●リプレイ本文
●にゃんにゃにゃーん☆
「ミーシャの為に良く集まってくれたニャ☆ 感謝するのニャ☆」
猫になりたいなどというふざけた、でも依頼人のミーシャにとっては本気な依頼に集まってくれた冒険者達に、ミーシャご機嫌☆
「あっしも猫さんは好きっすが‥‥ここまでは出来ないっす。ある意味尊敬っすねぇ」
ミーシャと同じく猫好きの以心 伝助(ea4744)はとことん猫を目指して猫の仮装をしているミーシャを尊敬の眼差しで見つめる。
そしてその隣で、
(「猫になりたいなどという依頼人の要望は無理ではないのだろうか?」)
と心の中で冷静に突っ込みを入れているのはバスカ・テリオス(ea2369)。
しかし、あなたは荷物を整理しなさいという突っ込みがどこからともなく入りそうなぐらいバスカは大量の荷物を抱えている。
大荷物といえば、円 巴(ea3738)とキシュト・カノン(eb1061)もだ。
愛馬に、そしてその背に背負ったバックパック。キシュトは馬もないので、全部バックパック。
荷物が多すぎて、動くのはかなり困難だ。
しかし円は大真面目に、
「ふむ、なるほどな要望はわかった。ならば全力を尽くそう」
と猫になるための方法を思案する。
そして、先ほどからじっと黙ったまま何かを言いたそうにミーシャと冒険者達を見つめているのは心で語る漢・楼 焔(eb1276)。
ぽんとミーシャの肩に手を置いて、
(「集会に参加するためには‥‥猫達と仲良くなるしかない‥‥時間は掛かるが‥‥やるしかないだろう?」)
と目で語る。
楼は華国語しか話す事が出来ず、アイコンタクトとジェスチャーでしか意思表示が出来ないのだ。
しかも猫と仲良くなる依頼だというのにまるごとわんこを頭から被って犬に変装している為、猫好きのミーシャにとっては程よく敵っぽく。
「む? なんニャ? ミーシャに何か言いたい事があるニャ?」
むっとして楼を睨むミーシャ。
「‥‥‥‥、‥‥‥‥(猫と仲良くなるべく、一緒に頑張ろう)」
「うーにゅ、これはもしやミーシャに対する挑戦ニャ?! わんこの着ぐるみには負けないニャ、猫ぱーんち!」
ぽこっ!
肉球プニっな猫パンチで楼をぶん殴るミーシャ。
「‥‥、‥‥!! (違う、ちがうのだーーー!!)」
必至に心で弁明しつつ、楼、撃沈!
「‥‥さて‥‥難題だな‥‥ん? 俺の柴犬が気になるのか?」
「ミーシャちゃんは犬も好きなの? ミネアの愛犬クロワッサンさわってもいいよ♪」
猫になりたいという難題に真っ向から真剣に悩むキシュトの愛犬と、イギリスからドレスタットに船で渡って来たばかりとは思えないぐらい明るく元気なミネア・ウェルロッド(ea4591)の愛犬をむーんとした表情で見つめるミーシャ。
「‥‥犬は嫌いニャ。犬は、猫の敵なのニャ! 猫の敵はミーシャの敵なのニャー!!」
フーッとうなって、猫のように4つんばいになって今にも飛びかかりそうな体勢でキシュトとミネアの愛犬を威嚇するミーシャ。
「‥‥あのぅ、その恰好じゃ私も逃げたくなりますよ〜。ネコさんはミーシャさんの恰好が怖くて逃げ出したりするのだと思います〜」
戦闘体勢(?)なミーシャに恐る恐る助言するのはキャシー・バーンスレイ(ea6648)。
「‥‥ミーシャ、恐い格好かニャ? でもこれ以上猫っぽくなれないニャ! お願いニャ、早くミーシャを猫にしてほしいのニャ!」
キャシーの助言を勘違いして、猫化を迫るミーシャ。
「ネコさんの恰好をしなくても、ネコさんへの愛情があれば、ネコさんたちもきっと受け入れてくれます!!」
「ミーシャはこの格好が気に入ってるニャ。変えるのは嫌ニャ!」
「ネコさんたちに嫌われたままでよいのですか?」
「うー‥‥」
しぶしぶ。
しぶしぶ。
キャシーに説得されて猫耳やら尻尾やらを取り外し出すミーシャ。
さあ、頑張って猫達と仲良くなろう☆
●猫と仲良くなるには?
