●リプレイ本文
●一刻も早く、村へ
移動時間を短縮する為に、まずクライフ・デニーロ(ea2606)は冒険者ギルドで予め村への地図を写させてもらっておいた木板に、スクロールのバーニングマップを使用して村までの最短距離を調べる。
強行軍の巴 渓(ea0167)と三笠 明信(ea1628)、アルジャスラード・フォーディガール(ea9248)と、後発隊のハニー・ゼリオン(eb0694)、アッシュ・クライン(ea3102)に調べたルートを伝えると、クライフとクリシュナ・パラハ(ea1850)、そして王 小澪(eb0442)は三笠の用意した大凧に出来る限りの救援物資を積み込んで、自分達も乗りこみ、村へ飛び立つ。
一刻も早く問題の村へ行くために、三笠の提案により大凧による空からの先発隊と、韋駄天の草履を使って馬や驢馬、人の道を確保する為の強行軍、そして全員の驢馬や馬を現地へ連れて行くための後発隊の3つに分かれて村へ向かうことにしたのだ。
「お二人とも、余り上空へは行かれませんように。風に流されてしまいますからー!」
大凧を操り、強風に煽られないように可能な限り道なりに低空飛行を心がけるクライフが、王とクリシュナにも注意を促す。
「ええ、気をつけますわー」
「風に流されては、先発隊の意味がありませんものね‥‥一刻も早く、村人達を治療して差し上げなくては」
クリシュナと王は頷いて、クライフを真似て低空飛行を心がける。
「喰らえ! 粉砕のォ、ヘルブリッドォォッ!!!」
ドゴーンッ!!
後発隊の為に村への道を塞いでいた邪魔な岩をその拳で粉砕する巴。
「お見事です」
三笠は巴の腕っ節に感嘆し、
「この岩も危険そうだな。どかしておくぞ」
アッシュも道を整備して行く。
(「これで少しでも早く後発隊も村へつけるといいんだが‥‥」)
3人は後発隊のために道を整備しながらも休むことなく歩きつづける。
●村へ到着〜被害状況の確認を!
村について、大凧に積んだ保存食や清潔な布などの救援物資を村人に預け、先発隊がまず最初に行ったのは、クリシュナによる測量だった。
クリシュナは、その知識をフルに活用し村の被害状況を的確に判断していく。
畑の状況、川の状況、崩れた橋の状態。
一つ一つを素早く、だが確実にチェックして魔法用スクロールにメモ代わりに書きこんでいくクリシュナ。
そして恐ろしい2次災害の可能性のある危険地帯を確定し、クライフと共にその地域に村人達や仲間達が立ち入る事の無い様にロープを張り巡らせ危険を周知する。
「やはり、水源の確保は必須ですね」
川の状況をクリシュナと共にその被害状況を確認したクライフは、サーチウォーターを唱えて新たな水源の確保に努める。
その間に王は、村人達の手当てに当たっていた。
復興は体が資本。まずは怪我を癒さねばならない。
王はリカバーを唱えつづけるが、
「なんて酷い‥‥。死者が出なかったとはいえ‥‥」
老若男女問わず傷つき苦しむ村人達を前に、王は唇を噛み締める。
村人達は、命こそあるものの川の水は土砂で汚れ、傷口の洗浄もままならず、膿んだ傷口には蛆が沸き始めていた。
王は高速詠唱を使って一瞬で治療してあげたい気持ちで一杯だったが、一人でも多くの村人を救うためには通常詠唱を続けるしかない。
「すぐに、すぐに良くなりますからね‥‥!」
村人達を励ましながら、王はただひたすらに、癒しの呪文を唱えつづける。
●2日目。強行軍到着!
