眠らない方法〜流れ星にお願い!
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■ショートシナリオ
担当:霜月零
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月31日〜08月05日
リプレイ公開日:2005年08月08日
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●オープニング
(「おや、あの少年は‥‥?」)
冒険者ギルドの初老の受付係は、書類から顔を上げてその少年をまじまじと見つめる。
ギルドの入り口で、冒険者に何やら話しかけているのだが、その内容は聞こえない。
しかし、初老の受付係はその少年に見覚えがあった。
(「確か、眠らない方法を教えてくれとせがんだ子ではなかったじゃろうか?」)
つい先日、少年はギルドを訪れていた。
そしてこう、依頼しようとしたのだ「眠らない方法を教えてくれ」と。
しかし、まだ幼い少年からの依頼はギルドで受ける事は出来ず、怒った少年はギルドを駆け去ってしまったのだ。
何人かの冒険者が少年を心配して後を追ったようだったが、子供の足というのは意外と早く、また小さいので人込みにまぎれて見失ってしまったらしいということを、後になって初老の受付係は聞いたのだ。
それ以来、ずっと少年の事が気に掛かっていたのだ。
入り口の少年は、冒険者に断わられたらしく、俯いている。
(「ふむ‥‥まだ眠らない方法を探しておるのかのぅ?」)
初老の受付係は他の受付係りに受付を頼むと席を立つ。
「お前さん、なにか困りごとがあるのかのぅ?」
入り口に佇む少年に近寄り、肩に手を置いて話し掛ける。
「なんだよ、おっさんになんか用はないぞっ、どうせギルドは依頼を受けてくれないんだ、手ぇはなせよっ!」
パシッと受付係の手を叩いて振り払う少年。
やはりこの間の少年に間違いなさそうだ。
「ふむ‥‥まだ眠らない方法とやらを探しておるんじゃな?」
「関係ないだろ!」
「わしは、眠らない方法は知らんが、起こす方法なら知っておるぞぃ。側にいる人に起こしてもらえばいいんじゃよ」
「え‥‥?」
「眠らない方法はないかもしれんが、お前さんが眠ってしまったら起こしてくれるように誰か側にいてもらえばいいんじゃないかのぅ? ずっと起きつづける事は出来ないじゃろうが、お前さんが眠りたくない瞬間にはどうにかなるんじゃなかろうかのう」
長く白い顎鬚を揺ったりと扱きながら提案する受付係に、少年はぱっと瞳を輝かせた。
「それだ、それだよ! おじいちゃんありがとう」
「これこれ、待ちなさい。まだ話は終わっとらんのじゃから」
ぱっと駆け去ろうとする少年を慌てて引きとめる受付係。
「なに?」
「お前さんの名前と住所を教えては貰えんかの。ギルドを訪れた者には必ず聞いておることなんじゃ」
「いいよ。僕の名前はロビン。住所は‥‥」
そうして少年から住所と名前を聞き出した初老の受付係は、いそいそと依頼書を作成し出す。
『少年が眠らずに済む様に協力してくれる者、求む。詳しくは、受付まで。
ラングウッド・ベスパロイ』
(「これで少年になにかあったら目覚めが悪いからのぅ‥‥」)
そっと呟いて、掲示板に依頼書を張りつけたのだった。
●リプレイ本文
●まずは理由を聞いて見よう!
「ロビンは何故、そして何処で眠りたくないのかしら? それを教えてくれないと、私達は準備が出来ないの。貴方の願いが叶うよう私達が手伝うから、私達が協力出来るようにロビンも手伝ってくれる?」
初老のギルド受付係、ラングウッド・ベスパロイの依頼で、ロビン少年が眠らずにすむよう協力する事にしたシアン・ブランシュ(ea8388)が微笑みながらロビンに尋ねる。
「‥‥内緒。まだ言えないよ!」
でも訊ねられたロビンは、ぷいっとそっぽを向いて答えない。
そのほっぺがちょっぴり赤くなっているのは気のせいだろうか?
「内緒ってのは無しだぞ! 何かを待っているのか、それともただ挑戦したいのか。ロビンくんの気持ちが分かった方がおいらたちも全力でサポートできるだろうし」
そっぽを向くロビンの顔をその頼り甲斐のある大きな両手で包み込んで目線を合わせ、シアンと一緒に事情を聞き出そうとするジェンナーロ・ガットゥーゾ(ea6905)。
「ロビン殿が事情を話してくれない事には一日中起きていたいのかそれとも昼と夜どちらか起きていられればいいのかが分からん。出来れば寝てられる時間があるのならば、その時間は寝ておいた方がいいと思うのだが? 全然寝ないってのは‥‥辛いぞ」
長渡 泰斗(ea1984)も過去を懐かしむような遠い目をしつつロビンを説得する。
長渡も過去に眠らないでいたことがあるのだろうか?
