除いて分かったことを合わせて行きます。
「あの町人は茶葉屋の様子を外から何度も窺っていたが、最後は郊外のうらびれた宿に戻って行きました。店の者の対応から、長逗留していた様子です」
「あの武家屋敷はしょっちゅう入れ替わり立ち替わり破落戸や食い詰め浪人が集まって居るところらしいです。どうやらあそこが拠点というのではなく、浪人達をあそこで雇ったのかも知れないですね」
 黒畑の言葉に頷き紀勢が自身の調べた事も報告します。
 決行は明日の夜。その前に一行は準備を整えておくのでした。

●待ち伏せと捕らえた女
 当日の夜‥‥暗い影が茶葉屋の前で止まり、裏と表に二手に分かれました。人影は6つで3人ずつ、それぞれ覆面で顔を隠しています。
 裏口の戸が開けられており、3人が入ったその時でした。
「いらっしゃいませ、お客様。残念ながら、本日の営業時間は終了致しております」
 庭へと入ってきた3人へとそう言葉を投げかけるのは薙耶。その傍らにはパウル・ウォグリウス(ea8802)と、チャッと刀を返す久世の姿が。
「されど此処でお客様をお返しするのは失礼かと。代わりに我々が御持て成しさせて頂きます。存分にご堪能下さいませ」
「畜生っ!」
 逃れようと身を翻す男達ですが、既に裏口を塞ぐように紀勢が立ちはだかり、一人は何とかかわして道へと出たものの、残り2人は舌打ちをして刀を構えました。
「くっ!」
 血路を開こうと斬りかかる浪人の一撃を、パウルが十手で受け止めます。それを返してスタンアタックを叩き込むパウル。浪人が昏倒するのをみたもう一人の男が紀勢に突進し、それを避けきれずに一緒になって転がる紀勢と男。ですが、直ぐに紀勢から離れて逃れようとする男を、紀勢の手は離さず、直ぐに久世と薙耶の手によって取り押さえられるのでした。
 紀勢をかわして何とか外に逃れた男のほうはといいますと、屋敷を出た途端に身体が固まり動けなくなります。
「私は無益な殺生は好まない。だが、無益な殺生をする者には容赦しない!」
 キッと厳しい顔で男を睨み付ける黒畑。直ぐに仲間達が駆けつけてこの男も捕らえることが出来ました。
 綺羅は同じ頃、表の方を張っていました。
 裏で騒ぎが起きる直前、綺羅は店の表で人の気配がするのに気が付き、そっと家を抜けて外へと出て様子を窺い、そこに3人の男が居ることに気が付きます。
 不意に裏口の方が騒がしくなり、男達が弾かれたように逃げ出すのに、咄嗟に疾風の術で一番最後を逃げる男へと追いついてスタンアタックを叩き込み、そこに小さくうめいて男は崩れ落ちましたが、如何せん一人では残り2人を捕まえる事は出来ず、この捕らえた男を押さえて仲間が合流してくるのを待ちました。
「起きろ‥‥」
 声と共に冷たい水を浴びせられたきみが目を覚ましたのは、氷雨の棲み家です。
 その日の夕刻、氷雨はきみが仕事が上がってから、こっそりと身を隠す場所を探しているときに手刀を入れて気を失わせ、密かに運び出していました。
 きみを運び込んでから逆さに吊し、絶え間なく冷水をかけると、きみはくっとその冷たさに顔を歪ませながらも唇を噛んで耐えます。
「お前の仲間は今頃痛い目に遭ってるだろうが‥‥お前だけ何も無しというのは面白くない」
「ふん‥‥あんたを甘く見ちまったようだね‥‥」
 そう低く笑うきみに氷雨は軽く眉を上げます。
 ただの引き込みの女にしては肝の据わった様子できみは言うと、それから暫く氷雨の水攻めに耐え、気を失ったのでした。

●いつか必ず復讐を‥‥
 奉行所へと突き出された男4人は厳しい取り調べの末、あまり詳しいことは聞かず、金になると持ちかけられて犯行に加わっていたことなどを述べます。
 そこへ氷雨が連れてきたきみを見せると、男達は口をつぐみ、目の前できみを自由にしたその時でした。
 どん、と鈍い音と共に手近の役人にきみがぶつかったかと思うと、脇差しを掴んでさっと飛び退き、その脇差しを握るとにぃっと笑って目の前で喉を突いて自ら果てました。
 あまりの光景に呆然とする男達。彼らは逃げた者達がどこにいくかはきみしか知らないと言いますが、後の祭りでした。
 乾物屋の主も丁稚の少年が勤めていた御店でも見かけていたと言う証言から少年の望み通りきみは捕らえられましたが、結局、彼らの首領は捕らえることが出来なかったのでした。
 江戸郊外。
「いつか必ず、この恨み‥‥」
 薄暗い小屋で壮年の男が小さく呟きました。
 数日後、乾物屋の主が遺体で発見されたそうです‥‥。