「わしは猫まんまでも作っておこう。依頼主の分のほか、仲間のも、そして猫たちの分もな。同じ釜の飯を食えば、自然と仲良くなろう」
そう言っていつも持ち歩いている調理器具セットで猫飯を作り出すのは駒沢 兵馬(ea5148)。
駒沢は季節の魚やジャパン人の間でよく使われている出汁を手に入れ、 足りない物は友人のバルバロッサに調達してもらいMY包丁をキラリと掲げる。
「まな板の上を駆ける一閃の海燕、そうこれが燕返しだ!」
トタタタタタタンッ!
季節の魚を包丁でのバーストアタックをくりだし、骨ごと砕き、一気にミンチに仕上げる駒澤。
お米やまたたび、猫の好きな香草などをふんだんに盛りこみ、先ほどミンチにした魚を一口サイズに丸めた物をお鍋でコトコト煮込む。
辺り一帯にお魚の匂いが充満し始め、匂いに惹かれた猫たちが一匹、また一匹と冒険者達の前に姿を現す。
そしてその愛らしい猫たちを見て、うずうずしだすキシュト。
犬も好きだが猫も好きなキシュトは、触りたくて仕方がないのだが、今ここでさわって猫に逃げられでもしたら大問題。
だから、理性を総動員してぐっと我慢する。
そんなキシュトの気持ちを知ってか知らずか、足元に「にゃーん♪」と猫が擦り寄ってくる。
もともと飼われていたのだろうか?
野良猫なのに妙に懐っこい。
(「くっ、我慢だ、我慢だキシュト! ここで触って怯えられると依頼失敗に繋がる可能性があるんだ。耐えろ、耐えるんだキシュト!」)
内心血の涙を流しながら、必死に冷静さを装うキシュト。
そうこうしているうちに駒澤の猫まんまが完成☆
「出来たぞ。名付けて『海鮮リゾット猫突撃風』だ」
駒澤がお鍋から底の深いお皿に猫まんまを盛りつけた瞬間。
ドドドドドドドドッ‥‥ちゅどーん!
匂いにつられて集まってきていた猫たちが一斉にご飯目掛けて突撃!!
一心不乱に食べようとする。
が。
「ミャーーーー!!」
猫たちは叫んでのた打ち回っては、再び食べて倒れるを繰り返している。
どうやら出来たて猫まんまは熱くって、猫舌の猫たちには本来冷めるまで食べられないのだが、余りの美味しさに根性で食べてしまっているらしい。
恐るべし、駒澤!
駒澤が後に伝説となるかもしれない猫まんまを作っていた頃。
ミネアはミーシャから聞いておいた猫たちの集会場所にこっそりと来ていた。
集会場所には、既にもう何匹かの猫が集まっている。
「ふふふー♪ ワッサン、準備はいい?」
その猫たちを見てほくそえみ、愛犬のクロワッサンに合図を送るミネア。
わん♪ と一声吼えて猫たちを睨みつけるクロワッサン。
「そう、いいのね。一応犬だし、牧羊犬なんだから猫くらい裏から纏められるでしょ♪ いっけぇっ!!」
GO!
掛け声と共に愛犬クロワッサンを猫たちにけしかけるミネア。
そう、ミネアは猫を外側から恐怖支配しようとしているのだ。
猫たちが恐怖に慄いてミーシャちゃんから逃げ出さないようにして、ついでに仲良くなってくれれば上々。
しかし。
「キャンキャンキャン〜っ!!」
バリバリバリバリバリッ!
キシャー!
猫たちの猛反撃にあい、泣きながら掛け戻ってくるクロワッサン。
しかも猫たちはそのまま追っかけてくるではないか!
「え? え? えーっ?!」
ちゅどーん!
猫たちはそのままミネアを突撃攻撃!
「いーやーーーーー!!」
愛犬クロワッサンを抱えてミネアは全力で逃げ出すのだった。
「ミーシャさん、まずは、猫集会で逃げられた時にどういう状況だったか、どういう風に近づいたのかを教えて欲しいっす」
以心は駒澤の作った猫まんまを食べながら、ミーシャに尋ねる。
今はキャシーに諭されて仮装をやめているものの、猫の集会にミーシャが以前近づいた時の外見はかなり猫っぽかったはず。
それなのに猫たちがミーシャを見ただけで逃げ出すというのは、近づき方が悪かったのではないか?
