仏師たちの憂鬱
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■ショートシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 56 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月03日〜07月18日
リプレイ公開日:2004年07月12日
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●オープニング
『来たれ! 肉体に自信のある冒険者よ! 来たれ! 腕に覚えのある護衛達よ!』
そんな、いかにも怪しい人、寄ってらっしゃい、と言った依頼を出したのは、今売り出し中の仏師の1人でした。
『菩薩から明王まで、安心確実、最高品質』
何処の便利屋か疑ってしまうような売り文句の、なかなかに陽気な人との噂がありますが、今まで内なる仏を掘り出すと言うことを言っていた為、こういう募集をするのは初めてのようです。
今回はなぜか雑念が入り、どうしても掘り出せないまま期日が迫ってきてしまっているそうで、顔と特徴の割には困っているみたいです。
微妙に何か頼むところを間違えているような、場違いな勢いに、依頼を聞いた幾人かは、関わり合いにならないように離れていきます。
「蔵王権現という神を彫り出すのに、力強い躍動感あふれる肉体を持つ冒険者を熱烈歓迎中である! 猛々しく神々しい、そんな仏像に自身の姿を投影させたい者、是非応募してくれたまえ!」
話を聞こうと依頼人に会ってみると、そんな風に熱く語る、ほどよい体格の若い男性と引き合わされました。依頼人の仏師はどこか楽しそうに言葉を続けます。
「ちなみに、今回私が受けたのは支援者が互いにお抱えの仏師に同じ物を作らせて競わせるために頼まれたもの。日頃の感謝も込めて是非とも勝ちたいのだが、相手も同じ模様。締め切りも迫る中、なんだか変な3人組に襲われてな。通りすがりの冒険者に助けられて事なきを得たが、いつも都合良く助けてもらえるともおもわんので、一緒に護衛も雇いたい。」
元々、対戦相手にはあまり良い噂はありません。必ず相手になった仏師は怪我をしたり、出来た仏が紛失したりと言ったことが絶えないそうです。
なので、この3人組はもしかしたらし向けられた者かもと思っているらしく、基本的には屋敷に籠もって居るので、押し込みがあったら返り討ちにして欲しい、とのことらしいです。
依頼人を襲った聞いたところ、覆面をした3人組で、がたいの良い刀を持った男と明らかに僧兵の格好をした男。それに同じく顔を隠し、少しばかり短めの刀を持った細身の女性だったそうです。
そう言ってから何かに気が付いたのか、こほんと一つ咳払いをすると、仏師は続けました。
「ちなみに、肉体披露をしてくれるのは1人か2人でお願いする。それぐらいならばいいが、あまりに多いとかえって見本にしにくい。あと、希望としては、戦っているときの肉体の動きも見ておきたい。‥‥戦いを覗くの位は許してもらえない?」
どうなる事やら頭の痛い依頼。
仏師は期待に満ちたまなざしで見詰めていました。
●リプレイ本文
●筋肉披露合戦開催っ!
その時、仏師の詰めている屋敷、その中庭で、ある種異様な光景が繰り広げられました。衝撃の大会‥‥モデルの座をかけた『筋肉披露合戦』が開催されたのです。
「見事『もでる』の座を射止め、後の世にテメェの筋肉美を遺すのは誰だっ!? 第一回・チキチキ筋肉披露合戦ん〜〜!!」
実況は参加者の平島仁風(ea0984)、解説は仏師でお送り致しております。
1番手は実況の平島です。上半身を剥き出しにして見せる身体は、良く鍛えられ見惚れします。
「なるほど、韋駄天を彫るのに良さそうだ」
さて、2番手には優勝候補の1人、狩野響(ea1290)! ジャイアントのその巨体に鍛え抜かれたその筋肉、その脚など特に見事なものです。
「‥‥」
仏師は長考状態なので次の方を入場させましょう。3番手、こちらも優勝候補に挙げられる嵐山虎彦(ea3269)! ジャイアントの巨体に盛り上がった筋肉、まさしく芸術でしょう!
