〜ふっくらパン屋さん〜お店番をお願い☆

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月02日〜07月09日

リプレイ公開日:2005年07月05日

●オープニング

「お店番ですか?」
「えぇ。1週間ほどお願いしたいのですよ」
 冒険者ギルドの受付で、そろそろ生え際の薄くなりだした頭を撫でながら頷く依頼人。
 何でもご親戚の結婚式で1週間ほど店を留守にするのだそうだ。
「しかし、いくら冒険者でもパンを作れる人材となると難しいですよ?」
 手伝いぐらいは出来ても、パンを一から作るとなるとそれ相応の知識がいる。
 そして知識がいくらあっても経験がなければすぐに売り物になるパンを作るのは難しい事だろう。
「仰る事はもっともです。わたしもパン職人という自分の腕と店に誇りをもっとります。どんなに腕の良い職人をよこして頂いても、わたしの店をお任せする事など出来ません。味が変わってしまいます。
 ですからわたしがお願いしたいのは、娘のポエットの作るパンの販売と娘の面倒なんです。なにぶん一人娘なものですから心配でねぇ」
 自分に似て器量よしとは言いがたいが気立てはそこそこ。
 親にとっては可愛い一人娘。
 作るパンの種類は自分には及ばないものの、幼い頃から店の手伝いをしていただけあってかなりの腕前だ。味も自分と比べて遜色ない。
 店を閉めて娘も共に結婚式へ連れて行く予定だったのだが「もう子供じゃないんだからお留守番ぐらい出来るわよ。パンだって作れるんだから」といわれてしまい、しかし年頃の一人娘を一人残していくなど言語道断。
 お互いほとんど喧嘩腰になりながら娘と話し合った結果、せめて冒険者を雇おうということになったのだ。
「1週間、どうぞよろしくお願いします」

●今回の参加者

 ea8357 サレナ・ヒュッケバイン(26歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea8427 シェリー・フォレール(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea9927 リリー・ストーム(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb2581 アリエラ・ブライト(34歳・♀・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 eb2712 ファラ・アリステリア(32歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb2898 ユナ・クランティ(27歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●まずはご挨拶☆
「私はサレナ・ヒュッケバイン、騎士ですが‥‥今回はお店で精一杯お手伝いさせてくださいね」
 パン屋さんの店頭で、依頼人の一人娘ポエットにそう挨拶するサレナ・ヒュッケバイン(ea8357)。
 騎士である彼女はいつもは鎧を身に着けているのだが、今回はお店番という事で鎧は脱いでフリルのついた白いエプロンと胸元にリボンのついた可愛らしい服に着替えている。
 そのメイド服を用意したのはユナ・クランティ(eb2898)。
 サレナの分だけではなく、今回の依頼に携わる全員分の『清潔で清純で可愛らしい服』を持ち込んだユナは、
「‥‥着たくなーいなんて言う人は、私、悲しくて思わずアイスコフィンを詠唱したくなっちゃいそう‥‥」 といいながらよよよと泣き崩れるふりをして、身の危険を感じた冒険者+ポエットは一も二もなく全力で持ち込まれた服に着替えたのだ。
 いくら初夏とはいえ、氷漬けはちょっとかんべん。
「可愛い子は何を着ても似合うわね。私の事は姉と思って仲良くしてね」
 むぎゅう。
 ポエットをその大きな胸に抱き寄せて、そのまま抱っこするのはリリー・ストーム(ea9927)。
 耳まで真っ赤になっておろおろするポエットはまさにリリーの萌えのツボ。
「可愛い〜!このままお持ち帰りしたい気分…」
「リリー様、それはいけませんわ。誘拐になってしまいます」
 くすくすと微笑みながらリリーを嗜めるのはシェリー・フォレール(ea8427)。
 リリーが本当にポエットを連れて帰るなどとは思っていないが、抱き上げられたままのポエットが目を白黒させていたので優しくフォロー。
「私は新米レンジャーのアリエラです〜。ポエットちゃんって私と同じくらいの身長なのですね〜」
 ニコニコと笑顔の絶えないアリエラ・ブライト(eb2581)は子供によく間違われる自分と同じ位の背丈のポエットに親近感。
「ポエット、あたしはファラ・アリステリアだよ。よろしくね♪ 呼び込みとか頑張るよ!」
 最後にファラ・アリステリア(eb2712)がハーフエルフの特徴である耳を髪で上手に隠しながら元気にご挨拶。
 さあ、お店番を始めるぞ☆