しかし頑なに口を閉ざすロビンに、イリア・アドミナル(ea2564)はちょっぴり魔力を込めたメロディーを歌いだす。
♪〜
誰もが抱える扉の中に
そっと暗闇は忍び込む〜
明けない夜が無い様に
暗闇もきっと払えるさ〜
勇気を出して扉を開けば
きっと助けがやって来る
〜♪
ロビンが自分達を頼ってくれるように。
ロビンを自分達が助けられるように。
優しく歌うイリアの歌声に、俯く顔をあげ、ロビンはポツリと呟いた。
「‥‥ぜったいに、笑わない?」
そう聞くロビンは、もう耳まで真っ赤だった。
「絶対に笑ったりしない。理由を教えて。きっと助けるよ」
イリアと一緒に、アルフレッド・アーツ(ea2100)と劉 蒼龍(ea6647)も頷く。
「‥‥‥‥流れ星にお願いするんだ。僕の村の言い伝えで、『星降る丘』で3日間流れ星を見つけて願い事を3回唱えるんだ。そうすれば願い事が叶うんだ」
ぽそぽそ。
ぽそぽそ。
真っ赤になったロビンの声は、これでもかというほど小さい。
少年に顔を近づけるイリア。
「願い事はなに?」
「だめだよ! それはまだ言えないんだ。いったら叶わなくなっちゃうもん!」
「きゃっ!」
キーン!
いきなり大きな声を出されて耳が痛くなるイリア。
「あっ、おねーさんごめんなさい!」
心配げにイリアを見上げるロビン。
「ううん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。でもそっか、素敵な言い伝えだね」
「その言い伝えの丘はどこにあるのかしら? 遠方に徒歩移動だと、それだけで疲れて眠くなるわ。遠いなら、乗馬は素人には余計疲れるし、馬で引く荷車を借りてくるわよ」
にこにことロビンの頭を撫でるイリアと、場所の特定と移動方法を素早く考えるシアン。
「3日も眠らない、か‥‥気合入ってるなぁま、理由はいろいろあるんだろうが、頑張ろうって心意気は感心したぜ。俺も手伝ってやるから、ガンバレよっ!!」
フワリとロビンの肩に乗り、その小さな拳をぐっと握ってロビンを励ます劉。
そうして一同はロビンから場所を聞き出し、シアンが借り出した荷馬車で星降る丘を目指すのだった。
●星降る丘
その丘は、一見何の変哲も無い丘だった。
「ここがその場所なのか? あまりパッとしないな」
長渡が前髪をかきあげて率直な意見を漏らす。
星降る丘はそのロマンチックな名前とは裏腹に、とくにこれといって代り映えのない丘で寝転がるには丁度よさそうな芝生が生えているだけだった。
「ロビン君‥‥流れ星は夜だから‥‥昼間は寝ていても大丈夫なんだよね‥‥?」
「うん」
「じゃあ‥‥少し眠っておこうね‥‥。昼間に寝ておけば‥‥その分夜起きているのが楽になるし‥‥ずっと起きつづけているのは身体に悪いから‥‥」
まだ幼いロビンの身体を気遣って、アルフレッドがそう提案する。
「三日間全く寝ないなんてのは、流石に子供の成長に良くない」
苦笑交じりに長渡も頷く。
「夜になったら起こしてくれる?」
不安そうにロビン。
「まかせなさい。私達はその為にいるんだから」
力強いシアンの言葉にロビンは「わかったよ!」と頷いて、劉の用意した毛布に包まるとすぐにすやすやと寝息を立て始めた。
●流れ星を探さなくっちゃ!
「流れ星‥‥どこだろう‥‥?」
夜空を見上げて流れ星を探すアルフレッド。
夜。
ロビンを起こして、交代で仮眠を取りながら冒険者達はロビンが眠らないようにしていた。
いまはアルフレッドと長渡がランタン片手にロビンと一緒に夜空を見上げている。
「星降る丘には、いっぱい流れ星が流れるって聞いたのに!」
星はこれ以上無いというぐらい夜空に沢山輝いているのに流れ星にはならない。
地上に降ってきてはくれない。
空を見上げて唇を噛み締めるロビンに、
「まあ、焦っても仕方がないだろう? 俺の昔話でも聞かせてやるからゆっくり待とうぜ」
いいながら、長渡は事前にシアンとここに来る前に購入しておいたお茶とお茶菓子をロビンに進める。
「寝ないと言うと『庚申会』を思い出すな」
熱いお茶をふうっと息をついて冷ましながら、長渡は呟く。
「庚申会‥‥?」
「それなに?」
ロビンもアルフレッドも、初めて聞くその名前に興味津々。
「ジャパンの風習でな。60日に一回、夜になると三尸って言う虫が人の体の中から出てきて神様にその人の行った悪行を密告するって言う日があるんだ。だけどこの虫は人が起きてると体から出てこれない。だからその日は皆で起きて居ようって言う日があるんだな。偉い人達は色んな儀式に出たり、村や町の人は近所同士で集まって飲んだり食べたりな」
「まるで今の僕達みたいだね‥‥」
感嘆して目を見開くアルフレッドに、長渡はさらに続ける。
「それにな。この日、睡眠を捧げて、一晩一心に願い続ければ如何なる願いも叶うなんて話もあるんだぜ?」
「じゃあ流れ星が見つからなくてもずっと起きてたら願いが叶うのかな?!」
「さあな。それは俺にもわからんよ。っと、おい、あそこ!」
飲んでいたお茶をこぼしそうな勢いで長渡は急に立ち上がって東の夜空を指差す。
「あっ!」
「ロビン君‥‥願い事‥‥!」
そこには無数の流れ星が流れ出していた。
「願い事が叶いますように、願い事が叶いますように、願い事が叶いますように!」
ロビンは必至になって星に願う。
「うん、きっと叶うよ‥‥あと2日‥‥頑張ろうね‥‥!」
ロビンの耳の側にふわりと舞って、一緒に星を見つめるアルフレッド。
「まあ、綺麗なもんだねえ」
長渡は特に願いを唱える事もなく、夜空を見つめた。
●2日目〜眠いよぅ!
