〜ケロケロケロケロくわっくわっくわっ☆〜

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月05日〜07月10日

リプレイ公開日:2005年07月11日

●オープニング

「眠れんのですよ‥‥」
 冒険者ギルドの受付係にそう訴えるのは、目の下に黒い大きな隈を作った依頼人。
 それなりに裕福な薬商人である依頼人の屋敷の庭には大きな池があり、この時期、池に住み着いたカエルがケロケロと良く鳴く。
 小さなカエル達の鳴く声はとても愛らしく、それはそれは風流な好ましいものだったのだ―去年までは。
 だが今年は一味違っていた。
 ゲロゲロと鳴く声は屋敷を揺るがすかと思えるほど大きく、そしてその声の主は1mはあろうかという巨大カエルだったのである。
「鳴き声がうるさくて眠れんのですよ。毎日毎日ゲコゲコゲコゲコよく飽きもせずに鳴けるもんです。追い払おうにも巨大過ぎて、シフールのメイドなんて危うく食われかけたんです! それになんだか毒々しい色のカエルも巨大カエルと一緒に棲みつきだすしわしらじゃもう手に負えません。お願いです、あの化け物カエルを1日も早く退治してください!」
 バンッと机を叩いて必死に頼む依頼人に半ば気圧されながら、冒険者ギルドの受付係は新たな依頼を掲示板に貼りつけるのだった。

●今回の参加者

 ea3443 ギーン・コーイン(31歳・♂・ナイト・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea4511 リザ・フォレスト(29歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 eb2456 十野間 空(36歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2823 シルフィリア・カノス(29歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 eb2879 メリル・エドワード(13歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb2937 レン・ゾールシカ(31歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●お屋敷到着‥‥って、餌付け中?
「お前、何やってんだ?」
 依頼人の屋敷の問題の池の前で、額に冷や汗をたらして依頼人に尋ねるレン・ゾールシカ(eb2937)。
 依頼人はボチャーンボチャーンと盛大に音を立てながら千切りもしないで大きなパンを丸ごと池に投げ入れている。
「見りゃわかるでしょう?! エサやってるんですよ!! こうでもしないと池から出てきてわしらが食われちまいますよっ!!」
 唾を飛ばし、目を血走らせてヒステリックに叫ぶ依頼人。
 その眼の下にはかなり大きく窪んだ黒い隈が出来ている。
(「そんな事をしていたら、パンにたかる虫で余計に蛙が肥え太って繁殖してしまうのでは‥‥」)
 レンと同じく冷や汗をたらし、心の中で突っ込みをいれるリザ・フォレスト(ea4511)。 
 依頼人、かなりキているようだ。
「寝不足は大変ですから、早く何とかしてあげたいですよね」
 そんな依頼人を見て、シルフィリア・カノス(eb2823)が心配そうに呟く。
 寝癖がひどく、それを直す為にいつも早めに朝は起きなければならないシルフィリアにとって、寝不足は他人事ではなかった。
「うむ、このままでは永眠してしまいそうぢゃからのう」
 ドワーフ特有の立派な顎髭をしごきながらシルフィリアに同意するギーン・コーイン(ea3443)。
 一刻も早くジャイアントトード達を退治してやらねばならない。
「カエルなんか、この超肉体派の私が一瞬でやっつけるのだ。おぬしももう安心するといいのだ!」
 薄い胸板をぺチンと自分の拳で叩いてやる気満々のメリル・エドワード(eb2879)と、
「使い古しのシーツなどは御座いますか? それと鎌もあればお借りしたいのです」
 早速カエル退治に必要な物品の使用交渉に移る十野間 空(eb2456)。
 そうしてリザが蛙の詳しい数を依頼人から聞き出して、カエル退治の準備が始まった。


