ふわふわもこもこメーメーさん☆

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月05日〜08月08日

リプレイ公開日:2005年08月14日

●オープニング

「腕折っちまったんだべ〜」
 のんびり。
 自分の腕が折れているというのにのんびりとギルド係員に話し掛ける素朴な依頼人。
「ふむ。ご依頼は腕の治療かのぅ?」
「いやー、教会で応急手当はもうしてもらったんだべー。んだば治療費が高くってすぐに完治はさせれねがっただよ。だからうちの羊たちの毛皮を冒険者に刈ってもらおうと思ってきたんだべ」
 話を聞くと、依頼人の家では羊の放牧をしており、そろそろ毛を刈り取る時期なのだそうだ。
 だが、依頼人が腕を折ってしまったために、羊の毛を刈ることが出来ない。
 この夏の熱さで、羊たちもそろそろバテてきている。
 牧草を食べる量が減ってきているのがいい証拠だ。
 早めに暑苦しい毛皮を刈ってやらねば倒れる羊も出てくるだろう。
「羊の毛刈り、頼んだべ〜」
 受付係がまだ受けるとも言っていないのに、依頼人はのんびりと依頼料を受付に置き、手を振って去って行く。
「ふむ‥‥。最近はこういった依頼が流行っておるんかいのぅ‥‥?」
 初老の受付係は最近の流行には着いて行けないと思いながらも新たな依頼書を作成するのだった。

●今回の参加者

 ea0167 巴 渓(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea9755 リリィ・ガードナー(41歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb2235 小 丹(40歳・♂・ファイター・パラ・華仙教大国)

●リプレイ本文

 ●夏バテ気味のメーメーさん!
 メエ〜。
 メエェ〜。
 白くふわふわの身体を草原にくったりと横たえながら、物悲しげに鳴く羊たち。
「羊さん達、元気がありませんね‥‥」
 依頼人に案内された牧場で、暑さでバテてきている羊の頭を撫でながら呟くリリィ・ガードナー(ea9755)。
「おお、相当お困りのようじゃの。セーラ神に仕えし者として、迷える‥‥ではなく暑さに茹だるふわもこメーメーさん達の為、力を貸すとしようぞ♪」
 牧畜知識に長けたヴェガ・キュアノス(ea7463)は張りきって腕まくり。
 体力にはちょっぴり自信がないものの、その豊富な知識は必ず役に立つ。
「農家の方とお知り会いになるのも商売の勉強になりますわね」
 そう言って微笑むのは羊よりも依頼人との交流に重きを置いているルメリア・アドミナル(ea8594)。
 アドミナル家の次期党首を目指す彼女にとって、多種多様の幅広い人脈を得る事はお金の報酬を得る事よりも大切だった。
「あんたたち‥‥アフロで褌一丁の男を知らねェか?」 
 そしてなにやら奇抜な男性を探しているのは巴 渓(ea0167)。
 しかし、依頼人から返ってきた答えは知らないの一言。
「そっか、わかった。俺はケイ、人呼んで『反逆者(トリーズナー)・ケイ』さ。宜しくな!」
 気を取りなおして依頼人に挨拶する巴。
「牧場で、羊さんの毛を刈るのは、初めてなので、上手く出切るか心配ですが、精一杯頑張ります」
 そういって羊さんをリリィと一緒にそっと撫でるのはイリア・アドミナル(ea2564)。
 羊さんはかなりへばっているようだ。
「羊の毛刈りじゃな。ううむ、日本刀では毛刈りどころか、ラムステーキの出来上がりじゃ」
 かわいい羊さんを前にして、なにやら物騒な事を呟くのは小 丹(eb2235)。
 彼はパラでありながらドワーフのような立派な髭を生やしているが、それはどうやら付け髭なのだそうな。
 しかし一見付け髭とはわからない今日の髭はもさもさ髭。
 白かったらちょっぴり羊さんの毛のようだ。
「そうだな‥‥多分もへったくれもなく、3日間の重労働に耐えられそうなのって、俺と小のダンナか。ともかく、腕が折れててもレクチャーは出来るさ。まずは牧羊のオヤジに話を聞こうぜ」
 巴はぐるりと集まったメンバーを見渡して、そう判断する。
 小丹以外は全て女性、そのうちイリア、ヴェガ、ルメリアの3人はエルフだから、どうしても体力はあまりないのだ。
「あと作業分担だが、リーダーは牧畜に詳しいヴェガに任せる。体力に勝る俺と小のダンナは毛刈りメインで、あとの4人はローテーションで刈った毛を集めたり、刈り終わった羊を逃がしたり、バックアップを頼みてェ。お前らの体力不足、こればっかりは覆せんさ。馬鹿にしてるんじゃねェよ。それにバックアップでも、かなりの重労働になる。暴れる羊を押さえ込んで、無理やり毛を刈るよりゃ楽だろうがな」
 一番キツイ作業を自ら買って出て、巴はてきぱきと指示を出す。
 しかし依頼人がまったをかける。
「ああー、そんなに難しく考えなくてもいいんだべ〜。おれっちに出来るんだからそれほど大変な作業じゃねぇべさ〜。羊は見てのとおりおとなしいから誰でも簡単に毛が刈れるだよ。んだば、みんなこのハサミを使ってくんろ〜」
 のんびり、のんびり。
 依頼人が片手で冒険者達に毛刈り用のハサミを配り出す。
 片方の腕が折れているため、動きづらそうだ。
「そうそう、依頼人殿の怪我はわしが治癒して進ぜよう。これもセーラ神の導き。遠慮は要らぬぞえ。毛刈りが終わっても動物達の世話があるじゃろうしの」
 にこにこと微笑みながらヴェガが治癒の魔法を唱え、一瞬にして依頼人の怪我を治してしまった。
「おお〜、すごいだべ〜。おれっちの腕が動くようになっただよ。ありがたやありがたや〜」
「怪我は治したが、まだ無理は禁物じゃぞぇ。じゃがこれで毛刈りの説明もしやすかろうて。よろしく頼みますぞ」
 治して貰った腕をぶんぶん振って喜ぶ依頼人に、無理はするなと釘をさしつつ毛刈りの説明を求めるヴェガ。
 基本的にハサミでこのおとなしい羊たちの毛を刈ればいいだけなのだから、特に説明など要らない気もするが、羊に限らず動物というものは以外と神経質。
 いつもと違う人の手によって刈られることは、余計なストレスを与えてしまう。
 だから、出来るだけ依頼人がいつもしているように刈ってあげたほうがいいのだ。
「じゃあちょっくら退いてくんろ〜。まんず羊っちゅうのは腹の方から毛を刈っていくべ〜」
 ふわふわもこもこの羊さんを撫でていたリリィとイリアに少しどいてもらい、横たわる羊のお腹の毛をチョキチョキと切っていく依頼人。
「腹側は胸なんかもあるけん、間違って傷つけないように丁寧に切るだぁよ‥‥よし、出来ただよ。こんな感じで全部の羊たちを刈ってくんろ〜」
 依頼人の手にかかり、あっという間に丸裸になる羊。
 冒険者達は感嘆の声をあげつつ、それぞれ毛を刈り始めるのだった。
 