●パンは作れるはずだけど‥‥?
「ポエットちゃん、これは一体‥‥?」
 店内に入り、さあ、売ろうと張り切っていた一同は店内の様子に唖然。
 ガラーン。
 店内はそんな擬音がぴったりと似合いそうなぐらいパンが置かれていなかったのである。
 パン独特の香ばしい香りがほのかにするものの、数種類のパンが中途半端にポツリポツリと置かれているだけ。
 置き方も下のほうの棚にバラバラに置かれていてお世辞にも良い配置とは言いがたい。
「小麦粉があまり運べなくって、いっぱい作ることが出来なかったの。それに、上のほうの棚は届かなくって」
 困り顔で冷や汗を浮かべるポエット。
 小麦粉を大量に使うことは事前にわかっていたのだから、もっと早くくれば良かったとサレナは少し後悔する。
 ポエットがパンを多く作れなかったのはもちろんサレナのせいではない。
 この依頼を受けた仲間達と一緒に契約時間通りにきちんと店に来たのだから。
 しかし騎士であるがゆえにサレナは自分に厳しかった。
 この仕事の遅れを取り戻すべく、てきぱきと率先して働き始める。
「事情はわかりました。力仕事は私に任せてください。店長は今から足りないパンを作って頂けますか?」
「て、店長っ?!」
 サレナに店長と呼ばれ、赤茶色の二つの三つ編みが思わずぴょこんと跳ね上がるぐらいにポエットびっくり。
「ええ、お仕事中はそう呼ばさせて頂きます。小麦粉を運んでまいりましょうか。どちらにありますか?」
「裏庭の倉庫です。リンゴの木の隣にあるの」
 頷いて裏庭へ行くサレナの後を、「あたしも手伝うよ!」とファラがついて行く。 
「わたくしは掃除をさせて頂きますわ。こちらの布巾をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「えっと、私はお会計を担当ですね。計算はお手の物です」
「パンを並べるのです〜」
「呼び込みをしてくるわ」
 シェリーが掃除を、アリエラがパンの陳列、ユナが会計をしてリリーが呼び込み。
 それぞれの仕事を始めだすのだった。