「仁王像が作れる。2番手と3番手で狙ったようにジャイアントの対になって良い感じだ」
作るのは蔵王権現でしょう。仏師のうっとりしたような声に目的を忘れるなと問いつめたい気分ですが、気を取り直し4番手の虎玲於奈(ea1874)が入場。観客席にいる夜神十夜(ea2160)など、胸の辺りに目が釘付けになっています。
『ほら、愛染も脱いで〜』
玲於奈が観覧席にいた愛染鼎(ea3082)を引っ張り出し、脱がしにかかっております。
「くぅっ観自在を彫りたくなってくる!」
当初の目的から著しく意識の離れた仏師。本当に蔵王権現は出来上がるのでしょうか。仏師の反応に苦笑する住吉香利(ea3650)。仏師の世話役や屋敷の人間も集まって、異常に盛り上がる会を、実は皆楽しんでいるようでした。
結局、1人にじっとして貰うわけにもと、主にジャイアントの2人を見比べて彫り進め、部分的に他の方に動きを頼んで作り上げるという、はっきりと結果のでないものとなりました。
●創作意欲はどう沸くの?
実際に彫る木材を見せられたのは筋肉披露合戦を済ませ食事などを取って歓談した後のことでした。
広々とした空間に置いて有る仏師よりは一回り程小さなその固まりに、仏師はなにやら説明をしながら筆で線や印を付けていきます。これから彫り出された仏像は、思った以上に小さくなるようで、巨大な物を想像していただけに、少し拍子抜けした者が居たかも知れません。
「実は幾つか作ったのだが、上手く行かなくてな」
そう言って部屋の隅にある物それらの覆いを取って見せてくれます。どれも良く出来ているのですが、気に入らなかったのか叩き壊したように欠けています。
「作業以外のときは、この辺りのと本物をすり替えておいた方が良いようだな」
住吉の言葉に仏師は頷きます。
「仏以外はさっぱり分からんから、そこら辺は皆さんにお任せしよう」
「今のうちに迎え撃てる体勢を取っておくべきだな。と言うことで‥‥」
菊川響(ea0639)がひそひそと仏師に何か言い、すぐに仏師もにんまりと笑って頷きます。
「うむ、面白い。木桶や油はすぐに用意させよう。仕掛けるならあの辺りだな」
「普段休む部屋は?」
「ここだ。ここで作業をしてここで休むようにしている。それに、突然これだ、と飛び起きて作業をすることも多々あるからな」
平島の言葉に仏師が答えると、改めて昼・夜など、警備する場所を確認し始めます。
「屋根には俺が出来るだけ待機して見ることにしよう」
「相手の喰い付きが良いように、準備が整ったら私は噂を流しておびき寄せよう」
夜神が言うのに住吉も続けます。
迎撃体制は整いましたが、肝心の蔵王権現の制作は微妙に滞っているようです。木材の周りを冬眠中の熊のようにぐるぐると回る仏師。そんな様子の仏師に住吉は水を運んだりと世話を焼きます。更にその横では、愛染と玲於奈がなにやら良い雰囲気でいちゃついています。言葉が通じない様子に嬉々として通訳をしようとして、仏師は弟子から怒られたりしていたりもします。
『師匠の作品は完成間近である』
仏師は今も、そう住吉が流した噂に早めに相手が食いついてくると良いと言い、中庭に面した廊下では嵐山が「暑苦しい」と夜神に言われながら背にその夜神を乗っけて腕立てをしています。その様子を、仏師はあちこちから眺めては、仏像の木材へ何事か書き込んだり、のみを入れたりしては手を止めてを繰り返していました。
「彫りたいという欲求だけは沸いて居るのだが、創作意欲が足りんのでな」
そう溜息をつき狩野の腕を取って曲げたり伸ばしたりしながら呟くのは、何度目かの休憩中です。
「むしろ蔵王権現以外ならば、いま幾らでも彫れそうだがな」
「意味ねぇだろ、それじゃ」
ぼそりと、夜神が思わず呟きました。
●襲撃! 笑撃!?