そう考えて、以心はミーシャにその時の状況を詳しく聞き出す。
「うにゃー。猫さん可愛いからだきゅーって飛びついたニャ。でも逃げられたニャー‥‥」
思い出してしょんぼりとするミーシャ。
「ああ、やっぱり原因はそれっすよ! いきなり飛びつかれたら猫じゃなくても逃げますって。あっしは忍び足には自信があるっす。猫さんが恐がらないように忍び足を教えるっすよ」
「忍び足が得意だなんて凄いのニャ! 是非教えて欲しいのニャー☆」
「そうと決まったら早速練習っすよ。これを食べ終わったら一緒にがんばろうっす!」
「ニャー☆」
ミーシャは元気に返事して、美味しすぎる猫まんまを急いで口に押し込んだ。
「‥‥、‥‥、‥‥‥‥!!」
なぜだ、なぜにげていくんだ?! 俺が一体何をしたというんだー!
楼を見ると逃げていく猫たちに心の中で叫ぶ楼。
精一杯の変装でまるごとわんこに猫のような付け髭をして、耳だって尖らせて猫っぽくしたというのに。
依頼期間中に目一杯猫と仲良くなれば集会に参加するのも容易だと思ったのだが、これでは仲良く出来そうもない。
楼は膝を抱えていじけてしまった。
そして大荷物コンビの円とバスカはというと。
「猫にする方法というと、『1:ミミクリーで変身、2:悪魔に身体を入れ替えてもらう、3:イリュージョンなどの幻覚でその記憶を与える、4:猫になった気にさせて、猫と遊ばせる』などが考えられるが、どれがいいだろうか?」
真剣に。
本気で悩んでいる円に、
「考えるまでもなく4だと思うぞ‥‥」
冷や汗たらして突っ込むバスカ。
「うむ、そうか。私もそれがいいと思っていた。コミュニティ(閉鎖された小社会)を作り上げ、そこに侵入した異質なものに対し警戒を覚えるのは猫に限った事ではない。よって猫からみて、可能な限り異質である部分を除かねばなるまい」
「それは一理あるな。具体的にはどうするんだ?」
「猫の糞尿を浴びたり、砂浴びをしているところで同じように背中をこするなどで同じ匂いをミーシャにつけてもらい、殺気や近寄ろうとする欲を消し、似た食べ物を食べ、場合によって分け合うなどをすればかなり異質な部分が取れるのではないだろうか?」
「‥‥ミーシャさんに限らず糞尿を浴びてくれる人はいないと思うぞ‥‥」
真面目に、ひたすら真面目に言いきる円に、バスカは力尽きそうになりながら突っ込みを入れつづけるのだった。
●猫たちの集会〜満月に歌おう☆
毎日毎日。
駒澤の作った猫にも人にも美味しい猫まんまを食べ、以心に猫のような忍び歩きを教わったミーシャ。
努力の甲斐あって、駒澤に餌付けされた猫たちは冒険者にもミーシャにも大分懐いてきた。
冒険者達が座っているとその膝の上に乗ってゴロゴロと喉を鳴らす。
猫好きキシュトは役得とばかりに膝の上の猫を撫で、ペットの柴犬に焼きもちを焼かれている。
「そろそろでしょうか‥‥? ‥‥わ‥‥私も、ネコさんたちが歌っている所、見てみたいです」
日が沈み、月が昇り始めた空を見上げ、呟くキャシー。
冒険者達とミーシャは、猫たちの集会場所へ来ていた。
一匹、また一匹と、広場に集まってくる猫たち。
「緊張するニャ‥‥」
「‥‥‥‥、‥‥」
毎日頑張ったんだ、きっと大丈夫だと心の中でミーシャを励ます楼。
「あっしが教えた忍び歩きで、そーっと近づくっすよ」
猫たちが驚かないように、小声でアドバイスを送る以心。
「分かったニャ。ミーシャ、いくニャ!」
拳をぐっと握り締め、抜き足差し足忍び足で猫たちに近づいていくミーシャ。
(「「「がんばれ、がんばるんだ!」」」)
物陰に隠れて、ミーシャを応援する冒険者達。
‥‥‥‥成功!
ミーシャが近づいても、猫たちは逃げ出さず、それどころかミーシャに擦り寄ってきている!
「やったニャー☆」
冒険者達を振りかえって笑うミーシャ。
そして始まる猫たちの集会。
一際大きな黒猫が、月に向かってミャーと鳴く。
それを合図に、一斉に猫たちが歌い出した。
♪〜
にゃー、にゃにゃにゃーにゃー、にゃにゃー、にゃー、にゃにゃーにゃー
〜♪
それは、本当に歌うという表現がぴったりと合う猫たちのハーモニー。
ミーシャも、冒険者達も、一緒になって歌いだす。
夜空に浮かぶ満月が、猫たちと冒険者を優しく照らして輝いた。