●毛刈り開始☆
「羊に効果があるかはわからないけれどスクロールのメロディーを使い、羊さん達の気持ちを和らげ、リラックスして貰い、此方の誘導に大人しく動いて貰えるように、働きかけてみます」
 イリアは暑さでかなりくったりとしている羊たちに向かってスクロールを広げると、陽気に歌い出す。

 ♪〜
 さあ皆、熱い衣を脱ぎ捨てよう、
 僕は羊の仕立て屋さん、
 どんな厚い羊毛もさっぱり脱がして、すっきりさ、
 夏の日差しも怖くない、
 よってらっしゃい羊さん、
 服ばっさり脱ぎ捨てて、
 暑い夏を乗り切ろう〜
                  〜♪

 歌詞もそうだが、明るいイリアの声に誘われて、羊が「メエェ〜♪」と嬉しそうに鳴く。
 何匹かはイリアの周囲に集まって、猫のようにふわもこの身体をイリアに擦り付けて懐いている。
 ふわふわもこもこに囲まれたイリアは一気に暑さが増して倒れそうだったけれども、かわいい羊さん達の為に頑張ろうと借りたはさみで少しずつ羊の毛を刈っていく。


「これだけ多いと数を数えるのも大変ですわね。又、羊に留まって貰う訳にも行きませんし、此処はブレスセンサーで、索敵しておかなくては」
 ルメリアは口の中で短く呪文を唱えると、ブレスセンサーを発動させる。
「ひい、ふう、みぃ‥‥30匹」
 依頼人からあらかじめ聞いておいた羊の数とぴったり同じ数の反応に、ルメリアは満足しつつ、羊が何処か遠くに行かない様に注意しながら毛を刈り始める。
「中々、大変な作業ですわね。羊さん、良い子にして下さいね」
 頭を撫でてやりながら大変だとぼやきつつ嬉しそうなルメリア。
「あら? そちらにいってはいけませんよ」
 羊が一匹、ブレスセンサーの範囲外に出てしまいそうになっている。
 ルミリアは慌てて連れ戻しにいく。 