●作戦会議☆
「なんだかいまいちだったわねぇ‥‥お姉さん店番としての役目を果たすべく頑張ったんだけど‥‥」
 夜。
 売れ残りのパンとシェリーの作ったシチューを食べながら溜息をつくリリー。
「そんなことないですよ? こんなに売れたのは久しぶりです」
 にこにこと自分の作ったパンを頬張りつつ否定するポエット。
「ねえ、ポエットちゃん。いつもは今日よりももっと売れませんの?」
 学者ゆえか、そのたおやかな物腰の割にずばりと聞きづらいことを尋ねるユナ。
 ユナは今日1日会計を担当していたから、今日の売上を感覚ではなく数字で理解している。
 パンを作るための小麦やその他の材料、それにパンを焼く釜戸の薪。
 これらは当然無料ではない。
 今日の売上が良いほうだというのなら、日々の売上はパンの材料費で殆ど消えてしまうのではないだろうか?
「‥‥うん。本当に普段はもっといっぱい売れ残っちゃうの。だから1日だってお店を休んじゃ駄目だと思ってお父さんと喧嘩しちゃった。でもほんとは一人でお留守番とか不安だったから、おねーちゃん達がきてくれてほっとしちゃった」
 てへっとそばかすと幼さの残る顔で笑うポエット。
(「「「絶対、明日はもっと売って見せる!!」」」)
 その笑顔に心の中で固く誓う冒険者達。
 しかし、売る為にはどうずればいいのか?
「このパン、本当に美味しいですよね。夫にも食べさせたいです‥‥私の夫はとても面倒臭がりやの魔術師なのですが、優しくて根のしっかりした人なんですよ」
 その華奢な身体のどこにそんなにはいるのか不思議な量の大量のパンを平らげたサレナが言う。
「それだよ! 食べてもらえばいんだよ!! 試食とかどうだろう? お店の前を通りがかった人に食べてもらうの」
「それは素敵なのです〜。こんなに美味しいのですから食べてもらえればきっと一杯買ってくれるですよ〜」
「今日呼びこみをしていて気づいたんだけど、このお店は大通りから少しわかりづらい場所にあるわ。だから大通りから上手く客を誘導できればかなりの売上が期待できるわよ」
「あたし裏庭に行った時に綺麗な花が咲いているのを見つけたよ。あのお花を使って髪飾りの代わりにしたりお店の中を飾っちゃおうよ」
 次々と売り込む作戦を詰めていく冒険者たち。
 明日の売上は期待できそう☆


●大繁盛! 行列の出来るパン屋さん☆
「いらっしゃいませー、いらっしゃいませー! 美味しいパンの試食やってるよー♪ 興味のある人は食べてみてねーっ!」
 大通りとパン屋へ続く細い道の交差点で一口大に切ったパンを籠から取り出しながら呼び込むファラ。
「ファラさーん‥‥焼き立てパンもお持ちしましたですよ〜」
「アリエラ、ありがとう! お客さんお客さん、たった今焼きあがったばっかりのほかほかふわふわパンだよーっ♪」
「気に入ったなら是非買って下さいなのです〜!」
 ファラと一緒に呼びこみをしだしたアリエラを見て、
「お嬢ちゃんちっこいのにお家のお手伝いかい? えらいねぇ。どれ、おばちゃんも一つ買ってみようかねぇ」
 撫で撫で。
 アリエラの頭を撫でてパンを買ってゆくおばちゃん。
(「私、もう24歳なんだけどな〜‥‥)
 子供に間違われたアリエラはちょっぴり凹みつつ、でも決して笑顔は絶やさずに「有難う御座いましたです〜」とお客様をお見送り。
 
 その少し離れた場所ではリリーが呼びこみをしている。
「とっても美味しいうちの店のパンを買っていって‥‥お・ね・が・い」
 うふっと微笑んで道行く人に投げキッス。
 昨日の夜、適度に(?)改造したユナ特製の服から露出したリリーの肌に男性の視線は釘付け。
 羨ましそうにその豊満な胸を見つめる女性にも「うちのパンは美容と健康にいいですわよ。胸も大きくなりますわ」としっかりと宣伝する事を忘れない。
 
 そして店内はこれでもかと言うほどの客で溢れ返っている。
 シェリーがお客様にパンの説明をしてまわり、ユナが会計に並ぶ行列をその素早い計算力で次々と処理し、ついでに可愛い男の子や女の子にまた来てもらえるようにその手をぎゅっと笑顔で握り、お釣りを渡さない時でも趣味でつい握っちゃったら笑顔でやっぱりごまかして。
 厨房ではポエットがその小さな手を休むことなく動かしつづけてパンを形作り、サレナが焼きあがったパンを鉄板ごと釜戸から取り出したりもう、大忙し!
 閉店時にはもう一つもパンは残っていなかった。
「おねーちゃんたち、ほんとにほんとにありがとう!!」
 だきゅーっと冒険者達に抱きついて喜ぶポエット。
 そうして。
 依頼期間が過ぎて行き、冒険者が帰って行く頃には小さなパン屋さんは知る人ぞ知る人気店になったのだった。