噂を流してすぐのことでした。
囮に並べてある仏像の中に、荒く型を削りだした制作中の蔵王権現が置かれていますが、仏師の手は止まり難しそうな顔をしてなにやら考えている様子です。
時は昼も過ぎ、世間と切り離された仏師の居る屋敷の辺りは、人っ子1人通らなくなります。そんな中、弟子に紛れて辺りの様子を窺っていた住吉は、ふと屋敷の様子を窺っている妙な3人組に気が付きます。例の3人組と確信が持てると、出来る限り自然に屋敷内へと戻り、各々へとそっと伝えます。手はず通りに全員が配置についたときでした。
『からんころん♪』
菊川が仕掛けた鳴子が楽しそうに鳴るのに、緊張が走ります。屋根の上で見ていた夜神は裏へと回り込もうとしている女の姿に気が付きました。
「乳発見‥‥もとい、細身の女発見っ!」
屋根を降りると、全力で女の居る方へと向かいます。
一方では余程自信があるのか、中庭を駆け抜けて仏師の部屋へと向かうガタイの良い男に、それを慌てて追うような僧兵の姿が。仏師を守る面々は作業部屋で思い思いの配置で待機しています。と気持ちのいい音を立てて開けられる部屋の扉と、ばしゃっと言う音。入口に立つ男の身体には、青い染料が混ぜられた油が頭から被せられています。
「‥‥畜生、なにしやがるンだっ!!」
「‥‥飛んで火に入る夏の虫。これでテメェらにはどれが本物の像か分かるめぇ!!」
「馬鹿にしてんのかっ!? ぶっ殺ーすっ!!」
男に仏像のポーズを決めたまま口だけ動かして言った平島が、文字通り火に油を注いだようです。物凄い形相で部屋に飛び込もうとする男に、追いついた僧兵が慌てて止めようと捕まえます。
「殺しに来たんじゃないし、一旦退却ですってばっ!」
僧兵を引きずったまま刀を振り上げ迫る男。咄嗟に斬りつけられる刀を平島が避けると、それを見て玲於奈が爆笑している仏師を背負って、引きつけるように目の前を走り回ります。仏師に気が付いた男は全ての怒りを仏師にぶつけようと追っ掛け回しているうちに、僧兵の男を振り落として部屋中をぐるぐると走り回っています。そんな男の前に飛び出してきた狩野が立ちはだかり、愛染も動きやすいように着物を脱ぎ捨て対峙します。
その隙に住吉は、仏師と、共にいた玲於奈をとばっちりの来ない場所へと移動させ、仏師の身を守りつつ戦況を見据えていました。
激しくぶつかり合う刀と刀。狩野と打ち合いながら、愛染の刀にも押されていく男。それが更に男を逆上させているようでした。その上平島の加勢で、徐々に男はさがり始めます。
「うう、駄目だ、怒りで我を忘れてる‥‥だから嫌だったんだ、この仕事」
振り落とされた僧兵は身体を起こしかけ、はっとしたように身体を捻って間一髪で繰り出された攻撃を避け、布の被った仏像の側を離れると六角棒を腰を落として構えます。
はらりと落ちた布の先には、同じ得物を持った嵐山がにやりと笑って立っています。
「てめえにゃ、この嵐山虎彦が引導をくれてやるぜ!」
諸肌を脱いで発せられる声に、鋭い表情で隙を窺う僧兵。先に動いたのは僧兵でした。素早く繰り出される六角棒を受け流す嵐山。速さのある攻撃を力で弾き返されるのに、僧兵は舌打ちをします。何合か打ち合いながら、一瞬の隙に叩き込んだ嵐山の一撃は、相手の僧兵の六角棒を砕き、そのまま壁へと激しく叩き付けることとなりました。
嵐山が見ると、刀の男の方も3人の手によって漸く取り押さえられて居るところでした。
そして、少し時間の戻った裏口。
中から怒号が聞こえてくる中、慎重に足を進める女の前に立ちはだかる人間が居ました。夜神です。夜神の立つ場所からは、仏師になりすました菊川と、おびき寄せる為の偽の仏像が見えます。
「姓は夜神、名は十夜、ジャパンの乳好き浪人とは俺の事よっ!」
自慢にならない言葉を発しながら斬りつける夜神。女は刀を受け流しながらも菊川の方へと隙を窺い、菊川は偽の仏像を抱えてすたこらと中庭の方へ駆け出します。
「邪魔な男ね」
一瞬気が削がれた瞬間でした。むにゅっという音と共に、夜神の手がしっかりと女の胸を握ってにやりとしています。
「っ!!!」
頭に血が上ったかのように切りつける女の攻撃をひょいとかわすと、夜神はスタンアタックを叩き込み、崩れ落ちた女を抱え上げながら言いました。
「作戦勝ちってやつ?」
●芸術は難しい
その日から、仏師の鬼気迫る様子は恐ろしい物でした。寝食を忘れモデルが動こうものならばノミが飛んで来かねない勢い、信じられない速さで蔵王権現像は形作られていきます。
捕まえた3人組は哀れにも着物を剥かれ、平島の擽り地獄で悶絶した挙げ句、対戦相手の仏師の名を挙げ、放されたあと何処へか消えていったそうです。
出来上がった仏像は内輪でささやかなお祝いをしながらお披露目され、その迫力は凄まじい物だったそうです。
自分の像が出来上がると思っていた娘さんが、とてもがっかりしたのは秘密です。