●準備は万全?
 依頼人やメイド達は安全な屋敷の離れの部屋に移ってもらい、作業を始める冒険者たち。
 カエルは依頼人の与えた食事に満足して眠っているのか、今は池の周りはとても静かだ。
「結構薬草とかあるじゃねぇか。これとかあれとか便利なんだぜ?」
 十野間と共に依頼人から借りた鎌で池の周辺の草を刈り取っていたレンがいくつかの薬草を掲げる。
「ええ。依頼人は薬商人ですから常に薬草を栽培してあるのだそうです。私は植物知識には乏しくて薬草と雑草の区別はつきませんから、レンさんがそうして見分けてくださると助かります」
 十野間は先ほど依頼人から古いシーツや鎌を借りる際に池の周辺にある程度の被害が出る可能性を伝え、依頼人からもし可能であるなら事前に池の周辺の薬草は刈り取っておいて欲しいと言われていたのだ。
 もともと、動きやすさと引火予防に池の周辺の草はある程度刈り取る予定だったので一石二鳥である。
「このくらいの大きさで大丈夫でしょうか?」
 古いシーツを繋ぎ合わせて池を覆うほどの大きさに仕上げたリザが問う。
 裁縫など特にした事のなかったリザだが、持ち前の器用さで見事綺麗に縫い合わせてある。
「おぉ、いい感じぢゃのう。早速池を囲うぞい」
 池の周囲に適当な木を加工して作った杭を数本打ちこみ、杭と杭を予め用意しておいたロープを池の上に渡してリザの繋ぎ合わせた布を上にかぶせるギーン。
 さらにその布の端を別の杭を打ちこんで固定する。
 これでジャイアントトードは池から出てこれなくなるだろう。
「薬草より分けるのにも飽きちまったよ。早くやろーぜ、はやく!」
 気分屋なレンの言葉に促され、一同、気を引き締める。
 いよいよ、戦闘開始だ!!

 
●ゲロゲーロゲロゲーロ!! 
 池の上を覆った布に、十野間が蛙がよりいっそう逃げづらいように火を点ける。
 それを合図にメリルが呪文を唱え出す!  
「池を荒らす恐るべき蛙たち‥‥覚悟するんだぞっ! ‥‥ライトニングサンダーボルトぉっ!!」
 メリルの小さな身体が一瞬緑の光に包まれて、その指先から池の中心部に向かって稲妻が迸る!!
 
 ズガアアアアアンンッ!!

 落雷を思わせる激しい光と音が当たりに響き渡り、メリルは咄嗟に片手で耳を塞ぎ、目を細める。
「蛙はっ?!」
「いたぞ、あそこだっ!」
 池の中心部、燃える布の真下に巨大な影がぶくっと浮かび上がっている。
「動きません‥‥倒せたのでしょうか?」
 木の棒を構えながら、不安そうに影を見つめるシルフィリア。
「うわっ?!」
 ビョーン!!
 ビョーン、ビョーン!!
 巨大蛙の影に気を取られていたメリルに、巨大蛙ほど大きくはないもののかなりでかい毒々しい色の蛙が池と燃える布の隙間から飛び出し冒険者に襲いかかる!!
 ビシュッ!
「うわあっ!」
 毒々しい色の蛙―ポイズントードの口から毒液がメリル目掛けて発射され、避けきれずに浴びてしまうメリル。
 すぐに身体に毒が回り始め、激しい吐き気がこみ上げてくる。
「成敗じゃ! きっちり退治させてもらうぞい!!」
 スピアでギーンがメリルを襲うポイズントードを突き刺しながら叫ぶ。
「こんなの、どうってこと、ないんだぞ‥‥!」
 気持ち悪さを我慢して必死に強がるメリル。
「無理しちゃ駄目よ、これを飲んで!」
 シルフィリアは強がるメリルを池から引き離し、解毒剤を飲ませる。
「蛙の分際で生意気だぜ! これでも食らえよ、ファイヤーボム!」
「月に習い満ち退く潮のように、この魔法で退き去るのです、ムーンアロー!」
 レンと十野間、二人の術者の呪文が狙い違わずポイズントードに降り注ぐ!

『『げーーーーーーーーーーーーーーろうげろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!』』

 断末魔の悲鳴を上げて消え去る二匹のポイズントード。
「倒したのか?!」
「いいえ、まだボスが残っています! 見てください!」
 リザが鋭く叫びショートボウを構える。その目線の先には池の中で気絶して浮かんでいたはずのジャイアントトード!
 ジャイアントトードはいつのまにか陸に上がってきていた。
 池を覆っていた布は既に燃え落ちてしまい、囲いの役目を果たさなくなっていたのだ。

『ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲオオオオオオオっ!!!』

 ジャイアントトードが激しく鳴く。
 いや、その鳴き声は鳴くなどというかわいらしい物ではない。吼え、叫ぶと表現した方が良い大音量!
「うるせえぞ、蛙の分際でっ!」
 両手で耳を塞ぎ鼓膜を破らんばかりの鳴き声に我慢しながらレンが叫ぶがそんな事で鳴き止む筈もない。

『ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ、ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲオオオオオオオっ!!!』

 バシッ!
 その巨大な身体のどこにそんな俊敏さがあるのか?
 怒りのままにジャイアントトードはその前足でスピアを構えたギーンを殴りつける!
 避けきれずに吹き飛ぶギーン!
「ぐあっ!」
「セーラ様、どうかご加護を‥‥リカバー!」
 すぐ後で待機していたシルフィリアがすぐさまギーンを回復、そしてスクロールを構えてジャイアントトードとギーンの間に炎の壁を作り出す十野間。
「やってやるぜ、フレイムエリベイション、そしてお前も食らいやがれファイヤーボム!」
「私だってまだ戦えるのだ‥‥ライトニングサンダーボルト!」
 次々と術者達の呪文詠唱が完成し、ジャイアントトードの身体に魔法が降り注ぐ! 

『グコゲコゲコゲコオオオオオっ!!!』

 痛みによりいっそう激しく鳴いて暴れまわるジャイアントトード。
「観念してください!」
 ショートボウでジャイアントトードのその巨大な体を目掛けて矢を続けざまに打ち放つリザ。
 打ち放たれた矢は炎の壁を越えて深々とジャイアントトードの体に突き刺さる!

『『『ぐああああああああつっっ!!』』』

 どうっ!
 最後の叫びをあげて、その場に倒れ伏すジャイアントトード。
 その巨体はもうピクリとも動きはしない。
「勝ったのですか‥‥?」
 止めを刺し、呆然と呟くリザ。
「やったあっ、蛙を倒したんだぞ!」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶメリル。
「やれやれ、とんだ大仕事ぢゃったわい」
 よっこらしょと立ち上がって肩を回すギーン。
「ギーンさん、まだ動くと危険です。もう少し休んでください」
 ギーンに手を貸しながらシルフィリア。
「まったく、とんだ化け物ガエルだったな。ま、俺に掛かればこんなもんだ」
 フフンと鼻で笑う気分屋のレン。
「無事に倒せて何よりです」
 額の汗を拭って微笑む十野間。
 こうして、化け物蛙と毒蛙との戦いは幕を閉じたのである。


●エピローグ〜痒いの痒くないのって
「うおお、俺もう、耐えらんねぇ!」
 手足を掻いて掻いて掻きまくるレン。
 その手足は赤く腫れている。 
 どうやら池の周りに生えていた雑草で肌がかぶれてしまったらしい。
 レンと一緒に池の周りの草を刈っていた十野間もかぶれているのだが、陰陽師ゆえあまり肌の露出した服ではなかったことが幸いしてレンほど酷い状態にはならずにすんだ。
「おい、おっさん、お前薬商人なんだろ? なんかいい薬くれよ!」
 痒さのあまり涙目になって依頼人に訴えるレン。
「若い女性の肌に傷が残っては大変ですからね。良かったらこれをお使い下さい」
 蛙が退治されたと聞き、落ちついた依頼人から手渡された塗り薬には『ガマノアブラ』と書かれていた。本当か嘘か、依頼人いわく、ジャパン伝来の妙薬だという。