「牧場のご主人から手ほどきを受けたが、ううむ、何かこう、面白おかしく毛刈りができないもんかのう」
 メーメーと鳴く羊を前に、そう思案する小丹。
 依頼人と同じく腹の方からチョキチョキ切ってはいるものの、これだけでは何かこう、いまいちつまらない。  
 ここは一つ、楽しい毛刈りをしなくては。
 悩む小丹の付け髭を、羊が興味深々に「メェ、メェエ〜?」と鳴きながらクイッとくわえて引っ張った。
「こっ、これ! それはわしの毛じゃ。引っ張ってはいかん!」
「メエッ、メエエエエッ!!」
 必死に付け髭を抑えて羊をしかる小丹。
 しかし羊はよりいっそう意地になって、器用にもくわえた髭を離さずに鳴きながら髭を引っ張る。
 ――ぷちっ!
「メェ〜♪」
 良い音をさせて付け髭を奪い取るご機嫌な羊。
「これこれ、わしの毛を取ってどうするんじゃ。毛を刈るのはおぬしらの方じゃて。ほれ、わしの髭を返すんじゃ」
 もにゅもにゅと付け髭を食べてしまいそうな羊からどうにかこうにか髭を取り返し、ほっと溜息をつく小丹だった。 


 その少し離れた場所で。
「まあ、あそこに素敵なおじさまが‥‥」
 ほっぺたをポッと赤らめリリィはうっとりと小丹を見つめていた。
 オヤジっぽい人が好きなリリィにとって、程よく皺の刻まれた筋肉質な小丹のオヤジっぷりは、例え羊に付け髭を奪われていても萌え。
 惜しむらくは身長差だろうか?
 パラの小丹はちょっぴり小柄で、リリィとはつりあわないかもしれない。
 残念そうにリリィは溜息をつき、羊たちを見渡す。
 羊たちはほぼみんなばてていて、くったりとしていたが、そのうちの一匹、特に目に見えて体調の悪そうな羊を見つけると、リリィはその羊を率先して毛を刈り出した。
「すぐに終わりますから、じっとしてて下さいね」
 優しく丁寧に、羊の毛を刈っていくリリィ。
 もこもこの毛を刈られて、少し暑さが引いた羊は、「メエェ〜♪」と鳴いてリリィに擦り寄った。
 まだ毛を刈られていない羊たちも、それをみてほよほよと寄ってくる。
「わーい♪ ふわふわですう〜★」
 普段の教師然とした雰囲気からは想像もつかないぐらいふわもこメーメーさんにめろめろなリリィ。
 ぎゅうっと羊をご機嫌に抱きしめつつ、毛刈りを続けるのだった。


「みんな、大丈夫そうだな」
 辺りの仲間達を見渡して、そう呟く巴。
 依頼人はそれほど難しい仕事ではないといっていたが、どうしても体力の無い仲間達が気になってしまうのだ。
 親友が体力が無いのに無理をしてしまうタイプの子だからかもしれない。
 気分が悪くなったり、体調を崩した仲間がいないことにほっとしつつ、巴は一番元気な羊を取り押さえに掛かる。
「こら、じっとしてろって! 俺が今からおまえのその暑っ苦しい毛を刈ってやろうってんだ、ありがたくおもいやがれ!」
 暴れる羊の首をぐいっと羽交い締めにして、なんとか毛を刈ろうと試みる巴。
 しかし、いくらなんでも取り押さえながら切るのは無理っぽく。
「ふむ、苦戦しておるようじゃの。どれ、一つ呪文を唱えてみようかの」
 丁度、刈った羊の毛を麻袋にまとめに来たヴェガがコアギュレイトを巴の抑える羊に唱える。 
「メ、メェ? メエエエェッ?!」
 急に動けなくなって悲しそうな声で鳴く羊。
「おっ、ヴェガ、サンキューな! これで一気に刈り取れるぜ!」
「動きを止めて置けるのは6分じゃ。おぬしならその間に刈り取れるじゃろうよ」
「おう、任せとけ! いっくぜぇ、必殺、超大急ぎ刈り!!」
 シャキーン☆
 ハサミをきらめかせて一気に羊の毛を刈る巴。
 それを見て、ヴェガは再び刈られた毛を麻袋に詰めて依頼人の家に運び出した。


●無事終了☆ ふわふわもこもこ〜☆
「たすかっただよ〜。これで羊が倒れなくてすんだベ〜」
 おっとりゆったり。
 冒険者にお礼を言う依頼人。
 すべての羊たちは綺麗に毛を刈り取られ、まるでヤギのようだった。
「これでご依頼は終わりなのですね。もうちょっと触っていたかったです‥‥」 
 名残惜しそうに羊の頭を撫でるリリィ。
「なかなかに楽しかったのう」
 依頼人から少し分けてもらった羊さんの毛を付け髭にして、白くてふわもこなお顔になっている小丹。
「羊たちはまだ暑さの疲れが残っておるようじゃが、ゆっくりと休めばそのうち疲れも取れようて」
 羊たちを1頭ずつ様子を見てまわってきたヴェガが言う。
 こうして、ふわふわでもこもこなメーメーさん達は冒険者達の活躍によって救われたのでした☆