「眠そうだな」
ジェンナーロがロビンを見て呟く。
こっくり、こっくり。
昨日と同じく昼間寝かせておいたのだが、ロビンはとろんとした瞳で、座っていてもふらふらしている。
「そうだな、身体を動かしてると眠くならないから、鍛錬でもしてるかっ!!」
劉がぐいっと眠そうなロビンの耳を引っ張って鍛錬に誘う。
ロビンはもう半分以上夢の世界に行ってしまっているらしく、劉にされるがまま、言われるままにふらふらと身体を動かす。
「ロビン君‥‥どうしたの‥‥?」
丁度交代時間になり、シアンがやはり借りたテントからアルフレッドが出てきて心配そうに言う。
「飲み食いしてたんだが、眠くなっちまったらしい」
「僕‥‥眠気を取るツボ知ってるよ‥‥」
アルフレッドは以前の依頼でとある冒険者が教えてくれた眠気を覚ますツボ、中指の爪の付け根あたりにあるというツボを探してロビンの手のひらを押す。
‥‥効果なし。
ロビンはその場にぱったりと突っ伏して眠ってしまった。
「仕方ない、嫌われようが少年を眠らせない為だ、許してくれよ。 これで起きてくれ!」
ジェンナーロはどこから取り出したのかえいっと生魚をロビンの背中にぶち込んだ。
「○×△∈◇!!」
言葉にならない悲鳴を上げて、飛び起きるロビン。
「あ‥‥また流れ星が!」
ロビンが文句を言うより早く、アルフレッドが昨日と同じ東の夜空を指差す。
気のせいか、昨日よりも流れ星が丘に近く、そして増えているような気がする。
ロビンは、一生懸命に流れ星に願いを唱え出した。
●最終日〜流れ星にお願い☆
最終日。
今日は冒険者達とロビンは全員起きて夜空を見つめていた。
「そんなに流れ星は綺麗だったの?」
シアンが劉に尋ねる。
「おう、綺麗なんてもんじゃなかったな。鍛錬も忘れて見惚れちまったぜ!」
シアンの横で夜空を見つめながら劉は力強く頷く。
「私も流れ星を見たいです」
タイミング悪く、昨日一昨日と流れ星を見る事の出来なかったイリアも期待に胸を膨らませて夜空を見上げている。
「そろそろ‥‥昨日と同じ時間‥‥」
アルフレッドが呟き、みんなで東の空を見つめる。
すると‥‥。
「今、光った?!」
「うわっ、なんだこれ?!」
「凄い、凄いよ!」
シアンが、劉が、ロビンが感嘆の声をあげる。
――夜空一杯の、流れ星。
星降る丘を包み込むように、数え切れない量の流れ星が降ってくる。
見上げる首が痛いほどで、全員、丘の上に寝転がった。
芝生の生い茂った丘は、天然の毛布のようで、夜空を流れる流れ星を見つめるのに丁度良かった。
「願い事が叶いますように、願い事が叶いますように‥‥マリーが、僕を好きになってくれますように!」
真っ赤に、ほんとに真っ赤になって。
それでもロビンは最後の最後で星に願う。
「ロビン君の願いが叶いますよーに!」
「きっと‥‥好きになってくれるよ‥‥」
「星空に乾杯!」
「気合入ってるな、おい。でも応援してるぜ」
「ロビン君がマリーちゃんと幸せになれますように」
「おいらたちはずっと応援してるんだー!」
冒険者達も口々に流れ星に叫んで手を振った。
ロビンの願いは、きっときっと叶うのだろう。
星空と冒険者にこんなにも沢山応援されているのだから。