2日目の午前中に、巴、三笠、アッシュが村に到着する。
「待たせたな、クリシュナ。無理させちまってごめん」
親友であるクリシュナに詫びる巴。
巴達の到着は決して遅くは無く、むしろ早いぐらいなのだが体力の無い親友の事が心配だったようだ。
「わたくしは大丈夫。それより、一刻も早く復興を!」
「おう、まかせとけ!」
ドンと胸を叩いて請け負う巴。
「手がつけられそうなところから手をつけていきましょう。クリシュナさん、指示をお願いできますか?」
体力には自信があるものの、ただ闇雲に動いたのでは能率が悪い。
そう判断したアッシュは先発隊のクリシュナに判断を仰ぐ。
「ええ、任せて下さい。アッシュさんとクライフさんには川の決壊防止作業と、川の土砂を退かす作業を。三笠さんには、昨日クライフさんが調べてくれた水源から、新鮮な水を運んでいただきます。渓は、ハニーさんが到着されるまでの間に出来る限り畑の土砂を退かしてください。王さんは、昨日と同じく引き続き救護作業を。わたくしも手伝います」
昨日作成した村の被害状況をメモしたスクロールを確認しながら、てきぱきと指示を出していくクリシュナ。
指示に従い、次々と作業を進めていく冒険者達。
アッシュは決壊寸前だった川の土砂を退かし、クライフはさらにそれを補強に使って川の氾濫を抑える。
三笠は新鮮な水を村に運び込みながら、村内の障害物の排除と清掃に入る。
汚物に顔を背けることなく、村人達の為に笑顔で働く三笠。
王とクリシュナによって手当てを受け、三笠の笑顔に緊張をほぐされ、次第に心も身体も元気になって動けるようになった村人達も冒険者達に協力を惜しまない。
復興は思いのほか早く進んでいく。
夜。
クライフは村の女性達に協力してもらい、ロープと布で簡易のお風呂を作る。
この行動には、村の、特に若い女性達には大変喜ばれた。
災害が起ころうとなんだろうと女の子。
いつまでも、泥だらけではいたくないのだ。
「お熱くはないですか?」
ファイヤーコントロールで火加減を調節しながら、クライフは村人に尋ねる。
しかしその目には布が巻かれており、決して覗けないようになっていた。
元々覗く気など欠片も無いクライフだったが、クリシュナにグルグルと強引に巻かれてしまったのだ。
クリシュナ曰く、「李下に冠を正さず、ですわ」との事だから、きっとクライフがあらぬ疑いをかけられないようにとの配慮なのだろう。
朴念仁のクライフはそう結論付けて、火加減を調節しつづける。
●3日目、後発隊到着! そして美味しいご飯だよ☆
先発隊と強行軍の馬たちと一緒に到着したハニーとアルジャスラード。
「あたしゃ疲れたよ。だけど休んでる暇はなさそうだね。よし、農作業始めるよ。みんなの馬をちと貸しとくれ」
ハニーは、馬たちを引き連れて腕まくりして畑に向かう。
怪しげな面負を被っているが、気の良い農婦らしいと判断して、村人も共に作業を始める。
そして大きなバックパックを背負っていたアルジャストラードは、
「俺、保存食買ってきたから村人達に配りたいんだ」
と、バックパックを下ろして中身を見せる。
「おおっ?!」
その中身を見て驚く村人達。
なんとアルジャストラードは50個ほどの保存食を買いこんで村に運んできてくれたのだ。
「こいつは凄いな、これがあれば当分は暮らしていけるんじゃないか?」
アッシュも驚く。
先に村人達に渡してある巴やアッシュ、クライフに王の持ち寄った保存食も合わせれば相当な数になる。
そしてまだ多少なりとも無事だった村の倉庫の小麦などとも合わせれば、次の収穫まで食いつないでいく事が出来るだろう。
「これで上手い料理作ってやるよ。こう見えても俺は家事は得意なんだぜ?」
驚くみんなに笑いながら、アルジャスラード。
「こらこら、食べてばっかじゃあかんよ! お昼までにはまだ時間がある。こっちを手伝っておくれ」
ハニーが戻ってきて、アルジャストラードはもちろんの事、巴や三笠、アッシュといった体力に自信のある面々を強引に畑に引っ張って行く。
清潔な空間、美味しい食事。
復興の進む村。
どんどん、村は活気を取り戻していく。
●エピローグ〜お疲れ様☆
全ての作業をし終え、依頼を終えた冒険者達。
村の復興は思ったよりもずっと進み、一時凌ぎなどではなく今現在行える全ての作業を終えることが出来ていた。
「明日が良い日でありますように‥‥グットラック」
村人達の幸せな未来を願い、王が祝福の呪文を村人達に与える。
そして、このような悲劇が2度と起きないように、山に根をしっかりと張る草を説明し、村人達に植えるように教えておく。
「クライフさんとアッシュさんが川の土砂を取り除いてくれてあります。まだ泥交じりで今すぐに飲み水にする事はできないでしょうが、先日運び込んだ水がなくなる頃には清水へと回復している事でしょう。今現在出来ることは全て行っておきました。おそらく、当面の生活に支障はないと思います。あとは、あなた達次第です」
見送りに来ていた村人達と力強く握手を交わし、笑顔とともに別れを告げる三笠。
そうして帰路につく冒険者達。
パリにつき、みんなとお別れする瞬間。
クリシュナは以前からずっとクライフにお礼がしたかったから、背伸びして、そっとクライフの頬にキスをしようとして‥‥ぱたりっ!
「クリシュナさん、クリシュナさん?!」
いきなり倒れたクリシュナに慌てるクライフ。
体力が余りないというのに、クリシュナは無理しつづけていたからパリについてその疲れがどっと出てしまったのだろう。
くったりと力尽きて動かないクリシュナをクライフは困惑しつつ、
「仕方ありませんね」
クリシュナをお姫様抱っこして、教会へと向かうのだった。