捕り物・乾物屋殺し

■ショートシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 44 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:03月10日〜03月17日

リプレイ公開日:2005年03月20日

●オープニング

 難しい顔をした壮年の男性がやって来たのは、とある寒い寒い昼下がりでした。
「ちと頼みたいことがある‥‥人を何人か‥‥何人か、捜査の手伝いをして貰いたいのだ」
 そう言う男性の表情は暗く沈んでいます。
「もう二月も経つが、いつまで経っても解決しない殺しが一件‥‥その時殺された乾物屋の主人は、とある事件にて奉行所で盗賊について証言をした者なのだ‥‥」
 なんでも冒険者に依頼を頼んで、事件解決のために雇った冒険者が乾物屋の主人に証言をして貰ったらしいのですが、その時に賊の頭を取り逃したらしく、証言したその主人は逆恨みを受けたらしいのです。
「当然、その盗賊の手配もしているにはいるのだが‥‥ああいう奴はじっと潜伏してしまうとまず見つからん。それに直接殺しに手を下したわけでもない」
 そう言うと男性は溜息をつきます。
「まずは実際に主人を殺したと思われる人間を捕らえねばならないのだが‥‥それでなくとも事件は多く、二月前の事件は風化しかかっている。それでなくとも、年が明けてからあまり経たないうちに起こった事件だ、いつまでもそれにかまけていられないらしく、近頃は個人的に調べを続けているのだが‥‥一人では出来ることなどたかが知れている」
 そう言って眉を寄せる男性。他の者がどれだけ忙しいのか、自分自身でよく分かっている為に一人で休む間を惜しんで調べているらしく、男性の目元などからどれほど疲労しているかが読み取れます。
「ちなみに、主人は袈裟懸けにばっさりやられていた。相当腕の立つ人間がやらかしたことらしい」
 金を積まれてやったのかも知れないし、もしかしたら浪人崩れで一味に加わっているものなのかも知れないと言うと、男性は残された妻子や使用人達が、主人が死んでから必死の思いで店を守っている姿を見るのが何より辛いと漏らします。
「事件の証言をしたために逆恨みを受けたのだと、それを考えてしまうと‥‥頼む、誰か、誰か、乾物屋の主人殺しの犯人、捕まえるために手を貸してもらえんだろうかっ!!」
 男性は手をついて頭を擦り付けんばかりに下げて頼むのでした。

●今回の参加者

 ea2756 李 雷龍(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea7901 氷雨 雹刃(41歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8837 レナード・グレグスン(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea8917 火乃瀬 紅葉(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0160 黒畑 丈治(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb1161 クラウディア・ブレスコット(29歳・♀・バード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb1277 日比岐 鼓太郎(44歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

大隈 えれーな(ea2929)/ イワーノ・ホルメル(ea8903

●リプレイ本文

●壮年男性の情報
「乾物屋さんを殺した犯人を捕まえればいいわけだね。‥‥って言われてもなぁ。疑うわけじゃないけど、情報が一人の人の口から出てる以上、事実確認は必要だと思うんだ」
「うむ、当然のことだな‥‥わしは津村武兵衛。今まで話した事柄は、奉行所で調べて分かったことなのだ。だが、一度起きてから暫くなりを潜められれば、尻尾を掴むこともできず‥‥」
 レナード・グレグスン(ea8837)の言葉に与力・津村武兵衛はそう言ってから溜息をつきます。江戸程の規模になれば事件も多発し、今居る人数ではとても全てに対処しきれるわけではありません。
 だからこそ、事件が発覚した場合に連座で厳しく取り締まられると言うことで、抑止を狙っている訳なのですが。
「盗賊達や最近の食い詰め浪人者にはあまり関わりがないからな‥‥浪人達は大家達が連座で罰を受けることを知っていて、それでも気にしないで好き勝手働く、その辺りが‥‥いや、これは愚痴だな」
 途中まで言ってから愚痴めいているの気が付いたのか、武兵衛は苦笑すると老爺の店で武家女がうろつくようになったところを実際に見ているのだそうですが、どうしても一人では手が回らない上、どうやら顔を知られているようでつける事も適わなかったとか。
「牢にいたごろつきに会わせて頂いたけれど‥‥ごろつき達はあの盗賊の頭目に始めてあったそうね。全ての繋ぎはきみって言う、件の事件で自害した人がしていたそうで‥‥」
 クラウディア・ブレスコット(eb1161)は溜息混じりにそう言います。分かった事と言えば、ごろつきを雇っていた男は必ず繋ぎに女を使う事、また、壮年の小柄な男性である事ぐらいです。
「♪ 細かいことは、苦手だけれどじ・じ・じ・じ・地道に調べて、憂いなし♪」
 そう言いながら物置小屋を調べていたのは日比岐鼓太郎(eb1277)。鼓太郎が調べていると言うよりは、同行したイワーノ・ホルメルがクレバスセンサーのスクロールを使って調べているのですが。
 床の一カ所にある窪みを見つけて伝えたイワーノに、鼓太郎はその窪みを開ける棒を見つけると板を引き上げ、下へと続く階段を見つけて降りて行くのでした。
「という事で、あの物置小屋には最低ひと月は前に使ったんじゃないかなーっていう徳利と皿、それに料理の食べかすが残ってたよ」
 戻ってきて一行にそう言うと、鼓太郎続いて大隈えれーなから聞いた、武家女と特徴の当てはまる被害の家や被害者関係者は見あたらなかった事を一緒に報告するのでした。

●老爺の店
 老爺の店はぽつんと寂しい通りに建っていました。
 店も、それほど繁盛している様子はありませんが、絶え間なくぽつりぽつりと客が訪れているようで、そのたびに小柄な老爺がひよこひょこと歩き回って茶や菓子を運び、それ以外はぼうっとのんびりと茶を飲んでいる様子です。
 ふと、老爺が何か怪訝そうな表情できょろきょろと店の中を見回していますが、レナードとクラウディアが店へとやって来るのに直ぐに愛想の良い顔をして出迎えに行きました。
 老爺が頻りに気にしていた辺りには、氷雨雹刃(ea7901)が潜み老爺を伺っていたのですが、普通のものならばそう気が付くものでも気配を感じるものでもないのに、氷雨は老爺への疑いを深めたようです。同じく店の外で張っていた李雷龍(ea2756)も、何度か見つかったか、と思うような状況に当たっている事を聞いては居たのですが、自身で体験して確信を持ったようです。
「事件の解決にどうしても必要なの」
 そう言ってクラウディアは老爺に出入りをしている店の者などの事を聞き、あくまで老爺も愛想良くそれに答えていきます。
 業者へと話を聞きに行くクラウディアとレナードを見送ると、老爺は忌々しげに小さくした家をしますが、直ぐに人の良さそうな顔へと戻ると、客の相手へと戻っていくのでした。
「本当かどうかは分かりませぬが、下手人は一度犯行現場に戻るとも聞いた事がありますゆえ」
 そう言って現場へとやって来ていたのは火乃瀬紅葉(ea8917)。暫く辺りを通る人間などを捜しては聞き込んでいますが、何より静かな通りのためかあまり人も通らず、有効な話が聞かれない模様。
 そこへ武兵衛と、武兵衛を守るかのように辺りに気を配りながら雨宮零(ea9527)がやって来て合流します。
「大丈夫、焦ってはいけません。きっと‥‥何か手がかりがつかめるはずです」
 余程きつい顔をしていたのでしょう、武兵衛へとそう言う零に、武兵衛も息を付くと微かに笑んで頷きます。
「これが、例の残されていたという皿にございまするね」
 紅葉がそう言って物置小屋の地下にあった皿を確認しています。
「はて‥‥その皿、見覚えが‥‥」
 武兵衛が怪訝そうな表情でその皿を見ると、手拭いで皿と徳利をくるんで立ち上がります。
「殺された通りにくる理由も無かったそうですので、誰かに連れてこられるのを待っていたのではありませぬか? 目撃した者もおりませぬゆえ、恐らくここに潜み‥‥」
「待っている間に酒と食べ物を食べていたのか、それとも殺してから暫く潜んでいたのかは分かりませんが‥‥」
 紅葉と零の言葉に、ふむぅ、と小さく武兵衛は唸るのでした。

●武家女と廃寺
 武家女が現れたのはそろそろ夕刻といった辺り、老爺が酒場の準備を始めた頃でした。
「‥‥金がいる。もう2ヶ月、ここから食料を持って行くぐらいではそろそろ収まらん」
「何度行ったら分かる、こっちからは接触出来ねぇんだ。これをやるから今日の所は帰って、暫く大人しくしてろっ」
 渋々徳利を受け取って帰っていく武家女を、氷雨は老爺を雷龍へと任せて後を付けます。
 途中クラウディアとレナードが声をかけますが、うなり声に近い声を漏らしてその間を突っ切っていく女。女はそのまま廃寺の方へと進んでいきました。
 廃寺を調べて歩いていたのは黒畑丈治(eb0160)。黒畑は怪しまれぬように僧の姿をして、慎重に足音を忍ばせて3件目の寺の敷地へと足を踏み入れると、ふと何やら煮炊きをしているのか、微かに食べ物の匂いがしてきて、更に慎重に寺へと近付いていきます。
 不意に足音が聞こえさっと物陰に潜むと、そこには若い武家のでらしい女が入ってきて、真っ直ぐに寺へと入っていきます。
「‥‥‥おい、もっと取ってこられねぇのか? お前の言い方が悪いんじゃねぇか?」
「失礼な、なら金の催促はお前が行ってくるんだな。向こうは金を持って現れるまでは払えない、いまだにしつこく嗅ぎ回っている男が居るのだから依頼人が現れないのは仕方ない事だと言っている」
 だみ声の続いて女性音声がします。何やら金銭的な事を話しているらしく、だみ声は感情的にがなり立て、呆れたようなうんざりした口調で女が返しているようです。
「本当に金は貰えるんだろうな?」
 どこかしら冷たい感じを与える男の声が確認するのを、女は無言で答えたよう。それを確認し、何やら刀の支度をし始める男の気配に耳を澄ます黒畑ですが、氷雨と合流すると、流れからあの茶店を襲うと判断し、黒畑は他の者と合流するために急ぎ足で立ち去ります。
 男達が廃寺を出たのは、辺りもすっかり暗くなり、家々が寝静まった頃でした。老爺の店では、辺りに一行が伏せている事も気が付かれず、ちょうど老爺は店を閉めるところでした。
「ん‥‥? なんでぃおめぇたち、大人しく隠れてろと‥‥っ!」
 言いかけた言葉を途切れさせる老爺。ぎりっと睨み付けると匕首を握りながら3人を見ます。
「約定通りに金を払わないのだ、力ずくでも貰っていく」
「ば、馬鹿言うな、何度もあんたらの依頼人から家に金を持ってこない限り、繋ぎは取れねぇって」
「我々は人一人殺している。それが増えたところで問題は無い」
 そう言って刀を抜く細身の男に、老爺は辺りへと目を彷徨わせます。
「話は全て聞かせて貰った。年貢の納め時だ‥‥お前等」
 すと、店の戸の障子に影が。戸を開けて出て来るのは氷雨。老爺と無頼を囲むように一同が退路を塞ぎます。
「私は無益な殺生は好みません。だが、無益な殺生をする者には容赦しない!」
「これ以上の非道は紅葉達が許しませぬ。数々の悪行を悔い改め、大人しくお縄に付かれませ!」
 きっと鋭き睨み付ける黒畑と、身を翻そうとした女の退路を塞ぐようにマグナブローを放ち凛と言い放つ紅葉。
 逃げ場がないと判断した3人はそれぞれ刀を構えて活路を見いだそうとし、老爺は逃げようとしたところをクラウディアのスリープで眠らされ、鼓太郎とレナードに捕縛されています。
「闇路への片道‥‥ご案内いたす」
 零のその言葉が引き金となり女が雷龍へと斬り掛かりますが、オーラボディがそれを阻み、僅かに傷を負わせるだけに留まり、即座に返される拳に膝をついてきっと睨み付けます。
 零は氷雨と共に細身の男と対峙し、だみ声の小太りの男には鼓太郎が素早く懐へと詰めると叩き臥せ、細身の男も零の一撃に深手を負い、尚かつ逃れようとするところを氷雨が突きつける小太刀にばっと顔を上げます。
「逃げきれるとでも思っているのか? カスが‥‥」
 吐き捨てるように言われる言葉に、男はがっくりと刀を手放して倒れ込むのでした。

●その後
 武兵衛は今度は自害されないように、という氷雨の忠告を真剣な面持ちで聞いて頷くと、4人を奉行所へと連行します。
「本当に感謝の言葉もござらぬ‥‥これで、漸く遺族にも顔向けが出来、故人へも顔向けが出来る‥‥」
 そう言うと、武兵衛は4人から聞き取れるだけのことを吐かせて、今度こそ件の盗賊を、というと、再び一行へと頭を下げます。
「もしや、その時にはまたギルドを訪ねるやも知れぬ‥‥。本当に、感謝致す」
 そう言って去っていく武兵衛。その後、4人は極刑になったと、風の噂で耳にするのでした。